
「年金はいくらもらえるのか」という問いは、モデル年金額ではなく、実際に受け取っている人の平均を23年分並べて見ると輪郭がはっきりします。厚生年金と国民年金を同じ図に重ねて、二つの線の間の「差」まで観察していきます。
厚生年金の老齢年金を受け取っている人の平均月額は、2002年度末の17万3,565円から2024年度末の15万1,142円へ、23年で2万2,423円下がりました。一方、国民年金の老齢年金の平均月額は同じ期間に5万2,291円から5万9,431円へ7,140円上がっています。厚生年金は下がり、国民年金は上がるという逆方向の動きが、二つの制度の差を12万1,274円から9万1,711円へ縮めてきました。
ただし直近の2年は、二つの制度が同じ方向に動いています。厚生年金は2022年度末の14万4,982円を底に、2023年度末・2024年度末と2年続けて前年度末を上回り、2012年度末以来の15万円台に戻りました。国民年金も2022年度末から2年で3,003円上がっています。
本記事の数値は、厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」の平成18年度版から令和6年度版までの5冊を継ぎ足した、2002〜2024年度末の23年分の系列です。各冊が5年分しか載せないため、長期の推移は自分でつなぐ必要があります。数値はいずれも受給者全体の平均で、加入期間や報酬によって個人の受給額は異なります。
2024年度末の平均月額を1日あたりに直すと、厚生年金は4,969円、国民年金は1,954円です(📊筆者試算:151,142円×12か月÷365日、59,431円×12か月÷365日)。厚生労働省が示す標準的な世帯のモデル年金額とは定義が異なる、実際の受給者の平均です。
年金の平均受給額は、この20年あまりでどう変わったのか。
厚生年金の平均月額は23年で2万2,423円下がり、国民年金は7,140円上がりました。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
厚生年金の平均月額はどう動いたか|2002年度末から2024年度末への23年

23年分の平均月額を折れ線で並べると、長い下り坂の末尾に小さな戻りがついた形が見えます。制度上の出来事が起きた年度に印を置き、数値の動きとは分けて示します。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
厚生年金保険の老齢年金を受け取っている人の平均月額は、2002年度末(平成14年度末)に17万3,565円でした。そこから2003年度末17万1,365円、2004年度末16万7,529円と下がり続け、2012年度末の15万1,374円を最後に15万円台を割り込みます。2022年度末の14万4,982円が23年の底で、起点から2万8,583円低い水準です。
2023年度末は14万7,360円、2024年度末は15万1,142円と、2年続けて前年度末を上回りました。底からの戻り幅は6,160円(4.2%)で、2024年度末の値は2012年度末以来12年ぶりの15万円台です。それでも起点の2002年度末と比べると2万2,423円(12.9%)低い位置にあります。
この平均月額には、併給する老齢基礎年金の月額が含まれています。また厚生労働省は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が男性は2001年度から、女性は2006年度から段階的に引き上げられたことを、平均月額を見る際の注意点として注記しています。2015年度末以降の数値は共済組合分を除いた厚生年金保険(第1号)で、それ以前と厳密には接続しないことも概況に注記されています。
国民年金の平均月額はどう動いたか|23年で7,140円の上昇

国民年金は変動の幅が1万円に満たないため、縦軸を5万〜6万円に絞って描きます。小さな下げと横ばいの年度も潰さずに残しました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国民年金の老齢年金を受け取っている人の平均月額は、2002年度末の5万2,291円から2024年度末の5万9,431円へ、23年で7,140円(13.7%)上がりました。年度末ごとの動きは緩やかで、2013年度末(5万4,622円)と2014年度末(5万4,497円)に小さく下がり、2022年度末(5万6,428円)に横ばいとなった以外は、ほぼ毎年度末上向きです。
直近2年の動きは厚生年金と同じ方向です。2022年度末から2024年度末にかけて3,003円(5.3%)上がり、2024年度末の5万9,431円は23年で最も高い値になりました。厚生年金が長期で下がり、国民年金が長期で上がるという形は、直近2年に限れば両方とも上向きに揃っています。
この系列には、厚生年金の受給者が受け取っている老齢基礎年金の分も含まれています。2017年度末以降の「老齢年金」は受給資格期間25年以上の受給者を指し、2017年8月の受給資格期間の短縮(25年から10年)で生じた25年未満の人は別に集計されている、と概況に注記されています。年金額は毎年度、物価や賃金の変動に応じて改定され、令和6年度は2.7%、令和7年度は1.9%の引上げと厚生労働省が公表しています。
二つの制度の差はどう縮んだか|12万1,274円から9万1,711円へ

厚生年金と国民年金を同じ0起点の図に重ね、二本の線の間を帯で塗りました。下段には帯の幅、つまり差そのものを折れ線にしています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
厚生年金と国民年金の平均月額の差は、2002年度末に12万1,274円でした。厚生年金が下がり国民年金が上がる中で差は毎年度末縮み、2022年度末に8万8,554円と23年で最も小さくなります。2024年度末の差は9万1,711円で、起点から2万9,563円縮まりました。
倍率で見ると、2002年度末の厚生年金は国民年金の3.32倍、2024年度末は2.54倍です(📊筆者試算:173,565÷52,291、151,142÷59,431)。差の縮小は2022年度末で止まり、2023・2024年度末は厚生年金の戻り幅(6,160円)が国民年金の上げ幅(3,003円)を上回り、差は2年続けて広がっています。
なお、厚生年金の平均月額には老齢基礎年金の分が含まれ、国民年金の平均月額には厚生年金の受給者が受け取る基礎年金の分が含まれています。二つの系列は独立した集団ではなく、重なりを持つ集計であることを踏まえて差を読む必要があります。
平均の中身を分布で見る|男女別の年金月額階級

平均は一つの数字ですが、その裏には30の階級に散らばった分布があります。男子を左、女子を右に向かい合わせて、山の位置の違いを見ます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
厚生年金保険(第1号)の老齢年金 受給権者1,608万5,696人を月額1万円刻みの階級で見ると、男子は18〜19万円の階級に95万5,327人と最も多く、女子は10〜11万円の階級に81万3,990人と最も多く集まっています。男子の山と女子の山は8万円分離れた位置にあります。
受給権者ベースの平均月額は男子16万9,967円、女子11万1,413円で、その差は5万8,554円です(📊筆者試算:169,967−111,413)。女子の平均は男子の65.5%にあたります。この図は受給権者(全額支給停止中の人を含む)ベースの分布で、本文の主系列である受給者ベースの平均とは集計単位が異なります。
平均には、65歳未満で主に報酬比例部分のみを受け取っている人や、繰上げ・繰下げを選んだ人、加入期間が短い人も含まれます。概況の参考資料には、65歳未満の厚生年金の受給権者は主に定額部分のない報酬比例部分のみの人であること、65歳未満の国民年金の受給権者は繰上げ支給を選択した人であることに留意が必要だと注記されています。
国民年金の分布|6〜7万円の階級に51.3%が集まる

国民年金の分布は8階級です。一つの階級に受給権者の半数以上が集まる形は、平均だけでは見えません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国民年金の老齢年金 受給権者3,345万4,617人のうち、月額6〜7万円の階級に1,715万5,059人が入っています。割合にして51.3%です(📊筆者試算:17,155,059÷33,454,617)。次に多いのは5〜6万円の641万228人(19.2%)で、4〜5万円の388万83人(11.6%)が続きます。受給権者の半数が6〜7万円の1つの階級に集まる分布です。
厚生労働省のプレスリリースによると、令和6年度の老齢基礎年金の満額は月額6万8,000円で、この階級に含まれる金額です。ここで示せる観察は、6〜7万円の階級に51.3%が集まる、というところまでです。7万円以上の階級には299万7,738人(9.0%)が入っており、繰下げ受給などにより満額を上回る人が含まれます。
都道府県別に見る|厚生年金は神奈川17万457円、青森12万8,129円

最後に、都道府県ごとの平均月額を一覧にしました。地方ブロックのタブで切り替えられます。厚生年金は受給者の住所地で集計されています。
都道府県別 老齢年金 受給者の平均年金月額(2024年度末)
地方ブロックのタブで切り替えられます。各表の先頭行は全国値です。厚生年金は受給者の住所地で集計され、基礎年金月額を含みます。
| 都道府県 | 厚生年金 平均月額 | 国民年金 平均月額 |
|---|---|---|
| 全国 | 151,142円 | 59,431円 |
| 北海道 | 141,069円 | 58,435円 |
| 青森 | 128,129円 | 57,137円 |
| 岩手 | 132,943円 | 60,720円 |
| 宮城 | 144,920円 | 59,532円 |
| 秋田 | 129,503円 | 59,147円 |
| 山形 | 131,169円 | 60,827円 |
| 福島 | 136,880円 | 59,922円 |
| 都道府県 | 厚生年金 平均月額 | 国民年金 平均月額 |
|---|---|---|
| 全国 | 151,142円 | 59,431円 |
| 茨城 | 152,963円 | 59,395円 |
| 栃木 | 149,631円 | 59,544円 |
| 群馬 | 148,666円 | 60,564円 |
| 埼玉 | 161,752円 | 59,007円 |
| 千葉 | 165,103円 | 59,354円 |
| 東京 | 163,892円 | 58,313円 |
| 神奈川 | 170,457円 | 59,342円 |
| 都道府県 | 厚生年金 平均月額 | 国民年金 平均月額 |
|---|---|---|
| 全国 | 151,142円 | 59,431円 |
| 新潟 | 138,683円 | 61,957円 |
| 富山 | 144,644円 | 62,989円 |
| 石川 | 141,792円 | 61,923円 |
| 福井 | 140,787円 | 62,290円 |
| 山梨 | 144,665円 | 59,275円 |
| 長野 | 144,668円 | 62,030円 |
| 岐阜 | 149,910円 | 61,248円 |
| 静岡 | 151,960円 | 61,150円 |
| 愛知 | 160,766円 | 60,034円 |
| 都道府県 | 厚生年金 平均月額 | 国民年金 平均月額 |
|---|---|---|
| 全国 | 151,142円 | 59,431円 |
| 三重 | 151,949円 | 61,403円 |
| 滋賀 | 154,456円 | 61,172円 |
| 京都 | 151,483円 | 58,206円 |
| 大阪 | 156,272円 | 57,122円 |
| 兵庫 | 159,086円 | 59,138円 |
| 奈良 | 162,292円 | 58,961円 |
| 和歌山 | 145,933円 | 57,784円 |
| 都道府県 | 厚生年金 平均月額 | 国民年金 平均月額 |
|---|---|---|
| 全国 | 151,142円 | 59,431円 |
| 鳥取 | 133,459円 | 61,502円 |
| 島根 | 133,918円 | 62,287円 |
| 岡山 | 146,429円 | 61,564円 |
| 広島 | 150,745円 | 60,991円 |
| 山口 | 148,166円 | 61,120円 |
| 徳島 | 134,131円 | 58,797円 |
| 香川 | 144,026円 | 61,718円 |
| 愛媛 | 140,301円 | 59,792円 |
| 高知 | 132,202円 | 57,926円 |
| 都道府県 | 厚生年金 平均月額 | 国民年金 平均月額 |
|---|---|---|
| 全国 | 151,142円 | 59,431円 |
| 福岡 | 145,822円 | 58,300円 |
| 佐賀 | 134,191円 | 61,084円 |
| 長崎 | 136,825円 | 58,617円 |
| 熊本 | 132,740円 | 59,907円 |
| 大分 | 136,507円 | 58,397円 |
| 宮崎 | 129,224円 | 59,234円 |
| 鹿児島 | 133,343円 | 59,659円 |
| 沖縄 | 128,819円 | 54,217円 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2024年度末の厚生年金 老齢年金 受給者の平均月額を都道府県別に見ると、最も高いのは神奈川の17万457円、次いで千葉16万5,103円、東京16万3,892円です。最も低いのは青森の12万8,129円で、沖縄12万8,819円、宮崎12万9,224円、秋田12万9,503円が続きます。神奈川と青森の差は4万2,328円です(📊筆者試算:170,457−128,129)。
国民年金の平均月額は都道府県差が小さく、最も高い富山の6万2,989円から最も低い沖縄の5万4,217円まで、幅は8,772円です。厚生年金で上位に並ぶ関東の都県は、国民年金では全国値5万9,431円の前後に並びます。お住まいの都道府県の値は、上の表で確認できます。
楓のまとめ|長期では逆方向、直近2年は同方向

ここまでの図解を通して見ると、厚生年金と国民年金は23年では逆方向に、直近2年では同じ方向に動いていることが確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「年金の受給額はどう変わったか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、二つの制度の平均月額が異なる軌道を描いてきたことを示してきました。どの制度の、どの期間の、どの集計単位の平均を見ているかで、読み取れる形は変わります。数値に評価を加えず、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実は、いずれも受給者全体の平均を年度末ごとに並べたものです。平均が動く要因として厚生労働省が概況に注記しているのは、定額部分の支給開始年齢の段階的な引上げ、集計対象の変更、毎年度の年金額改定などで、本記事はその注記の範囲を超えて要因を特定していません。自分の見込額は「ねんきん定期便」やねんきんネットで確認できます。老後の生活費との対比は老後2000万円問題を現物価で再計算した記事で扱っています。
よくある質問(FAQ)

年金の平均額を読むときは、受給者か受給権者か、どの年度末か、モデル年金額か実受給者の平均か、の3点を確認してください。同じ「平均」でも数字が変わります。
Q1. 記事の平均月額は「自分がもらえる額」の目安になりますか?
目安にはなりません。本記事の数値は老齢年金を受け取っている人全体の平均で、65歳未満で報酬比例部分のみを受け取っている人、繰上げや繰下げを選んだ人、加入期間が短い人まで含めて割った値です。個人の受給額は加入期間と報酬で決まるため、平均から離れることが普通にあります。自分の見込額は日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。
Q2. 報道で見かける「15万289円」と、この記事の「15万1,142円」はなぜ違うのですか?
集計単位の違いです。15万289円は令和6年度末の「受給権者」(全額支給停止中の人を含む)の平均で、15万1,142円は「受給者」(全額支給停止されていない人)の平均です。厚生労働省の概況には両方が載っており、本記事は平成14年度末から連続して掲載がある受給者の系列を主系列にしています。国民年金も同様に受給権者5万9,310円、受給者5万9,431円と2つの値があります。
Q3. 令和8年度の年金額はどう改定されましたか?
日本年金機構の案内によると、令和8年4月分からの年金額は、法律の規定に基づき算出した賃金変動率を基準に改定され、令和7年度と比べて国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の増額改定です。本記事の系列は令和6年度末(2025年3月末)までの確定値のため、この改定の影響は含まれていません。令和7年度末の値は次回の概況で公表されます。
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