
日本人の睡眠時間が短いという話題は耳にしますが、世界と比べてどれくらい短いのか、国内で年代差や地域差はあるのか。今回はOECD Time Use Databaseの最新更新版と総務省「社会生活基本調査」令和3年の数値を組み合わせて、6つの角度から「睡眠時間の今」を整理します。
日本人の平均睡眠時間は世界の中でも特に短いとされてきましたが、最新のOECD Time Use Databaseでは、日本人の平均睡眠時間は7時間42分(462分)で、OECD加盟33か国中で最も短い結果となっています。最長の中国(9時間02分)とは1時間20分の差があり、33か国平均(約8時間30分)からも約50分短い水準です。国際比較では世界最下層という位置は変わらない一方、国内では1976年から続いた長期減少が2021年に+14分の反転を見せています。
本記事では、OECD Time Use Databaseの最新更新版と総務省「社会生活基本調査」令和3年(2021)を中心に、国別ランキング・男女別比較・仕事時間×睡眠時間の散布図・47都道府県タイルマップ・45年推移・年代別の6つの図解で、日本人の睡眠時間の今を整理します。国際比較・地域差・時系列・年代差を組み合わせて見ることで、「日本の睡眠時間が短い」という話題がどの角度から見ても確かに観察できる現象であり、どの構造から生まれているのかを観察していきます。
日本人の睡眠時間は、世界と比べてどれくらい短いのか。
最新OECDで日本は7時間42分・33か国中で最も短い。最長の中国とは1時間20分の差。
差80分(約1時間20分・1日あたり)
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OECD加盟国+参考国の平均睡眠時間ランキング|日本は最下位、その差は1時間以上

33か国の睡眠時間を横棒ランキングで並べると、日本がどこに位置するかが一目で確認できます。OECD加盟31か国に中国・インド・南アフリカの参考3か国を加えた33か国の最新値を、1日あたりの分数で並べてみます。
OECD Time Use Databaseの最新更新版(2024-2026)によると、33か国の平均睡眠時間は1日あたり約510分(8時間30分)でした。最も長いのは南アフリカの9時間13分(553分)、次いで中国の9時間02分(542分)、アメリカの8時間59分(539分)と続きます。中国・インド・南アフリカの3か国はOECD加盟国ではないものの、Time Use Database上で参考データとして整理されており、ランキングではこの3か国が上位を占めています。アメリカやエストニア(8時間50分)、ニュージーランド(8時間46分)といったOECD加盟国も8時間半超の長時間層に入ります。
日本は1日あたり7時間42分(462分)で、33か国中で最も短い結果でした。最も近い韓国(7時間51分)と比べても9分短く、33か国平均(約8時間30分)からは約50分、最長の南アフリカからは1時間31分、参考最長の中国からは1時間20分短い水準です。OECD加盟国だけに絞った場合でも日本は加盟31か国中で最下位で、ランキング下位には韓国・スウェーデン・デンマーク・アイルランド・ノルウェーと続きます。Time Use Surveyの実施年は各国で異なるため厳密な同年比較ではない点には注意が必要ですが、日本が国際的に最も短いという順位はOECD2021年版以来一貫しています。
男女別の国別比較|世界共通の女性優位と、東アジアの例外パターン

男女別の睡眠時間を国ごとに並列で見比べると、世界共通の傾向と地域的な例外パターンが浮かびます。主要9カ国の男性・女性の睡眠時間を、並列横棒で1つの図に重ねてみます。
OECD加盟国全体を見ると、女性の睡眠時間は男性より平均で約11分長いという傾向があります。南アフリカでは女性が男性より12分長く(559分対547分)、アメリカでは12分(537分対525分)、ニュージーランドでは9分(528分対519分)、フランスでは13分(519分対506分)、イギリスでは9分(511分対502分)と、欧米諸国では概ね女性が男性より長く眠るという共通パターンが繰り返し現れます。家事・育児負担の偏りが大きい国でも、睡眠時間そのものは女性のほうが長い傾向にあるという興味深い現象です。
東アジアでは、このパターンがやや異なります。中国は男女がほぼ同水準(男性544分・女性540分)で、韓国も男女差はほぼゼロ(男性470分・女性472分)です。日本は男性が7時間31分(451分)・女性が7時間42分(462分)で男女差が11分あるものの、男女どちらも世界的に最も短い水準にあり、男女差そのものは欧米諸国の平均とほぼ同じです。男女差の大きさよりも、男女ともに世界最短水準という点が、日本の睡眠時間を他国と分ける特徴となっています。
仕事時間×睡眠時間で見る日本の構造的位置|働きすぎが眠りを圧迫する関係

「日本人の睡眠時間が短いのは働きすぎるからだ」という見方は広く語られています。OECD18か国の仕事時間(学業含む)と睡眠時間を散布図に重ねて、両者の関係性を実際に確認してみます。
散布図を見ると、仕事時間が長い国ほど睡眠時間が短いという負の相関がはっきり現れます。仕事時間が3時間台前半のフランス・イタリア・オランダ・ノルウェー・デンマーク・スペインでは睡眠時間が8時間以上です。一方、仕事時間が5時間以上の国は、メキシコ・中国・韓国・日本の4か国に限られ、この4か国はいずれも睡眠時間が東アジア参考最長の中国を除き8時間20分以下の短い層に位置します。仕事時間が長くなるほど、家事や移動の時間を含めた1日24時間の配分で睡眠に充てられる時間が圧迫されるという、ごく自然な構造が国際比較でも確認できます。
日本は1日あたりの仕事時間が5時間31分(331分)と18か国中で2番目に長く(最長はメキシコの6時間16分)、同時に睡眠時間も7時間42分と18か国中で最も短い位置にあります。仕事時間が上位かつ睡眠時間が下位という日本の構造的位置は、散布図の右下隅に明確に表れます。メキシコは仕事時間が日本より45分長いものの、睡眠時間は8時間19分と日本より37分長く、「仕事時間と睡眠時間のどちらも極端」という組み合わせは日本に特有の現象です。韓国(仕事5時間13分・睡眠7時間51分)と中国(仕事5時間15分・睡眠9時間02分)は、日本に近い仕事時間でありながら睡眠時間は日本より長く、東アジア3か国の中でも日本の極端さが浮かびます。
47都道府県別タイルマップ|東北6県が上位、首都圏・関西大都市圏が下位

国際比較で世界最下層の日本ですが、国内に目を向けると47都道府県の間にも明確な地域差があります。47都道府県の睡眠時間をタイルマップに重ねると、東北地方と首都圏の対照がひと目で確認できます。
47都道府県の中で平均睡眠時間が最も長いのは秋田県の8時間01分(481分)で、青森県の7時間58分(478.5分)、山形県・高知県の7時間54分(474分)、岩手県の7時間51分(471.5分)、福島県の7時間50分(470.5分)と続きます。上位8県のうち6県を東北地方が占め、東北地方の睡眠時間が長いという傾向が浮かびます。一方、最も短いのは神奈川県の7時間28分(448.5分)で、埼玉県の7時間30分(450分)、千葉県の7時間30分(450.5分)、奈良県・兵庫県の7時間31分(451.5分)、東京都の7時間34分(454分)、大阪府の7時間35分(455分)と、下位を首都圏と関西大都市圏が占めています。
秋田県と神奈川県の差は32.5分。47都道府県という同じ国内であっても、最長と最短の間に30分以上の幅があります。社会生活基本調査の相関データでは、都道府県別の睡眠時間と通勤時間の間に強い負の相関(-0.77)が報告されており、通勤時間が長い大都市圏で睡眠時間が短くなる「都市vs地方」の対立構造が、国内の地域差を形作っています。通勤時間が長い神奈川県・千葉県・埼玉県・東京都・大阪府などの大都市圏では、起床時刻と就寝時刻の両端から睡眠時間が削られる構造になっており、国際比較で見た「仕事時間と睡眠時間の負の相関」が、国内の都道府県差にも同じ形で現れていることがわかります。
1976〜2021年の45年推移|長期減少から+14分の反転へ

「日本人の睡眠時間が短い」という現象は、いつから始まったのでしょうか。社会生活基本調査5年周期の10時点を折れ線で並べると、45年間の長期トレンドと直近の反転が一目で見えます。
社会生活基本調査の時系列データによれば、15歳以上の平均睡眠時間は1976年に8時間05分(485分)でした。これが第1回調査の数値で、その後5年ごとの調査で段階的に減り続け、1981年7時間57分、1986年7時間47分、1991年7時間42分と下降線をたどります。1996年から2001年は7時間42〜44分とほぼ横ばいですが、2006年・2011年は7時間39分(459分)、2016年は7時間37分(457分)と44年の中で過去最低を記録しました。1976年から2016年までの40年間で平均睡眠時間は28分短くなったことになります。
ところが、2021年の調査では7時間51分(471分)と、2016年と比べて+14分の反転を見せました。これは1976年の最大値(485分)からの長期減少傾向で初めての明確な反転です。社会生活基本調査の概要は、この反転について新型コロナウイルス感染症の流行下でのテレワーク拡大により通勤時間が減少し、その分が睡眠に充てられたためと分析しています。男性は2016年7時間42分→2021年7時間56分と+14分、女性は7時間32分→7時間47分と+15分の反転で、男女ともにほぼ同じ反転幅です。ただし2021年471分という水準は、1976年の485分と比べると依然14分短く、国際比較ではOECD33か国中で最下位という位置は変わっていません。次回の社会生活基本調査は2026年に予定されており、2021年の反転がコロナ禍の一時的な影響だったのか、それとも長期トレンドの転換点となるのかは今後の調査結果を待つことになります。
年代別に見る睡眠時間|40代が最短のU字型構造

全体平均では世界最下層の日本ですが、年代別に見ると階段状ではなく谷を描く「U字型」の分布が現れます。10歳階級ごとの睡眠時間を並べると、働き盛り世代のくぼみがはっきりわかります。
社会生活基本調査令和3年の年代別データを見ると、最も長いのは10〜14歳の学齢期で8時間58分(538分)、最も短いのは40代の7時間24分(444分)でした。10〜14歳から年齢階級が上がるにつれて段階的に短くなり、20代で7時間45分、30代で7時間38分、そして40代で7時間24分と底を打ちます。50代から再び長くなり始め、60代で8時間01分、70代で8時間40分、80歳以上で9時間10分と、年齢が上がるにつれて再び長くなる構造です。学齢期と高齢期の両端が長く、働き盛りの40代でくぼむU字型の分布は、日本人の生活時間の典型的なパターンです。
U字型の谷を形作る40代は、職場での責任が大きく、子育てや住宅ローンなど家庭面の負担も重なりやすい年代です。仕事時間の長さに加えて、家事・育児・通勤の合計時間が他の年代より圧迫されることが、睡眠時間の短さに反映されていると考えられます。厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では成人に7時間以上の睡眠を推奨する目安が示されていますが、40代の7時間24分はその目安をかろうじて満たす程度の水準です。30代・40代・50代の「働き盛りの三世代」がいずれも7時間台前半に集中しており、社会全体の平均睡眠時間を押し下げる要因の一つとなっています。
楓のまとめ|国際比較で最下位、国内で反転、地域差は通勤時間と連動

ここまでの6つの図解を一通り並べると、国際比較・男女差・仕事時間との関係・地域差・時系列・年代差のそれぞれで日本の睡眠時間がどのように位置づけられるかが浮かびます。3つの観察事実に整理してみます。
「日本人の睡眠時間は短い」という現象は、国際比較・国内地域差・時系列・年代差のいずれの角度から見ても確かに観察できる現象でした。最新のOECD Time Use Databaseでも33か国中で最下位、47都道府県の中でも通勤時間が長い大都市圏ほど短く、1976年からの45年間で大きく減少した後、2021年に+14分の反転を見せています。データそのものに優劣をつけるのではなく、観察された事実そのものをそのまま整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「日本人の睡眠時間が短い」という現象は、国際比較で見える「仕事時間が長い国ほど睡眠時間が短い」という構造的関係と、国内で見える「通勤時間が長い大都市圏ほど睡眠時間が短い」という同じ構造の繰り返しに見えてきます。2021年の+14分の反転は、テレワーク拡大による通勤時間減という仕組みが、長期トレンドを動かしうることを示した珍しい例として、次回の社会生活基本調査(2026年予定)の結果を見るうえでの観察ポイントになります。国際比較の最下位を脱するには、仕事時間か通勤時間か、あるいは家事・育児の分担構造そのものか、睡眠の周辺にある時間配分のどれかを動かす必要がある、という関係が浮かんでくる結果でした。
よくある質問(FAQ)

睡眠時間のグラフを読むときは、データの出典年・対象年齢・週全体/平日の別の3点をセットで確認してください。同じ「日本人の睡眠時間」でも、調査によって7時間台前半から7時間台後半まで2〜3割の幅で違って見えることがあります。
Q1. なぜ日本人の睡眠時間は世界で最も短いのですか?
OECD Time Use Databaseで分析されている範囲では、仕事時間が長い国ほど睡眠時間が短いという負の相関が見られ、日本は仕事時間が33か国中でメキシコに次いで2番目に長く、同時に睡眠時間が最も短いという位置にあります。社会生活基本調査の相関データでは、国内の都道府県間でも通勤時間と睡眠時間の間に強い負の相関(-0.77)が報告されており、通勤時間が長い大都市圏で睡眠時間が短くなる構造が確認できます。日本の長時間労働や長い通勤時間が、起床時刻と就寝時刻の両端から睡眠を削る仕組みを生んでいるという見方は、国際比較・国内地域差の両方の図解で同じ形が現れることから、ある程度まで観察事実として整理できそうです。
Q2. 「OECD加盟国は30か国」「33か国」など表記の違いはなぜ起きますか?
OECD Time Use Databaseが「30か国分のデータが利用可能」と説明しているのは、OECD加盟38か国のうちTime Use Surveyを実施し比較可能な集計が公開されている国の数を指します。本記事で参照したランキングは、このOECD加盟国30〜31か国に、Time Use Database上で参考データとして整理されている中国・インド・南アフリカの3か国を加えた33か国を比較対象としており、「30か国」「31か国」「33か国」の違いはどの定義を採用しているかの違いです。各国の調査実施年も2008年〜2024年と幅があり、同年比較ではなく「各国の最新値」の比較である点には注意が必要ですが、OECDは公開時点での最新更新版を継続的に公表しています。
Q3. 47都道府県の地域差は、通勤時間だけで説明できますか?
通勤時間との負の相関(-0.77)は強い相関ですが、唯一の要因ではありません。社会生活基本調査の相関データでは、都道府県別の睡眠時間と最低賃金の間に負の相関(-0.70)、農業就業人口の間に正の相関(+0.85)、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の閲覧時間の間に正の相関(+0.78)といった複数の相関が報告されており、「人口密度が高く所得が高く情報接触量が多い大都市圏で短く、農業就業人口が多く所得水準が低い地方で長い」という都市vs地方の対立構造が複合的に表れています。通勤時間はその中でも最も強い説明要因の一つではありますが、生活全体の時間配分構造の中に位置づけて読むのが、地域差を観察するうえでは近い見方になります。
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