
「市区町村の財政力指数」という指標は、自治体が必要な行政コストのうち何割を自前の税収等で賄えるかを示します。全国1,718市町村の分布をヒストグラムとマップで並べると、平均0.49を中心に最上位1.99から最下位0.06まで広がっていて、地域の経済基盤の違いがそのまま現れます。
全国1,718市町村の財政力指数(令和6年度・3年平均)は、平均0.49・最上位1.99・最下位0.06。約33倍の格差があり、1.0を超え地方交付税を受け取らない「不交付団体」は82団体です。都道府県分1を加えると合計83団体で、全自治体の約5%にあたります。「財政力指数」は、地方自治体が行政運営に必要な経費(基準財政需要額)を、自前の税収等(基準財政収入額)でどれだけ賄えるかを示す指標で、1.0を上回ると地方交付税が支給されません。
本記事では、総務省「令和6年度地方公共団体の主要財政指標一覧」(2025年12月公表)と「令和6年度普通交付税大綱」(2024年7月23日発表)の一次情報を、計算式の概念図・全国1,718市町村ヒストグラム・47都道府県タイルマップ・TOP10/BOTTOM10双方向バー・不交付団体県別分布・政令市20市バーチャートの6つのインライン図解で整理します。全国平均と最上下、地域差、政令市の位置、不交付団体の集中先を多角的に観察していきます。
全国1,718市町村の財政力指数は、どれだけ開いているのか。
全国市町村の平均は0.49(令和6年度・単純平均)。最上位の愛知県飛島村1.99から最下位の鹿児島県三島村0.06まで、約33倍の格差があります。
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財政力指数とは何か|国からの「仕送り」の必要度を測る指標

計算式そのものを概念図で見ると、財政力指数の意味が一目で掴めます。分子と分母、3年平均、1.0境界の3点を1枚で並べると、指数が何を測っているかが整理できます。
財政力指数は、地方自治体の財政力を示す代表的な指標で、「基準財政収入額(標準的に見込まれる地方税収等)を、基準財政需要額(標準的に必要となる行政経費)で割った数値の過去3年間の平均」として定義されます。総務省「指標のみかた」によれば、この比率は自治体が必要な行政コストのうち、どれだけの割合を自前の税収等で賄えるかを示します。1.0であれば必要額を全額自前で賄える状態を意味し、1.0を上回ると地方交付税の不交付団体となり、国からの普通交付税が支給されなくなります。
単年度値を3年平均にしている理由は、税収や行政需要の短期変動を均し、構造的な財政力を観察するためです。令和6年度の指数は令和4・5・6年度の3年分を平均した値で、税制改正や災害等の単年度要因が指数を大きく動かさない設計になっています。1.0を境にした「交付/不交付」の判定は普通交付税の単年度算定で別途行われ、3年平均の主要財政指標と単年度の交付判定とは指標の役割が異なる点に注意が必要です。本記事の主役数値(飛島村1.99、三島村0.06、全国平均0.49)はすべて3年平均(令和4〜6年度)の値です。
全国平均0.49、最上下で約33倍の格差|1,718市町村の分布

1,718市町村のヒストグラムを並べると、平均0.49を中心に左に偏った右テールの形が浮かびます。最頻階級・全国平均・1.0境界の3点を1枚に重ねると、分布の構造が把握できます。
全国1,718市町村(特別区23を除く)の財政力指数を0.1刻みの階級別に並べると、最頻階級は0.3〜0.4(約390団体)で、0.4〜0.5(約345団体)、0.2〜0.3(約285団体)、0.5〜0.6(約240団体)が続きます。全国の単純平均0.49を含む0.4〜0.5の階級は分布の中央付近に位置し、その左側(0.4未満)に約770団体、右側(0.5以上)に約603団体が並びます。分布は左に偏った右テールの形をとり、低位階級に多くの団体が集中している構造です。
1.0境界を超える階級には、1.0〜1.1(35団体)、1.1〜1.5(35団体)、1.5以上(13団体)の合計約82団体が並びます。これが普通交付税の不交付団体(市町村分)にあたります。最下位の0.06は最上位の1.99と比べると約33倍の格差で、同じ「市町村」というカテゴリの中で、自治体の経済基盤がこれほど開いていることが分布の形から確認できます。最頻階級0.3〜0.4の自治体は、必要な行政コストの約3〜4割しか自前の税収で賄えず、残る6〜7割を国からの地方交付税で補っている状態です。
全国市町村の単純平均0.49(令和6年度)は、平成26年度の0.49からの長期推移で見ると、平成29〜令和2年度の0.51まで漸増したあと、令和3〜5年度に0.50→0.48と低下し、令和6年度に再び0.49まで戻る波形をたどっています。直近10年の単純平均は0.48〜0.51のレンジに収まっており、市町村全体の構造的な自主財源比率が大きく変動するような局面には入っていません。
47都道府県マップで見る|本体財政力指数の地域差

都道府県本体の財政力指数を5階調タイルマップで並べると、地域差が面として見えてきます。市町村単位ではなく都道府県本体の値ですが、市町村レベルの分布傾向も反映する参考データです。
47都道府県本体の財政力指数(令和元/2019年度・3年平均)をタイルマップで並べると、高い県は東京1.18・愛知0.92・神奈川0.90・大阪0.79・千葉0.78・埼玉0.77・静岡0.73で、いずれも大都市圏または大規模な産業集積を抱える地域です。逆に低い県は島根0.26・高知0.27・鳥取0.28・秋田0.32・徳島0.33・和歌山0.33・長崎0.34で、人口規模が小さく主要産業基盤が限定的な地域に集中しています。
地域パターンとしては、太平洋ベルト沿い(埼玉〜千葉〜東京〜神奈川〜静岡〜愛知〜三重〜大阪〜兵庫)が指数の高い帯を形成し、東北・山陰・四国・南九州・沖縄が指数の低い帯を形成しています。1.0を超えるのは東京都のみで、平成21年度(2009年度)の1.34や平成22年度(2010年度)の愛知県1.00超といったかつての複数自治体1.0超の時代と比べると、現在は東京都の独走状態に集約されています。
なお、このタイルマップは都道府県「本体」の指数を表しており、都道府県内の市町村平均ではない点に注意が必要です。市町村レベルの地域差は、次節以降のTOP10/BOTTOM10、不交付団体の都道府県別分布、政令指定都市20市の比較によって多角的に観察します。都道府県本体の指数は地方税収(住民税・事業税・地方消費税等)と行政需要の構造を反映しますが、同じ都道府県内でも市町村ごとに大きく異なる点を確認するため、市町村レベルのデータも併せて整理します。
全国TOP10とBOTTOM10|何が指数を押し上げ、何が押し下げるのか

最上位10団体と最下位10団体を双方向バーで並べると、何が指数を高くし、何が低くするのかが対比で見えてきます。TOP10の経済基盤とBOTTOM10の地理条件を観察すると、財政力指数の構造的な決定要因が整理できます。
全国TOP10は、愛知県飛島村1.99・青森県六ヶ所村1.68・福井県高浜町1.65・長野県軽井沢町1.60・福島県大熊町1.59・東京都武蔵野市1.57・千葉県浦安市1.48・新潟県刈羽村1.45・福島県広野町1.44・佐賀県玄海町1.42の順で並びます。TOP10の経済基盤を分類すると、原子力発電所立地(六ヶ所・高浜・大熊・刈羽・広野・玄海の6団体)、大規模工業集積(飛島)、大都市住宅地・商業集積(武蔵野・浦安)、避暑地・別荘地(軽井沢)の4つに整理できます。
原子力立地の自治体では、原子力発電所の固定資産税と電源立地地域対策交付金が基準財政収入額を押し上げる構造になっています。福井県高浜町(1.65)は2010年代後半に高浜原子力発電所3・4号機が再稼働して以降、指数が0.7前後から1.5超まで戻った経緯があります。一方、武蔵野市・浦安市・軽井沢町は事業所税収・固定資産税収・住民税収が高水準の自治体で、原子力施設に頼らない構造です。同じ「指数1.5前後」でも、経済基盤の質はかなり異なります。
全国BOTTOM10は、鹿児島県三島村0.06・島根県知夫村/山梨県丹波山村/鹿児島県十島村/沖縄県渡名喜村が同率で0.07と続き、北海道島牧村・鹿児島県大和村・沖縄県伊平屋村が0.08で並びます。BOTTOM10の地理条件は、離島の小規模村(三島・知夫・十島・渡名喜・伊平屋・大和・宇検)と山間部の小規模村(丹波山・島牧・昭和)に分かれます。いずれも人口数百〜数千人規模で、地方税収の基盤となる事業所・住民税源が限定的な自治体です。最下位の三島村(人口約400人)は最上位の飛島村(人口約4,500人)と人口規模が桁違いに小さく、自前で行政コストの約6%しか賄えない状態にあります。
1.0を超える「不交付団体」は83団体|都道府県では東京都のみ

不交付団体の都道府県別分布をバーチャートで並べると、特定地域への集中が明確に見えてきます。愛知・東京・千葉・神奈川の4都県だけで全体の半数以上を占めるという偏りの大きさを観察できます。
令和6年度の普通交付税不交付団体は合計83団体(都道府県分1+市町村分82)で、都道府県分は東京都のみ、市町村分は主要22都道府県に分散しています。市町村分の上位は、愛知19・東京10・千葉8・神奈川7・茨城4の順で、上位4都県だけで44団体(全体の約54%)を占めます。愛知県の19団体には、トヨタ自動車関連の事業所税収を持つ豊田市・刈谷市・安城市・みよし市などの工業集積地と、飛島村・武豊町などの臨海工業地帯が含まれます。
25道府県には市町村分の不交付団体が存在しません。沖縄県・島根県・高知県・徳島県・和歌山県・佐賀県・長崎県・大分県・宮崎県・鹿児島県・福島県(一部を除く)・新潟県(一部を除く)など、本州・四国・九州の周辺部の県では、すべての市町村が地方交付税の交付対象となっています。これは「市町村レベルでも基準財政収入額より基準財政需要額の方が大きい構造」が地域的に固定化していることを示しています。
不交付団体の数は、令和5年度77団体→令和6年度83団体(+6団体)→令和7年度85団体(+2団体)と微増局面にあります。令和6年度の新規不交付団体は明和町(群馬)・朝霞市(埼玉)・君津市(千葉)・昭島市(東京)・小平市(東京)・名古屋市(愛知)の6団体で、いずれも地方法人税収・固定資産税収の増加が背景にあります。とくに名古屋市(人口約230万人)が令和6年度に新規不交付団体化した点は、人口規模・経済規模の大きい政令指定都市が不交付団体に加わった事例として注目されます。
政令指定都市20市の財政力指数|1.0超は川崎市と名古屋市の2市のみ

政令指定都市20市を高い順に並べると、大都市の中でも指数に差があり、1.0超は2市のみという事実が一目で確認できます。「大都市=財政豊か」という単純なイメージを相対化する材料になります。
政令指定都市20市の財政力指数を高い順に並べると、川崎市1.05・名古屋市1.02の2市が1.0を超え、それ以外の18市は1.0未満です。3位は横浜市0.99・4位さいたま市0.97・5位大阪市0.95と1.0境界の直下に大都市が並び、首位グループは比較的密集しています。一方、下位グループでは新潟市0.70・札幌市0.74・京都市0.74・北九州市0.75が0.75前後に集中し、首位の川崎市1.05とは約1.5倍の差があります。
20市の単純平均は約0.85で、全国市町村平均0.49の約1.7倍にあたります。政令指定都市は人口50万人以上の大都市で、住民税・事業所税・固定資産税の規模が大きいため、市町村全体の中では指数の高い側に位置します。ただし、20市の中でも札幌・京都・北九州・新潟など歴史的な都市と、川崎・横浜・さいたま・千葉などの首都圏新興大都市、名古屋・大阪・神戸・福岡などの広域中心都市で構造が分かれ、「大都市=財政豊か」という単純な対応はとっていません。
令和6年度に名古屋市が新規不交付団体化したのは、令和3〜5年度の3年平均で基準財政収入額が基準財政需要額を上回ったことが背景にあります。前年度(令和5年度)の不交付政令市は川崎市のみでしたが、令和6年度から名古屋市が加わって2市体制になりました。政令市以外でも、武蔵野市1.57・浦安市1.48が大都市住宅地の典型として1.0を大きく超えており、人口規模だけでなく自治体の経済構造が指数に強く影響することが、横並びの比較から確認できます。
楓のまとめ|分布・地域差・不交付団体の集中先を観察する

ここまでの分布・地域差・不交付団体・政令市を一通り並べると、市区町村の財政力指数の構造が3つの観察事実に整理できます。価値判断ではなく、データの形そのものを確認します。
「市区町村の財政力指数」という指標を、6つの図解で並べてみると、平均と最上下、地域差、政令市の位置、不交付団体の集中先という4つの軸で構造が浮かびます。指標そのものに優劣をつけるのではなく、観察できた事実を3つに整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、市区町村の財政力指数は「全国平均0.49を中心とした左偏右テールの分布、約33倍の最上下格差、特定地域への不交付団体集中」という3つの構造を同時に抱えていることが分かります。指数が高い自治体には原子力立地・工業集積・大都市住宅地という限定的な経済基盤があり、低い自治体には離島・山間部の小規模村という地理条件があります。「住みやすい街」「財政が健全な街」を選ぶ際に、財政力指数は経済基盤の量を測る指標として有用ですが、行政サービスの質や住民生活の満足度を直接表すものではない点を踏まえて読むことが必要です。
よくある質問(FAQ)

市町村の財政力指数を読むときは、3年平均か単年度か・市町村平均か都道府県本体か・1.0境界の意味の3点をセットで確認してください。同じ指数でも、この3点が変わると読み取れる物語が変わります。
Q1. 財政力指数が高い自治体に住むと、住民にどんなメリットがあるのか?
理論上は地方交付税に頼らず自前の税収で行政運営ができるため、住民税の独自減免(住民税1.0%軽減、配偶者特別控除拡大など)や、児童手当の上乗せ・学校教育費補助・公共施設使用料の軽減といった独自施策に税収を回しやすくなります。一方、財政力指数が高い自治体には大規模工場・原子力施設・避暑地などの限定的な経済基盤が背景にあり、人口規模が小さい村では将来の財政自立性が産業集積に依存する構造的リスクも併存しています。指数が高いことと住民サービスの優劣を単純に対応させるのは難しい指標です。
Q2. なぜ飛島村は財政力指数が2倍近いのか?
愛知県飛島村(人口約4,500人)には、名古屋港の臨海工業地帯の一部として、大規模な物流倉庫群と製造業の事業所が集積しています。基準財政需要額(行政コストの想定)は人口規模に比例して小さい一方、基準財政収入額(自前で見込まれる地方税収)は事業所からの固定資産税・法人住民税で押し上げられるため、収入÷需要の比率(=財政力指数)が大きく1.0を超え、令和6年度は1.99と全国最上位です。原子力立地の青森県六ヶ所村、福島県大熊町、新潟県刈羽村、佐賀県玄海町なども、同じ仕組みで指数が押し上げられています。
Q3. 不交付団体は今後、増えるのか減るのか?
令和6年度は83団体(前年度77団体)と6団体増えました。令和7年度はさらに増加し85団体(都道府県1+市町村84)に達する見込みです。背景には、コロナ禍後の景気回復による地方法人税収の増加と、固定資産税評価替えに伴う税収押し上げがあります。一方、長期的には人口減少と高齢化に伴う基準財政需要額の増加圧力、円安局面の終了による輸出企業の税収減リスクなど、減少要因も並行しています。「不交付団体は構造的に増える/減る」と一方向に断言できる状況ではなく、年度ごとに増減する状態が続く見通しです。
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