
「光熱・水道費は都道府県でどれだけ違うのか」という問いには、まず月額の内訳と県別の地理パターンを並べて見るのが近道です。電気・ガス・上下水道の3つを同じ軸で重ねると、地域差を生む要因がはっきり浮かびます。
家計調査によれば、二人以上の世帯の光熱・水道費は月額平均19,229円(2024年)。電気代が約半分(52%)、ガス代・上下水道料が各21%、他の光熱(灯油等)が6%という構成です。都道府県庁所在市別では、電気代の月額が最も高い福井市(約17,500円)と最も低い神戸市(約9,100円)で月額8,400円・年額換算で約10万円の差があり、最高地域と最低地域で約1.9倍の開きが生まれています。
本記事では、総務省「家計調査」家計収支編 二人以上の世帯の用途分類データ(2022〜2024年平均および2024年年平均)をもとに、電気・ガス・上下水道の3指標を都道府県別に可視化します。47都道府県庁所在市の電気代マップ、TOP10とBOTTOM10のランキング、3指標構成比、前年比変動、地域差の3要因という複数の図解を重ねることで、自分の住む地域の光熱・水道費が全国の中でどの位置にあるかを観察していきます。
日本の家庭の電気代は、都道府県でどれだけ違うのか。
月額で約1.9倍の差。最も高い福井市と最も低い神戸市で年約10万円の開きがある。
差月8,425円(年額換算 約10万円・約1.9倍差)
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
光熱・水道費はどう構成されているのか

まず全国平均で見ると、光熱・水道費の月額は約19,200円。その半分強が電気代、残りをガス代と上下水道料がほぼ同程度で分け合う構造です。電気代の比重が大きいことが、都道府県別の差にも直結します。
家計調査の二人以上の世帯における2024年年平均の光熱・水道費は月額19,229円でした。電気代10,027円、ガス代4,109円、上下水道料4,032円、他の光熱(灯油・薪等)1,061円という内訳です。電気代が全体の52.1%を占め、ガス代と上下水道料が各21%、他の光熱が5.5%という比率になっています。
光熱・水道費は消費支出全体の7.66%。家計の月額消費支出250,929円のうち、約13分の1がこのカテゴリーに使われている計算です。電気代の比重が圧倒的に大きいため、後段で見る都道府県別の差も、電気代の地域差が主導する形になります。
都道府県庁所在市別ランキング:高い10市と低い10市

都市別の電気代を高い順・低い順それぞれ10件並べると、上位は北陸・東北・中国山陰、下位は関西沿岸・九州北部に集中します。北と南、内陸と沿岸という地理的なパターンが視覚的に浮かびます。
電気代の月額が最も高いのは福井市(17,510円)で、富山市・松江市・山形市・金沢市・福島市・山口市・青森市・徳島市・鳥取市と続きます。上位10市のうち北陸3県(福井・富山・石川)がすべて入り、東北4県(山形・福島・青森・秋田は除外)も上位に並びます。寒冷地・降雪地帯で暖房需要が大きく、家屋の延床面積が広い傾向と整合します。
一方、最も低いのは神戸市(9,085円)で、福岡市・長崎市・宮崎市・熊本市・京都市・鹿児島市・千葉市・横浜市・津市と続きます。関西沿岸(兵庫・京都)と九州北部(福岡・長崎)が下位に集中し、温暖な気候と都市インフラの規模の経済が効いている地域が並びます。最高と最低で約1.9倍の差があり、月額で約8,400円、年額換算では約10万円の開きが生じています。
47都道府県マップで見る電気代の地理分布

ランキングを地図にすると、地理的なパターンがより直感的になります。色の濃い県(電気代が高い)が日本海側に固まり、太平洋側の大都市圏と九州南部で色が淡くなる、という流れが一目で読み取れます。
タイルマップで47都道府県庁所在市の電気代月額を5階調で色分けすると、北陸3県と山形・島根が最濃の階調に入り、東北の青森・福島・秋田・岩手や中国地方の鳥取・山口・徳島が次の階調を占めます。日本海側・寒冷地で色が濃く、太平洋ベルトと九州南部で色が淡くなる構造が地図全体で確認できます。
一方、関東・東海・関西の大都市圏は中位〜下位の階調にとどまり、都市の規模の経済と温暖な気候が電気代を抑える要因として働いています。九州・沖縄は南九州が最淡寄り、沖縄が中位という分布で、暖房需要が少ない地域でも冷房や除湿の費用が一定量発生していることを示します。
2023年から2024年への前年比変動

光熱・水道費は年によって動きが大きい費目です。2024年は前年に比べ4指標すべてが減少しました。とくにガス代の下げ幅が大きく、暖冬と政府支援措置の影響が読み取れます。
2023年から2024年にかけて、光熱・水道費の4指標すべてが前年比で減少しました。電気代は10,222円→10,027円で△195円(−1.91%)、ガス代は4,527円→4,109円で△418円(−9.23%)と大幅減、上下水道料は4,048円→4,032円で△16円(−0.40%)でほぼ横ばい、他の光熱は1,070円→1,061円で△9円(−0.84%)の小幅減でした。
合計では2023年19,867円から2024年19,229円へと△638円(−3.21%)の減少。背景には、2024年の暖冬による暖房需要の減少と、政府の電気・ガス料金支援措置の継続による単価抑制があります。ただし、これは2022〜2023年に急騰した光熱費が高止まりからやや戻った水準であり、長期的には2019年以前の水準より高い状態が続いています。
地域差はなぜ生まれるのか — 3つの要因

「北陸・東北が高い」「関西・九州が低い」というパターンは偶然ではなく、構造的に説明できます。気候、エネルギー構成、水道事業の経営条件という3つの要因が複合して都道府県別の光熱・水道費を作っています。
第1の要因は気候です。寒冷地・降雪地帯では冬期の暖房需要が大きく、電気・ガス・灯油の使用量がいずれも増加します。北陸3県と東北各県が電気代上位に並ぶ最大の理由はここにあり、家屋の延床面積が広く部屋数が多いことも消費量を押し上げています。
第2の要因はエネルギー構成です。家計調査の「ガス代」は都市ガスとプロパンガス(LPガス)の合算値ですが、LPガス比率が高い地方では単価が高めになり、都市ガス普及率の高い大都市部では単価が抑えられます。北陸地方ではオール電化普及率が高く、ガス代が低い代わりに電気代がさらに上昇するという構造もあります。第3の要因は水道事業の経営条件で、人口が散在し水源が遠い自治体では配水コストが高く、上下水道料に反映されます。これら3要因の組み合わせが、都道府県別の差を生んでいます。
3つの観察事実で整理する
「光熱・水道費は都道府県でどれだけ違うのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、月額構成・地理分布・前年比変動・構造要因がそれぞれ別の角度から地域差を映し出していることを示してきました。数値そのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「光熱・水道費が高い/安い」という話は、住む地域の気候、その地域で主に使われているエネルギーの形態、自治体の水道事業の経営条件という構造的な要因が複合して決まっていることが分かります。月額1.9倍・年約10万円の地域差は、単純な節約努力では埋まらない構造的な差として整理できます。自宅の光熱・水道費を全国平均や同じ地域の平均と比べるときも、こうした構造を念頭に置いておくと、節約の余地と構造的に避けられない部分を切り分けて考えやすくなります。
よくある質問(FAQ)

光熱・水道費の数値を読むときは、家計調査の3つのクセを押さえておくと誤解を避けられます。「都道府県」ではなく「都道府県庁所在市」であること、ガス代が都市ガスとLPガスの合算であること、年平均と直近月の値は別物であることの3点です。
Q1. なぜ「都道府県」ではなく「都道府県庁所在市」のデータなのですか?
家計調査の地域区分は、各都道府県の庁所在市(札幌市・東京都区部・那覇市等)と政令指定都市(川崎市・相模原市・浜松市・堺市・北九州市)を調査単位としているためです。各都道府県の全体平均ではなく、その県の庁所在市の数値であることに注意が必要です。郊外や山間部では実態と差がある可能性があるため、本記事の数値はあくまで県庁所在市レベルの参考値として読んでください。
Q2. 家計調査の「ガス代」には都市ガスとプロパンガス(LPガス)の両方が含まれますか?
含まれます。家計調査の「ガス代」は、都市ガスとLPガスの利用者の支払額が合算された平均値です。地域や住居形態によって都市ガスとLPガスの構成比は大きく異なるため、自宅の状況によって平均値との乖離が出やすい費目です。一般にLPガスは都市ガスより単価が高いため、LPガス世帯が多い地方ではガス代が高めに出る傾向があります。
Q3. 2024年の光熱費は前年より減っているのに、体感では高い気がします。なぜですか?
同じ数字でも、短期で見るか長期で見るかで結論が変わります。2024年の光熱・水道費は前年(2023年)と比べると合計で△3.21%減少しましたが、2019年など2022〜2023年の急騰前と比べると依然として高い水準です。また、2024年の減少は暖冬と政府の電気・ガス料金支援措置による単価抑制が大きく、消費量自体は減っていない可能性があります。体感の「高さ」は2022年以前の水準が基準になっていることが多く、その意味では「依然として高い」感覚と「前年からは下がった」事実の両方が成立しています。
Q4. 自分の家の電気代が平均より高い/低い場合、何が要因として考えられますか?
住んでいる地域(気候)、住居の延床面積、世帯人数、エネルギー形態(オール電化/ガス併用)、契約しているプランがそれぞれ要因になります。たとえば、4人世帯のオール電化住宅と2人世帯のガス併用マンションでは、同じ地域でも電気代が2倍以上違うことがあります。本記事の数値は二人以上の世帯(平均世帯人員2.88人)の平均なので、世帯人数や住居条件が大きく異なる場合は単純比較が難しい点に注意してください。
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