交通事故の死者数、戦後80年の推移を図解で解説【2026年】

交通事故の死者数、戦後80年の推移を図解で解説
楓

「戦後80年でどれだけ減ったのか」という問いには、1948年から最新の2025年まで、77年分の死者数を1枚の折れ線で並べるのが近道です。二度の交通戦争のピークと、2025年の最少更新を結ぶ波形が、戦後の交通安全政策の成果と限界を一度に見せてくれます。

戦後の日本の交通事故死者数は、1970年(昭和45年)の16,765人をピークに、長期的な減少を続けてきました。警察庁の交通統計によれば、2025年(令和7年)の死者数は2,547人で、1948年の統計開始以来、最少を更新しています。ピークと比べると約6.6分の1、削減率にしておよそ85%です。一方、第11次交通安全基本計画が掲げた「2025年までに死者数2,000人以下」という政府目標は達成できず、死者数は過去最少を更新しつつ、政府目標の到達には届かなかったのが、戦後80年の交通事故をめぐる現状です。

本記事では、警察庁の令和7年中の交通事故死者数(令和8年1月6日発表)、内閣府の令和7年交通安全白書、e-Statの都道府県別データなどの一次情報を、戦後77年の推移チャート・状態別構成・47都道府県タイルマップ・高齢者比率の長期推移・計画別の目標と実績といった複数の図解で整理します。長期トレンドと地域差・年齢層別構成の両方を別の角度から重ねることで、「戦後80年で死者数はどれだけ減り、何が残ったのか」を観察していきます。

EVIDENCE / 可視化pediaの結論

戦後80年で交通事故死者数はどれだけ減ったのか?

1970年16,765人のピークから2025年は2,547人。約6.6分の1まで減少した。

Peak — 1970年(戦後最悪) 16,765 第一次交通戦争のピーク死者数 過去最悪 / Worst
Now — 2025年(過去最少) 2,547 統計開始(1948年)以来の最少 統計開始以来最少 / Lowest
1970 第一次 1992 第二次 1996 1万人割れ 2025 最少

Source

警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」(2026.1.6発表)/内閣府・令和7年交通安全白書

楓の整理
この記事の要点

◆ 1970年「第一次交通戦争」のピーク16,765人から、2025年は2,547人へ。戦後77年で約85%の減少です。
◆ 1992年の第二次交通戦争(11,452人)後も減少が続き、1996年に9年ぶりに1万人を下回りました。
◆ 高齢者(65歳以上)の死者比率は1970年16.3%から2025年55.9%へ拡大。死者数は減ったが、構成は高齢化しています。

出典:警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」(2026年1月6日発表)/内閣府「令和7年交通安全白書」第1編第1部第1章。47都道府県の地域差は警察庁交通統計(令和7年確定値)に基づきます。

本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

1970年16,765人から2025年2,547人へ|戦後77年の交通事故死者数推移

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77年の推移は、5年区切りの表ではなく、年ごとの折れ線で見るとピーク・底・現在地の3点が一目で並びます。1970年と1992年の二つの山、1996年の1万人割れ、2025年の最少更新。波形の中に、政策が効いた区間と効かなかった区間が交互に現れます。

戦後77年の交通事故死者数推移と主要政策 単位:人 / 出典:警察庁交通統計 0 5,000 10,000 15,000 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 16,765人 1970(S45) 第一次 11,452人 1992(H4) 第二次 2,547人 2025(R7) 最少 主要政策 1971年 第1次計画開始 1985年 シートベルト全道義務化 2000年 チャイルドシート義務化 2007年 飲酒運転再厳罰化 ▼ ピーク16,765人(1970)→2,547人(2025) 約6.6分の1 ●第11次計画目標「2,000人以下」(2025年期限)は未達
図表:戦後77年(1948-2025)の交通事故死者数推移と主要政策の重ね描画。出典:警察庁交通統計/内閣府交通安全白書。

1948年(昭和23年)の統計開始時点で、日本の交通事故死者数は3,848人でした。その後、自動車の急速な普及(モータリゼーション)に交通安全対策が追いつかず、死者数は年々増加します。1959年には初めて1万人を超えて10,079人となり、1970年(昭和45年)には16,765人と戦後最悪の水準を記録しました。1951年から1970年までのわずか19年間で、死者数は約3.8倍に膨らんでいます。これが「第一次交通戦争」と呼ばれる時期の到達点です。

1970年の交通安全対策基本法制定と、翌1971年から始まった交通安全基本計画の実施を境に、減少局面に入ります。第1次計画(1971-1975)は歩行者対策を優先課題とし、1979年には8,466人にまで減少しました。しかし1980年代後半から再び増加に転じ、1992年(平成4年)には11,452人と「第二次交通戦争」のピークを迎えます。背景には、若年層の運転免許保有者の増加や、自動車乗車中の死亡事故の比重増があります。

1992年以降は、シートベルト着用率の向上、エアバッグの普及、衝突被害軽減ブレーキ等の安全技術の進化を背景に、死者数は再び減少に転じます。1996年(平成8年)には9,943人と9年ぶりに1万人を下回り、2017年(平成29年)には3,694人で当時の統計開始以来最少を記録、2025年(令和7年)は2,547人で再び最少を更新しました。ピーク1970年と比べると約6.6分の1、削減率にして約85%という数字は、日本の交通安全対策が長期的には大きな成果を上げてきたことを示しています。

「第一次」と「第二次」二度の交通戦争|状態別の中身が教えること

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二度の交通戦争は、ピークの数字だけではなく、当時の死者の「状態」を見比べると違いがはっきりします。歩行中・自動車乗車中・二輪車乗車中・自転車乗用中。どの状態が増え、どの状態が減ったのかが、政策と技術が効いた場所を映します。

状態別の交通事故死者数 構成(令和元年) 単位:人 / 全体 3,215人 / 出典:内閣府「令和2年交通安全白書」第1-11図 歩行中 1,176人 36.6% 自動車乗車中 1,083人 33.7% 二輪車乗車中 523人 16.3% 自転車乗用中 433人 13.5% ▼ 歩行中+自動車乗車中で全体の約7割(70.3%)を占める この基本構造は令和6年(2024)も維持されている(出典:令和7年交通安全白書)
図表:状態別の交通事故死者数構成(令和元年確定値)。歩行中+自動車乗車中で全体の約7割。出典:内閣府「令和2年交通安全白書」第1-11図。

第一次交通戦争(1970年ピーク)と第二次交通戦争(1992年ピーク)は、どちらも年間1万人以上の死者が出た時期ですが、死者の状態構成は対照的です。1970年代の死者の中心は歩行者でした。歩道整備が遅れ、信号機や道路標識も不足する中で、急速に増えた自動車に巻き込まれる歩行者の犠牲が多発したのが、第一次の特徴です。第1次交通安全基本計画が「歩行中の死者数を1975年予測値の半減」を目標に掲げ、3,732人まで減らしたのは、この対策が直接効いた成果です。

1980年代後半から1990年代前半の第二次交通戦争では、状況が変わります。歩行者の死者は引き続き多いものの、自動車乗車中の死者が大きく増えました。背景にあるのは、若年運転免許保有者の急増と、高速走行・夜間走行の機会増です。1985年に一般道でのシートベルト着用が義務化され、1992年には運転席・助手席のシートベルト着用が一般道で全面義務化、その後エアバッグやサイドエアバッグの標準装備が進みました。第二次の鎮圧は、歩行者対策中心の第一次とは異なり、車両の安全装備の普及によって達成された面が大きいと言えます。

令和元年の状態別構成を見ると、歩行中36.6%、自動車乗車中33.7%、二輪車乗車中16.3%、自転車乗用中13.5%となり、歩行中と自動車乗車中で全体の約7割を占めています。この基本構造は、令和6年(2024年)でも維持されており、歩行中が最も多く、自動車乗車中が次ぐ順序です。二度の交通戦争を経て、政策と技術が状態別の死者数を押し下げてきましたが、歩行中の死者の比重が再び高まっているのが、現在の構図です。

47都道府県タイルマップで見る2025年の死者数分布

楓

都道府県別の死者数は、人口規模が違うため絶対数の比較ではあまり意味が出ません。人口10万人当たりに揃えると、地域による「事故の起きやすさ」の差が見えてきます。47県を一枚のタイルマップで並べると、上位と下位の輪郭がはっきりします。

47都道府県の交通事故死者数(人口10万人当たり) 令和7年(2025年)確定値・全国平均2.06人/最多 滋賀3.85人/最少 東京0.95人 📖 凡例 / 5階調 タイル色=人口10万人当たり死者数(数値が大きいほど多い) ← 死者数(人口比)が多い 少ない → 3.5 以上 (全国平均の約1.7倍以上) 3.0 〜 3.5 未満 2.5 〜 3.0 未満 2.0 〜 2.5 未満 2.0 未満 (全国平均より少ない) データ出所 公式 =警察庁・公式値 独自 =(独自算出なし) 北海道 2.56人 青森 2.32人 秋田 3.68人 岩手 3.41人 山形 2.27人 宮城 1.69人 福島 3.04人 沖縄 2.73人 石川 2.91人 富山 3.01人 新潟 2.62人 福井 2.84人 岐阜 2.87人 長野 2.21人 山梨 2.40人 愛知 1.50人 静岡 2.04人 群馬 2.54人 栃木 3.66人 埼玉 1.70人 茨城 2.92人 東京 0.95人 神奈川 1.51人 千葉 1.95人 滋賀 3.85人 京都 1.94人 兵庫 1.84人 大阪 1.37人 奈良 1.95人 三重 3.45人 和歌山 3.75人 鳥取 3.20人 島根 2.65人 岡山 2.24人 広島 2.14人 山口 2.42人 香川 2.18人 愛媛 3.61人 徳島 2.77人 高知 3.81人 福岡 1.67人 長崎 2.32人 佐賀 2.54人 大分 3.78人 熊本 2.42人 宮崎 3.29人 鹿児島 2.87人 ワースト5(人口10万人当たり) 1. 滋賀 公式 3.85人 2. 高知 公式 3.81人 3. 大分 公式 3.78人 4. 和歌山 公式 3.75人 5. 秋田 公式 3.68人 ベスト5(人口10万人当たり) 1. 東京 公式 0.95人 2. 大阪 公式 1.37人 3. 愛知 公式 1.50人 4. 神奈川 公式 1.51人 5. 福岡 公式 1.67人 警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」(令和8年1月6日発表)/総務省「人口推計」(令和6年10月1日現在) ※ 算出式:当該年中の死者数 ÷ 前年10月1日現在人口 × 10万。 サイドパネルおよびタイル内に表示している数値は実値(人)。
図表:47都道府県の交通事故死者数(人口10万人当たり)。令和7年確定値。出典:警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」(令和8年1月6日発表)/総務省「人口推計」(令和6年10月1日現在)。

令和7年(2025年)の人口10万人当たり死者数は、全国平均が2.06人です。最も多いのは滋賀県の3.85人で、次いで高知県3.81人、大分県3.78人、和歌山県3.75人、秋田県3.68人と続きます。最も少ないのは東京都の0.95人で、大阪府1.37人、愛知県1.50人、神奈川県1.51人、福岡県1.67人がベスト5です。最多の滋賀県と最少の東京都の差は約4.1倍で、人口比で見た死亡リスクには大きな地域差があることが分かります。

上位県の多くは、可住地面積が広く道路網が郊外型で、自動車での移動距離が長い地域に集中しています。下位県は、東京・大阪・愛知・神奈川・福岡といった大都市圏が並び、鉄道・バス等の公共交通の利用比率が高く、運転距離自体が短いことが影響していると考えられます。「都道府県別の人口10万人当たり死者数」は、治安や運転マナーといった文化的要因より、人口密度・交通モード構成・道路環境といった構造的な条件を強く反映する指標と読むのが妥当です。

地域差の構造は単年では大きく動きません。令和6年(2024年)の人口10万人当たり死者数も全国平均2.14人で、徳島県4.75人が最多、東京都1.04人が最少でした。2024年と2025年でランキングの上位・下位の顔ぶれは入れ替わりがありますが、「大都市圏は低く、地方は高い」という大枠は維持されています。47県を1年ごとに比較するよりも、5年程度の平均で見ると地域構造がより安定して読み取れます。

高齢者比率は16%から56%へ|死者構成の長期変化

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高齢者比率は、ピーク年の数字だけ見ても全体が見えてきません。1970年から2025年までの55年間を線で結ぶと、坂が長く続いていることが分かります。死者数全体は減ったのに、高齢者の比率はその逆に上がり続けてきました。

交通事故死者に占める高齢者(65歳以上)の割合の推移 単位:% / 出典:警察庁・内閣府交通安全白書 0% 20% 40% 60% 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 16.3% 1970年 31.6% 1996年 54.8% 2016年 56.2% 2020年 55.9% 2025年 ▲ 1970年 16.3% → 2025年 55.9% (+39.6ポイント) 死者数全体は約6.6分の1まで減少。一方、構成比では高齢者が3.4倍 人口10万人当たりの高齢者死者数も全国平均の約2倍(令和7年警察庁発表)
図表:交通事故死者に占める高齢者(65歳以上)の割合の推移。1970年16.3%から2025年55.9%へ。出典:警察庁H9白書/内閣府R3白書特集/警察庁R7・R8発表。

第1次交通安全基本計画初年度の1971年(昭和46年)に近い1970年時点では、全交通事故死者数に占める65歳以上(高齢者)の割合は16.3%でした。それが第6次計画初年度の1996年(平成8年)には31.6%、第10次計画初年度の2016年(平成28年)には54.8%、令和2年(2020年)は56.2%、そして令和7年(2025年)は55.9%となり、55年間で約3.4倍に拡大しています。死者数全体は約6.6分の1まで減少した一方、構成比では高齢者帯が3倍以上に膨らむ、対照的な動きです。

背景には、日本社会全体の高齢化の進行があります。高齢者人口が増えれば、高齢者の死者数も比例して増えるのが構造です。それに加え、高齢者は他の年齢層に比べて致死率が約7倍高いという身体的要因もあります。事故に遭ったときに重症化しやすく、回復力も低いため、同じ事故でも死亡に至りやすい年齢層です。令和6年の警察庁データでは、人口10万人当たりの高齢者死者数は全国平均の約2倍で推移しており、人口比でも実数比でも高齢者が交通安全対策の中核課題として残り続けています。

状態別では、高齢者は歩行中の事故での死亡が他の年齢層より多く、特に夜間の道路横断時の事故が目立ちます。令和6年中の警察庁データでは、80歳以上の歩行中死者数(人口10万人当たり)は全年齢平均の約3.9倍に達しています。死者数全体が減るなかで高齢者比率が上がる構造を踏まえると、第12次交通安全基本計画(2026〜2030予定)では、高齢歩行者対策・反射材普及・横断歩道のバリアフリー化など、年齢層ごとの脆弱性に応じた施策の比重が、さらに高まることになりそうです。

政府目標「2,000人以下」は未達|直近4計画の到達点

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計画ごとに目標と実績を並べてみると、達成・未達の連続が一目で読めます。1976年の第2次計画から現在の第11次まで、計画は5年ごとに引き直されてきました。直近4計画の数字を縦棒で並べてみます。

交通安全基本計画 直近4次(第8〜第11次)の目標と実績 単位:人(24時間死者数)/ 出典:内閣府 各次計画・警察庁 交通統計 0 2,000 4,000 6,000 第8次 2006-2010 目標 5,500人以下 実績 4,948人 ● 達成 第9次 2011-2015 目標 3,000人以下 実績 4,117人 ● 未達 第10次 2016-2020 目標 2,500人以下 実績 2,839人 ● 未達 第11次 2021-2025 目標 2,000人以下 実績 2,547人 ● 未達 ▼ 第9次以降は3計画連続で目標未達。第11次(〜2025)も「2,000人以下」に届かず 第12次計画(2026〜2030)の目標は内閣府交通対策本部で策定中(2026年4月時点)
図表:第8〜第11次交通安全基本計画の死者数目標と実績(24時間死者数ベース)。出典:内閣府 各次計画/警察庁 交通統計。

直近4計画のうち、達成できたのは第8次計画(2006-2010年度)の1計画のみです。第8次は「2010年までに5,500人以下」を目標に掲げ、実績は4,948人で達成しました。続く第9次計画(2011-2015)は「2015年までに3,000人以下」を目標としましたが、実績は4,117人で未達です。第10次計画(2016-2020)は「2020年までに2,500人以下」を目標としましたが、実績は2,839人で再び未達となりました。

そして第11次計画(2021-2025)は「2025年までに死者数2,000人以下、30日以内死者数2,400人以下、重傷者数22,000人以下」を目標としました。2025年の実績は24時間死者数2,547人で、政府目標の「2,000人以下」には届きませんでした。第9次以降、3計画連続で死者数の目標が未達となっており、目標値と実績値のギャップが定常化している構図が読み取れます。

赤間二郎国家公安委員長は2026年1月6日のコメントで、第11次計画の目標未達を認めた上で、「新たに策定される第12次交通安全基本計画に基づき、こども、高齢者を始めとする歩行者の安全の確保、自転車の交通ルール遵守のための交通安全教育の充実、飲酒運転や『ながらスマホ』等の悪質・危険な交通違反の取締り等の多角的な取組を、効果的かつ強力に推進していくよう、警察を指導してまいります」と述べました。第12次計画(2026〜2030予定)の目標値は2026年4月時点では策定中で、内閣府の交通対策本部での議論を経て確定します。

事故類型別の死亡事故|正面衝突・歩行者横断中・出会い頭で約7割

楓

「どこでどう起きるか」が分かると、対策の優先順位が見えてきます。死亡事故の類型別構成を縦棒で並べると、上位3類型が大きく、それ以下が小さい階段状になります。3類型に対策資源を集中させると効率が良いことが、構成比から読めます。

主要事故類型別の死亡事故 構成(令和6年) 単位:% / 出典:内閣府「令和7年交通安全白書」第1-7図 0% 10% 20% 30% 正面衝突等 30.5% 歩行者横断中 22.7% 出会い頭衝突 12.6% 人対車両 その他 8.4% 右左折時衝突 6.8% 追突 4.9% その他 14.1% ▼ 上位3類型(正面衝突等・歩行者横断中・出会い頭)で約66%を占める 令和6年は前年と比べて正面衝突等・右左折時衝突で死亡事故件数(人口10万人当たり)が増加
図表:主要事故類型別の死亡事故構成(令和6年)。上位3類型で約66%。出典:内閣府「令和7年交通安全白書」第1-7図。

令和6年(2024年)中の交通死亡事故を事故類型別にみると、最も多いのは正面衝突等(正面衝突・路外逸脱・工作物衝突をまとめた類型)で30.5%、次いで歩行者横断中が22.7%、出会い頭衝突が12.6%でした。この3類型を合わせると約66%、おおむね死亡事故の3分の2を占めています。残りは人対車両のその他8.4%、右左折時衝突6.8%、追突4.9%、その他14.1%という構成です。

正面衝突等は、対向車線へのはみ出し・カーブでの逸脱・電柱や標識への衝突を含み、自動車側の事故として最大の類型です。歩行者横断中は、道路を横断中の歩行者と車両の衝突で、夜間の発生が多く、高齢者の比率も高い類型です。出会い頭衝突は、信号のない交差点や交差点進入時に対向方向から進入する車両同士の衝突で、市街地の生活道路での発生が目立ちます。これら3類型は、原因も発生場所も異なるため、対策も別々に組み立てる必要があります。

過去10年間の人口10万人当たりの推移では、いずれの類型も減少傾向にありますが、令和6年は前年比で正面衝突等と右左折時衝突(人対車両その他を除く)が増加しました。一方、シートベルト着用率は2024年時点で94.9%にとどまり、非着用の致死率は着用の14.0倍と高い水準が続いています。これは、シートベルト着用率の向上余地と、非着用ドライバーへの徹底が、いまも自動車乗車中の死者数削減に直結することを示しています。事故類型と装備・着用の両面から、対策を組み立て直す段階に入っています。

楓のまとめ|減少の成果と高齢化の課題は同時に進む

楓

ここまでの推移と地域差・構成比を一通り並べると、戦後80年の交通事故対策が「成果」と「課題」を同時に抱えていることが、図解の対比で確認できます。3つの観察事実に整理してみます。

「戦後80年で交通事故死者数はどれだけ減ったのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、長期トレンドの大幅減少と、高齢化・地域差・目標未達という別々の動きが同時並行で進んでいることを示してきました。期間の取り方・指標の選び方・年齢層別の構成、それぞれが違う物語を語ります。データそのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。

楓の観察整理
3つの観察事実

観察1. 1970年の戦後最悪16,765人から2025年の2,547人まで、77年で約85%の減少です。第二次交通戦争の1992年(11,452人)後も継続的に減少し、1996年に9年ぶりに1万人を下回りました。シートベルト・エアバッグ・衝突被害軽減ブレーキ等の装備普及と、累次の飲酒運転厳罰化が、長期トレンドを押し下げてきました。

観察2. 第11次計画の目標「2025年までに2,000人以下」は実績2,547人で未達となり、第9次計画以降3計画連続の目標未達となりました。一方、人口10万人当たり死者数の地域差は、最多の滋賀県3.85人と最少の東京都0.95人で約4.1倍の開きがあり、可住地面積・道路網・公共交通比率といった構造的条件を反映しています。

観察3. 高齢者(65歳以上)の死者比率は1970年16.3%から2025年55.9%へと約3.4倍に拡大しました。死者数全体が約6.6分の1まで減少する一方、構成比では高齢者帯がほぼ3倍に膨らむ、対照的な動きです。事故類型別では、正面衝突等・歩行者横断中・出会い頭衝突の3類型で死亡事故の約7割を占め、対策の重点を絞り込める構造があります。

3つの観察事実を重ねて読むと、戦後80年の交通安全対策は、「総数を減らす」段階から、「年齢層別・状態別の脆弱性に応じて精密に減らす」段階へと、対策の質が変わってきている形が浮かびます。死者数の大幅減少と高齢者比率の拡大、目標達成と地域差の固定化が同時に進む現象は、交通安全対策の長期的な成果と、なお残る構造的な課題を、別の角度から映し出しています。「戦後80年で交通事故死者数はどれだけ減ったのか」への答えは、どの指標を、どの期間で、どの年齢層で見ているかで変わる、という観察事実そのものが、いまの交通事故をめぐる景色を最もよく映しています。

よくある質問(FAQ)

楓

交通事故統計を読むときは、24時間死者数と30日以内死者数の違い、年齢層別の構成、計画の到達点の3点をセットで確認してください。同じデータでも、この3点が変わると読み取れる物語が変わります。

Q1. 「24時間以内死者数」と「30日以内死者数」は何が違うのですか?

本記事で示した死者数(2,547人など)は、すべて警察庁の交通統計の「24時間以内死者数」です。これは交通事故発生後24時間以内に死亡した人の数を集計したもので、戦後一貫して用いられている指標です。一方の「30日以内死者数」は、事故発生後30日以内に死亡した人を含む集計で、より広く死亡者を捉える数字になります。令和6年の30日以内死者数は3,221人で、24時間死者数(2,663人)の約1.2倍にあたります。国際比較ではIRTAD(国際道路交通事故データベース)が30日以内死者数を採用しているため、各国比較の文脈では30日以内ベースが用いられます。

Q2. 高齢者比率がここまで増えた理由は何ですか?

大きく3つの要因が重なっています。第一に、日本社会全体の高齢化です。高齢者人口の絶対数が増えれば、事故に遭う高齢者も比例して増えるのが基本構造です。第二に、高齢者は他の年齢層に比べて致死率が約7倍高いという身体的要因があります。同じ事故でも、高齢者は重症化しやすく回復力が低いため、死亡に至りやすい層です。第三に、若年層の運転免許保有者数の減少と、自動車の安全装備(エアバッグ・自動ブレーキ等)の普及が若中年層の死者を急速に押し下げた一方、歩行中の死亡が多い高齢者層には、装備の効果が直接届きにくい構造があります。これら3要因が重なって、構成比では高齢者帯が拡大し続けてきました。

Q3. 第12次交通安全基本計画では何が目標になるのですか?

第12次交通安全基本計画(2026〜2030年度予定)の目標値は、本記事執筆時点(2026年4月)では策定中です。国土交通省の交通政策審議会の資料(2025年10月)では、24時間死者数1,900人以下、30日以内死者数2,300人以下が政府目標案として示されており、内閣府の中央交通安全対策会議での議論を経て確定する見通しです。第11次計画の未達を踏まえ、こども・高齢者の歩行者安全、自転車の交通ルール遵守(2026年4月から自転車に交通反則通告制度の導入)、飲酒運転や「ながらスマホ」等の取締り強化が重点課題として議論されています。確定値は本サイトの最新記事で随時更新します。

🔍 この記事のファクトチェックについて

楓

当サイトはファクトチェックを実施しています。このページのファクトチェックのエビデンスを以下に掲載します。

この記事のファクトチェックについて
確認日:2026年5月

記事内の主要な数値・事実について、公式サイトおよび一次情報源を用いて確認しています。確認できた項目には「確認済み」、最新情報を確認すべき項目には「要確認」を表示しています。

✅ 確認済み

2025年(令和7年)交通事故死者数 2,547人・前年比-116人(-4.4%)・統計開始(昭和23年)以降の最少更新

警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」(令和8年1月6日発表)→
✅ 確認済み

1970年(昭和45年)の交通事故死者数16,765人(戦後最悪・第一次交通戦争のピーク)/1992年11,452人(第二次交通戦争のピーク)

e-Stat「交通事故発生状況の推移」(警察庁交通統計) →
✅ 確認済み

2025年高齢者(65歳以上)死者数1,423人・全死者に占める割合55.9%/高齢者の人口10万人当たり死者数3.93人

警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」 →
✅ 確認済み

2025年都道府県別 人口10万人当たり死者数 全国平均2.06人・最多 滋賀3.85人・最少 東京0.95人

e-Stat「3都道府県別交通事故死者数」(警察庁) →
✅ 確認済み

第11次交通安全基本計画(2021-2025年度)の死者数目標「2,000人以下」未達/国家公安委員長コメント

内閣府「第11次交通安全基本計画」 →
✅ 確認済み

事故類型別 令和6年の構成(正面衝突等30.5%・歩行者横断中22.7%・出会い頭衝突12.6%)/状態別 令和元年(歩行中36.6%・自動車乗車中33.7%)

内閣府「令和7年交通安全白書」第1編第1部第1章 →
⚠ 要確認

第12次交通安全基本計画(2026〜2030年度予定)の目標数値は本記事執筆時点(2026年4月)で策定中です。確定後に本記事を更新します。

変更の可能性あり。内閣府 第12次計画 専門委員会議 →
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