
「都道府県によって大学進学率はどれくらい違うのか」という問いには、47都道府県のタイルマップに進学率を当てはめて、地理的な分布を一目で確認するのが近道です。色の濃淡で地域差を可視化し、上位と下位の構造を観察します。
大学進学率は、住んでいる都道府県によって大きな差があります。文部科学省の「各都道府県における高等教育の現状に関する調査研究」(2025年5月公表)によれば、2023年度の都道府県別の大学(学部)進学率は最高77.6%(東京都)から最低40.1%(秋田県・宮崎県)まで、37.5ポイントの差があります。一方、全国の大学(学部)進学率は2025年度58.64%で、2016年以降10年連続で過去最高を更新し続けています。地域差は大きいまま、全国平均は緩やかに上昇を続けるという二つの動きが同時に進行しています。
本記事では、文部科学省の令和7年度学校基本調査の確定値(2025年12月公表)と「各都道府県における高等教育の現状に関する調査研究」(2025年5月公表)の一次情報を、47都道府県タイルマップ・70年の長期推移・男女別推移・大学数との相関の4つの図解で整理します。「大学進学率」には大学(学部)のみ・大学+短大・高等教育機関全体など複数の数え方が並存するため、それぞれの数値を区別して提示し、数え方によって地理分布や順位がどう変わるかも併せて観察していきます。
47都道府県の大学進学率はどれくらい差があり、全国平均はどこに位置するのか。
全国の大学(学部)進学率は2025年度58.64%で10年連続の過去最高。都道府県別では最高77.6%(東京都)から最低40.1%(秋田県・宮崎県)まで37.5ポイントの差があり、上位は都市部、下位は東北・九州に集中している。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
47都道府県を地図で見る|進学率の地理的分布

47都道府県のタイル色を5階調で並べると、関東・関西の都市部に濃い色(高水準)が集中し、東北・九州・沖縄に淡い色(相対的に低い水準)が並ぶ構造が一目で見えます。同じ調査の大学のみ進学率では順位が変わる点にも注目してください。
2023年度の都道府県別大学等進学率(大学+短大、過年度卒含む)は、最高が京都府73.0%、最低が沖縄県46.3%で、その差は26.7ポイントです。上位5県は京都府・東京都・神奈川県・大阪府・兵庫県で、すべて関東・関西の都市部に集中しています。下位5県は沖縄県・鹿児島県・山口県・秋田県・岩手県で、九州・中国・東北地方に並んでいます。
注意したいのは、同じ年度の都道府県別データでも、文部科学省の別調査(「各都道府県における高等教育の現状」2025年5月公表)が公表する大学(学部)のみの進学率では、最高が東京都77.6%、最低が秋田県・宮崎県40.1%となり、差は37.5ポイントに拡大します。短大進学率は近年大きく減少しており、京都府で7.3%、東京都で5.7%ある一方、最下位の沖縄県では3.7%にとどまるなど、数え方を変えるだけで上位と下位の順位や差の大きさが変わります。本記事は47県の完全データが揃う大学等進学率(大学+短大)でマップを作成しています。
上位県と下位県の地理的偏りは、県内の大学数の偏りと重なります。東京都は約138校、大阪府56校、愛知県53校に対して、鳥取県・島根県・徳島県は2〜4校。県内の進学先選択肢の差が、進学率の差の一因として観察されます(因果は別問題で、世帯所得・親の学歴・地元産業構造などとの関係も研究で指摘されています)。
高校卒業後の進路の全体像|大学・短大・専門・就職

帯グラフで進路を全体構成として並べると、大学進学だけが進路ではないという当たり前の事実が見えてきます。専門学校・短大・就職を含めて、卒業者100%の中で大学進学58.3%がどの位置にあるかを確認します。
2025年度(令和7年度)の高校卒業者は全国で95万5,335人。そのうち大学(学部)進学者は58.3%、短大(本科)進学者は2.6%、専門学校進学者は14.4%で、高等専門学校4年への進学者などを合わせると高等教育機関全体への進学率は85.4%に達します。一方で就職者は13.8%で、これは前年から0.2ポイント低下し、過去最低の水準となりました。
注目したいのは「大学進学」を表す数値の使い分けです。「卒業者に占める大学進学者の割合58.3%」と「18歳人口を分母とした大学(学部)進学率58.64%」は、分母が違うため別の数値です。前者は分母が高校卒業者数、後者は分母が3年前の中学校等卒業者数(≒18歳人口相当)です。本記事のヒーロー数値58.64%は後者で、文部科学省の学校基本調査が「大学進学率」として公式に定義している算定式に対応します。
短大と専門学校は近年いずれも縮小傾向にあります。短大進学率はピーク時の1992年(13.4%)から、2025年には2.6%まで減少。専門学校進学率も2020年代に入ってからほぼ横ばいから微減で推移しています。代わりに大学進学率が緩やかに上昇する形で、高校卒業後の進路は「大学一極集中」の方向に動いてきました。
70年で約7.5倍|大学進学率の長期推移

長期の折れ線で並べると、進学率は単調な右肩上がりではなく、いくつかの節目があります。とくに2010年に進学率が初めて5割を超えた瞬間は、大学進学が「少数派」から「多数派」へと反転した日本社会の構造変化を示しています。
全国の大学(学部)進学率は、戦後復興期の1955年に約8%、高度経済成長中盤の1970年に約17%、団塊ジュニア世代の大学入試がピークだった1995年に32.1%、そして2010年に50.9%で初めて5割を超えました。それ以降も上昇は続き、2025年度(令和7年度)は58.64%。1955年と比べると、70年で約7.5倍に拡大しています。
2016年以降は10年連続で過去最高を更新しています。背景としては、修学支援新制度の段階的拡充、4年制大学の学部新設、地方私大の定員確保による進学機会の拡大などが挙げられます。一方、2026年以降は18歳人口の減少が加速するため、進学率が上昇しても大学進学者の絶対数は減少する局面に入ると文部科学省も推計しています。
グラフを読むときに注意したいのは、2025年公表時に文部科学省が算定式を改定した点です。新算定式では分母(18歳人口相当数)に特別支援学校(中学部)卒業者を含めるよう変更され、過年度のデータも全てさかのぼって再集計されました。本グラフは新算定式での再集計値を使用しているため、過去の文献で見かける旧算定式の数値とは若干異なる場合があります。年次比較は新算定式の値で揃えれば一貫性が保たれます。
男女差は15ポイントから約2ポイントへ縮小

男女別の折れ線を並べると、女子の大学(学部)進学率が60年間で約12倍に拡大し、男女差が大きく縮小した経緯が見えます。短大進学者の減少と入れ替わるように女子が学部進学を選ぶようになった点も併せて読み取れます。
1965年の大学(学部)進学率は、男子20.7%・女子4.6%で、男女差は約15ポイントありました。1980年代まで男女差は10ポイント以上で推移し、女子は短大進学を選ぶ割合が大きい時代が続いていました。1995年でも男子40.7%・女子22.9%と、約18ポイントの開きがあります。
2000年代から女子の学部進学率が急上昇し、2010年には男子56.4%・女子45.2%(11ポイント差)に縮小。さらに2020年男子57.7%・女子50.9%を経て、2025年は男子59.7%・女子57.6%で約2ポイント差にまで収束しました。女子の学部進学率は60年で約12倍に拡大しています。
同期間に短大進学率は逆の動きをしています。女子の短大進学率はピーク時の1992年に23.8%、その後継続的に低下して2025年には4%台まで縮小。短大から学部へという進路の置き換わりが進んだ結果、女子の高等教育機関進学率自体は男子を上回るようになっています。2025年度の女子の大学・短大進学率は62.5%、男子は60.2%と、合算では女子の方が高い構造になっています。
上位5県と下位5県|大学数と地域性

上位と下位を並列のカードで並べると、進学率の高低と県内の大学数の多寡が連動している様子が見えます。上位は大学が30校以上、下位は数校という分布の差は、進学先の選択肢の差そのものを反映しています。
出典:文部科学省 令和5年度学校基本調査「卒業後の状況調査」/大学数は同 令和7年度学校基本調査による集計(KSステーション)。
大学等進学率の上位5県は京都府73.0%・東京都72.8%・神奈川県68.1%・大阪府67.6%・兵庫県67.1%で、すべて関東・関西の大都市圏です。県内の大学数は東京都が約138校、大阪府56校、神奈川県33校、兵庫県36校、京都府34校と、いずれも30校を超えています。地元での進学先選択肢が豊富で、近隣府県も含めれば通学範囲内に多様な大学が揃う立地です。
下位5県は沖縄県46.3%・鹿児島県46.4%・山口県46.9%・秋田県47.5%・岩手県47.6%。県内の大学数は沖縄県8校、鹿児島県6校、山口県10校、秋田県7校、岩手県6校で、上位県と比べて1桁の差です。進学希望者の多くは県外の大学に進学することになり、家計負担や下宿の必要性などが進学のハードルとして指摘されています。
別の指標である大学(学部)のみの進学率では、文部科学省の「各都道府県における高等教育の現状」(2025年5月公表)が、東京都77.6%・京都府72.8%・神奈川県68.3%などを上位、秋田県・宮崎県40.1%・鹿児島県41.0%・沖縄県41.5%などを下位として公表しています。短大進学者の多寡で順位が入れ替わる点が、数え方の違いを理解するヒントになります。
大学数との関係|進学率を決める構造

47点の散布図で並べると、大学数と進学率には明らかに正の相関があり、東京は右上の極端値として浮かびます。一方で、奈良県のように県内の大学数が少なくても進学率が高い例外も観察できます。
横軸を県内の大学数、縦軸を大学等進学率にして47都道府県をプロットすると、右上方向(大学多・進学率高)と左下方向(大学少・進学率低)に分布が伸びる正の相関が観察されます。本記事の集計時点での相関係数は約0.5で、中程度の正の相関です。
注目したい例外もあります。奈良県は県内大学数が10校と中規模ですが、大学等進学率は64.5%で全国8位。北に京都、西に大阪・兵庫があり、通学圏内に多くの大学が揃うため、自宅から県外通学する進学者が多い構造です。一方、福井県も大学数7校で進学率62.7%(10位)と、人口規模に対して進学率が高い県です。文部科学省の「自県進学率」データでは、奈良県の自県進学率は20%未満で、進学者の多くが県外流出していることが分かります。
本記事は大学数と進学率の相関を観察事実として可視化しますが、因果関係の断定は避けています。世帯所得、保護者の最終学歴、地元産業の人材需要、奨学金制度の利用率、私立大学の学費水準、通学範囲の交通インフラなど、複数の要因が同時に作用していることが研究で指摘されています。「大学数が増えれば進学率が上がる」という単純な構造ではなく、進学を選択しやすい社会的・経済的環境が複合的に絡み合った結果として、いまの地域差があります。
楓のまとめ|数え方で見える景色が変わる、大学進学率の現在

ここまでの図解を一通り並べると、大学進学率は「数え方」で見える景色が変わる指標であることが、長期推移と地理分布の両方から確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「都道府県別の大学進学率はどれくらい違うのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、地理分布・長期推移・男女別推移・大学数との相関の4つの視点から、いまの大学進学率を映してきました。大学進学率という1つの言葉のなかに、複数の数え方と複数の物語が並存しています。データそのものに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、いまの「大学進学率」の景色は、どの数え方を選ぶか・どの期間で見るか・どの性別の動きに注目するかによって、別々の物語として見えてくることが分かります。37.5ポイントある都道府県差と、10年連続更新中の全国平均と、約2ポイントまで縮小した男女差が、同時に成立しているのが、いまの大学進学率の構造です。「大学進学率は高いのか低いのか」「地域差は広がっているのか縮まっているのか」への答えは、どの指標を、どの期間で、どの分母で見るかで変わる、という観察事実そのものが、進学率をめぐる景色を最もよく映しています。
よくある質問(FAQ)

大学進学率のグラフを読むときは、数え方・期間・指標の3点をセットで確認してください。同じデータでも、どの数え方を選ぶかで読み取れる物語が変わります。
「大学進学率」にはいくつかの数え方があると聞きますが、本記事はどれですか?
本記事の主役数値「58.64%」は大学(学部)進学率(過年度卒含む・令和7年度)です。文部科学省の学校基本調査で「大学学部の入学者数 ÷ 3年前の中学校等卒業者数」で算定される数値で、最も検索されている「大学進学率」と整合します。これに対して、都道府県別マップでは大学+短大進学率(大学等進学率)を使用しています。47都道府県の完全データが公開されているのがこちらの指標のためです。両者を比較すると順位が変動し、たとえば大学のみだと東京77.6%が首位、大学+短大では京都府73.0%が首位となります。他にも「卒業者に占める大学・短大進学率61.4%」「高等教育機関進学率85.4%」など複数の数え方があり、ファクトチェックボックスで併記しています。
なぜ都道府県差が約37ポイントもあるのですか?
本記事はこの問いに因果の断定はしません。観察事実として、上位5県(東京・京都・神奈川・兵庫・大阪)はすべて関東・関西の都市部で県内の大学数が30校以上、下位5県は東北・九州に集中して県内の大学数が10校以下という構造があります。世帯所得、保護者の最終学歴、地元での職業選択肢、進学校の分布、首都圏への通学のしやすさなど、複数の要因が研究者から指摘されています。本記事では大学進学率と県内大学数との正の相関を散布図で可視化するに留め、因果の解釈は読者に委ねます。文部科学省の2040年推計では、東京都80.5%・山口県38.5%と地域格差はさらに拡大する見込みも示されています。
令和7年度から算定式が変わったと聞きました。過去のデータと比較できますか?
令和7年度(2025年度)の公表(2025年12月26日)から、進学率等の算定式の分母に「特別支援学校(中学部)卒業者」を含めるよう変更されました。文部科学省は過去の年次データもさかのぼって全て再集計し、e-Statの「(参考資料)年次統計」に新算定式の値を公開しています。本記事の70年推移グラフは新算定式による再集計値で揃えているため、年次比較の一貫性は保たれています。なお、長期推移の数値は再集計の影響で従来公表値と若干異なる場合があります。最新の確定値は文部科学省ページでご確認ください。
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