
戦後58年の長期推移を1枚の折れ線で見ると、定義変更のマイルストーンを挟みながら、現在へとつながる流れが浮かびます。観察整理として、数値が示している事実だけを順に並べていきます。
文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和7年10月29日公表・令和8年1月16日一部修正)によると、2024年度(令和6年度)の小・中学校における不登校児童生徒数は353,970人で、12年連続の増加となり過去最多を更新しました。一方、増加率は前年度の15.9%から2024年度の2.2%へと大幅に低下し、新規不登校児童生徒数は9年ぶりに減少しました。過去最多更新と増加ペースの鈍化が同時に表れているのが、2024年度の不登校をめぐる現在地です。
本記事では、文部科学省と国立教育政策研究所の一次情報をもとに、1966年(昭和41年)に「学校嫌い 50日以上欠席」の統計が始まった戦後最初の年から2024年までの58年連続推移、学年別の分布、47都道府県別の地域差、直近10年の校種別動向、欠席日数別の構成、新規・継続の構造を、6つの図解で順に整理します。文部科学省は「不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」(令和6年度通知)と整理しており、本記事も観察事実を並べる立場を貫きます。
不登校児童生徒数の戦後推移はどう動いてきたのか?
過去最多の35万人台に達したが、増加率は前年度から低下した。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
1966年から2024年へ|戦後58年の長期推移

戦後58年の推移を1枚で見ると、2つの定義変更のマイルストーンを挟みながら、現在の数字へとつながる流れが見えてきます。線の傾きと2つの縦点線の位置を順に追っていきます。
長期欠席の統計は、1966年度(昭和41年度)の文部省「学校基本調査」で「学校嫌い 50日以上欠席」として始まりました。当時の小・中学校合計はおよそ1.6万人で、戦後最初の登校拒否統計の出発点です。1991年度(平成3年度)に調査基準が「30日以上欠席」へと変わり、把握対象が広がりました。基準変更直後の数値は約6.6万人で、それ以前の50日基準との単純比較はできません。1998年度(平成10年度)には統計上の名称が「学校ぎらい」から「不登校」へ統一され、約12.8万人が計上されました。長期推移の数字は、同一定義での連続観測ではない点を念頭に置いておく必要があります。
2012年度(平成24年度)の約11.3万人を直近の谷として、2013年度から12年連続で増加に転じました。教育機会確保法(2016年成立・2017年施行)が「不登校児童生徒の休養の必要性」を法律で明示した時期と、増加局面が重なります。さらに2023年3月にはCOCOLOプラン(誰一人取り残されない学びの保障に向けた取組)が文部科学大臣決定として打ち出されました。制度面の整備が進む中で2024年度に353,970人へ到達したことが、戦後58年の推移として観察できる現在地です。
学年別の分布|小1から中3まで

学年別の縦棒に並べてみると、小学校から中学校へ移行する地点で大きな段差が現れます。9本の棒の高さと、小6→中1の矢印で示した変化を順に観察します。
2024年度(令和6年度)の学年別不登校児童生徒数は、小1が8,738人、小2が14,125人、小3が19,460人、小4が25,322人、小5が31,979人、小6が38,080人、中1が58,736人、中2が77,066人、中3が80,464人でした。小6(38,080人)から中1(58,736人)への移行で、不登校児童生徒数は約1.5倍(+20,656人)に増えます。学年が上がるほど人数が増える傾向は小学校全体で見られ、中学校に入ると一段の上振れが加わる構造になっています。
前年度比で見ると、小1(-416人)と中2(-702人)の2学年だけが減少しました。小1の減少は新規不登校の減少と整合しており、令和5年度の9,154人から416人少ない8,738人となっています。中2の減少は、前年度に中1だった児童の継続率が下がったことを反映しています。学年別の前年度比で減少する学年が現れたのは、増加率の低下と新規不登校の減少が学年構造のうえでも観察される一例です。
都道府県別の地域差|中学校 1,000人当たり

47都道府県の地域差は、表よりタイルマップで見るとひと目で把握できます。中学校生徒1,000人当たりの不登校生徒数を5階調で並べました。色の濃いタイルがどの地方に集まっているかを観察します。
2024年度の中学校における全国平均は、生徒1,000人当たり67.9人(およそ15人に1人)です。1,000人当たりが最も多いのは宮城県の82.8人で、福岡県81.7人、島根県80.7人、長野県80.0人、北海道78.6人、栃木県78.2人、沖縄県77.5人、鳥取県77.2人が上位8県でした。最も少ないのは岡山県48.8人で、福井県52.6人、香川県56.3人、千葉県56.4人、佐賀県57.7人、山形県58.3人、宮崎県58.3人、埼玉県59.9人が下位8県です。中学校1,000人当たりの地域差は、最大の宮城県と最小の岡山県の間で約1.7倍にあたります。
都道府県別の地域差をどう読むかは、解釈の幅がある領域です。1,000人当たり値は、生徒の総数で割って算出した発生率の指標であり、不登校児童生徒の絶対数とは別の物差しになります。例えば実数の上位は東京都、神奈川県、愛知県、大阪府など人口集中地域ですが、1,000人当たり値ではその順位が変わります。「地域ごとの数値の違いは、不登校児童生徒一人ひとりの状況と直接の因果関係を持つわけではない」と捉えるのが、観察整理の出発点として穏当です。
直近10年の校種別推移|2014年から2024年

戦後58年の長期軸では見えにくい近年の動きは、直近10年に絞った2本の折れ線でほぐして見ます。小学校と中学校の伸び方の違いが、別の物語として現れます。
直近10年で見ると、小学校は2014年度の25,864人から2024年度の137,704人へと、約5.3倍に増えました。中学校は2014年度の97,033人から2024年度の216,266人へと、約2.2倍です。倍率では小学校の伸びが顕著ですが、人数の絶対値では中学校の方が約8万人多い水準を保ち続けています。校種で見ると、小学校が後発の急増、中学校が継続的な高水準という二面性が、直近10年の構造として観察できます。
校種別の1,000人当たりは、2024年度で小学校23.0人(およそ44人に1人)、中学校67.9人(およそ15人に1人)、高校23.3人(およそ43人に1人)です。中学校の1,000人当たりは小学校の約3倍にあたり、絶対数の伸びだけでなく発生率の水準も校種で異なっています。なお高等学校の不登校生徒数は2024年度に67,782人と前年度から988人減少しており、小・中学校とは別の動き方をしています。
欠席日数別の構成|30〜49日/50〜89日/90日以上

数字の中身を欠席日数で分けると、長期化の傾向が見えてきます。3つの帯を積み上げて6年分の推移を観察します。
2024年度(令和6年度)の不登校児童生徒数を欠席日数別に見ると、30〜49日が80,831人(22.8%)、50〜89日が81,181人(22.9%)、90日以上が191,958人(54.2%)です。2024年度は、年間90日以上欠席した児童生徒が全体の半数を超え、長期化が観察できる構成になりました。90日以上欠席の中には、90日以上で出席日数が0日の児童生徒も含まれており、こちらは別途公表されています。
5年前の2019年度(令和元年度)と比べると、不登校児童生徒数全体は約181,272人から353,970人へと約2.0倍に拡大しました。長期化の指標である90日以上欠席は、約80,415人から191,958人へとほぼ2.4倍に増えています。全体の拡大と長期化が同時並行で進んだことが、欠席日数別の構成変化として観察できます。一方、文部科学省は「学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けた児童生徒」は2024年度に218,246人と、不登校児童生徒の約62%が何らかの形で相談・指導につながっている、と整理しています。
新規 と 継続 の構造|2024年度の内訳

増加・減少の中身は、新規と継続の2つに分けて見るとほぐれます。小学校と中学校でそれぞれドーナツに並べて、継続率の前年度比較を観察します。
2024年度の不登校児童生徒数(小・中合計353,970人)のうち、新規不登校(前回調査では不登校に計上されていなかった児童生徒)は153,828人で、前年度の165,300人から1万人以上減少し、9年ぶりに前年比でマイナスに転じました。校種別では、小学校の新規が70,419人(前年度74,447人)、中学校の新規が83,409人(前年度90,853人)で、両校種とも新規不登校が減少しています。継続率は、小学校が前年度75.2%から71.7%へ3.5ポイント低下、中学校が前年度80.7%から77.1%へ3.6ポイント低下しました。
新規不登校の減少と継続率の低下が同時に観察される一方で、不登校児童生徒数の総数は12年連続で過去最多を更新しています。新規流入のペースが鈍化し、これまで不登校だった児童生徒の一部が継続から外れた割合も増えた、という構造です。文部科学省は、教育機会確保法やCOCOLOプランに基づく取組、一人一台端末を活用した心の健康観察による早期把握、学びの多様化学校・教育支援センター・校内教育支援センターの整備などを並列で進めており、子どもの発達科学研究所などの分析機関は「予防」「早期支援」アプローチの効果が表れ始めた可能性を指摘しています。
楓のまとめ|過去最多と増加率の低下が同時に観察できる

ここまでの6つの図解で、戦後58年の推移と学年・地域・欠席日数・新規継続の構造を順に並べてきました。最後に4つの観察事実として整理してみます。判断は読者の方が行ってください。
「不登校児童生徒数はどう動いてきたのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、長期推移・学年別分布・地域差・直近の構造変化の4つの角度から、現在の不登校をめぐる景色を映してきました。データそのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
4つの観察事実を重ねて読むと、2024年度の不登校児童生徒数は過去最多35万人台に到達した一方で、増加率の低下・新規不登校の減少・継続率の低下といった「変化の兆し」も同時に観察できる、というのが現在地です。文部科学省は「不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」(令和6年度通知)と整理しており、子ども一人ひとりの状況をデータの数字に短絡せず、観察事実として並べる立場が、本記事の出発点でもあり結びでもあります。
よくある質問(FAQ)

不登校のデータを読むときは、定義の歴史・学年構造・地域差・継続と新規の区別の4点をセットで確認すると、同じ数字でも違う物語が見えてきます。観察整理の補助として、よくある質問に答えていきます。
Q1. なぜ2024年度は過去最多なのに、増加率が低下したと言えるのですか?
不登校児童生徒数の絶対値(353,970人)と前年度比の増加率(2.2%)は別の指標だからです。絶対値は12年連続で増えており、累積で過去最多になっています。一方、前年度比の増加率は、2023年度の15.9%から2024年度の2.2%へと大きく下がりました。文部科学省はこの両方を並列で記述しており、「過去最多となったものの、増加率は前年度から低下した」と整理しています。新規不登校の9年ぶりの減少と、継続率の低下が、増加率低下の背景にある構造です。
Q2. 1966年から2024年までの推移を直接比較できますか?
厳密な同一定義での連続比較はできません。1966年度から1990年度までは「学校嫌い 50日以上欠席」、1991年度から1997年度までは「学校嫌い 30日以上欠席」、1998年度以降は「不登校 30日以上欠席」と、調査基準と名称が2回変更されています。それぞれの定義変更のタイミングで、把握対象の幅も社会的なとらえ方も変わりました。長期推移の数字は、戦後の不登校をめぐる「とらえ方の変遷」を含めて見るのが、観察整理として穏当です。
Q3. 中学校1,000人当たり値が高い県は「不登校が多い県」と言ってよいですか?
1,000人当たり値は、生徒の総数を分母にした発生率の指標であり、地域ごとの状況を示すひとつの観察値にすぎません。最大の宮城県(82.8人)と最小の岡山県(48.8人)の間で約1.7倍の差がありますが、この差は、地域の支援体制・把握状況・人口動態など複数の要因が重なっています。一人ひとりの児童生徒の状況と地域の数値を直接結びつけるのは難しく、文部科学省は「不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」と整理しています。地域差は「数値で観察できる事実」として並べておくのが、本記事の立場です。
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