
「書店はどこまで減ったのか」という問いは、長期推移チャートと47都道府県の空間分布を並べて見るのが近道です。30年スパンの折れ線と無書店自治体のタイルマップを1枚に重ねると、ふだん見えにくい縮小の輪郭が浮かびます。
2025年度の書店数は 9,993店と、JPO書店マスタ管理センターが集計を続ける1994年度以降ではじめて1万店を割りました。1998年度のピーク24,237店からは -58.8% で、30年弱で約6割の書店が姿を消した計算です。一方、出版文化産業振興財団(JPIC)の2024年11月時点の調査では、書店が一軒もない自治体は全国で 493(全自治体の28.2%)にまで広がっています。1万店を切る店舗数と、3割近くに迫る無書店自治体率は、いずれも長期推移の節目にあたる数値です。
本記事では、JPO書店マスタ管理センターの年度別書店数、出版文化産業振興財団 JPIC の無書店自治体調査、経済産業省ほか7省庁が2025年6月に公表した「書店活性化プラン」、出版科学研究所の雑誌販売額などの一次情報を、長期推移の折れ線・新規開店と閉店の対比棒・47都道府県タイルマップ・書店ゼロの市24市マップといった複数の図解で整理します。30年スパンの店舗数推移と、現在地点の空間分布を別の角度から重ねることで、書店という業態の縮小がどこから、どのように進んでいるのかを観察していきます。
日本の書店はどこまで減ったのか?
1998年度のピークから30年で初の1万店割れ。空白自治体も全体の28%に。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
書店数の長期推移|1998年度ピーク〜2025年度の30年余

最初の図は、JPO書店マスタ管理センターの集計で1994年度から2025年度までの32年分を1枚に並べた折れ線です。ピークと節目が一望できます。
JPO書店マスタ管理センターが集計を続けている全国の書店数は、1994年度の21,154店から増加して、1998年度に24,237店のピークに達しました。その後は1999年度の23,764店、2000年度の23,653店と緩やかに減り始め、2003年度には20,880店と、2万店の節目を下回ります。ピーク翌年からはほぼ一方向に減少が続き、増加局面に転じた年は集計期間中ほとんど現れていません。
2003年度から2007年度にかけては年間1,000〜1,900店規模の閉店が続く第一次の急減局面で、5年間で20,880店から17,327店へと約3,500店分が消えました。2010年代に入ると減少ペースはやや緩み、年間500〜800店台の閉店が中心になります。それでも2014年度には14,658店、2017年度には13,576店、2020年度には12,343店と、5年ごとに1〜2千店規模で減り続け、ピーク2014年比でちょうど半減の14,098店を下回ったのが2017年度です。
2020年代に入ってからも、ペースを落としつつ減少傾向は続きます。2021年度は11,952店、2022年度は11,495店、2023年度は10,918店、2024年度は10,417店と推移し、2025年度は 9,993店。JPO書店マスタの集計開始以降で初めて1万店を割り込みました。1998年度のピーク24,237店からは -14,244店(-58.8%)、2014年度の14,658店からは -4,665店(-31.8%)で、長期スパンと中期スパンのいずれで見ても、書店という業態の店舗数は大幅な縮小局面にあります。集計対象は海外店・スタンド・売店・複合店を含む書店区分11の総数で、ネット書店や古書店は含みません。
新規開店と閉店の動き|2005年度の閉店1,880店という節目

総数の推移を「新規開店」と「閉店」に分けて並べると、減少の中身が見えてきます。閉店ピークの大きさと、新規開店ペースの鈍化が同時に確認できます。
JPO書店マスタ管理センターの新規開店と閉店の年次データを、2003年度から2025年度まで並べると、書店数の急減が「閉店の急増」と「新規開店の鈍化」の二重構造で進んでいる様子が確認できます。閉店は2003年度に1,169店、2004年度に1,634店と急増し、2005年度に 1,880店と集計期間中の最大を記録しました。2003〜2007年度の5年間は毎年1,000店超の閉店が続き、20年強で書店数が半減する起点となった時期です。
2010年代以降は閉店ペースが落ち着き、年間500〜800店台の水準で推移します。2013〜2014年度に1,000店超の小さな山がもう一度現れますが、2015年度以降は年700店前後の閉店が続く形です。直近では2022年度534店、2023年度656店、2024年度537店、2025年度499店と、2010年代半ばと比べてわずかに減速しています。それでも書店総数が縮小し続けているのは、新規開店がそれを上回る規模で減ってきたためです。
新規開店は2003年度の440店からゆるやかに推移し、2005〜2007年度には450〜480店台で安定していました。しかし2010年代前半に200〜300店台へと一段下がり、2018年度以降は165・158・125・107と二桁前後まで縮みます。2024年度は57店、2025年度は102店で、ピーク時の4分の1以下の水準です。閉店は完全には止まらない一方、新規開店は構造的に減速していることが、書店総数のシュリンクを長期化させている主因として読み取れます。集計はあくまでJPO書店マスタの開店・閉店ベースで、無人書店や独立系書店の出店は集計の取り方によって扱いが異なります。
都道府県別に見る|無書店自治体率の空間分布

店舗数の長期推移を空間で見直すと、無書店自治体の広がりに地域差があることがわかります。タイルマップで47都道府県を一覧化しています。
2024年8月時点で出版文化産業振興財団 JPIC が集計した47都道府県別の無書店自治体率を、5階調のタイルマップで並べると、空間分布の偏りがはっきりと出ます。全国平均は27.9%ですが、過半数の自治体に書店がない県と、全自治体に書店がある県が、同じ地図上に同居しています。
無書店率が最も高いのは 沖縄県の56.1%(23自治体)で、長野県54.5%(42自治体)、奈良県51.3%(20自治体)、福島県47.5%(28自治体)、熊本県46.7%(21自治体)と続きます。いずれも県内自治体の半数前後に書店がない状態で、自治体数の規模で見ても長野(42)・福島(28)・沖縄(23)・熊本(21)・奈良(20)が大きく、地方部に空白の塊が形成されています。北海道は無書店率41.6%(77自治体)で、絶対数では全国最多です。
一方で、広島県と香川県は無書店率0%を維持しており、全市町村に少なくとも1店の書店が残っています。次いで愛知県3.7%、兵庫県4.9%、石川県5.3%、埼玉県9.5%、滋賀県10.5%が低位グループで、人口集積のある府県と、人口規模に対する自治体数が少ない府県の双方が含まれます。1書店以下の自治体率を合わせて見ると、全国平均は47.7%(同じく2024年8月時点)で、書店が「ないか、1軒しかない」状態は地方部だけでなく、首都圏や近畿圏の周縁部にも広く分布しています。本記事冒頭でふれた2024年11月時点の全国値(493自治体・28.2%)も、同じJPIC調査の延長線上にある数値です。
書店経営を支えてきた雑誌販売額の縮小

書店数の長期推移の背景にあるのが、雑誌販売額の構造的な縮小です。書店の収益モデルそのものが変わっている過程を、ピークと現在の2点で見ます。
経済産業省ほか7省庁が2025年6月に公表した「書店活性化プラン」では、書店経営の背景として、公益社団法人全国出版協会出版科学研究所がまとめる雑誌販売額の推移を引用しています。それによれば、雑誌の販売額は1996年の 1兆5,633億円をピークに減少を続け、2024年には4,119億円にまで落ち込みました。28年で約4分の1、率にして -73.7% の縮小です。書店活性化プラン本文は「特に書店経営を支えてきた雑誌の販売額」と明示しており、書店収益の主要柱の一つが構造的に細っていることが示されています。
雑誌販売の縮小は、書店の在庫管理・配送・棚づくりにも影響しています。経済産業省が2024年10月に公表した「関係者から指摘された書店活性化のための課題」では、「我が国の本の流通のビジネスモデルは雑誌の販売に依存してきており、雑誌の売り上げが減少することにより、取次や大手書店を含む流通業全般においても本の販売だけでは赤字に陥っており、ビジネスモデルの見直しが必要になるなど、非常に厳しい状況」と整理されています。書店活性化プランの数値と合わせて読むと、店舗数の縮小は単独の現象ではなく、雑誌販売の長期低下というより大きな流れの中で起きていることが確認できます。
同じ書店活性化プラン本文では、書籍の返品率はおよそ33%、雑誌の返品率はおよそ44%と紹介されています(出版科学研究所の調査による)。返品コストはサプライチェーン全体で吸収されており、書籍の利益率が抑えられる構造的要因の一つになっています。読書側の数値としては、文化庁「令和5年国語に関する世論調査」が「1か月に1冊も本を読まない」と答えた人の割合を 約6割(62.6%)と報告し、公益社団法人全国学校図書館協議会「第69回学校読書調査」は高校生で 48% を不読率として記録しています。書店業態の変化はさまざまな要因が絡み合っており、雑誌販売額・返品率・読書時間の3つは、書店活性化プランで取り上げられた主要な背景データです。
無書店自治体数の時系列|2017→2022→2024

無書店自治体の数を、節目の調査時点で並べてみます。調査主体が違うため厳密な連続値ではありませんが、上昇方向の動きは一致しています。
無書店自治体の数を時系列で並べると、2017年7月時点(トーハン調査・朝日新聞報道)の約440から、2022年9月(JPIC初調査)の456、2024年3月の482、2024年11月の493へと、5期続けて増加しています。比率で見ると、2017年は約25%、2022年9月は26.2%、2024年3月は27.7%、2024年11月は28.2%です。3割の節目に近づきつつある、というのが現在地点の数値です。
調査主体は2017年がトーハン、2022年以降がJPICで、集計対象の定義が完全に同一ではない点には注意が必要です。JPICは「取次会社と販売契約を結んでいる実店舗」を基準としており、ネット書店・大学生協・古書店は含みません。JPO書店マスタ(書店区分11)はより網羅的で、複合店・スタンド・売店なども含むため、同じ「全国の書店数」でも数値が異なります。書店活性化プランは無書店自治体率はJPIC基準、書店総数推移はJPO書店マスタ基準、というかたちで両者を併記しています。
JPICが2024年11月時点で公表した493自治体は、全国1,747自治体(市区町村1,724+特別区23)のうちの28.2%にあたります。書店活性化プラン本文では、これに合わせて1書店以下の自治体率も明示されており、2024年3月時点で47.4%、2024年8月末時点で47.7% です。2024年8月時点のJPIC調査では、書店が一軒もない「市」が15道県の24市にのぼることも公表されました。次の図ではこの24市の都道府県別の内訳を整理します。
書店ゼロの市 24市|2024年8月末・JPIC

無書店自治体の中でも「市」レベルで書店が一軒もない状態は、JPICが2024年9月に名前付きで公表した24市です。都道府県別の内訳を並べると、特定の地域への集中が見えてきます。
JPICが2024年9月18日の「BOOK MEETS NEXT2024」記者発表会で公表した2024年8月末時点の調査によると、書店が一軒もない「市」は 15道県の24市にのぼります。最多は北海道(芦別市、赤平市、歌志内市)、茨城県(かすみがうら市、つくばみらい市、小美玉市)、千葉県(袖ケ浦市、白井市、匝瑳市)で、それぞれ3市ずつ。次いで奈良県(葛城市、宇陀市)、福岡県(中間市、那珂川市)、鹿児島県(垂水市、伊佐市)が2市ずつ、残りの9道県は1市ずつとなります。
市レベルでの書店ゼロは、地方の小規模都市だけでなく、首都圏近郊の都市にも広がっています。たとえば千葉県の袖ケ浦市・白井市・匝瑳市、埼玉県の白岡市は、いずれも東京通勤圏に含まれる自治体です。一方で、書店ゼロが集中している北海道の3市(芦別・赤平・歌志内)は空知地方の隣接エリアにあり、地理的にも近い位置で書店空白が連なる形になっています。書店ゼロは「地方の問題」と一括りにはできず、都市規模や人口密度よりも、商業集積や流通網の細りといった個別事情が影響しているとされます。
町村レベルを含めると、無書店自治体は全国493(2024年11月時点・28.2%)に達します。地方部の町村では1〜2割の単位ではなく、半数を超える自治体に書店がない県もあり、沖縄県56.1%・長野県54.5%・奈良県51.3%という冒頭の数値はその実態を表しています。書店活性化プランでは、こうした無書店自治体について「書店をいかに新設・継続し、地域の教育力への貢献を果たしていくか」を「次に取り組むべき課題」として位置付けており、市町村の首長の参画が欠かせないことが明記されています。書店業態の変化はさまざまな要因が絡み合っており、政策の是非ではなく、現状の数値だけを観察事実として整理しています。
楓のまとめ|30年スパンの縮小と、空間分布の偏り

ここまでの推移と地域差を一通り並べると、書店数の長期縮小と無書店自治体の空間的な偏りが、別の角度から確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「書店はどこまで減ったのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、長期スパンの店舗数推移と現在地点の空間分布、そしてその背景にある雑誌販売額の縮小という3つのデータが同じ方向を指しています。データそのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、いまの「書店減少」は、店舗総数の長期的な縮小と、無書店自治体の空間的な広がり、そして雑誌販売を中心とした収益構造の変化が、同時並行で進んでいることが確認できます。1998年度のピークから30年弱で店舗数は約4割の水準にまで縮み、全自治体の3割近くで書店がゼロという状態に至っているのが、2025年度時点の地点です。経済産業省ほか7省庁は2025年6月に「書店活性化プラン」を公表し、29項目の課題に対する政府施策を整理しましたが、本記事は政策の是非には踏み込まず、書店という業態をめぐる数値そのものの整理にとどめます。「書店はどこまで減ったのか」への答えは、どの指標を、どの期間で、どの集計基準から見ているかで変わる、という観察事実そのものが、いまの書店業態をめぐる景色を最もよく映しています。
よくある質問(FAQ)

書店数のグラフを読むときは、集計基準・時点・地域の3点をセットで確認してください。同じ「書店数」でも、この3点が変わるだけで読み取れる物語が変わります。
Q1. 同じ「全国の書店数」なのに、出典によって数値が違うのはなぜですか?
集計対象が異なるためです。本記事でメインに使ったJPO書店マスタ管理センターは、書店区分11(海外店・スタンド・売店・複合店等を含む)の総数で、2025年度は9,993店です。一方、出版文化産業振興財団 JPIC は「取次会社と販売契約を結んでいる実店舗」を集計しており、ネット書店・大学生協・古書店は含みません。書店活性化プラン本文では、JPO書店マスタ基準で2014年→2024年の店舗数推移、JPIC基準で無書店自治体率を併用しています。書店数の数値は、どの集計対象を選ぶかで変わるため、出典と基準を確認したうえで比較するのが安全です。
Q2. 無書店率が高い県は「読書環境が悪い」といえますか?
単純に読書環境の優劣を表す指標とは限りません。無書店率は「市町村のうち書店が一軒もない自治体の割合」で、自治体数が多く面積が広い県(北海道・長野・福島など)は、人口集中地に書店が残っていても周辺町村の比率が高くなる傾向があります。一方で、書店ゼロ自治体が多い地域でも、図書館や移動図書館、ネット書店経由の流通など、別の読書アクセスが整っている場合もあります。書店活性化プラン本文では「無書店自治体は図書館がないことも多く、地域住民、特にネット情報や電子書籍の利用が少ない高齢者や幼児等にとって、読書活動を取り巻く環境は厳しい」と整理されており、無書店率は読書環境を構成する複数指標の1つとして読むほうが、データの取り扱いとして近くなります。
Q3. 2025年度に1万店を割ったということは、ここからさらに減りますか?
将来の予測は本記事の対象外ですが、観察できる動きとしては「新規開店ペースが回復の兆しを見せている」点があります。新規開店は2024年度の57店から2025年度は102店へと、+45店の増加です。一方、閉店は2024年度537店、2025年度499店で、依然として新規開店を大きく上回っています。書店活性化プランで紹介されたトーハン「HONYAL」や楽天ブックスネットワーク「Foyer」のような少額仕入対応の新業態、コンビニ併設型書店(ローソン「マチの本屋さん」等)、独立系書店の動きが、新規開店ペースのその後にどう影響するかは継続的な観察が必要です。書店業態の変化はさまざまな要因が絡み合っており、本記事は2025年度時点までの確定値の整理にとどめます。
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