
「少年犯罪は増えているのか」という問いには、直近の数年と戦後60年の折れ線を同じ図面に置いて見比べるのが近道です。どの期間で切り取るかで、増えているとも減っているとも読める形が一目で分かります。
「少年犯罪が増えている」という報道を目にする機会が増えていますが、警察庁の統計では何が起きているのでしょうか。2025年(令和7年)の刑法犯少年(14〜19歳)の検挙人員は24,416人で、戦後最少だった2021年の14,818人から4年連続で増えました。前年からは2,654人、12.2%の増加です。
一方で、最も多かった1983年(昭和58年)の196,783人と比べると、2025年は約8分の1にあたります。直近4年で見れば増加、60年で見れば約8分の1という二つの事実が同時に成り立っているのが、少年犯罪の統計の現在の姿です。なお検挙人員は警察が検挙した人数であり、発生した犯罪の数ではありません。
本記事では、警察庁「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況」と「令和6年中における少年の補導及び保護の概況」資料35を一次情報として、1966年から2025年までの60年の推移、少年人口と人口比、20歳以上との比較、罪種と年齢の内訳、そして同じ年の意識調査を6点の図解で整理します。全国の治安全体の推移は日本の治安は悪化したかで扱っています。
少年犯罪は増えているのか?
2025年は24,416人。戦後最少の2021年から4年連続で増えたが、最多だった1983年の約8分の1。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
60年で刑法犯少年の検挙人員はどう動いたか

60年分の点をすべて打つと、山と谷の位置がそのまま見えてきます。表で追うより、1983年の頂と2021年の底、そして直近の戻りが一本の線でつながる形を見るのが一番早いです。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
刑法犯少年の検挙人員は、系列の起点である1966年(昭和41年)に148,249人でした。1970年代前半に10万人台まで下がったあと、1978年から急な上り坂になり、1983年(昭和58年)に196,783人と戦後最多を記録します。少年人口1,000人当たりでも18.8人と、この年と前年が最も高い水準でした。
1980年代後半は19万人前後の高原が続き、平成に入ると1989年の165,053人から減少に転じます。1990年代後半には1998年の157,385人、2003年の144,404人という二つの山がありました。2004年からは18年連続で減り続け、2021年(令和3年)の14,818人が戦後最少です。ピークの1983年から見ると13分の1に近い水準でした。
2022年に14,887人とわずかに増えたのを境に、2023年18,949人、2024年21,762人、2025年24,416人と4年連続で増えています。2021年からの増加率は約64.8%、約1.6倍です。1日あたりに直すと、2025年は約67人、ピークの1983年は約539人が検挙されていた計算になります。
なお、1965年以前の刑法犯少年の検挙人員は、占有離脱物横領以外のその他の刑法犯などを含まず現行の定義と接続しないため、本記事の系列は1966年から始めています。資料35では1951年に126,519人、1964年に151,346人という戦後の第一・第二の山も記録されています。
少年の人口は半分になっている

人数の折れ線だけでは、分母の変化が隠れてしまいます。14〜19歳の人口を棒で、人口1,000人当たりの検挙人員を線で重ねると、人数の減り方と人口比の減り方が別物だと分かります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
警察庁が人口比の分母に使う14〜19歳の少年人口は、1966年の13,415千人から2024年の6,515千人へ、58年で半減しました。ピーク年の1983年は10,487千人で、2024年はその62.1%です。分母が半分になれば、同じ人数でも人口比は倍になります。検挙人員が約8分の1になっても、人口比は約5分の1にとどまるのはこのためです。
少年人口1,000人当たりの検挙人員は、1982年と1983年の18.8人が最高で、2021年の2.2人が最低でした。2025年は3.8人で、2023年の2.9人、2024年の3.3人から3年続けて上がっています。同じ世代1,000人のうち約4人が検挙された計算で、1983年は約19人でした。
なお、2025年の人口比について、警察庁の資料間で3.8人と3.7人の二つの値があります。分母に使う人口の基準日が異なるためで、本記事は資料35の長期系列と同じ少年課の集計に接続する3.8人を採用しています。この点はファクトチェックBOXに要確認として記録しています。
20歳以上と比べると何倍か

少年だけを見ていると、多いのか少ないのかの物差しがありません。20歳以上の人口比を同じ目盛りで並べると、差の大きさと、その差がどう縮んだかが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
人口1,000人当たりの検挙人員を少年と20歳以上で比べると、少年は1966年から2024年まで一度も20歳以上を下回っていません。ただし差の大きさは年代で大きく変わります。1983年は少年18.8人に対して20歳以上2.9人で6.5倍、1998年には16.9人と1.7人で9.9倍まで開きました。
2000年代以降は少年の人口比だけが急速に下がり、2021年には2.2人と1.5人で1.5倍まで縮みます。2024年は3.3人と1.6人で2.1倍です。20歳以上の人口比はこの20年ほぼ1.5〜2.5人の範囲で横ばいなのに対し、少年の人口比だけが大きく動いたことが、二本の線の形の違いに表れています。
検挙人員全体に占める少年の割合は、2024年が11.3%(21,762人÷191,826人)、2025年が12.2%(24,416人÷200,663人)です。20歳以上の検挙人員は2025年に176,247人で、前年から3.6%増えています。2025年の20歳以上の人口比は公表資料に載っていないため、図の20歳以上の線は2024年で止めています。
何の罪で検挙されているか

総数の増減だけでは中身が分かりません。包括罪種別に積み上げると、どの罪種が総数を動かしているのか、そして新しい罪名がどこに計上されているのかが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の24,416人を包括罪種別に見ると、窃盗犯が12,727人で全体の52.1%を占めます。次いで粗暴犯4,589人、その他の刑法犯3,935人、風俗犯1,354人、知能犯937人、凶悪犯874人の順です。2025年はすべての罪種で前年を上回り、なかでも窃盗犯が1,642人、粗暴犯が591人増えました。
窃盗犯のうち万引きは6,169人で、前年から1,170人(23.4%)増えています。粗暴犯では傷害が2,587人(前年比+305人)、恐喝が561人(+140人)でした。警察庁は「令和7年の犯罪情勢」で、窃盗犯と粗暴犯の増加が総数の増加に大きく影響し、万引き・傷害・恐喝の増加がそれぞれの罪種の増加に大きく影響したとしています。
風俗犯は2023年の636人から2024年に1,220人、2025年に1,354人へ増えましたが、このうち性的姿態撮影等処罰法違反が2024年638人、2025年718人を占めます。2023年7月に施行された新しい罪で、警察庁は不同意性交等・不同意わいせつも旧罪名と単純比較できないと注記しています。凶悪犯874人の内訳は、殺人60人、強盗499人、放火29人、不同意性交等286人です。
再犯者は7,912人で再犯者率は32.4%、男子が21,033人、女子が3,383人(13.9%)でした。特殊詐欺の推移は特殊詐欺の認知件数と被害額の推移で、警察側の統計は警察官の不祥事の推移で扱っています。
何歳が最も多いか

少年といっても14歳から19歳まで幅があります。年齢別の横棒に人口比を添えると、人数の多さと同年齢の中での割合を同時に読めます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の年齢別では、16歳が5,664人で最も多く、全体の23.2%を占めます。次いで17歳4,711人、15歳4,150人、18歳3,481人、14歳3,478人、19歳2,932人の順です。同年齢人口1,000人当たりでも16歳が5.3人と最も高く、19歳の2.7人がいちばん低くなっています。
学職別では高校生が10,444人(42.8%)で最も多く、中学生5,151人、有職少年4,451人、無職少年2,551人、大学生1,172人、その他の学生647人と続きます。前年からの増加率は中学生が16.8%、有職少年が16.0%と高く、14歳の検挙人員は前年比19.4%増と、年齢別で最も伸びました。
14歳未満は刑法犯少年に含まれず、「触法少年」として補導人員が別に集計されています。2025年の触法少年(刑法)の補導人員は9,178人で、2021年の5,581人から4年連続で増えました。本記事の主役系列である検挙人員には含めていません。少年に限らない都道府県ごとの犯罪率は犯罪率が低い都道府県ランキングで確認できます。
体感と統計は同じ年にどう並ぶか

意識調査と検挙統計は、別々に見るとそれぞれ正しい数字です。同じ年のものを1枚に並べることで、両者がどう離れているのか、あるいは近いのかを、評価を加えずに観察できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
警察庁が全国の15歳以上5,000人に行った「治安に関するアンケート調査」では、「ここ10年で日本の治安は悪くなった」と答えた人が2023年71.9%、2024年76.6%、2025年79.7%と3年続けて増えています。同じ3年間の少年人口1,000人当たり検挙人員は2.9人、3.3人、3.8人で、こちらも増えています。
悪くなったと答えた人が挙げた理由は、テレビや新聞で犯罪報道を見ることが増えたが76.4%、インターネットニュースで犯罪報道を見ることが増えたが61.1%で、自分や身近な人が被害に遭った、遭いそうになったは14.2%でした。想起する犯罪では詐欺が72.0%と最も多く、少年非行を治安悪化の要因として挙げた割合は公表資料にありません。この設問は治安全般についてのもので、少年非行についての設問ではないことも留意点です。
少年非行に絞った意識調査は、内閣府が2015年7月に20歳以上3,000人に行った「少年非行に関する世論調査」が最新です。おおむね5年前と比べて少年による重大な事件が増えていると思うと答えた人は78.6%でした。同じ期間の刑法犯少年の検挙人員は、2010年の85,846人から2015年の38,921人へ54.7%減っています。
楓のまとめ|期間の取り方で二つの事実が同時に成り立つ

ここまでの6点の図解を一通り並べると、少年犯罪の統計は「どの期間で見るか」と「何で割るか」で読み方が変わることが確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「少年犯罪は増えているのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、直近4年の増加と60年の大幅な減少が同時に成り立っていることを示してきました。人数と人口比、少年と20歳以上、統計と意識調査、それぞれが違う形を描きます。データに優劣をつけるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、2025年の24,416人という数字は、戦後最少からの4年連続増という短期の動きと、戦後最多の約8分の1という長期の水準の両方を同時に含んでいることが分かります。「増えている」と「減っている」は矛盾ではなく、期間の取り方と分母の違いから同時に導かれる観察事実として整理できます。今後の推移を見るときも、人数と人口比、そして直近と長期の4つの物差しを並べて置くことが、数字を読み違えないための近道になります。
よくある質問(FAQ)

少年犯罪のグラフを読むときは、期間の取り方・分母の取り方・定義の範囲の3点をセットで確認してください。同じ数字でも、この3点が変わるだけで読み取れる形が変わります。
Q1. 少年犯罪は増えているのですか、減っているのですか?
期間の取り方で答えが変わります。警察庁の統計では、刑法犯少年の検挙人員は戦後最少だった2021年の14,818人から4年連続で増え、2025年は24,416人です。一方、最多だった1983年の196,783人と比べると約8分の1です。少年人口1,000人当たりでも、18.8人から3.8人に下がっています。直近の増加と長期の減少はどちらも統計上の事実で、どちらか一方だけを見ると印象が変わります。
Q2. 2022年の少年法改正で統計の数え方は変わりましたか?
改正少年法(2022年4月1日施行)では18歳と19歳が「特定少年」とされましたが、警察統計の「刑法犯少年」は改正後も14歳以上20歳未満のまま集計されており、系列は連続しています。ぐ犯少年については特定少年が対象から除外されました。警察庁の資料の注記に基づく整理で、改正が検挙人員を増やしたか減らしたかについて、本記事では因果を述べていません。
Q3. 何の罪で検挙される少年が多いのですか?
2025年は窃盗犯が12,727人で全体の52.1%を占め、そのうち万引きが6,169人です。次いで粗暴犯4,589人、その他の刑法犯3,935人の順です。警察庁は「令和7年の犯罪情勢」で、窃盗犯と粗暴犯の増加が総数の増加に大きく影響し、万引き・傷害・恐喝の増加がそれぞれの罪種の増加に大きく影響したとしています。これは警察庁の記述であり、本記事の推論ではありません。
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