
農業従事者の50年の推移は、折れ線で1975年から2025年まで一気に並べると、減少の歩幅と「定義の変わり目」が同時に見えてきます。数の減少だけでなく、年齢構成や担い手の中身の変化も、別々の図解で重ねて整理していきます。
日本の基幹的農業従事者(自営農業を主な仕事としている個人経営体の世帯員)は、1975年(昭和50年)の489万人から、2025年(令和7年)の103万6千人へと、50年で約5分の1になりました。農林水産省の2025年農林業センサス(確定値・2026年3月31日公表)によると、直近5年(2020→2025)の減少は32万7千人(24.0%)で、これは統計的に比較可能な1985年以降で最大の減少率です。絶対数の減り幅は近年むしろ小さくなっていますが、母数が半減したため減少率としては大きくなっています。
本記事では、農林業センサスの確定値と累年統計をもとに、基幹的農業従事者数の50年推移・年齢構成の変化・主副業別の構造・経営体の縮小と法人化・労働力の質的転換を、複数の図解で整理します。なお集計範囲は時期により全農家→販売農家→個人経営体と変遷しており、定義変更を含む一系列である点を、最初に断っておきます。
日本の農業を主に担う人は、50年でどこまで減ったのか。
50年で約5分の1。残った担い手の約7割が65歳以上。
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50年で489万人→103.6万人・約5分の1に

50年の推移は、表よりも折れ線で見ると、減少の歩幅と定義の変わり目が一目で並びます。山を描くのではなく、ほぼ一貫した下り坂が続いている形が見えてきます。
基幹的農業従事者数は、1975年の489万人から段階的に減り続け、1985年346万人、2000年240.0万人、2015年175.7万人、2020年136.3万人を経て、2025年は103.6万人となりました。50年間で約385万人、割合にして約79%の減少です。
直近5年(2020→2025)の減少は32万7千人(24.0%)で、これは統計的に比較可能な1985年以降では最大の減少率です。年平均では約6.5万人ペースの減少にあたります。絶対数の減り幅は1975〜1985年の頃より小さくなっていますが、母数が半減したため、減少率としてはむしろ近年のほうが大きくなっています。
なお、この系列の集計範囲は、おおむね1980年以前が全農家、1985〜2015年が販売農家、2020年以降が個人経営体と変遷しています。農林業センサスの累年統計はこれらを一系列として接続していますが、厳密な定義の連続性はなく、減少率の年次比較は1985年以降が比較可能とされています。図中の縦の点線は、その定義の変わり目を示しています。
減ったのは数だけではない①|平均年齢67.7歳・約7割が65歳以上

年齢の変化は、割合と実数を一緒に見ると、別々の動きが浮かびます。割合は頭打ちでも、実数は減っている――その二つを同じ図に重ねてみます。
2025年の基幹的農業従事者の平均年齢は67.7歳でした。2000年は62.2歳だったので、この四半世紀で平均年齢は約5.5歳上がっています。65歳以上が占める割合は、2015年の64.9%、2020年の69.6%、2025年の69.6%と推移し、直近5年では約7割でほぼ頭打ちとなっています。
一方で、従事者総数が半減したため、65歳以上の「実数」自体は2015年の114万人から2020年94.9万人、2025年72.1万人へと減少局面に入っています。割合では高齢層が多数を占めたまま、その高齢層の人数そのものも減り始めている、という二つの動きが同時に起きている形です。ここでは事実の観察として並べています。
減ったのは数だけではない②|担い手の「中身」も変わった

担い手の中身は、主業・準主業・副業的の3区分を並べると、どの層が速く減っているかが見えます。減り方には差があり、構成比も変わってきています。
個人経営体を主副業別にみると、2025年は主業経営体が19万0千、準主業経営体が8万7千、副業的経営体が51万9千となりました。直近5年の減少率は、主業が17.7%、準主業が38.9%、副業的が21.9%です。最も急減したのは準主業経営体で、5年で約4割減りました。
減り方に差がある一方で、構成比をみると副業的経営体が依然として65.2%と最多を占めています。主業経営体の構成比は23.9%で、5年前より1.6ポイント上昇しました。数の減少と並行して、どの種類の経営体が残っているかという「中身」も変わってきていることがわかります。
経営体は10年で約4割減・一方で法人化と規模拡大が進む

経営体の数は棒で、法人の数は別の数値で添えると、「全体は減り、法人は増える」という二極の動きが同じ図で見えてきます。
農業経営体数は、2015年の137.7万から2020年107.6万、2025年83.6万へと、10年で約4割減りました。一方で、法人経営体は2.7万から3.4万へと増加し、直近5年でも10.1%増えています。縮小が続く全体のなかで、法人経営体だけが増える形になっています。
規模の面でも変化がみられます。1経営体当たりの経営耕地面積は2.5haから3.6haへ拡大し、20ha以上の経営体が経営耕地面積全体の49.7%を占めるに至りました。地域差は大きく、1経営体当たりの経営耕地面積は北海道が33.7ha、都府県が2.6haです。経営体の数が減る一方で、農地が一定の経営体に集約され、法人化と規模拡大が同時に進んでいることが読み取れます。
担い手は「家族自営」から「法人・雇用労働」へ

労働力は、自営・常雇い・役員構成員の3系列を並べると、減っている線と増えている線が同じ図に共存しているのが見えてきます。
農業の労働力を区分別にみると、個人経営体の自営の中核である基幹的農業従事者は、2015年175.7万人から2025年103.6万人へと24.0%減りました。一方で、農業経営体の常雇い(年間7か月以上の契約で雇った人)は5年で54.4%増の24万2千人、団体経営体の役員・構成員は21.0%増の9万8千人となっています。
自営の担い手が減る一方で、雇用労働や法人の構成員が増えている形です。担い手の構造が、家族による自営から、法人経営や雇用労働へと移りつつあることが、数字の上で観察できます。ここでは増減の事実を並べるにとどめ、評価は加えていません。
そもそも「農業従事者」とは|4つの指標の関係

「農業従事者」と一口に言っても、統計上は複数の指標が入れ子になっています。包含図にすると、本記事の主役がどこに位置するのかが整理できます。
農林業センサスには、農業に関わる人を表す指標が複数あります。最も広いのが農家世帯員で、その中に農業従事者(満15歳以上で調査前1年間に自営農業に従事した世帯員)、さらにその中に農業就業人口、そして最も狭い基幹的農業従事者(ふだんの主な仕事が自営農業の世帯員)が含まれます。
本記事の主役指標は、最も狭い「基幹的農業従事者(個人経営体)」です。総農家数や農業就業人口とは対象範囲が異なるため、他の記事の数字と比べる際は、どの指標を指しているかの確認が必要です。なお農業就業人口は、2015年を最後に公表が終了しています。
楓のまとめ|「数の減少」の先に「担い手構造の転換」がある

ここまでの推移・年齢・主副業・経営体・労働力を一通り並べると、「数の減少」だけでなく「担い手構造の転換」が同時に進んでいることが、図解の対比で確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「日本の農業従事者はどれだけ減ったのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、量の減少と、年齢・主副業・経営形態という構造の変化が同時に進んでいることを示してきました。データそのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「農業従事者が減った」という量の変化の先に、年齢構成の変化と、家族自営から法人・雇用労働への担い手構造の転換が同時に進んでいることが浮かびます。「どれだけ減ったのか」への答えは、どの指標を、どの期間で見るかで表情を変えますが、量と構造の両方を並べて見ることが、いまの日本の農業の担い手をめぐる景色を最もよく映しています。
よくある質問(FAQ)

農業従事者の数字を読むときは、どの指標か・どの期間か・どの定義かの3点をセットで確認してください。同じ「農業従事者」でも、この3点で読み取れる数字が変わります。
Q1. 日本の農業従事者は今どのくらいですか?
2025年(令和7年)の確定値で、基幹的農業従事者(自営農業を主な仕事としている個人経営体の世帯員)は103万6千人です。5年前から32万7千人(24.0%)減少しました。出典は農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(確定値)」(2026年3月31日公表)です。
Q2. 50年でどれだけ減りましたか?
基幹的農業従事者数は1975年の489万人から2025年の103.6万人へ、50年で約5分の1(▲約79%)になりました。ただし集計範囲は時期により全農家→販売農家→個人経営体と変わっており、定義変更を含む系列である点に留意が必要です。減少率の年次比較は、統計的には1985年以降が比較可能とされています。
Q3. 農業従事者の平均年齢は何歳ですか?
2025年の基幹的農業従事者の平均年齢は67.7歳で、65歳以上が69.6%を占めます。2000年は平均62.2歳だったので、この四半世紀で高齢化が進みました。一方、従事者総数の半減により、65歳以上の実数自体は近年は減少局面に入っています。
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