
平均寿命と健康寿命の「差」を、まずは男女別に2本のバーで並べてみてください。介護や生活制限が必要となる「不健康期間」が、男女でこれだけ違う形が見えてきます。
日本人の平均寿命は男性81.05年・女性87.09年。一方、健康上の問題で日常生活が制限されることのない期間「健康寿命」は男性72.57年・女性75.45年です。両者の差にあたる「不健康期間」は2022年で男性8.49年・女性11.63年、女性の方が3.14年長くなっています。日常生活に制限がある期間が男女でこれだけ異なるのは、世界でも珍しい構造です。
本記事では、厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」(令和6年12月公表)と「令和4年簡易生命表の概況」を一次情報源として、平均寿命と健康寿命の構造、不健康期間の時系列推移、47都道府県別の健康寿命マップ、男女差の地域分布を、複数の図解で整理します。「健康寿命1位の県」と「不健康期間が短い県」が必ずしも一致しないという、男性に特有の構造も観察していきます。
平均寿命と健康寿命、その「差」は男女でどれだけ違うのか?
日常生活に制限のある期間は男性8.49年、女性11.63年。女性の不健康期間は男性より3.14年長くなっています。
男女差3.14年(女性の方が不健康期間が長い)
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平均寿命と健康寿命、まずは構造で理解する

まず最初に、平均寿命と健康寿命を1本のバーで並べてみると、人生の最後の数年が「不健康期間」として残る構造が見えてきます。男女ともに、寿命の終盤は日常生活に制限のある期間が必ず存在します。
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、平均寿命から日常生活に制限のある期間を差し引いた値です。2022年(令和4年)の全国値は、男性が平均寿命81.05年・健康寿命72.57年、女性が平均寿命87.09年・健康寿命75.45年でした。両者の差にあたる「不健康期間」は男性8.49年・女性11.63年で、人生の最後の8〜12年は、男女ともに何らかの形で生活上の制限が発生する期間として残っています。
健康寿命の算定は、3年ごとに実施される厚生労働省「国民生活基礎調査」の健康票の回答(「健康上の問題で日常生活に何か影響があるか」への回答)と、「簡易生命表」の死亡情報を組み合わせて、厚生労働科学研究班が算出します。データの集計サイクルが3年に1回のため、最新値は令和4年(2022年)値となり、令和6年12月の健康日本21(第三次)推進専門委員会で公表されました。次回更新は令和7年調査をもとに令和9年以降の予定です。
男女差に着目すると、平均寿命の女性差は約6.04年(87.09 − 81.05)であるのに対し、健康寿命の女性差は約2.88年(75.45 − 72.57)にとどまります。寿命そのものは女性が大きく上回るのに、健康な期間の差は半分以下に縮まる、という構造です。差の残り約3.14年が「不健康期間の男女差」として表れています。
不健康期間は2010年から徐々に縮小している

次に、不健康期間を5時点で並べた折れ線で見ます。2010年から2022年にかけて、男女ともにゆるやかな縮小が続いている形が確認できます。
不健康期間は、2010年(平成22年)の集計開始以降、男女ともに縮小傾向が続いています。男性は2010年9.22年から2022年8.49年へと-0.73年、女性は2010年12.77年から2022年11.63年へと-1.14年それぞれ短縮しました。12年間で、女性の不健康期間が男性より大きく縮んだ結果、男女差も2010年の約3.55年から2022年の3.14年へとゆるやかに縮小しています。
健康日本21(第二次・2013-2022)の目標が「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」だったのに対し、令和6年度から始まった健康日本21(第三次)では「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」が目標として明記されました。2022年値を基準とすると、令和10年(2028年)に中間評価、令和13年(2031年)に最終評価が予定されています。不健康期間の縮小は、健康寿命の延伸とほぼ同義です。
一方で、2019年→2022年の3年間に限ると、男性の健康寿命は72.68年→72.57年と僅かに短縮(-0.11年)し、女性は75.38年→75.45年と僅かに延伸(+0.07年)しています。前回値と比較した有意差は男女ともになく、コロナ禍が含まれる期間という背景もあります。3年スパンの細かい動きより、12年スパンの大きなトレンドの方が読み取りやすい指標です。
男性の健康寿命 — 都道府県別タイルマップ

続いて、男性の健康寿命を47都道府県のタイルマップで見ていきます。色の濃い県ほど健康寿命が長い県です。地域差は最大2.82年あります。
男性の健康寿命を47都道府県別に見ると、最も長いのは静岡県の73.75年で、石川県73.60年、山梨県73.47年、群馬県73.37年、神奈川県73.28年と続きます。一方、最も短いのは岩手県の70.93年で、高知県71.19年、沖縄県71.62年、大阪府71.77年、愛媛県71.82年が下位5県となりました。最長の静岡県と最短の岩手県の差は2.82年で、生活習慣・医療体制・人口構成といった地域要因の影響が見てとれます。
中部地方(静岡・石川・山梨・長野・岐阜)と関東地方(群馬・神奈川・栃木・埼玉)に上位県が集中する一方、東北地方の岩手県、四国の高知県、そして沖縄県が下位に位置しています。沖縄県は平均寿命でかつて全国上位だった印象が残っていますが、健康寿命では下位に位置しており、生活習慣の構造変化が健康寿命に反映されている可能性があります。
都道府県別の健康寿命は、平均寿命や生活習慣病の罹患率と必ずしも一致しません。健康寿命は「日常生活に制限のない期間」という主観的な健康評価を含む指標のため、医療提供体制・介護インフラ・地域コミュニティの違いが反映されます。同じ平均寿命でも、健康な期間の長さは地域構造によって変わってくる、という観察ができます。
女性の健康寿命 — 都道府県別タイルマップ

次に、女性の健康寿命を同じ47都道府県マップで見ます。男性と全く同じ地理的傾向ではなく、男女で上位・下位の県が異なる箇所もあります。
女性の健康寿命は、最も長いのが静岡県の76.68年で、山口県76.43年、岐阜県76.20年、山梨県76.16年、宮崎県76.13年と続きます。最も短いのは岩手県の74.28年、沖縄県74.33年、神奈川県74.71年、奈良県74.76年、徳島県74.83年が下位5県でした。最長の静岡県と最短の岩手県の差は2.40年で、男性(2.82年)よりやや小さい地域差となっています。
男女ともに健康寿命1位は静岡県で、最下位も岩手県で一致しました。一方、上位・下位の構成は男女で違いがあります。男性の上位5県には石川・群馬・神奈川が入りますが、女性の上位5県には山口・岐阜・宮崎が入ります。地理的には、女性は中国地方の山口、九州の宮崎が上位に上がる点が特徴です。
神奈川県は男性で5位(73.28年)と上位ですが、女性では45位(74.71年)と下位5県に入ります。男女で順位が大きく異なる県もあり、健康寿命の地域差は男女別に見ないと構造が見えません。同じ県でも、男女で異なる健康構造が並行して存在しているのが、47都道府県データから見える景色です。
「健康寿命1位の県」と「不健康期間が短い県」は同じではない

ここで観察したいのは、男女で構造が大きく異なる点です。健康寿命の長い県と不健康期間が短い県を並べて、男女別の重なりを見ていきます。
健康寿命の長さと不健康期間の短さは、一見同じことのようですが、実は別の指標です。健康寿命は「健康な期間そのものの長さ」、不健康期間は「平均寿命 − 健康寿命」で計算される「制限のある期間の長さ」です。長く生きる県は健康寿命も長くなりやすい一方で、不健康期間は平均寿命が短くても「健康な期間の比率が高い県」で短くなります。男女別にTOP5を比較すると、男性は健康寿命TOP5と不健康期間最短TOP5の重複が群馬県1県のみで、ほぼ完全に分離します。
男性の健康寿命TOP5は静岡・石川・山梨・群馬・神奈川ですが、不健康期間最短TOP5は青森・群馬・栃木・秋田・鹿児島と、東北・関東北部・南九州が並びます。重なるのは群馬県だけで、健康寿命1位の静岡県(73.75年)と不健康期間最短の青森県(7.14年)は別々の県です。男性は「長く健康に生きる県」と「制限のある期間が短い県」が地理的にも別の構造を持っています。
一方、女性は健康寿命TOP5(静岡・山口・岐阜・山梨・宮崎)と不健康期間最短TOP5(静岡・山梨・山口・宮崎・栃木)の重複が静岡・山梨・山口・宮崎の4県と、ほぼ一致します。「長く健康に生きる県」と「制限のある期間が短い県」が同じ地域に集中しています。男女別に見ると、健康寿命と不健康期間の関係は同じ構造ではない、という観察事実が浮かびます。
男女差はどの県で大きく、どの県で小さいのか

最後に、不健康期間の男女差を47都道府県別に並べた横棒チャートで見ます。全国平均の3.14年からプラス側・マイナス側にどれくらい広がっているかが見えてきます。
不健康期間の男女差(女性−男性)を47都道府県別に見ると、全国平均は3.14年ですが、地域差は1.57年〜4.68年と幅があります。最も差が大きいのは神奈川県の4.68年で、宮城県4.01年、鳥取県3.97年、徳島県3.45年、奈良県3.68年が上位に並びます。最も差が小さいのは山口県の1.57年で、三重県2.11年、愛媛県・京都府2.33年と続き、最大と最小の間には3.11年の差があります。
神奈川県は女性の不健康期間が12.99年と全国最長、男性は8.31年で全国平均(8.49年)より短いという構造です。結果として男女差が4.68年と全国最大になります。一方、山口県は男性の不健康期間8.97年・女性10.54年で、男性が全国平均より長く、女性は全国平均より短いという、男女の「不健康期間が近い」県となっています。
男女差の地域分布は、女性の不健康期間が長い県と男性の不健康期間が短い県の組み合わせで決まります。男女差が大きい県では女性の介護・生活支援需要が男性より相対的に大きく、男女差が小さい県では男女ともに同程度の生活制限期間を持つ、という違いが指標に現れます。同じ「健康寿命の延伸」でも、地域ごとに男女別の課題構造が異なる、という観察ができます。
楓のまとめ|健康寿命と不健康期間の男女別構造

ここまでの推移と地域差を一通り並べると、健康寿命と不健康期間の構造が、全国・時系列・地域差・男女差の4つの軸で整理できます。3つの観察事実にまとめます。
「平均寿命と健康寿命の差は男女でどれだけ違うのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、不健康期間の男女差は3.14年で女性の方が長く、12年間でゆるやかに縮小しており、47都道府県の地域差は男女別に異なる構造を持つことを示してきました。データの読み方を整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「平均寿命と健康寿命の差」という指標は、全国平均値だけでは見えない男女別・地域別の構造を内包していることがわかります。健康寿命の延伸という政策目標は、男女別・地域別に異なる課題構造に直面しており、画一的な施策では男女差・地域差は埋まらないのが、47都道府県データから見える実情です。「平均寿命と健康寿命の差は男女でどれだけ違うのか」への答えは、全国値の3.14年だけではなく、地域別の1.57年〜4.68年という幅と、男女別に異なる地理的構造を含めて見る必要があります。
よくある質問(FAQ)

健康寿命のグラフを読むときは、3年ごとの集計サイクル・男女別の構造・47都道府県の地域差の3点をセットで確認してください。指標の前提を踏まえると、データから読み取れる物語の幅が広がります。
Q1. 健康寿命の最新値はいつ更新されますか?
健康寿命は、3年ごとに実施される厚生労働省「国民生活基礎調査」(健康票)の回答をもとに、厚生労働科学研究班が算出します。最新値は令和4年(2022年)調査に基づく値で、令和6年12月24日の健康日本21(第三次)推進専門委員会で公表されました。次回更新は令和7年(2025年)の大規模調査結果をもとに、令和9年以降の公表が見込まれています。3年に1回の更新サイクルのため、年単位の細かい変動より、3〜6年スパンのトレンドで見るのが指標の特性に合った読み方です。
Q2. 健康寿命と平均寿命の差「不健康期間」とは具体的にどんな期間ですか?
不健康期間は、国民生活基礎調査の健康票で「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問に「ある」と答えた人を集計し、平均寿命から「日常生活に制限のない期間の平均」を差し引いた値です。日常生活への影響の中身は、日常的な動作・仕事・家事・学業・運動の制限、外出時の付き添い必要、入院などを幅広く含みます。介護保険の要支援・要介護の認定範囲とは異なる広い概念で、軽度の制限から完全な要介護状態までを含む幅のある期間です。
Q3. 健康寿命1位の静岡県は、なぜ男女ともに上位なのですか?
静岡県の健康寿命が男女ともに1位である背景は、単一の要因では説明できませんが、厚生労働科学研究では生活習慣(運動・食事・喫煙率)、医療体制、地域コミュニティの活動度などが複合的に関連すると整理されています。静岡県は緑茶の消費量が全国最多級、温暖な気候による外出機会の多さ、地域包括ケアシステムの整備状況などが指摘される指標です。一方、健康寿命1位は静岡県でも、不健康期間最短の県は男性で青森県・女性で静岡県と男女で異なり、健康寿命の長さと不健康期間の短さは別の構造を持つことに留意が必要です。
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