
「日本のパスポート順位はどう動いたか」という問いには、20年の年次推移チャートと国別の比較を並べるのが近道です。長期推移と直近の変動を1枚に重ねると、順位の動きが何によって決まっているのかが浮かび上がります。
ヘンリー・パスポート・インデックスの2026年1月発表によれば、日本パスポートはビザなし渡航可能国数188カ国で韓国と同率2位、シンガポール(192カ国)に次ぐ位置です。日本は2018-2023年に6年連続で世界1位を独占し、2024年は6カ国同率の首位、2025年から単独2位、そして2026年1月版では188カ国・2位で定着しています。日本のパスポート順位は「2018-2023年の1位独占期」と「2024年以降の2位定着」の2つの局面が地続きに並んでいるのが、現在の構造です。
本記事では、ヘンリー・パスポート・インデックスの2006年から2026年までの20年データを、日本の順位推移チャート・渡航国数の長期推移・主要5カ国の比較・最新Top10ランキング・大きく動いた国の対比・行ける国vs来られる国の非対称といった複数の図解で整理します。順位の動きが「自国の努力」だけで決まるのではなく、他国との相対関係で決まっていることを観察事実として並べていきます。
日本のパスポート順位はどう動いたか?
2018-2023年の1位独占から、188カ国・2位で定着した。
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日本のパスポート順位はどう動いたか|2006-2026年の20年史

20年の推移は、表ではなく Y軸反転の折れ線で見ると、ピーク・底・現在地の3点が一目で並びます。底からの登りと頂点からの降り、その後の定着が連続した波形として確認できます。
日本のパスポートは2006年のヘンリー指数開始時で世界3位前後と上位ながら、2010年には6位まで沈み、これが20年で最も低い順位になりました。Japan Timesの2025年7月報道は、この2010年の6位を日本の過去最低順位として確認しています。底打ち後は2010年代を通じてゆるやかに上昇し、2018年に世界1位を獲得しました。
1位獲得の2018年から2023年までの6年間、日本パスポートはシンガポールなどと共有する形で世界1位の座を維持し続けました。2018年・2019年は日本が単独またはほぼ単独で首位、2020-2022年もコロナ禍を挟みながら1位の位置を保ちます。2023年Q1も同率1位、2024年Q1は日本を含む6カ国(シンガポール・日本・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)が同率1位の珍しい構図でした。
2025年からの局面は変わります。2025年1月版でシンガポールが単独首位を確保し、日本は単独2位へと一段下がりました。続く2026年1月版では、日本は韓国と同率2位に並ぶ188カ国の位置です。20年で見ると、2010年の底から2018年の頂点を経て現在の定着に至る三段階構造が、日本パスポート順位の20年史として整理できます。
ビザなし渡航国数の推移|数字そのものは増えている

順位だけでなく、渡航可能国数そのものを縦軸にとって並べると、別の動きが見えてきます。順位は他国との相対比較ですが、渡航国数は日本パスポートの絶対的な力量を示す指標です。
日本パスポートの渡航可能国数を年次で並べると、2018年の189カ国から2024年の194カ国まで、長期上昇基調にあったことが確認できます。2018年(189)→2019年(190)→2020-2021年(191)→2022年(193)→2024年(194カ国・ピーク)と、6年間で5カ国分が積み上がりました。これは二国間ビザ免除協定の積極的な締結や、ETA(電子渡航認証)方式の普及が日本パスポートの実質的な渡航範囲を広げてきた結果です。
ところが、2024年Q1の194カ国をピークに、2025年は193カ国、2026年1月版では188カ国まで減少しています。直近2年で6カ国分の渡航範囲が縮小した形です。渡航国数の絶対値が増え続けても、順位は下がるという逆説が、2024年から2026年にかけて起きています。
重要なのは、順位の下落と渡航国数の動きが必ずしも一致しないという点です。日本の渡航国数が188カ国まで戻っても、シンガポールが192カ国、UAEが184から187カ国へと伸ばし、韓国も188カ国に並んできました。順位の相対的下落は日本パスポート自体が弱くなったというよりも、他国の伸びが日本を上回った結果として整理できます。
主要5カ国の動き|日本・シンガポール・韓国・米英

日本一国だけを見ても、順位の動きの背景は見えてきません。同じ時期にシンガポール・韓国・米国・英国がどう動いたかを並列に並べることで、上位陣の全体構図が把握できます。
シンガポールは2018年から一貫して世界1位グループに位置し、2024-2026年は単独もしくは事実上の首位を維持しています。日本と韓国は隣接した順位で動く近接挙動を示し、2018年は日本1位・韓国2位、2024年は両国とも1位グループに含まれた後、2026年は188カ国の同率2位で並びました。アジア3カ国(シンガポール・日本・韓国)が世界トップ3を独占する構図が定着しています。
対照的に、米国と英国の動きは大きく異なります。米国は2018年の5位前後から、2024年8位、2025年9位、2026年は10位(179カ国)まで一貫して下がり続けました。英国も2018年の4位から2026年7位(182カ国)と低下しています。英米両国の同期下落は、二国間ビザ免除協定の更新ペースと相互主義の運用、そして近年の入国管理厳格化が複合した結果として現れています。
上位5カ国の比較から見えるのは、順位を決めているのが「自国の絶対的な力」ではなく「他国との相対的な伸び」という点です。日本と韓国は近接して動き、米英は同期して下落し、シンガポールは単独で前進しました。同じ20年でも、国によって動きの方向と速さは大きく異なっています。
2026年現在のTop10|誰が上位を占めているか

2026年1月版のTop10を横棒で並べると、上位陣の集中度と地理的な分布が一目で見えてきます。アジア太平洋と欧州が上位を分け合う構造が確認できます。
2026年1月版のTop10は、シンガポールの単独首位(192カ国)から始まり、日本・韓国の同率2位(188カ国)が続きます。3位はデンマーク・ルクセンブルク・スペイン・スイスの4カ国同率(186カ国)、4位はフランス・ドイツ・オランダなど10カ国同率(185カ国)、5位はUAEを含む4カ国同率(184カ国)と、欧州勢が中位を厚く占めている構図です。
Top10下位は、6位スウェーデン(183カ国)、7位英国を含む6カ国同率(182カ国)、8位カナダを含む3カ国同率(181カ国)、9位アイスランド(180カ国)、10位米国(179カ国)と続きます。Top10の構成国はアジア太平洋3カ国・欧州十数カ国・北米2カ国に集中しており、新興国でTop10入りしているのはUAEのみです。地理的な分布に強い偏りがあります。
1位シンガポール(192)と10位米国(179)の差は13カ国分。Top10内に限れば順位差はそれほど大きくなく、上位陣は世界の渡航先のおよそ8割をビザなしでカバーしている水準にあります。日本は188カ国で、Top10平均(約184カ国)を4カ国分上回る位置です。
20年で大きく動いた国|UAE・中国の急上昇と米英の下落

上位陣の構図を理解するうえで、2006年から2026年にかけて順位を大きく動かした国を中央0軸の対比横棒で並べると、グローバルなパスポート勢力図の組み替えが見えてきます。
20年で最も大きく順位を上げたのはUAE(アラブ首長国連邦)です。Henley公式コメントによれば、UAEは2006年の約62位から2026年の5位(184カ国)へと57位上昇し、渡航可能国数は149カ国分増えました。これは20年間でひとつの国が記録した最大級の上昇幅で、戦略的な二国間外交の累積によるものとされます。中国も2015年の94位から2026年の59位(81カ国)へと35位上昇し、過去10年で最も外交開放を進めた大国のひとつです。
韓国は2006年の16位前後から2026年の2位(188カ国)まで14位上昇し、日本と並ぶ位置に到達しました。日本自身は2006年3位から2026年2位への+1位という穏やかな動きで、20年スパンでは順位そのものはほとんど動いていません。日本は順位こそ動いていなくても、その周りで他国が大きく動き続けたことで、相対的な位置の意味は20年前と現在で大きく異なっていることが見えてきます。
下落側では、米国が2006年の1位前後から2026年10位への-9位、英国が-6位と、両国とも一貫した下落基調にあります。さらにWikipediaの歴史データによれば、ボリビアは10年間で-37位の最大級の下落を記録しました。20年で動いた国の対比は、外交努力の積み重ねが順位に直接反映される指標であることを示しています。
日本パスポートと自国開放度のねじれ|行ける188 vs 来られる70

ヘンリー指数は「日本パスポートで行ける国の数」を測りますが、視点を逆転させて「日本がビザなしで受け入れる国の数」を並べてみると、別の構造が見えてきます。
日本パスポートの渡航可能国数は2026年1月版で188カ国です。一方、外務省が公開する「短期滞在ビザ免除国・地域」のリストに掲載されている国は約70カ国にとどまります。日本パスポート保有者がビザなしで行ける国の数と、日本がビザなしで受け入れる国の数のあいだには、118カ国の差があります。
この非対称はヘンリー指数の「自国開放度ランキング」(Openness Index)でも確認でき、日本の自国開放度は世界的に見て中位以下に位置しています。パスポート強度は二国間の累積的な交渉の結果であり、自国がどれだけ国を開いているかを示す自国開放度とは別の指標として整理する必要があります。
日本のパスポートが世界2位の強さを持つ一方で、自国開放度は中位という構造は、戦後の日本外交が「国民の海外渡航の自由度を高める」方向に重点を置いてきた一方、「外国人の入国受け入れ」については慎重な姿勢を維持してきたことの数値的な反映です。順位は外向きの努力と内向きの政策の総和であり、片方の指標だけでは語りきれません。
楓のまとめ|順位の動きは外交関係の積み重ねを映している

ここまでの推移と比較を一通り並べると、日本パスポートの順位がどう動いたか、そしてその動きが何によって決まっているのかが、図解の対比で確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「日本のパスポート順位はどう動いたか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、順位の動きが自国の力量だけでなく他国との相対関係で決まっていることを示してきました。長期スパンの上昇基調と直近の下落、上位陣の組み替え、行ける国と来られる国の非対称、それぞれが別の側面を映しています。データに優劣をつけるのではなく、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、日本パスポートの2位という現在地は、自国の力量がそのまま反映されているわけではなく、シンガポールの単独前進・UAEと中国の急上昇・米英の同期下落といった他国の動きと、日本の慎重な自国開放方針が複合した結果として浮かび上がります。パスポート順位の動きは、二国間外交の累積と相互主義の運用が、国境を越えた人の移動の自由度に直接反映される指標として整理できます。「日本のパスポート順位はどう動いたか」への答えは、どの期間で、どの比較軸で、どの指標を見るかで変わる、という観察事実そのものが、いまのパスポート勢力図を最もよく映しています。
よくある質問(FAQ)

パスポート順位を読むときは、発表時期・指標の前提・他国との相対関係の3点をセットで確認してください。同じデータでも、この3点が変わるだけで読み取れる景色が変わります。
Q1. ヘンリー・パスポート・インデックスの「ビザなし」には何が含まれますか?
ヘンリー指数の「ビザなし」には、純粋なビザ免除(visa-free)に加え、到着時ビザ(visa-on-arrival)と、自動承認される電子渡航認証(ETA・eTA)が含まれます。事前に手続きが必要な電子ビザ(e-Visa)や、政府の事前承認が必要なケースは含まれません。データはIATA(国際航空運送協会)のTimaticデータベース由来で、これは航空会社のチェックインシステムが使う公式の渡航要件データベースと同じものです。指数は四半期ごとに更新されますが、1月発表値が公式年次として参照されます。
Q2. 日本のパスポートが2024年以降2位で定着しているのはなぜですか?
日本パスポートの渡航可能国数自体は2024年Q1の194カ国でピークを記録した後、2026年1月版で188カ国まで減少しています。一方でシンガポールが192カ国を維持し、UAEなどが上位に食い込んできたため、順位は相対的に2位へと下がりました。日本の絶対的なパスポート強度が下がったというよりも、他国の伸び幅が日本を上回った結果の相対的下落です。2026年現在、日本は韓国と同率2位の位置で、シンガポールに4カ国差で続いています。
Q3. 1月発表と7月発表で順位が変わるのはどう解釈すればよいですか?
ヘンリー指数は四半期ごとに更新されますが、1月発表値が年次の公式値として扱われ、7月以降の更新は速報的な参考値の位置づけです。たとえば2024年は1月時点で6カ国同率1位(日本含む)でしたが、7月のQ3更新ではシンガポールが単独首位(195カ国)に躍り出ています。本記事の図解は1月発表値で揃えており、年内の小さな変動はQ2-Q4で起きる相互的な調整として観察するのが、長期トレンドを読む際の標準的な見方です。

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