
「日本の難民認定は少ないのか」という問いに答えを出す前に、まず数字の定義をそろえる必要があります。この記事では「認定数」「受け入れ数」「認定率」という3つの別々の指標を、6つの図解で区別しながら並べていきます。
「日本の難民認定は少ない」という報道の一方で、世界では1億人を超える人が故郷を追われています。UNHCRによると、2025年末時点の世界の強制移動は1億1,780万人で、10年ぶりの減少となりました。同じ2025年、日本が難民と認定したのは187人です。補完的保護対象者474人、人道的な配慮による在留許可525人を加えると、日本が在留を認めたのは計1,186人でした(出入国在留管理庁・2026年3月27日公表)。
本記事では、入管庁とUNHCRの一次データのみを用いて、世界地図・受け入れ上位国の横棒・日本の申請と認定の推移・G7の認定率・保護の内訳・20年推移という6つの図解で現状を整理します。「認定数」「受け入れ数」「認定率」は定義が異なる3つの別々の指標です。この3つを区別しながら、数字を中立に並べて観察していきます。
世界で故郷を追われた人は何人いて、日本は何人に在留を認めているのか。
2025年に日本が難民と認定したのは187人。補完的保護474人・人道配慮525人を加えた計1,186人に在留を認めました。同じ2025年末、世界の強制移動は1億1,780万人です。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
世界で故郷を追われた人は何人いるのか

20年分の推移は、表よりも1本の折れ線で見るほうが、増加の角度と2025年の転換点がはっきり分かります。まず世界全体の規模感から確認していきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
UNHCRの「Global Trends 2025」によると、2025年末時点で故郷を追われた人(強制移動)は世界で1億1,780万人(詳細値では1億1,783万人)でした。内訳は難民4,160万人、庇護希望者900万人、国内避難民6,870万人などです。前年の1億2,320万人から減少し、強制移動の総数が前年を下回ったのは10年ぶりのことです。
減少の主な背景としてUNHCRが挙げているのは帰還の増加です。2025年には1,470万人(難民440万人・国内避難民1,030万人)が出身地や出身国に戻りました。一方で同レポートは、帰還の多くが厳しい環境下で行われたとも注記しています。新たに国外へ逃れた人も540万人にのぼり、流出と帰還が同時に大きく動いた年でした。
出身国には偏りがあります。難民など国際的な保護を必要とする人の7割超は、アフガニスタン・南スーダン・スーダン・シリア・ウクライナ・ベネズエラの6か国の出身です。少数の国の情勢が、世界全体の数字を大きく動かす構造になっています。
なお、避難した人の58%にあたる6,870万人は国境を越えていない国内避難民です。難民や庇護希望者として国外へ逃れる人よりも、自国の中で避難を続ける人のほうが多いというのが、強制移動の実像です。このほか、国籍を持たない無国籍者も世界で約450万人が報告されています。
難民を受け入れているのはどの国か|世界地図で見る分布

「どの国が受け入れているか」は、国名のリストより世界地図の色分けで見ると、地理的な偏りがひと目で分かります。濃い色が集まる場所に注目してください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
地図の濃い色は、南米・中東・アフリカ・欧州の一部に集まっています。UNHCRによると、難民など国際的な保護を必要とする人の65%は出身国の隣国に滞在し、68%は低中所得国が受け入れています。受け入れの中心は、紛争地の隣にある国々です。地図で日本を見ると、「1万〜10万」の階級(4万2,450人)に位置しています。
この分布は、避難の多くが陸路で隣国へ向かうという地理的な事情を反映しています。たとえばスーダンからの避難はチャドやエジプトに、アフガニスタンからの避難はイランやパキスタンに向かってきました。受け入れ数の地図は、各国の政策だけでなく、紛争地との距離をそのまま映し出す図でもあります。
受け入れ数の上位国と日本|数字で並べる

上位国と日本を同じ物差しで並べるため、この横棒は全てUNHCRの同一定義(受け入れ総数=ストック)で統一しています。桁の違いに注目してください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年末の受け入れ数の上位は、コロンビア280万人、ドイツ270万人、トルコ240万人、ウガンダ190万人、イラン170万人、チャド150万人、パキスタン130万人でした(UNHCR公表の丸め値。図はRefugee Data Finderの詳細値で、コロンビアは281万人です)。上位7か国のうちドイツを除く6か国は、いずれも主要な出身国の隣国・近隣国です。
同じ定義で主要先進国を並べると、フランス79万人、英国58万人、米国46万人、カナダ42万人、日本は4万2,450人でした。ここで数えているのは「2025年末時点でその国に滞在する難民等の総数(ストック)」であり、日本の「2025年に難民と認定した187人(フロー)」とは別の指標です。この2つを混同すると、桁の異なる数字を誤って比べることになります。
日本の難民認定|申請・認定はどう推移してきたか

日本の申請数と認定数は桁が約60倍違うため、1つのグラフに重ねず、上下2段に分けて別々のスケールで描いています。それぞれの形の違いを見比べてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の日本の難民認定申請者数は11,298人で、前年より約8.7%減少しました。申請者の国籍は92か国にわたり、主な国籍はタイ・ミャンマー・インド・スリランカ・バングラデシュです。長期で見ると、申請は2017年の19,629人をピークにコロナ禍で急減し、2023年に13,823人へ戻った後、2年連続で減少しています。
認定数の推移は申請とは別の形を描いています。入管庁の別表によると、2010年代の認定数は年間6〜47人で推移していましたが、2021年74人、2022年202人、2023年303人、2024年190人、2025年187人と続きます。2022年以降、認定数は4年連続で180人を超えており、2010年代とは水準が変わりました。
処理の面では、2025年の一次審査の処理数が14,832人と前年から約77.1%増加しました。入管庁は審査の迅速化により滞留事案の解消が進展したと説明しています。また、認定をしない処分に対する審査請求は7,702人で前年比約135.1%増となりました。主な国籍はスリランカ・トルコ・パキスタン・タイ・インドです。
2025年、日本は誰にどんな形で在留を認めたのか

見出しで報じられる「187人」の外側には、別の仕組みで在留を認められた999人がいます。合計1,186人の内訳を1本の帯にまとめました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年に日本が難民認定制度全体の運用で在留を認めたのは計1,186人でした。内訳は、難民条約上の難民と認定した187人、補完的保護対象者と認定した474人、いずれにも認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた525人です。「難民認定」は日本の保護の一部であり、その外側に2つの仕組みがあります。
補完的保護対象者の認定は、難民条約上の迫害のおそれとは別に、紛争などから逃れた人を保護するために2023年12月に始まった制度で、申請の主な国籍はウクライナです。一方でこの3区分は法的地位がそれぞれ異なるため、合計の1,186人を「難民1,186人」と読み替えることはできません。制度上の位置づけの違いも、数字とあわせて押さえておきたい事実です。
フローの数字も確認しておきます。2025年の一次審査では14,832人が処理され、難民認定183人・不認定9,214人(うち79人は補完的保護対象者と認定)・取下げ等5,435人でした。審査請求では4,676人が処理され、理由ありとされたのは8人(難民4人・補完的保護4人)でした。
認定率の国際比較|算定方法とあわせて読む

認定率は分母の取り方で値が変わる指標です。この図では算定式を図の中に明記し、G7全てを同じ式で計算し直しました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
認定率には決まった単一の定義がありません。本記事では「難民認定数÷(難民認定数+不認定数)」で統一して計算しました。日本の2025年は、一次審査と審査請求を合わせると187人÷12,823人で約1.5%、一次審査だけなら183人÷9,397人で約1.9%です(筆者試算)。同じ年の同じ日本でも、分母の取り方で認定率は約1.5%から約1.9%まで変わります。
同じ式でG7各国を計算すると、2025年はカナダ66.9%、英国36.9%、ドイツ28.4%、フランス23.9%、米国23.4%、イタリア6.4%、日本1.5%でした(UNHCRの審査決定データから筆者試算)。ただし各国では申請者の出身国構成・審査制度・統計上の区分が異なります。率の高低をそのまま制度の評価に直結させることはできない、という限界とあわせて読む必要があります。
率と実数はあわせて読む必要があります。同じ2025年のデータで、認定率66.9%のカナダの難民認定数は52,831人、認定率1.5%の日本の認定数は187人でした(UNHCRの審査決定データ)。率は審査結果の割合を、実数は認定の規模を示しており、どちらか一方だけでは全体像をつかめません。
なお、UNHCR自身も国際比較のために「難民認定率」と「総保護率」という2種類の率を使い分け、各国当局が算出した率をそのまま報告しない方針を採っています。分母と区分をそろえてから比べるという考え方は、国際機関の統計実務でも共通しています。本記事の算定式の明示も、この考え方に沿ったものです。
楓のまとめ|3つの指標を並べて見えたこと

ここまで6つの図解で、世界の全体像と日本の数字を並べてきました。評価ではなく観察として、3つの事実に整理します。
「日本の難民受け入れは多いのか、少ないのか」という問いに、本記事は結論を出しません。その代わり、答えを考えるために必要な数字を、定義を区別して並べてきました。図解から読み取れることを、3つの観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実が示すのは、単一の数字では答えが出ない構造です。「認定数」「受け入れ数」「認定率」のどの指標を、どの定義で見るかによって、同じ日本の姿は違って見えます。だからこそ本記事は、出典と算定式を明示した数字を並べることに徹しました。判断の材料として、それぞれの図解を読み返していただければと思います。
よくある質問(FAQ)

難民の統計を読むときは、「いつ時点の数字か」「フローかストックか」「分母は何か」の3点を確認すると、数字の食い違いのほとんどが説明できます。
Q1. 「難民認定数」と「難民受け入れ数」はどう違うのですか?
「難民認定数」は、その年の1年間に難民と認定した人数(フロー)です。日本の2025年は187人でした。一方「難民受け入れ数」は、年末時点でその国に滞在している難民等の総数(ストック)を指すことが多く、UNHCRの統計では日本は4万2,450人(2025年末)です。片方は1年間の動き、もう片方は累積の結果を数えており、そのまま比べられる数字ではありません。
Q2. 日本の難民認定率はどうやって計算しているのですか?
本記事では「難民認定数÷(難民認定数+不認定数)」で計算しています。2025年は、一次審査と審査請求を合わせて187人÷12,823人=約1.5%、一次審査のみなら183人÷9,397人=約1.9%です(いずれも筆者試算・取下げ等は分母から除外)。分母に申請数を使う方法や取下げを含める方法もあり、計算方法によって値が大きく変わるため、認定率を見るときは算定式の確認が欠かせません。
Q3. 補完的保護対象者とは何ですか?
難民条約上の「迫害を受けるおそれ」の要件には該当しないものの、紛争などから逃れてきた人を保護の対象とする仕組みで、日本では2023年12月に認定制度が始まりました。申請の主な国籍はウクライナで、2025年には474人が補完的保護対象者と認定されています。難民認定とは法的地位が異なりますが、在留を認めて保護するという点で難民認定制度全体の一部を構成しています。
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