
「実質2,000円」「返礼品がもらえる」という言葉はよく知られていますが、寄附した1円が自治体の中でどう分かれるかは、あまり図で見る機会がありません。総務省が毎年公表している全国計の数字を、お金の流れの向きに沿って1枚ずつ整理していきます。
ふるさと納税で寄附したお金は、どこからどこへ動いているのでしょうか。総務省が令和8年7月31日に公表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によれば、令和7年度に全国の自治体が受け入れたふるさと納税は1兆3,314億円(決算見込)で、このうち返礼品の調達や送付、広報、決済、事務に使われた募集費用は6,382億円(47.9%)でした。自治体の財源として残った額は6,932億円で、受入額の52.1%と公表されています。
一方、寄附した側には控除が戻ります。令和8年度課税でふるさと納税に係る住民税控除を受けた人は1,151万人、控除額は9,524億円でした。本記事では、この総務省公表値だけを材料に、寄附者から自治体へ、自治体から返礼品事業者や運送事業者、ポータルサイト運営事業者、自治体財源へ、そして住所地の自治体と国から寄附者へ戻る控除まで、お金の流れを図解で整理します。
扱う範囲は総務省が公表している制度の規定と全国計の実績です。「いくら寄附すべきか」「得か損か」「上限額の目安」といった助言や試算は本記事では扱いません。控除の計算式については、総務省が公表している年収700万円・30,000円の例をそのまま紹介するにとどめます。
ふるさと納税で寄附したお金は、どこからどこへ動いているのか。
令和7年度の受入額1兆3,314億円のうち、返礼品などの募集費用に47.9%が使われ、自治体の財源として残ったのは52.1%(6,932億円)と総務省は公表している。
- 01 寄附する 1.33兆円 令和7年度に全国の自治体が受け入れたふるさと納税額(1兆3,314億円・決算見込・5,963万件)
- 02 控除される 0.95兆円 令和8年度課税で住民税から控除された額(9,524億円・所得税分を除く・適用者1,151万人)
- 03 費用に回る 47.9% 令和7年度の受入額のうち返礼品・送付・広報・決済・事務に使われた募集費用の割合(6,382億円)
- 04 財源に残る 52.1% 令和7年度の受入額のうち募集費用を除いて自治体の財源となった割合(6,932億円)
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
- ふるさと納税とは何か|総務省の定義と「納税」という言葉
- お金は3方向に分かれる|寄附者・自治体・控除の流れを1枚に
- 受け入れた1兆3,314億円はどう使われたか|募集費用5区分と自治体財源52.1%
- ポータルサイトを通るお金|受入額の97.2%が経由、支払額は2,433億円
- 控除はどう計算されるか|所得税・住民税基本分・住民税特例分の3段構造
- 確定申告とワンストップ特例、2つのルート|控除される税が変わる
- 受入額と控除額はどう推移してきたか|平成20年度から令和7年度まで
- 令和8年度税制改正で変わること|寄附金活用可能額を60%以上に
- 楓のまとめ|1兆3,314億円のうち自治体財源に残るのは52.1%
- よくある質問(FAQ)
- 🔍 この記事のファクトチェックについて
ふるさと納税とは何か|総務省の定義と「納税」という言葉

最初に、制度の定義を総務省の言葉どおりに確認しておきます。「納税」という名前ですが、法律上の性質は自治体への寄附です。この一点を押さえておくと、あとの図解が読みやすくなります。
総務省はふるさと納税を「自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度」と説明しています。控除には一定の上限があり、上限は収入や家族構成によって異なります。寄附先は生まれ故郷に限らず、どの自治体でも対象になります。
「納税」という言葉が付いていますが、寄附者と寄附先の自治体のあいだで動くお金は寄附です。税として動くのは、寄附をした翌年に住所地の自治体と国が控除として寄附者に戻す部分で、こちらは所得税と住民税の減額という形をとります。つまり、ふるさと納税には「寄附として自治体へ向かう流れ」と「控除として寄附者へ戻る流れ」の2つの向きがあります。
この2つの流れは期間の数え方が違います。自治体の受入額は年度(4月から翌年3月)で集計され、控除額は暦年(1月から12月)の寄附分を翌年度の課税で控除した額として集計されます。本記事では両者を同じ図に重ねず、金額の差し引きもしていません。この点は総務省の調査でも「留意事項」として明記されています。
お金は3方向に分かれる|寄附者・自治体・控除の流れを1枚に

寄附者から自治体へ向かう流れと、自治体から出ていく流れ、寄附者に戻ってくる流れを1枚に置いてみました。矢印の太さは金額に比例させていません。上段と下段で期間が違うためです。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
上段が寄附の流れです。令和7年度に寄附者から全国の自治体へ動いたふるさと納税は1兆3,314億円・5,963万件でした。自治体はここから返礼品の調達に3,528億円、返礼品の送付に756億円、広報に93億円、決済に196億円、事務に1,809億円を使っています。これらを合計した募集費用が6,382億円で、残りの6,932億円が自治体の財源として残った額です。
募集費用のうち2,433億円は、ポータルサイト運営事業者への支払額として別に集計されています。この2,433億円は返礼品の調達費や送料に相当する分も含めた支払先別の集計なので、6,382億円の内数にあたります。募集費用とポータルサイトへの支払額を足し合わせると同じお金を二重に数えることになる点は、図を読むときの注意点です。
下段が控除の流れです。令和8年度課税で住民税から控除された額は9,524億円、控除を受けた人は1,151万人でした。この額には所得税から還付された分は含まれておらず、所得税分の全国計は今回の調査には掲載されていません。所得税の還付は寄附した年分の所得税から、住民税の控除は翌年度分の住民税から行われます。
受け入れた1兆3,314億円はどう使われたか|募集費用5区分と自治体財源52.1%

受入額を100%にした横棒で、令和7年度と令和6年度を並べました。令和6年度は募集費用の5区分だけが公表されていて財源側の金額はありません。ないものは描かない、というのが今回の約束事です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
令和7年度の募集費用は受入額の47.9%で、令和6年度の46.4%から1.5ポイント上がりました。区分別では返礼品の調達に係る費用が26.5%(3,528億円)で最も大きく、事務に係る費用等が13.6%(1,809億円)、返礼品の送付に係る費用が5.7%(756億円)と続きます。広報は0.7%、決済は1.5%です。
総務省の資料には、返礼品の調達費用を寄附額の3割以下とする基準が地方税法で規定されていること、返礼品の送付や広報・決済・事務を含めた募集費用の合計を5割以下とする基準が総務省告示で規定されていることが注記されています。令和7年度の全国計は返礼品調達26.5%・募集費用合計47.9%で、図中の点線はこの2つの基準の位置を示しています。
令和6年度と比べると、返礼品の調達が25.2%から26.5%へ1.3ポイント、事務に係る費用等が13.2%から13.6%へ0.4ポイント上がり、送付と決済はそれぞれ0.1ポイント、0.2ポイント下がりました。令和6年度の自治体財源側の金額は総務省の資料に記載がないため、本記事では差し引きによる算出を行わず、図でも余白のままにしています。
ポータルサイトを通るお金|受入額の97.2%が経由、支払額は2,433億円

ドーナツはポータルサイト経由の割合、右の横棒は運営事業者への支払額の内訳です。支払額は募集費用の内数なので、前の図の6,382億円とは足し合わせません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
令和7年度の受入額1兆3,314億円のうち、ポータルサイトを経由した受入額は1兆2,947億円で、割合は97.2%でした。令和6年度の94.5%から2.7ポイント上がっています。自治体からポータルサイト運営事業者への支払総額は2,433億円で、ポータル経由の受入額に対する割合は18.8%です。
支払額の内訳は、返礼品等の情報をポータルサイトに掲載するための委託料などの事務費等が1,246億円で最も大きく、運営事業者を介して返礼品提供事業者へ支払われる調達費相当が755億円、運送事業者へ支払われる送料相当が189億円、クレジットカード決済手数料などの決済が167億円、インターネット広告の広報が76億円です。調達と送付を除いた支払額は1,490億円で、ポータル経由受入額の11.5%にあたります。
控除はどう計算されるか|所得税・住民税基本分・住民税特例分の3段構造

総務省が公表している唯一の計算例を、そのまま縦棒に積みました。年収700万円・夫婦子なし・30,000円という前提の例です。ほかの条件に置き換えた試算はしていません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総務省の資料によると、ふるさと納税額のうち2,000円を超える部分は、3つの区分に分かれて控除されます。①所得税からの控除は「(ふるさと納税額 − 2,000円)× 所得税率」、②住民税からの控除(基本分)は「(ふるさと納税額 − 2,000円)× 10%」、③住民税からの控除(特例分)は「(ふるさと納税額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税率)」です。
公表例では、年収700万円の給与所得者(夫婦子なし・所得税の限界税率20%)が30,000円を寄附した場合、①が5,600円、②が2,800円、③が19,600円で、合計28,000円が控除され、自己負担は2,000円になります。③の特例分は①②で控除しきれない額を全額控除する区分で、住民税所得割額の2割が限度とされています。この限度が、総務省の定義にある「一定の上限」にあたります。
所得税率は年収により0〜45%の間で変わり、令和19年中の寄附までは復興特別所得税を加えた率が使われます。①の対象となる寄附額は総所得金額等の40%、②は30%が限度です。本記事では個別の上限額の試算は行っていません。
確定申告とワンストップ特例、2つのルート|控除される税が変わる

控除を受ける手続きは2つあります。左が確定申告、右がワンストップ特例です。合計の控除額は同じですが、控除される税の種類が1か所か2か所かで違います。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
確定申告のルートでは、寄附先の自治体から受領書を受け取り、翌年に住所地の税務署へ確定申告を行います。控除は所得税(寄附した年分・還付)と翌年度分の住民税の2か所から受けます。ワンストップ特例のルートでは、確定申告の不要な給与所得者等で寄附先が5団体以内の場合に、寄附時に特例申請書を寄附先の自治体へ提出します。この場合は確定申告が不要になり、控除は翌年度分の住民税から全額受けます。
総務省の資料では、ワンストップ特例が適用される場合は「所得税からの控除は行われず、その分も含めた控除額の全額が翌年度の住民税から控除される」と説明されており、控除される合計額は確定申告を行った場合と同額とされています。この制度は平成27年4月1日以後の寄附から適用されました。6団体以上に寄附した場合や、確定申告を行う場合は、確定申告で控除を受けます。
令和8年度課税の実績では、住民税控除額9,524億円のうちワンストップ特例の適用分は3,768億円、控除適用者1,151万人のうち特例の適用者は614万人でした。控除適用者に占めるワンストップ特例適用者の割合は53.3%、控除額に占める割合は39.6%です(筆者試算:614.2万人 ÷ 1,151.4万人、3,768.1億円 ÷ 9,524.4億円)。
受入額と控除額はどう推移してきたか|平成20年度から令和7年度まで

受入額と住民税控除額は横軸の意味が違うので、上下2つのパネルに分けました。上のパネルには2015年のワンストップ特例制度の創設をマーカーで置いています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
受入額は平成20年度の81億円から始まり、平成26年度に388億円、平成27年度に1,652億円と、この時期に桁が上がっています。平成30年度に5,127億円、令和元年度に4,875億円と一度下がった後、令和2年度に6,724億円、令和5年度に1兆1,175億円と1兆円台に入り、令和7年度は1兆3,314億円になりました。件数は令和5年度の5,894万件から令和6年度は5,878万件と横ばいで、令和7年度は5,963万件です。
住民税控除額は平成27年度課税の184億円から、平成28年度課税に1,001億円、令和元年度課税に3,282億円、令和4年度課税に5,716億円と増え、令和8年度課税は9,524億円になりました。控除適用者数は同じ期間に43万人から1,151万人へ増えています。令和8年度課税の控除額9,524億円は、平成28年度課税の1,001億円の約9.5倍です(筆者試算:9,524.4 ÷ 1,001.9)。
受入額は年度、控除額は暦年の寄附分の翌年度課税という違いがあるため、上下のパネルは同じ年の数字を縦に揃えたものではありません。また、平成21年度から平成26年度課税の控除額については、平成24年度課税に210億円という前後と離れた値があり、総務省の資料に説明がないため、下のパネルは平成27年度課税から描いています。
令和8年度税制改正で変わること|寄附金活用可能額を60%以上に

最後は制度の変更点です。令和8年度税制改正で「寄附金活用可能額」という区分が設けられ、その割合が段階的に引き上げられることが決まっています。総務省の資料の段階図をそのまま図にしました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総務省の資料によると、令和8年度税制改正では、寄附金のうち地方団体が活用できる財源にあたる「寄附金活用可能額」の割合を60%以上と設定し、その使途を公表することが定められました。適用は令和8年指定から段階的に行われ、令和8年指定で52.5%、令和9年指定で55.0%、令和10年指定で57.5%、令和11年指定以降で60.0%となります。令和7年指定の現行は50.0%です。
横軸の「指定」は、総務大臣がふるさと納税の対象団体を指定する年を指し、年度とは異なります。返礼品の調達費用を寄附額の3割以下とする上限は変更されません。令和7年度の全国計で自治体財源として残った割合は52.1%で、図中の令和8年指定の52.5%とほぼ同じ水準です。本記事では、この改正が今後の受入額や費用にどう影響するかの予測は扱いません。
なお、総務省の同じ調査では、寄附者が使途を選択できる団体が1,749団体(98.2%)あり、使途分野別の受入額は子ども・子育てが1,948億円で最も大きいことも公表されています。都道府県別・市区町村別の受入額と控除額の分布は、別記事「ふるさと納税の流入と流出を地図データで解説【2026年】」で扱っています。
楓のまとめ|1兆3,314億円のうち自治体財源に残るのは52.1%

ここまでの図解を、総務省の公表値だけで3つの観察事実に整理します。原因や評価は加えず、数字の置かれ方をそのまま並べます。
「ふるさと納税で寄附したお金はどこへ動くのか」という問いに対して、本記事の図解は、寄附者から自治体へ向かう1兆3,314億円が募集費用と自治体財源に分かれ、寄附者には住所地の自治体と国から控除が戻る、という構造を示してきました。それぞれの数字を観察事実として整理します。
3つの観察事実を重ねて読むと、ふるさと納税は「寄附として自治体へ向かうお金」と「控除として寄附者へ戻るお金」の2つの向きを持ち、自治体へ向かったお金の約半分が募集費用に、約半分が自治体財源に分かれている、という形が見えてきます。寄附1円がどこへ動くかは、総務省が毎年公表している全国計の数字でここまで追える、というのが本記事の観察です。
よくある質問(FAQ)

制度の説明で迷いやすい3点を、総務省の公表内容の範囲でまとめました。個別の上限額や損得については本記事では扱っていません。
Q1. 「実質2,000円」とはどういう意味ですか?
総務省は、ふるさと納税額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで所得税・住民税から原則として全額が控除されると説明しています。公表例では、年収700万円の給与所得者(夫婦子なし)が30,000円を寄附した場合、28,000円が控除され、2,000円が自己負担になります。上限は住民税所得割額の2割などで定まり、収入や家族構成によって異なります。本記事では個別の上限額の試算は扱っていません。
Q2. 確定申告とワンストップ特例制度はどう違いますか?
確定申告では、寄附した年分の所得税と翌年度分の住民税のそれぞれから控除されます。ワンストップ特例制度は、確定申告の不要な給与所得者等で寄附先が5団体以内の場合に、寄附時に申請書を提出することで確定申告なしに控除を受けられる仕組みで、この場合は所得税からの控除は行われず、全額が翌年度分の住民税から控除されます。控除される合計額は同じとされています。
Q3. 返礼品の「3割」とは何の割合ですか?
返礼品の調達に係る費用を寄附額の3割以下とする基準で、総務省の資料では地方税法に規定されているとされています。あわせて、返礼品の送付や広報・決済・事務などを含めた募集費用の合計を寄附額の5割以下とする基準が総務省告示で定められています。令和7年度の全国計の実績は、返礼品調達が26.5%、募集費用合計が47.9%と公表されています。
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