
信号機のない横断歩道で、歩行者が渡ろうとしているときに止まる車はどれくらいいるのか。2026年の最新調査では、その割合が初めて6割を超えました。47都道府県の停止率と交通事故の死者数を、前年との比較も交えて図解で並べていきます。
JAFが毎年行っている全国調査で、2026年の停止率の全国平均は61.1%となり、前年の56.7%から4.4ポイント上昇して2016年の調査開始以来初めて6割を超えました。歩行者が渡ろうとする場面で、10台のうち約6台が止まり、約4台はそのまま通過している計算です。最も高かったのは長野県の93.2%(11年連続首位)、最も低かったのは大分県の39.4%で、差は53.8ポイントでした。
前年と比べると、停止率が上がったのは37都道府県、下がったのは10県です。一方、警察庁によると令和7年(2025年)の交通事故死者数は2,547人で、前年より116人少なくなりました。歩行中の死者(第1・第2当事者)は867人で、前年の937人から70人減っています。
使用するデータは、JAFの「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」(2026年10月27日公表)と2025年調査、警察庁の「令和7年における交通事故の発生状況について」(2026年2月26日公表)と都道府県別死者数の統計表です。なお2026年調査は、実施時期が例年の8月から5〜6月に変わっています。散布図・前年比較・タイルマップなど7つの図解で観察事実を整理します。
横断歩道で歩行者がいるとき、停止する車の割合は都道府県でどれほど違うのか。
2026年の停止率は1位の長野県93.2%と47位の大分県39.4%で、53.8ポイントの差。
差53.8ポイント(停止する車の割合が約2.4倍)
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
47都道府県で見る停止率×死亡率|相関係数r=+0.08のほぼ無相関

まずは47都道府県を1枚の散布図に並べます。横軸に2026年の停止率、縦軸に令和7年の人口10万人当たり交通事故死者数を取ると、点が右上がりにも右下がりにも並ばない様子が見えてきます。
出典:JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2026年調査結果)」/警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」都道府県別交通事故死者数
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
停止率が最も高い長野県は93.2%で、人口10万人当たり死者数は2.21人でした。最も低い大分県は39.4%で3.78人です。47点のピアソン相関係数はr = +0.08で、停止率と死者数の都道府県差はほぼ無相関でした。前回の組み合わせ(2025年調査×令和6年)でもr=+0.01で、2年続けて同じ傾向が観察されています。
死者数が最も少ないのは東京都の0.95人で、大阪府1.37人、愛知県1.50人、神奈川県1.51人と大都市圏が続きます。最も多いのは滋賀県の3.85人で、高知県3.81人、大分県3.78人、和歌山県3.75人の順でした。死者数は人口密度や道路の構造、年齢構成などの影響も受ける指標で、停止率だけで説明することはできません。本記事は両者を並べて観察するところまでにとどめます。
交通事故の死者数そのものの長い推移は、交通事故の死者数、戦後80年の推移で整理しています。
2025年と2026年の比較|37都道府県で上昇、10県で低下

昨年の調査と並べると、各県がどちらへ動いたかが分かります。灰色の点が2025年、色の点が2026年で、2つの点を結ぶ線の長さがそのまま変化の大きさです。
出典:JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」(2025年・2026年調査結果)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年調査と2026年調査を都道府県ごとに比べると、停止率が上がったのは37都道府県、下がったのは10県でした。最も大きく上がったのは山口県で、34.3%から57.9%へ23.6ポイント上昇し、順位は47位から29位になりました。次いで埼玉県が18.0ポイント、新潟県が16.4ポイント、富山県が15.1ポイント、島根県が14.2ポイント上がっています。
下がった10県のうち最も幅が大きかったのは群馬県で、59.8%から46.1%へ13.7ポイント低下しました。鹿児島県は9.3ポイント、青森県は8.0ポイント、兵庫県は5.7ポイント、奈良県は4.6ポイントの低下です。全体では、停止率が70%以上の都道府県は前年の8から14に増え、50%未満は14から10に減りました。
比べる際には、調査条件の違いに注意が必要です。JAFは2026年度から、調査員の安全確保などを理由に調査期間を8月から5〜6月に変更しました(調査方法は例年と同じ)。また各都道府県の調査は2か所・平均約128台で、単年の数値には場所や時期による振れが含まれます。前年差は、こうした条件の違いを含んだ値として読む必要があります。
11年の推移|停止率は約8.0倍、歩行中死者は約41.7%減

時間軸を10年あまりに広げると、停止率と歩行中の死者数は、それぞれ別の物差しで改善を続けてきたことが分かります。停止率を朱色の実線、歩行中死者数を紺の破線で重ねます。
出典:JAF 全国調査(各年)/警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
停止率の全国平均は2016年の7.6%から2026年の61.1%まで、11年で約8.0倍になりました。警察庁の統計で歩行中の死者数(第1・第2当事者)を見ると、2015年の1,486人から2025年の867人まで約41.7%減っています。2つの指標は、同じ期間にそろって改善の方向へ動いてきました。
ただし停止率は全国94か所での観察調査、歩行中死者数は全国の事故の結果を集計した値で、性質の異なる指標です。同じ期間には交通安全教育や車両の安全装備の普及なども並行して進んでおり、2本の線の動きから因果関係や寄与の大きさを読み取ることはできません。
運転者の年齢層別に事故件数の推移を見たい場合は、高齢ドライバーの事故件数と免許人口当たり率の推移で図解しています。
47都道府県タイルマップ|2026年の停止率の地理的分布

47都道府県の停止率を地図の形に並べると、色の濃い県と薄い県の散らばり方が見えてきます。タイルの色は5段階で、深い朱色が80%以上、深い紺色が50%未満です。
出典:JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2026年調査結果)」
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
80%以上の最上位帯に入ったのは、長野県・福岡県・宮崎県・熊本県・岐阜県・福島県の6県でした。九州では福岡・宮崎・熊本の3県が80%を超える一方、同じ九州の大分県39.4%、鹿児島県43.9%との差が大きく開いています。
50%未満の最下位帯は、大分県・青森県・鹿児島県・北海道・福井県・大阪府・群馬県・和歌山県・愛知県・千葉県の10道府県です。東日本と西日本、都市部と地方のいずれにも上位と下位が混在しており、単純な地域区分では分かれていません。各県約128台の調査であるため、地図は2026年5〜6月時点の分布として読む必要があります。
上位・下位・変化幅|長野は11年連続首位、山口は+23.6ポイント

上位5県・下位5県と、前年からの上昇幅・低下幅が大きい県を4つの枠に並べます。上位の顔ぶれの固定ぶりと、年ごとの入れ替わりの大きさが同時に見えてきます。
出典:JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」(2025年・2026年調査結果)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2026年の上位5県は、長野県93.2%・福岡県86.2%・宮崎県82.9%・熊本県82.7%・岐阜県81.9%でした。長野県は2016年の調査開始から11年連続で1位となり、2位の福岡県とも7.0ポイントの差があります。前年の上位5県(長野・岐阜・福岡・熊本・宮崎)と比べると、顔ぶれは同じで順位だけが入れ替わりました。
下位5県は、大分県39.4%・青森県42.4%・鹿児島県43.9%・北海道44.2%・福井県45.5%です。前年の下位5県(山口・大阪・福井・沖縄・北海道)のうち、2年続けて入ったのは福井県と北海道でした。下位の顔ぶれは上位に比べて入れ替わりが大きく、単年の調査値には振れが含まれることも踏まえておく必要があります。
都道府県別に交通事故の指標を比べた記事として、任意保険加入率と事故率の都道府県比較もあわせて参照できます。
歩行中死者の事故類型|65歳以上は「横断中」が72.7%

横断歩道での停止と関わりが深いのは、道路を横断している歩行者の事故です。65歳以上の歩行中死者を事故類型に分け、令和6年と令和7年を並べます。
出典:警察庁「令和6年における交通事故の発生状況について」「令和7年における交通事故の発生状況について」(第1・第2当事者)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
警察庁によると、令和7年の歩行中死者(第1・第2当事者)867人のうち、65歳以上は608人で70.1%を占めました。65歳以上の事故類型を見ると「横断歩道横断中」が26.2%、「横断歩道以外横断中」が46.5%で、両者を合わせた横断中は72.7%でした。令和6年の73.4%とほぼ同じ水準です。
同じ資料の法令違反等別の集計では、歩行中死者867人のうち歩行者側に違反がなかったのは367人(42.3%)、違反ありは500人でした。違反の内訳は横断違反が218人(25.1%)、めいてい・はいかい・寝そべり等が102人(11.8%)などです。横断歩道での一時停止は、横断中の事故のうち横断歩道上の場面に関わる行動です。
停止率11年推移|2026年は前年差+4.4ポイント

全国平均を年ごとの縦棒で並べ、前年との差を添えます。上がり幅が大きい年と小さい年が交互に現れる様子が見えてきます。
出典:JAF 全国調査(2016〜2026年調査結果)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
全国平均は2016年7.6%、2017年8.5%、2018年8.6%とほぼ横ばいでしたが、2019年に17.1%へ上がり、その後も上昇を続けています。前年差は2019年+8.5、2021年+9.3、2022年+9.2、2023年+5.3、2024年+7.9ポイントと5ポイント以上の年が多く、2025年は+3.7、2026年は+4.4ポイントでした。
2026年の61.1%は、調査対象5,998台のうち3,662台が一時停止した結果です。調査開始以来、全国平均が前年を下回った年は一度もありません。一方で、歩行者が渡ろうとしているのに通過した車は約4割残っています。道路交通法第38条は、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいるとき、車両に一時停止を義務づけています。
楓のまとめ|停止率は上がり続け、死者数との都道府県差は別々に動く

ここまで7つの図解で、停止率の最新値、前年からの変化、長期の推移、歩行中死者の事故類型を並べてきました。観察事実を3点に整理します。
「横断歩道で止まる車の割合」は2026年に初めて6割を超え、37都道府県で前年を上回りました。一方で、47都道府県の停止率と交通事故死者数の差は、2年続けてほぼ無相関でした。数字に優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として残しておきます。
3つの観察事実を重ねると、停止率は全国的に上がり続ける一方、都道府県ごとの差は事故の結果指標と同じ並びにはなっていないことが分かります。停止率は運転行動の指標、死者数は事故の結果指標として、別々に追いかけるのが自然だと整理できます。調査時期が変わった2026年以降も上昇が続くかどうかが、次の調査で確認できる点です。
よくある質問(FAQ)

横断歩道の停止率を読むときは、調査の規模、調査の時期、指標の性質の3点をセットで確認してください。この3点を押さえると、年ごとの数字の上下を落ち着いて読めます。
Q1. 停止率1位の長野県は、交通事故の死者数も少ないのですか?
そうとは限りません。長野県の2026年の停止率は93.2%で全国1位ですが、令和7年の人口10万人当たり交通事故死者数は2.21人で、全国の2.06人をやや上回ります。47都道府県で見た相関係数はr=+0.08でほぼ無相関でした。死者数は道路の構造や年齢構成、人口密度などにも左右されるため、停止率だけでは説明できません。
Q2. 2026年の停止率は、前年とそのまま比べてよいのですか?
比べることはできますが、条件の違いを踏まえる必要があります。JAFは2026年度から調査期間を8月から5〜6月に変更しました。調査方法は例年と同じですが、時期や天候、交通量の違いが数値に影響している可能性は残ります。また各都道府県の調査は2か所・平均約128台と規模が小さく、山口県の+23.6ポイントのような大きな変化には単年の振れも含まれます。
Q3. 横断歩道で歩行者がいたら、車は必ず止まらなければいけないのですか?
はい。道路交通法第38条は、横断歩道を渡ろうとしている歩行者や渡っている歩行者がいるとき、車両は横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げてはならないと定めています。2026年の調査では全国で約4割の車が停止しておらず、停止率が9割を超えたのは長野県だけでした。
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