
「外国人の犯罪は増えているのか」という問いは、警察庁の同じ資料の中に、正反対に読める数字が同時に置かれている題材です。件数・人員・割合・母数の4つを、1つの結論にまとめずに順番に並べていきます。
「外国人犯罪は増えているのか」という問いに対して、警察庁の確定値は3つの数字を同時に示しています。ここで扱うのは統計上の区分である「来日外国人」で、永住者や永住者の配偶者等、特別永住者は含まれません。その来日外国人による刑法犯の検挙件数は、2025年に17,614件でした。最も多かった2005年の33,037件に対して、およそ半分です。
一方で、直近で最も少なかった2022年の8,548件からは、3年で約2.1倍になりました。さらに、刑法犯の検挙件数全体に占める来日外国人の割合は2025年に5.9%で、これは1989年以降で最も高い値です。減ったとも、最も高いとも読める3つの数字が、同じ資料の中に並んでいます。
2025年に来日外国人が検挙された事件は、刑法犯と特別法犯を合わせて25,480件でした。このうち窃盗犯が12,226件、入管法違反が5,121件で、この2つで全体の68.1%を占めます((12,226 + 5,121) ÷ 25,480)。凶悪犯は295件で、全体の1.2%でした(295 ÷ 25,480)。
本記事では、警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢【確定値版】」と出入国在留管理庁の公表資料をもとに、検挙件数・検挙人員・割合・在留外国人数の4つを、それぞれ別の図で並べます。1つの結論に圧縮せず、それぞれの数字が何を数えたものかを確認しながら見ていきます。
外国人による犯罪は、増えているのだろうか。
ピークの約半分。同時に、37年で最も高い割合。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
統計上の「来日外国人」は誰を指すのか

数字を読む前に、その数字が誰を数えたものかを確かめておきます。在留外国人4,125,395人のうち、どの在留資格が統計に入らないのかを帯で示しました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
「来日外国人」とは、我が国に存在する外国人のうち、定着居住者(永住者、永住者の配偶者等及び特別永住者)、在日米軍関係者及び在留資格不明者を除いた外国人をいいます。
出典:警察庁「令和7年警察白書」第4章第3節第1項(注1)
警察庁が「来日外国人犯罪」として集計しているのは、この定義にあてはまる人の検挙です。令和7年末時点の在留外国人4,125,395人のうち、永住者947,125人、永住者の配偶者等56,568人、特別永住者266,896人の合計1,270,589人は、この区分に含まれません。在留外国人の30.8%にあたります。
帯に表れていない層もあります。在日米軍関係者と在留資格不明者は警察庁の定義で除かれており、人数は公表されていません。短期滞在者は在留外国人数そのものに含まれないため、この帯にも入っていません。帯から3区分を引いた人数が、そのまま「来日外国人」の対象人口になるわけではありません。
警察庁は資料の中で、対象人口を「令和7年6月末現在、総在留外国人数のうち、永住者、永住者の配偶者等及び特別永住者を除いた者(約349万人)」と記しています。一方、出入国在留管理庁が公表した令和7年6月末の数値から同じ3区分を差し引くと約270万人になり、両者は一致しません。差の由来は、公表資料の範囲では特定できませんでした。
検挙件数37年の推移|2005年の山と2022年の谷

37年分を1枚の折れ線にすると、山と谷と、右端の立ち上がりが同時に見えます。刑法犯と特別法犯は動きが違うので、2本の線に分けました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
来日外国人による刑法犯の検挙件数は、1989年の3,572件が37年で最も少ない値でした。そこから増加が続き、2005年に33,037件で最も多くなります。その後は減少に転じ、2022年の8,548件が2005年以降で最も少ない値になりました。37年の推移には、増加が続いた期間と、減少が続いた期間の両方が含まれています。
2023年からは3年続けて増加しています。2023年10,040件、2024年13,405件、そして2025年は17,614件でした。2005年の33,037件を100とすると53にあたります。ピークのおよそ半分という水準と、3年で約2.1倍という動きが、同じ1本の線の上に並んでいます。
特別法犯の検挙件数は別の動きをしています。2019年から2020年にかけて8,000件台に達したあと、2025年は7,866件で、前年の8,389件から6.2%減りました。刑法犯と特別法犯を合わせた総検挙件数は25,480件で、こちらは2005年の47,865件が最も多い値です。
図中の縦の破線は2012年の位置を示しています。この年に新しい在留管理制度が施行され、在留外国人数の統計の取り方が変わりました。線の位置は次の図で扱う在留外国人数の起点を示すためのもので、検挙件数の増減の理由を示すものではありません。
刑法犯の検挙に占める割合|2025年が37年で最も高い

実数の図とまったく同じ横軸で、今度は割合を並べます。同じ年が同じ位置に来るので、2枚を上下に見比べてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
警察庁は、日本人等の検挙を含む刑法犯検挙の総数に対して、来日外国人の検挙がどれだけを占めるかも公表しています。検挙件数で見ると1989年は0.5%でした。2005年に5.1%まで上がり、2010年代前半は2%台で推移します。そして2025年は5.9%で、1989年以降で最も高い値になりました。
検挙人員で見た割合も、2025年の3.7%が37年で最も高い値です。1990年代後半は1.7%前後、2010年代前半は2%前後で、2015年ごろから緩やかに上がっています。実数はピークの半分でありながら、割合は37年で最も高いという2つの事実が同時に成立しています。
この2つが同時に成り立つのは、割合の分母である刑法犯検挙の総数そのものも、同じ期間に変化しているためです。分母の推移については、日本全体の刑法犯を扱った日本の治安は悪化したかで別に整理しています。
ここで示した割合は、警察庁が公表している値であり、可視化pediaが算出したものではありません。分母は日本人等を含む刑法犯検挙の総数で、外国人の人口ではありません。したがって、この5.9%は「来日外国人の犯罪率」を意味する数字ではありません。
件数・人員・割合を同じ年で見る

3つの指標を同じ11時点で切り替えられる表にしました。タブを押すと、件数・人員・割合の面が入れ替わります。
| 年 | 総検挙件数 | 刑法犯 | 特別法犯 |
|---|---|---|---|
| 1989年 | 5,765 | 3,572 | 2,193 |
| 1995年 | 24,374 | 17,213 | 7,161 |
| 2000年 | 30,971 | 22,947 | 8,024 |
| 2005年 | 47,865 | 33,037 | 14,828 |
| 2010年 | 19,809 | 14,025 | 5,784 |
| 2015年 | 14,267 | 9,417 | 4,850 |
| 2020年 | 17,865 | 9,512 | 8,353 |
| 2022年 | 14,662 | 8,548 | 6,114 |
| 2023年 | 18,088 | 10,040 | 8,048 |
| 2024年 | 21,794 | 13,405 | 8,389 |
| 2025年 | 25,480 | 17,614 | 7,866 |
| 年 | 総検挙人員 | 刑法犯 | 特別法犯 |
|---|---|---|---|
| 1989年 | 4,618 | 2,989 | 1,629 |
| 1995年 | 11,976 | 6,527 | 5,449 |
| 2000年 | 12,711 | 6,329 | 6,382 |
| 2005年 | 21,178 | 8,505 | 12,673 |
| 2010年 | 11,858 | 6,710 | 5,148 |
| 2015年 | 10,042 | 6,187 | 3,855 |
| 2020年 | 11,756 | 5,634 | 6,122 |
| 2022年 | 9,548 | 5,014 | 4,534 |
| 2023年 | 11,534 | 5,735 | 5,799 |
| 2024年 | 12,170 | 6,368 | 5,802 |
| 2025年 | 12,777 | 7,333 | 5,444 |
| 年 | 検挙件数に占める割合 | 検挙人員に占める割合 |
|---|---|---|
| 1989年 | 0.5 | 1.0 |
| 1995年 | 2.3 | 2.2 |
| 2000年 | 4.0 | 2.0 |
| 2005年 | 5.1 | 2.2 |
| 2010年 | 2.8 | 2.1 |
| 2015年 | 2.6 | 2.6 |
| 2020年 | 3.4 | 3.1 |
| 2022年 | 3.4 | 3.0 |
| 2023年 | 3.7 | 3.1 |
| 2024年 | 4.7 | 3.3 |
| 2025年 | 5.9 | 3.7 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
件数と人員は数え方が違います。検挙件数は事件の数、検挙人員は人の数です。共犯事件の計上のしかたによって、2つは同じようには動きません。2025年の前年からの伸びは、刑法犯の検挙件数が31.4%、刑法犯の検挙人員が15.2%でした。
ピークの位置もずれています。検挙件数の最多は2005年ですが、検挙人員の最多は2004年の21,842人です。刑法犯だけで見ても、検挙件数の最多は2005年の33,037件、検挙人員の最多は2004年の8,898人でした。2025年の刑法犯の検挙人員7,333人は、ピークに対して17.6%減にとどまります。
刑法犯の検挙件数のピーク比は46.7%減、検挙人員のピーク比は17.6%減です。同じ「ピークからどれだけ減ったか」でも、件数で見るか人員で見るかで数字は大きく変わります。どちらか一方だけを取り出すと、37年の形は正しく伝わりません。
在留外国人数の推移と、この記事で割り算をしない理由

母数の動きも図で置いておきます。ただしこの図の線と、前の図の線を割ることはしません。その理由も図の下に書いています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
在留外国人数は2012年末の2,033,656人から、2025年末は4,125,395人になりました。13年でおよそ2.03倍です。2025年末は前年末から356,418人増え、出入国在留管理庁の公表資料によれば、初めて400万人を超えました。
2011年以前は「外国人登録者数」として集計されており、系列がつながりません。そのため、この図は2012年末を起点にしています。検挙件数の図が1989年から始まるのに対し、こちらは2012年からで、2つの図は対象期間が異なります。
本記事では、検挙件数や検挙人員をこの人数で割った値を掲載していません。理由は3つあります。警察庁が示す対象人口が在留外国人数からの差引きと一致しないこと、国籍別の対象人口が公表されていないこと、そして分子には短期滞在者が含まれるのに分母には含まれないことです。
分子と分母が数えている範囲がそろっていない以上、割った値は指標として成立しません。そのため、2本の線は別々の図として並べるにとどめています。母数の変化を知りたい読者は、この図の傾きと、前の図の傾きを、それぞれ別のものとして見比べてください。
2024年から2025年への変化|4つの指標

直近1年の動きだけを取り出して、4つの指標を並べました。同じ方向に動いているとは限らない、というのがこの図の要点です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総検挙件数は21,794件から25,480件へ、3,686件増えました。前年比では16.9%の増加です。刑法犯の検挙件数は13,405件から17,614件へ、4,209件増えて31.4%の増加でした。総検挙人員は12,170人から12,777人へ、607人増えて5.0%の増加です。
一方、特別法犯の検挙件数は8,389件から7,866件へ、523件減りました。4つの指標のうち、特別法犯の検挙件数だけが前年より減っています。特別法犯の検挙人員も5,802人から5,444人へ、同じく6.2%減りました。
在留外国人数の増減は、この図には含めていません。検挙件数は1年間に処理された事件の数、在留外国人数は年末時点の人数で、数えている対象も時点も異なるためです。同じ図に並べると、2つを割ってよいという印象を与えてしまいます。
2025年の25,480件の中身|罪種別の内訳

「犯罪」とひとことでまとめられている中身を、罪種別に分けて帯にしました。小さい区分も丸めずに、全12区分をそのまま出しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
刑法犯17,614件の内訳は、窃盗犯12,226件、その他の刑法犯1,824件、粗暴犯1,566件、知能犯1,368件、風俗犯335件、凶悪犯295件です。特別法犯7,866件の内訳は、入管法5,121件、薬物事犯1,565件、その他918件、銃刀法200件、風営適正化法59件、売春防止法3件でした。
窃盗犯12,226件と入管法違反5,121件の2つで、総検挙件数25,480件の68.1%を占めます。入管法違反のうち不法残留は3,457件で、入管法違反の67.5%にあたります。凶悪犯は295件で、総検挙件数の1.2%でした。
検挙人員12,777人を在留資格別に見ると、技能実習2,812人、短期滞在2,166人、留学1,521人、定住者1,469人、技術・人文知識・国際業務1,069人の順です。警察庁の公表値では、正規滞在が70.2%、不法滞在が29.8%で、令和2年以降おおむね横ばいです。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
共犯事件の割合も公表されています。2025年の刑法犯の検挙件数のうち、共犯事件が占める割合は、来日外国人が45.3%、日本人が11.5%でした。万引きでは31.8%と3.6%、住宅を対象とした侵入窃盗では70.8%と10.9%です。
共犯事件では、1件の事件に複数の人が計上されます。件数と人員の伸び方が違う背景には、この数え方の違いがあります。ただしこれは数え方の説明であって、件数や人員が増減した理由を示すものではありません。
楓のまとめ|3つの数字を1つに圧縮しない

ここまで並べた図を、観察事実として整理しておきます。どれか1つを結論にすると、残りの2つが見えなくなります。
「外国人による犯罪は増えているのか」という問いに対して、本記事で並べた図は、指標によって違う方向を向く数字を示してきました。どの指標を、どの期間で、何を分母にして見るかで、読み取れる形が変わります。優劣をつけるのではなく、観察事実として並べておきます。
5つの観察事実は、どれも同じ資料に載っている確定値です。観察1だけを取れば減ったと書けますし、観察2と観察3だけを取れば最も高いと書けます。どれか1つだけを結論にすると、ほかの数字が読者から見えなくなります。
本記事では、件数・人員・割合・母数の4つを別々の図に置き、可視化pedia側では割り算をしませんでした。数字が何を数えたものかを示したうえで、読み取りは読者に委ねます。
よくある質問(FAQ)

この記事の数字を読むときに、あらかじめ押さえておくと誤解が減る点をまとめました。
Q1. この統計は、日本にいる外国人全体の数字ですか?
いいえ。警察庁の「来日外国人」は、我が国に存在する外国人のうち、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた人を指す統計上の区分です。令和7年末時点で、永住者・永住者の配偶者等・特別永住者の合計は1,270,589人で、在留外国人4,125,395人の30.8%にあたります。この人たちの検挙は、別の枠で集計されています。
Q2. 検挙件数が3年連続で増えているのに、ピークの半分というのはどういうことですか?
見ている期間が違うためです。2022年の8,548件を起点にすると、2025年の17,614件は約2.1倍です。一方、2005年の33,037件を起点にすると、2025年は46.7%減にあたります。どちらも同じ系列の同じ数字で、起点の置き方が違うだけです。本記事では両方を同じ図に入れて、山と谷と直近の上昇が1枚で見えるようにしています。
Q3. 「刑法犯検挙に占める割合5.9%」は犯罪率のことですか?
違います。この割合の分母は、日本人等の検挙を含む刑法犯検挙の総数であり、外国人の人口ではありません。したがって「来日外国人の犯罪率」を示す数字ではありません。分母である刑法犯検挙の総数も同じ期間に変化しているため、実数がピークの半分であることと、割合が37年で最も高いことは同時に成立します。
Q4. 人口10万人当たりの数字はなぜ載せていないのですか?
分子と分母が数えている範囲がそろっていないためです。警察庁が示す対象人口は令和7年6月末で約349万人ですが、在留外国人数から永住者等を差し引いた値は約270万人で一致しません。また国籍別の対象人口は公表されていません。さらに検挙人員の17.0%を占める短期滞在者は、在留外国人数には含まれません。そのため本記事では割り算を行っていません。
Q5. 検挙された人は、有罪が確定した人ですか?
いいえ。検挙件数・検挙人員は、警察が事件として処理した数であり、有罪が確定した数ではありません。検挙件数は事件の数、検挙人員は人の数で、共犯事件の計上方法により両者は同じようには動きません。また検挙の数は、警察の取締り体制や統計の取り方の影響も受けます。
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