
2025年の訪日外国人旅行消費額は9.45兆円と過去最高を更新しました。「どの国がどれだけ使い、何に使ったのか」を、消費額ランキング・1人あたり支出・費目別構成比の3つの図解で並べると、消費の集中構造と単価の偏りが見えてきます。
観光庁が2026年3月31日に公表した「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)」によれば、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円で、前年比+16.4%、暦年として過去最高を更新しました。国別では中国2兆58億円(構成比21.2%)が唯一の2兆円台で突出し、上位5カ国(中国・台湾・米国・韓国・香港)で全体の62.2%を占めます。一方、1人あたり旅行支出ではドイツ39万2,251円・英国39万1,320円・オーストラリア38万6,512円の欧州豪が上位を占め、最下位の韓国(10万5,058円)とは約3.7倍の差があります。消費額のランキングと1人あたり支出のランキングは、ほぼ逆の構造で並んでいます。
本記事では、観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年確報」とJNTO「訪日外客統計」を一次情報源として、国別消費額ランキング・1人あたり旅行支出・数と単価の散布図・費目別構成比・国×費目ヒートマップ・11年推移といった6つの図解で訪日消費の構造を整理します。20カ国分の数値を可視化で並べることで、「数で稼ぐアジア」と「単価で稼ぐ欧米豪」の二極構造、費目構成の国別差異、コロナ前2倍の到達点を別の角度から観察します。
訪日外国人は2025年に9.45兆円を消費した。どの国がどれだけ使い、何に使ったのか。
消費額1位は中国2兆円・上位5カ国で62.2%。1人あたり支出は欧州豪が上位を占める。
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訪日外国人の国別消費額ランキング|中国2兆円・上位5カ国で6割超

20カ国の消費額を横棒で並べると、中国の突出と上位5カ国への集中が一目で見えます。1位中国と20位ロシアでは約35倍の開きがあり、消費の偏りが大きい構造です。
観光庁2025年確報によれば、国別の訪日外国人旅行消費額は中国2兆58億円(構成比21.2%)が首位で、唯一の2兆円台です。次いで台湾1兆2,033億円(12.7%)、米国1兆1,186億円(11.8%)、韓国9,906億円(10.5%)、香港5,614億円(5.9%)と続きます。上位5カ国(中国・台湾・米国・韓国・香港)の合計は5兆8,797億円で、全体の62.2%を占めます。残る37.8%を、6位オーストラリア(4,067億円・4.3%)以下の15カ国「その他」9,534億円が分け合う構造です。
前年比で見ると、上位20カ国の中で香港のみが前年比-15.0%とマイナスで、それ以外はすべてプラスです。最も伸び率が高かったのはロシア+77.2%、次いでドイツ+57.7%、ベトナム+49.6%、インド+39.8%と、これまで構成比が小さかった国・地域が大きく伸びました。米国も+24.1%、英国+25.2%と欧米先進国の伸びが大きく、コロナ前の水準を超える局面に入っています。
1人あたり旅行支出は欧州豪が上位|ドイツ39万円・韓国10万円の3.7倍差

国別消費額が「数の多さ」を示すのに対し、1人あたり支出は「単価の高さ」を示します。21カ国を横棒で並べると、欧州豪が上位を占め、アジアが下位に並ぶ層構造が見えてきます。
1人あたり旅行支出のランキングは、消費額の順位とは大きく異なります。2025年確報の上位はドイツ39万2,251円、英国39万1,320円、オーストラリア38万6,512円、スペイン36万2,767円、フランス35万9,869円、イタリア35万7,002円と、欧州豪が上位6カ国を占めます。米国は7位33万9,708円、カナダは8位32万2,489円で北米も上位に入ります。一方、消費額1位の中国は1人あたり24万6,550円で14位、消費額2位の台湾は18万4,413円で20位、消費額4位の韓国は10万5,058円で最下位という、消費額ランキングとは逆の順位構造です。
1位ドイツと最下位の韓国では1人あたり支出に約3.7倍の差があります。この差は主に滞在日数と費目構成の違いに対応しています。観光庁2025年確報の平均泊数を見ると、ベトナム45.3泊(業務・親族訪問含む全目的)、英国13.0泊、ドイツ12.5泊と欧州豪の滞在は長く、宿泊費・飲食費の積み上がりが大きくなります。一方、韓国は平均4.0泊と短く、宿泊費・飲食費・買物代のいずれも他国に比べて小さい水準にとどまります。クルーズ客の1人あたりは2万8,357円で、一般客の22万8,782円とは1桁違う水準です。
「数で稼ぐアジア」と「単価で稼ぐ欧米豪」|散布図で見る二極構造

訪日者数と1人あたり支出の2軸で20カ国を配置すると、4象限のうち2つに集中する二極構造が現れます。バブルの大きさは消費額で、右下と左上に大きな円が集まる形です。
X軸に訪日者数(万人)、Y軸に1人あたり旅行支出(万円)を取り、バブルサイズを消費額(億円)にして20カ国を配置すると、4象限のうち「数で稼ぐ」(右下:数多・単価低)と「単価で稼ぐ」(左上:数少・単価高)の2つに集中する二極構造が見えます。右下には韓国(952万人・10.5万円)、中国(814万人・24.7万円)、台湾(653万人・18.4万円)といった東アジアの大型市場が並びます。左上にはドイツ(42万人・39.2万円)、英国(53万人・39.1万円)、オーストラリア(105万人・38.7万円)といった欧州豪の遠距離市場が位置します。
右上の「数と単価のバランス」象限に近い位置にあるのは米国(329万人・34.0万円)で、訪日者数・1人あたり支出ともに大きく、消費額1兆1,186億円という3位の存在感を持ちます。左下の「小規模」象限にはインド・ロシア・スペイン・イタリアといった訪日者数の少ない国が並びますが、いずれも1人あたり支出は30万円前後で、単価面では決して低くありません。訪日消費の構造は、「数の多さで稼ぐ層」と「単価の高さで稼ぐ層」が並列に存在し、どちらかが他方を置き換える関係ではないことを散布図は示しています。
費目別では宿泊費が36.6%で最大|2024年からの構成変化

消費額9.45兆円の中身を費目別に分解し、2024年確報と2025年確報を2層ドーナツで重ねると、構成比の変化が見えます。宿泊費の比率が上がり、買物代の比率が下がる動きです。
2025年確報の費目別構成比は、宿泊費が3兆4,578億円で全体の36.6%を占めて最大です。次いで買物代2兆5,541億円(27.0%)、飲食費2兆688億円(21.9%)、交通費9,449億円(10.0%)、娯楽等サービス費4,236億円(4.5%)と続きます。宿泊費・買物代・飲食費の上位3費目で全体の85.5%を占めており、訪日消費の中核は「泊まる・買う・食べる」の3つに集中しています。
2024年確報からの構成比変化を見ると、宿泊費は34.7%→36.6%と+1.9ポイント上昇、買物代は28.1%→27.0%と-1.1ポイント低下しました。金額自体は両方とも増加していますが、宿泊費の伸び率が買物代より大きかった結果、構成比に差が出ています。背景には、宿泊単価の上昇と滞在日数の長期化(欧米豪客の比率上昇)があると見られます。飲食費・交通費・娯楽等サービス費の構成比はほぼ前年並みで、大きな変動はありません。
国別に消費の中身は大きく異なる|英国は宿泊、中国は買物、豪は娯楽

20カ国×5費目のヒートマップで、列ごとに濃淡を見ると、各費目で最高となる国が異なることがわかります。同じ訪日消費でも、国によって「何にお金を使うか」の重心がはっきり分かれます。
1人あたり費目別支出を国別に並べると、費目ごとの最高国が異なることが見えてきます。観光庁2025年確報によれば、宿泊費の最高は英国(19万2,926円)、飲食費の最高はイタリア(8万4,477円・スペイン8万3,595円が僅差)、交通費の最高はイタリア(5万4,239円)、娯楽等サービス費の最高はオーストラリア(3万5,165円)、買物代の最高はシンガポール(10万620円・中国9万1,457円が次点)です。「単価1位の国」は費目によって入れ替わり、訪日消費の重心が国ごとに違うことが、列方向の濃淡パターンから読み取れます。
国別の特徴を見ると、英国・ドイツは宿泊費が突出する一方で買物代の比重は中位、シンガポール・中国・ベトナムは買物代が他費目より目立つ重心です。オーストラリアは娯楽等サービス費が3.5万円超で、観光・体験への支出が他国より大きい特徴があります。イタリア・スペイン・フランスは飲食費と交通費が共に上位で、長期滞在で食事と移動に費用を回す行動パターンが現れます。韓国は全費目で最下位またはそれに近い位置にあり、短期滞在の特徴が全費目に均等に表れています。
訪日消費額の11年推移|コロナ前の2倍・2030年15兆円目標へ

2015年から2025年までの11年推移を棒と折れ線で重ねると、コロナの谷と回復後の急上昇が並んで見えます。2025年は2019年のほぼ2倍まで到達しています。
訪日外国人旅行消費額の11年推移を見ると、2015年の3兆4,771億円から、2018年に4兆5,189億円、コロナ前の2019年に4兆8,135億円まで段階的に成長しました。コロナ禍の2020年は7,446億円、2021年は1,208億円(試算値)、2022年は8,987億円と大幅に減少しました。2023年に5兆3,065億円とコロナ前を上回り、2024年は8兆1,257億円、そして2025年は9兆4,549億円と急速に拡大しました。2025年の消費額は2019年(4兆8,135億円)の約1.96倍で、コロナ前のほぼ2倍の水準に到達しています。
1人あたり旅行支出は、2015年の17.6万円から2019年は15.9万円まで下落した後、コロナ禍を経て2023年以降は22万円台で推移しています。2025年は22.9万円で、コロナ前2019年の15.9万円から+44%の水準です。訪日者数の戻りより1人あたり支出の上昇が消費額急増に効いています。政府の「観光立国推進基本計画」が掲げる2030年の訪日消費額15兆円目標まで、2025年時点で残り約5.5兆円となりました。年率10%以上の成長が続けば到達可能なペースですが、為替・旅行需要の変動次第で達成可否は左右されます。
楓のまとめ|消費額と単価は別物として観察する

ここまでの6つの図解で並べた数字を整理すると、訪日消費は「数の多さ」「単価の高さ」「費目の重心」の3軸で異なる構造を持つことが見えてきました。3つの観察事実にまとめます。
「訪日外国人の国別消費額」という単一の問いに対して、本記事で並べた6つの図解は、消費額・1人あたり支出・費目構成それぞれが別の物差しで動いていることを示してきました。国別消費額の集中構造、1人あたり支出の二極構造、費目構成の国別差異、いずれもデータそのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「訪日外国人がどの国からどれだけ消費しているか」という問いには、消費額の集中構造(中国・上位5カ国で62.2%)と単価の偏り(欧州豪上位)の両方を見る必要があることがわかります。消費額ランキングと1人あたり支出ランキングは別の指標であり、どちらか一方だけで「訪日消費の主役」を語ることはできない構造として整理できます。2025年の9兆4,549億円という過去最高更新は、訪日者数の戻りと1人あたり支出の高止まりが同時に進んだ結果として現れた数字です。
よくある質問(FAQ)

訪日消費のデータを読むときは、調査名の変更・確報と速報の違い・滞在日数による単価差の3点をセットで確認してください。同じ統計でも、この3点が変わると読み取れる内容が変わります。
Q1. 「訪日外国人旅行消費額」と「インバウンド消費」は同じ意味ですか?
観光庁の統計上は同じ概念を指します。2024年4-6月期以降、調査名が「訪日外国人消費動向調査」から「インバウンド消費動向調査」へ変更されましたが、調査項目・推計方法は変更されておらず、2023年以前のデータとの比較は可能とされています。本記事で「訪日外国人旅行消費額」と「インバウンド消費額」を併用しているのはこのためです。なお、本調査の対象は「一般客(クルーズ客以外)」と「クルーズ客」を区別して集計しています。
Q2. 1人あたり支出が高い国・低い国はどこですか?
2025年確報では1位ドイツ(39万2,251円)、2位英国(39万1,320円)、3位オーストラリア(38万6,512円)、4位スペイン(36万2,767円)、5位フランス(35万9,869円)が上位を占めます。最も低いのは韓国(10万5,058円)で、これは滞在日数が短い(平均4.0泊)ことが主な要因です。一般客全体の平均は22万8,782円、クルーズ客は2万8,357円で、両者には1桁違う差があります。1人あたり支出の前年比はベトナム+37.0%、ドイツ+17.8%が大きく伸び、中国-10.9%・香港-9.2%は減少しています。
Q3. 2025年は前年と比べて消費額がどう変わりましたか?
全体では前年比+16.4%増(前年8兆1,257億円→9兆4,549億円)です。国別で最も伸び率が高かったのはロシア(+77.2%・565億円)、次いでドイツ(+57.7%・1,655億円)、ベトナム(+49.6%・2,055億円)、インド(+39.8%・785億円)と、これまで構成比の小さかった国・地域が大きく伸びました。一方、香港は唯一の前年比マイナス(-15.0%・5,614億円)で、上位20カ国の中で例外的な動きを示しています。費目別では宿泊費が前年比+23.0%、買物代が+11.7%、飲食費が+15.0%とすべての費目で増加しています。
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