
「健康保険の仕組み」は、窓口で払う1〜3割の割合と、国全体の医療費を誰が負担しているかを、別の図にして並べると整理しやすくなります。資金の流れと財源の3本柱を1枚ずつ見ていきます。
病院の窓口で支払うのは、医療費の1〜3割にあたる一部負担です。残りの7〜9割は、加入する公的医療保険から医療機関へ支払われます。その原資は保険料と公費(税)で、令和5年度の国民医療費48兆915億円を財源別にみると、保険料が50.2%、公費が37.5%、患者負担が11.8%という3本柱で構成されています。
本記事では、厚生労働省の「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」などの一次情報をもとに、健康保険の資金の流れ・年齢別の自己負担割合・国全体の財源構造を、3つの図解で整理します。あわせて、2026年5月に成立した医療保険制度改正法のポイントも、事実に絞って確認していきます。
窓口で払う1〜3割の裏で、医療費は誰が負担しているのか。
窓口負担→保険給付→保険料・公費が原資→国全体では患者負担は約1割。令和5年度の国民医療費48兆915億円が土台となる。
- 01 窓口負担 1〜3割 受診時に患者が支払う一部負担
- 02 保険給付 7〜9割 残りを保険者が医療機関へ支払う
- 03 原資 50.2% 財源の半分は保険料(公費37.5%)
- 04 患者負担 11.8% 国全体の医療費に占める患者負担の割合
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
健康保険は「誰が・いくら」負担しているのか|資金の流れ

資金の流れは、文章で追うより4つのノードと矢印で見るほうが早いです。患者・保険者・医療機関・公費の関係を、矢印の向きと太さで一度に確認できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本は国民皆保険制度をとっており、すべての人が公的医療保険に加入します。加入者(被保険者)は、勤務先や住む地域に応じて、協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険・後期高齢者医療制度などの保険者に保険料を納めます。この保険料が、医療費を支える原資の一つになります。
病気やけがで受診すると、患者は窓口で医療費の一部(1〜3割)を支払います。残りの7〜9割は、保険者が医療機関へ支払う仕組みです。医療機関は診療の対価をレセプト(診療報酬明細書)で保険者に請求し、保険者が審査のうえ支払います。
保険料だけでは医療費全体を賄いきれないため、国と地方公共団体が公費(税)を投入しています。皆保険を維持するための原資は、保険料と公費の組み合わせで構成されており、患者が窓口で払う一部負担は、その全体の一部分にあたります。
窓口で払う1〜3割の意味|年齢で変わる自己負担割合

窓口の割合は年齢で段階的に変わります。就学前から75歳以上までを横並びの段階図にすると、どの年代がどの割合かが一目で分かります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
窓口で支払う自己負担割合は、年齢によって決まります。義務教育就学前は2割、就学後から69歳までは3割が原則です。70〜74歳は2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割(一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割)となっています。
ここで示した1〜3割は、あくまで窓口で支払う「一部負担」の割合です。同じ受診でも、患者が払うのは一部で、残りは公的保険から給付されています。たとえば3割負担の人が1,000円を窓口で払う場合、医療機関が受け取る診療報酬の総額は、その背後でより大きな金額になっています。
なお、医療費が高額になったときには、自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」があります。このため、窓口での負担割合がそのまま家計の負担総額になるとは限りません。窓口の割合と、最終的に家計が負担する額は、別の仕組みで調整されています。
国全体では医療費を誰が支えているか|財源の3本柱

個人の窓口負担から視点を引いて、国全体の医療費を財源別に見ます。100%の積み上げバーにすると、3本柱の比率が並んで見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
令和5年度(2023年度)の国民医療費は48兆915億円で、前年度から3.0%増加し、過去最高となりました。人口一人当たりでは38万6,700円です。この総額を財源別に分けると、医療費が「誰によって支払われたか」の構成が見えてきます。
厚生労働省の確定値によれば、財源の内訳は保険料が24兆1,383億円(50.2%)、公費が18兆331億円(37.5%)、患者負担が5兆6,865億円(11.8%)です。保険料が約半分、公費が約4割、患者負担が約1割という構成になっています。
保険料はさらに、被保険者が28.2%、事業主が22.0%に分かれます。公費は国庫が24.8%、地方が12.7%です。ここでの患者負担11.8%は、国全体の医療費に占める割合であり、窓口で払う1〜3割の負担割合とは数え方が異なります。高額療養費による払い戻しなども反映された結果として、全体では約1割という水準になっています。
2026年の制度改正で何が決まったか

2026年は医療保険制度の改正法が成立した年です。ここでは予測や評価は行わず、成立した事実と、決まっている見直し項目だけを確認します。
2026年(令和8年)5月29日、健康保険法等の改正法が参議院本会議で可決・成立しました。厚生労働省の公表によれば、主な内容には、高額療養費制度の見直し、市販薬と効果や成分が似ている「OTC類似薬」の保険給付の見直し、妊娠・出産に対する支援の強化などが含まれます。
高額療養費制度については、月額の自己負担上限を段階的に引き上げる一方、長期療養者の負担に配慮する仕組みも明記されました。OTC類似薬については、対象となる医薬品に薬剤費の一部を「特別の料金」として上乗せする制度が創設されます。これらの施行時期は項目ごとに異なり、段階的に進む予定です。
改正の具体的な対象範囲や運用方針には、今後の有識者検討会などで詰められる部分も残っています。本記事では、改正法が成立したという事実と、決まっている見直しの方向性を整理するにとどめ、個々の家計への影響や制度の是非についての見通しは扱いません。
楓のまとめ|窓口の割合と国全体の負担構造は別の集計

ここまでの3つの図解を重ねると、健康保険の負担構造が、窓口の割合と国全体の財源という2つの視点で整理できます。3つの観察事実にまとめます。
「健康保険の仕組み」を図解で並べると、窓口で払う割合と、国全体で医療費を誰が支えているかが、別々の数え方であることが見えてきます。それぞれの事実を、価値判断を加えずに観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、健康保険の負担は、受診のたびに払う窓口の一部負担と、国全体で医療費を支える財源構造という、2つの層で成り立っていることがわかります。窓口の割合と国全体の患者負担割合を別の集計として読み分けることが、制度を正確に理解する出発点になります。
よくある質問(FAQ)

健康保険の数字を読むときは、窓口の割合・国全体の財源・改正の事実の3点を分けて確認してください。混同しやすい点をQ&Aで整理します。
Q1. 窓口で3割払っているのに、患者負担は全体の1割なのですか?
窓口の負担割合と、国全体の医療費に占める患者負担の割合は、別の集計です。窓口で払う1〜3割は、受診ごとの一部負担の割合です。一方、国全体の患者負担11.8%は、令和5年度の国民医療費48兆915億円のうち患者が負担した分の割合で、高額療養費による払い戻しなども反映された後の数字です。このため、両者は単純に一致しません。
Q2. 保険料と税金は、どちらが多く医療費を支えているのですか?
令和5年度の財源別でみると、保険料が50.2%、公費(税)が37.5%です。保険料が約半分、公費が約4割を占めています。保険料は被保険者28.2%と事業主22.0%に、公費は国庫24.8%と地方12.7%に分かれます。残りの患者負担は11.8%です。数字の上では、保険料が最も大きな財源となっています。
Q3. 2026年の改正で自己負担は増えるのですか?
2026年5月29日に医療保険制度改正法が成立し、高額療養費制度の見直しやOTC類似薬の保険給付の見直しなどが決まりました。高額療養費の自己負担上限は段階的に引き上げられる一方、長期療養者への配慮も明記されています。ただし施行時期は項目ごとに異なり、個々の家計への影響は条件によって変わるため、本記事では具体的な増減の見通しは扱いません。最新の内容は厚生労働省の公式情報でご確認ください。
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