
受け入れと送り出し、二つの留学生統計は別々の調査で、数え方も違います。同じ物差しに乗せず、42年の推移と20年の推移をそのまま並べて見比べると、非対称な動きがはっきり浮かびます。
日本で学ぶ外国人留学生は、2025年5月1日現在で408,069人となり、前年から71,361人(21.2%)増えて過去最多を更新しました。一方、海外で学び始めた日本人留学生は2024年度で91,054人。前年度から1,875人(2.1%)増えたものの、過去最多だった2018年度の115,146人には届いていません。受け入れは過去最多の更新が続き、送り出しは回復しながらもピークに未達という非対称が、いまの留学生統計の姿です。
本記事では、日本学生支援機構(JASSO)の「外国人留学生在籍状況調査」と「日本人学生留学状況調査」、文部科学省の公表資料という一次情報をもとに、受け入れ42年・送り出し20年の推移、在学段階別・出身国別の内訳、期間別の構成を図解で整理します。二つの調査は数え方が異なるため、定義の違いも注記しながら観察していきます。
日本の留学生数は、いまどう動いているのか?
受け入れは過去最多の40.8万人。送り出しはピークの約79%。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
外国人留学生42年の推移|1万人台から40万人台へ

42年分の年次データは、折れ線1本にすると山と谷の位置が一目で分かります。2021年の底から右肩上がりに立ち上がる、直近4年の角度に注目してみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
JASSOの調査によれば、外国人留学生は1983年の10,428人から増加を続け、2003年に109,508人と初めて10万人を超えました。その後も2019年の312,214人まで拡大しましたが、コロナ禍の入国制限が続いた2020年・2021年は2年連続で減少し、2021年には242,444人まで縮小します。
転換点は2022年以降です。2023年は279,274人(前年比20.8%増)、2024年は336,708人(同20.6%増)、そして2025年は408,069人(同21.2%増)と、3年連続で前年比20%を超える増加が続きました。コロナ底の2021年から4年で約1.7倍となり、初めて40万人台に乗せたのが2025年の位置です。
なお、この系列には数え方の変更点があります。日本語教育機関に在籍する留学生は、在留資格「留学」「就学」の一本化に伴い2011年度から調査対象に加わり、以降は同機関を含めた総数が計上されています。1983年からの長期推移を読むときは、2011年前後で対象範囲が広がっている点に注意が必要です。
増加の中身|在学段階別と出身国別の構成変化

7つの在学段階を2年分の横棒で並べると、どこが伸びたのかが長さの差で見えます。上2段の伸び幅が、そのまま全体の増加をほぼ説明しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
在学段階別に見ると、2025年に最も多いのは日本語教育機関の140,174人(前年比30.7%増)で、専修学校(専門課程)の106,829人(同39.8%増)が続きます。増加数ではこの2区分だけで63,360人となり、全体の増分71,361人のうち約89%を日本語教育機関と専修学校が占める計算です(編集部再計算)。大学(学部)は92,442人、大学院は60,013人で、こちらも過去最多ながら伸び率は一桁台にとどまります。
出身国・地域別|ネパールが10万人台に
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
出身国・地域別の上位は、中国131,097人、ネパール100,239人、ベトナム43,366人、ミャンマー29,413人、スリランカ17,626人の順です。ネパールは前年の64,816人から1年で約1.5倍に増えて初めて10万人台に乗り、ミャンマー(前年比77.2%増)、スリランカ(同43.7%増)と合わせて、南西アジア圏からの受け入れが大きく伸びました。
補足として、JASSOのデータページに掲載されたHTML表では、増減率の欄が前年度比と異なる計算で表示されている箇所があります。本記事の増減率は、公表された人数から前年度比として編集部が再計算した値を使い、文部科学省の公表資料と一致することを確認しています。
日本人留学生20年の推移|2018年度の山と2020年度の谷

送り出し側の折れ線は、2020年度に垂直に近い谷が現れるのが特徴です。谷の深さと、その後の戻りの高さを、2018年度の山と見比べてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本人留学生は、系列の起点となる2004年度の18,570人から増加を続け、2018年度に115,146人と過去最多を記録しました。ところが新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年度は1,487人と、前年度の107,346人から一気に縮小します。年度中に留学を開始した人を数えるフローの統計であるため、渡航が止まった影響がそのまま深い谷になって現れました。
回復は2021年度の10,999人、2022年度の58,162人、2023年度の89,179人と進み、2024年度は91,054人まで戻りました。ただし増加幅は前年度比1,875人(2.1%)と小さくなっており、2024年度の水準は過去最多だった2018年度の約79%にとどまります。JASSOのプレスリリースも、2018年度と同程度には達していないと明記しています。
この調査の「日本人留学生数」は、協定等に基づくかどうかにかかわらず、当該年度中に海外の大学等で留学を開始した人を日本の大学等が把握した数です。協定等に基づかない留学は2009年度から調査対象に加わっており、2024年度の内訳は協定等に基づく57,262人、基づかない33,792人でした。
送り出しの中身|3人に2人が1か月未満の短期

期間別の横棒は、最上段の長さだけが突出しているのが読みどころです。総数の戻りと期間の構成は、別々の動きをしています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2024年度の期間別内訳では、1か月未満が60,301人と全体の66.2%を占めます(編集部再計算)。前年度比でも1か月未満は5.7%増と唯一伸びており、1か月以上の各区分はいずれも前年度から減少しました。総数の回復は、短期プログラムの増加によって支えられている構図です。
留学先の上位は、米国12,627人(前年度比6.6%減)、オーストラリア9,329人(同1.8%増)、韓国8,360人(同0.3%減)です。地域別ではアジアが36,904人(同7.0%増)と最も多く、北米は19,363人(同8.4%減)でした。行き先の面でも、近距離のアジア圏が伸び、北米が減るという構成の変化が進んでいます。
受け入れと送り出しを並べる|ストックとフローの対比

二つの数字を1枚に置くときは、数え方の違いを図の中に書き込むのが約束ごとです。大小を競わせるためではなく、定義の違いごと観察するための並置です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
外国人留学生の408,069人は5月1日時点の在籍数(ストック)、日本人留学生の91,054人は年度中に留学を開始した人数(フロー)で、両者は別調査・別定義です。単純比較はできませんが、規模の目安として並べると約4.5倍の開きがあります(編集部再計算)。参考となる海外機関把握の日本人留学者数(ユネスコ・米国IIE等の2023年統計・文部科学省集計)は50,139人で、こちらも対象定義が異なるため単純な接続はできません。
身近な物差しに置き換えると、受け入れの42年は約39倍への拡大でした(📊筆者試算:408,069人÷10,428人≒39.1倍)。一方、送り出し側は3人に2人が1か月未満の短期です(📊筆者試算:60,301人÷91,054人≒66.2%)。規模が育ち続ける受け入れと、短期化しながら戻る送り出しという二つの動きが、同じ2026年5月の公表資料の中に並んでいます。
楓のまとめ|二つの調査が示す非対称

ここまでの図解を一通り並べると、受け入れと送り出しが別々のリズムで動いていることが確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「日本の若者は内向きになった」という言説は、送り出しの数字とともに語られることが少なくありません。本記事はその当否を判定する立場を取りませんが、二つの調査を並べた図解は、言説を検討するための材料をいくつか示しています。見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、「留学生が増えた」「留学離れが続く」という一言では、どちらの側も言い表せないことが分かります。受け入れは規模と構成の両方が動き、送り出しは総数の回復と期間の短期化が同時に進んでいるのが、データから見える現在の姿です。どの調査を、どの定義で、どの期間で見るかを添えて数字を読むことが、留学生統計との付き合い方になります。
よくある質問(FAQ)

留学生のグラフを読むときは、調査の対象・数え方・期間の3点をセットで確認してください。同じ「留学生数」という言葉でも、この3点が変わると別の統計になります。
Q1. 外国人留学生数と日本人留学生数は、そのまま比較できますか?
そのままの比較はできません。外国人留学生数は各年5月1日時点で在籍している人数(ストック)、日本人留学生数は当該年度中に留学を開始した人数(フロー)で、調査も定義も別だからです。本記事の対比図はあくまで規模の目安であり、同一指標の大小比較ではありません。海外機関把握の日本人留学者数(2023年統計で50,139人)はさらに別の定義で、これらの系列を混ぜて接続することもできません。
Q2. 「日本の若者は内向きになった」はデータで確かめられますか?
一つの答えを出せる質問ではありません。総数だけを見れば、2024年度の91,054人は2018年度ピークの約79%で、回復途上という読み方ができます。一方で、1か月未満の短期が66.2%を占め、1か月以上の区分がいずれも減っているという構成の変化もあります。どの指標を「外向き・内向き」の物差しにするかで結論が変わるため、本記事は事実の並置にとどめ、判定はしていません。
Q3. 留学生数の長期グラフは、どの年から比較できますか?
系列の切れ目が3つあります。外国人留学生は2011年度から日本語教育機関が調査対象に加わり、以降は同機関を含む総数が計上されています。日本人留学生は協定等に基づかない留学が2009年度から調査対象で、2013年度調査からは高等専門学校・専修学校(専門課程)も対象です。海外機関把握の系列は2013年統計で対象定義が変わり、2023年統計からOECD出典が除外されました。長期比較ではこの3点をまたがない範囲で読むのが安全です。
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