
ふるさと納税は「金額」より「どこから、どこへ」を地図にすると本質が見えます。1.27兆円が地方に集まり、その大半は7都府県から流出している、その地理を1枚で示します。
ふるさと納税の受入総額は2024年度に1兆2,728億円となり、5年連続で過去最高を更新しました。利用者は約1,080万人、住民税控除額は8,710億円。本記事では、総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)」の数値をもとに、お金がどこから出てどこへ流れたのかを47都道府県マップ・推移チャート・使途内訳ドーナツの3軸で整理します。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
ふるさと納税の全体像|2024年度の規模と仕組み

制度の全体像は「受入1.27兆円・控除0.87兆円・差額4,018億円」の3つの数字で押さえます。差額部分が地方へ実際に「移った」金額です。
① 受入額:1兆2,728億円(前年度比+13.9%・5年連続最高)
② 控除額:8,710億円(前年度比+13.3%・利用者数約1,080万人・利用率約18.5%)
③ 受入件数:約5,879万件(1人あたり平均約5.4件・小口化傾向)
出典:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和7年度実施)
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄附すると、寄附額のうち2,000円を超える部分が住民税・所得税から差し引かれる制度です。総務省が毎年公表する現況調査の最新版(令和7年度実施・2024年度実績)によると、受入額1兆2,728億円に対し、住民税控除額は8,710億円でした。受入と控除に約4,018億円の差があるのは、自己負担2,000円分や所得税還付分(控除総額の概念整理)など、制度上の差額部分が含まれるためです。
この制度は、受入側(寄附を受け取る自治体)と控除側(寄附した人が住む自治体)で、お金の動きが鏡像になっています。受入が増える自治体があれば、必ずどこかで住民税が減る自治体が存在します。総務省の集計によると、控除が住民税収から差し引かれる影響について、減収額の約75%は地方交付税で補填される仕組みになっており、純粋に「自治体間でお金が動いた額」は控除総額そのものよりも小さくなります。
5,879万件 vs 1,080万人|送り手と受け手の対称構造
2024年度の受入件数は約5,879万件、控除を受けた人(利用者)は約1,080万人でした。1人あたり平均で約5.4件の寄附を行っている計算になり、複数自治体への分散寄附が定着しています。利用者数の1,080万人は過去最多で、住民税納税義務者全体に対する利用率は約18.5%に達しています。納税者のおよそ5人に1人がふるさと納税を活用している計算で、制度のすそ野が広がり続けていることがわかります。
受入と控除は、件数(寄附行為)と人数(納税者)で粒度が異なります。前者は「行為の数」、後者は「人の数」です。1人が10自治体に寄附すれば件数は10、利用者は1。この粒度の違いを踏まえると、件数の伸びは利用者数の伸びより大きくなる傾向があり、実際2024年度の件数増加率は約16%、利用者数の増加率は約12%でした。1人あたりの寄附先が広がっていることが数値で確認できます。
受入はどこへ流れたか|都道府県別の流入マップ

都道府県順位は横棒よりタイルマップで地図化すると、北海道・南九州・北信越という「3つの集積エリア」が一目で見えます。
受入額の都道府県別ランキングを見ると、トップは北海道で1,800億円、2位以下は宮崎県(583億円)、兵庫県(582億円)、福岡県(560億円)、静岡県(534億円)と続きます。トップ10のうち大都市圏は兵庫県と大阪府(396億円)のみで、残る8つは地方圏です。タイルマップで見ると、北海道・南九州(宮崎・鹿児島)・北信越(山梨・山形・新潟)という地理的に離れた3つの集積エリアが浮かび上がります。
北海道が突出しているのは、農産物・水産物の地域ブランドが多様で、件数を稼げる返礼品ラインアップが豊富なためと考えられます。宮崎県は焼酎と肉、兵庫県は神戸ビーフとカニ、静岡県は緑茶とウナギ、山形県はサクランボと米と、いずれも全国知名度のある食材ブランドを持つ点で共通しています。受入額の上位は「ブランド返礼品の集積地」と読み替えることもできます。
自治体ベースで見る受入と控除のトップ5
市区町村別では、受入額トップが兵庫県宝塚市(256.7億円)、2位が北海道白糠町(211.7億円)、3位が大阪府泉佐野市(181.5億円)。宝塚市の上位は市立病院への254億円の特別寄附を含む特殊事情によるもので、通常の返礼品需要とは性格が異なります。返礼品需要の純粋な集積を見るには、白糠町・泉佐野市・都城市(176.9億円)・別海町(173.5億円)の4自治体を比較するのが適切です。
一方、控除額トップは横浜市(343億円)、名古屋市(198億円)、大阪市(192億円)、川崎市(154億円)、世田谷区(123億円)の順で、政令指定都市と特別区が独占しています。受入トップ5と控除トップ5の街の顔ぶれは1つも重なっていません。受入は地方の中規模自治体、控除は3大都市圏の人口集積地という構造が、自治体ベースで見ると一段とくっきりします。
控除はどこから出ているか|流出側マップ

控除側を地図にすると、東京・神奈川・愛知・大阪と人口集積地が濃く塗りつぶされ、地方は薄い。流入と流出を別の地図で並べて見ると非対称が一目で見えます。
都道府県別の控除額は、東京都が2,161億円で突出、次いで神奈川県(902億円)、大阪府(690億円)、愛知県(626億円)、埼玉県(506億円)、千葉県(483億円)、兵庫県(411億円)と続きます。控除トップ10は人口の多い都市圏が上位を占め、東京都だけで全国控除額の約25%に相当します。タイルマップを見ると、関東南部・東海・近畿の人口集積帯が濃く塗りつぶされ、地方の県は淡い色で示される非対称な分布が現れます。
控除は寄附した人の住む自治体の住民税から差し引かれるため、控除額が多い自治体は「住民が多く・所得水準が相対的に高く・ふるさと納税の利用率が高い」自治体ということになります。東京都の控除額が突出している背景には、人口の多さ(全国の約11%)に加え、給与所得者比率が高く控除限度額のシミュレーションがしやすいこと、ふるさと納税の認知度が他県より高いこと、ポータルサイトの利用環境が整っていることなどが推測されます。
収支差額で見る|流出超過は7都府県のみ
受入額から控除額を引いた「収支差額」で47都道府県を地図化すると、構造はさらにシンプルになります。流出超過(赤字)は東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪・広島の7都府県のみで、残る40道県はすべて受入が控除を上回る黒字構造です。流出超過の中でも東京都の-2,015億円は突出しており、神奈川-682億円、埼玉-382億円、大阪-293億円、愛知-279億円、千葉-260億円、広島-77億円と続きます。
地図上では、関東南部の3県(神奈川・埼玉・千葉)が東京を取り囲むように赤字の濃色で塗られ、東海(愛知)・近畿(大阪)・中国(広島)に1県ずつ赤字県が点在する分布になります。一方、北海道・東北・北陸・四国・九州・沖縄は全県が黒字、地方圏では「制度に乗ることで税収が純増する」自治体構造が広く成立しています。控除総額の25%を東京都1都が負担している事実は、流出地の極端な偏在を示しています。
ただし、控除額の地方財政への影響は減収額の約75%が地方交付税で補填される仕組みになっており、流出額がそのまま自治体予算の削減に直結するわけではありません。とはいえ、東京23区のように地方交付税の不交付団体(自前の税収で財政運営できる団体)では補填が行われないため、純粋な税収減として影響します。世田谷区が控除額トップ5に入っていることは、この点で示唆的です。
16年で81億円→1兆2,728億円|市場急拡大の経路

金額の推移は数値の羅列より縦棒で見ると、2015年と2024年の2つの跳躍点が一目で見えます。直近の上昇は3年連続で1,000億円以上を積み上げる伸びです。
制度開始の2008年度の受入額は81億円でした。それが2024年度は1兆2,728億円。16年間で約157倍に拡大した計算です。グラフで見ると、最初の跳躍は2015年(388億円→1,653億円・約4倍)、次の跳躍は2018年以降の毎年1,000億円以上の上積みです。直近3年は2022年9,654億円→2023年1兆1,175億円→2024年1兆2,728億円と、毎年1,500億円前後の伸びを継続しています。
2015年の跳躍は、控除限度額が概ね2倍に引き上げられたことと、ワンストップ特例(確定申告不要で控除を受けられる仕組み)が導入されたことが背景にあります。確定申告のハードルが消えたことで、給与所得者層が制度に流入し、件数で約10倍の伸びを記録した年でした。2018年以降の安定成長は、ポータルサイト運営事業者の競争激化(プロモーション活発化)とスマートフォン経由の決済普及が後押ししています。
制度節目の整理|2015年・2019年・2025年
節目を時系列に並べると、制度の伸びは制度設計の変更点と密接に連動していることがわかります。2015年の控除上限2倍化+ワンストップ特例導入が利用層の裾野を広げ、2019年のルール法定化が運用の透明性を高め、2023年の1兆円突破でボリューム面での社会的影響が無視できなくなりました。2025年10月のポイント付与禁止規制は、ポータルサイトの集客手法に直接影響するため、2026年度以降の伸びがどう変化するかが注視点です。
何に使われているか|使途10分野の内訳

使途は10分野の内訳をドーナツで一望すると、子ども・子育てがトップで26.9%、行政サービスを補完する性格の強い制度になっていることが見えます。
使途は10分野に分類され、トップは子ども・子育て分野で1,512億円(26.9%)。続いて教育・人づくり803億円(14.3%)、地域・産業振興787億円(14.0%)、まちづくり578億円(10.3%)、環境・衛生558億円(9.9%)。上位5分野で全体の約75%を占め、いずれも行政サービスを補完する性格を持ちます。災害支援は92億円(1.6%)と少なめですが、災害発生年は跳ね上がる年次変動が大きい分野です。
使途分野の選択は寄附者が寄附時に行う仕組みになっており、自治体側が「希望分野」を提示し寄附者が指定するケースと、自治体が一般財源として使う(使途指定なし)ケースがあります。子ども・子育てがトップを占める背景には、寄附者にとって「使途のイメージが具体的でリターンが見えやすい分野」であること、自治体側が返礼品ページで「保育園整備」「子ども医療費」など具体的事業を提示しやすいことなどがあります。
受入額の46.4%が経費|原資の半分は返礼品調達と事務費
受入額のすべてが地方の事業費に回るわけではなく、2024年度の経費は受入額の46.4%(約5,906億円)に上りました。内訳は返礼品調達25.2%・事務費等13.2%・送付費用5.8%・決済手数料1.7%・広報費0.5%です。返礼品調達費は2019年の法定ルールで寄附額の3割以下とされていますが、実態としては地場の生産者・事業者への発注となり、地域経済循環に直接寄与する性格を持ちます。
つまり、受入額1兆2,728億円のうち、自治体が事業費として使えるのは約6,822億円(53.6%)です。一方で、経費部分の約3,200億円(返礼品調達25.2%相当)は地場の生産者収入として地域経済に流れます。「自治体予算」と「地域経済」の二重の効果を持つ点が、ふるさと納税の特徴的な構造です。地方交付税で減収の75%が補填される仕組みとあわせて、制度の財政効果は受入額そのものよりも複雑な計算式で評価する必要があります。
このデータから見えること|観察事実の整理

制度の善悪は問わず、3つの図解から「数値が示している事実」だけを並べます。判断は読者の方が行ってください。
3つの観察事実をあわせて見ると、ふるさと納税は「大都市圏の納税者→地方の中規模自治体」という非対称な資金の流れを制度として固定化している、と整理できます。これが望ましいかどうかは、地方財政論・税制公平論・地域経済論など複数の論点が絡み、本記事の範囲を超えます。本記事は数値から見える構造を提示するに留めます。
ただし、構造を理解するうえで覚えておきたい補正要素として、控除減収額の約75%が地方交付税で補填される仕組みがあります。流出額がそのまま流出自治体の予算減に直結するわけではなく、純粋に税収減として影響するのは、不交付団体(東京23区など)に限られます。一方、受入側の自治体にとっては、受入額の約53.6%が事業費に充当でき、約25.2%が地場の事業者への発注として地域経済に還流します。流出と流入は単純な引き算では評価できない設計になっています。
よくある質問(FAQ)

マップを読むときに混同しがちな3点をQ&Aで整理します。「東京都の-2,015億円は税収が消えた額か」など、よくある誤読をほどいておきます。
Q1:受入額・控除額・収支差額は何が違いますか?
受入額は自治体が寄附として受け取った金額です。控除額は寄附した人の住民税から差し引かれた金額で、寄附した人が住む自治体の税収から減ります。収支差額はその自治体の受入額から控除額を引いた値で、ふるさと納税で純粋にいくら税収が動いたかを示します。北海道は受入1,800億円・控除231億円なので収支差額+1,569億円の黒字、東京都は受入146億円・控除2,161億円なので-2,015億円の赤字です。
Q2:東京都の-2,015億円は税収がそのまま消えた額ですか?
厳密には異なります。住民税控除による減収額は、約75%が国から地方交付税で補填される仕組みになっています。ただし、東京23区のような地方交付税の不交付団体(自前の税収で財政運営できる団体)では補填がないため、純減として影響します。世田谷区が控除額トップ5に入っていることは、不交付団体である23区にとって控除がそのまま税収減になる事実を示しています。一方、神奈川県・愛知県・大阪府などの交付団体では、減収額の大部分が交付税で補填されます。
Q3:2025年10月のポイント付与禁止で市場は縮小しますか?
本記事の執筆時点(2024年度実績)では予測のみ可能です。ポータルサイトのポイント付与は寄附動機の一部を構成していたため、規制施行後にどれだけの利用者が「ポイント目的」だけで利用していたかが市場規模に影響します。一方、返礼品需要・地域応援・税制活用といった他の動機は規制で減衰しないため、市場全体が大きく縮小するシナリオは考えにくい状況です。2026年度の実績数値が公表されれば、規制の市場効果がデータで確認できます。
まとめ|1.27兆円が動く制度の地理

「1.27兆円」は単独の数字より、流入・流出・収支の3つのマップで読むほうが地理が見えます。記事の全体像をまとめます。
◆ 受入額1兆2,728億円・控除額8,710億円・利用者1,080万人(2024年度・5年連続最高)
◆ 受入トップは北海道・宮崎・兵庫、控除トップは東京・神奈川・大阪。流出超過は7都府県のみ
◆ 16年で約157倍に拡大、節目は2015年(控除上限2倍化)・2019年(ルール法定化)・2025年(ポイント禁止)
◆ 使途は子ども・子育てがトップで26.9%、上位5分野で全体の約75%
出典:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)」
ふるさと納税の2024年度実績を3つの軸で整理しました。流入マップでは北海道・南九州・北信越という3つの集積エリア、流出マップでは関東南部・東海・近畿という人口集積帯、収支マップでは7都府県と40道県の黒赤分岐が見えました。1.27兆円という総額の数字より、地理的な非対称性こそが本制度の本質です。
市場規模は16年で157倍に拡大し、5年連続で過去最高を更新中です。2025年10月のポイント付与禁止規制が施行され、2026年度以降の伸び方は変化が予想されます。次の現況調査(令和8年度実施・2025年度実績)が公表されれば、ポイント禁止後の最初の通年データが確認できます。本記事は数値が更新され次第、追記・改訂を行う予定です。使途分野については、子ども・子育てが圧倒的に多く、行政サービス補完性が高い制度として機能していることもデータが示しています。

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