
医療費の多さと平均寿命の長さは、国を1つずつ点にして並べると関係が見えてきます。世界全体とOECD加盟国の中とで、並び方がどう変わるかを図解で確かめていきます。
1人当たりの医療費が多い国ほど、平均寿命は長いのでしょうか。WHOの医療費データと世界銀行の平均寿命で2023年の192か国を比べると、医療費が多い国ほど平均寿命が長い傾向がはっきり見られ、医療費が2倍の国では平均寿命が約3.0年長いという関係にあります。ただし、1人当たり医療費が世界で最も多い米国(13,473ドル)の平均寿命は78.4年で、OECD加盟38か国の中では30位です。米国の医療費は日本(5,365ドル)の約2.5倍ですが、平均寿命は日本の84.0年より5.7年短くなっています。
本記事では、医療費をWHOの「Global Health Expenditure Database」(2025年12月更新)、平均寿命を世界銀行の「World Development Indicators」から取り、どちらも2023年の値にそろえました。散布図、医療費の帯ごとの平均、OECD38か国の順位の入れ替わり、2000年からの推移の4つの図解で整理します。医療費は、国ごとの物価の違いをならして換算した国際ドル(購買力平価)で示しています。
医療費を多く使う国ほど、平均寿命は長いのか。
世界全体では長い傾向がある。
ただし医療費1位の米国は、日本より5.7年短い。
差5.7年(精密値5.66年・2023年)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
世界192か国を並べると|医療費が2倍になるごとに平均寿命は約3.0年長い

医療費を対数の目盛にして、192か国を1枚の散布図に並べました。右へ行くほど医療費が多く、上へ行くほど平均寿命が長い国です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
散布図の横軸は1人当たり医療費、縦軸は平均寿命です。医療費は、少ない国の30ドル足らずから米国の13,000ドル超まで400倍以上の開きがあります。そのため横軸は、目盛りが1つ進むごとに10倍になる対数目盛にしました。こうすると、医療費の少ない国どうしの差も、多い国どうしの差も同じ幅で読み取れます。
点は左下から右上へ帯のように並び、医療費(自然対数)と平均寿命の相関係数は0.84でした。最小二乗法で引いた回帰線から読むと、医療費が2倍になるごとに、平均寿命は約3.0年長いという関係です。医療費が250ドル未満の45か国のうち40か国は平均寿命が70年未満で、4,000ドル以上の33か国のうち31か国は80年を超えています。
平均寿命の国別の順位そのものは、世界の平均寿命ランキングで詳しく比べています。そちらはWHOの2021年の値などを使っているため、世界銀行の2023年の値を使う本記事とは数字が少し異なります。本記事の散布図では、日本(5,365ドル・84.0年)が回帰線より上に、米国(13,473ドル・78.4年)が回帰線より下に位置しています。
医療費4,000ドルを超えると平均寿命の差は小さくなる

医療費の多さで国を7つの帯に分け、それぞれの帯に入る国の平均寿命を平均しました。細い線は、その帯の中で最も短い国と最も長い国の幅です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
1人当たり医療費が250ドル未満の45か国では、平均寿命の平均は65.0年でした。帯が上がるにつれて67.5年、72.2年、74.1年、77.5年と長くなり、4,000〜8,000ドルの25か国では82.6年です。最も低い帯と最も高い帯の差は約18年あります。
一方、8,000ドル以上の8か国の平均は83.0年で、4,000〜8,000ドルの帯との差は1年に満たない水準です。医療費が4,000ドルを超える国々では、帯が上がっても平均寿命の平均はほとんど変わりません。8,000ドル以上の帯には、平均寿命が78.4年の米国から86.4年のモナコまでが含まれ、帯の中の幅は8.0年あります。
帯ごとの値は、国の人口で重みづけしない単純平均です。人口の多い国も少ない国も1か国として数えているため、世界全体の平均寿命(世界銀行の集計値で73.3年)とは一致しません。
OECD38か国の順位|医療費1位の米国は平均寿命30位

OECD加盟38か国について、医療費の順位と平均寿命の順位を、同じ国どうし線で結びました。線が水平に近いほど、2つの順位が近い国です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
OECD加盟38か国の中で、1人当たり医療費が最も多いのは米国の13,473ドル、次いでスイスの10,602ドル、ノルウェーの9,523ドルです。日本は5,365ドルで19位にあたり、38か国の中央値(5,157ドル)に近い位置です。平均寿命の順位では、1位がスイスの84.2年、2位が日本の84.0年、3位がスペインの83.9年でした。
医療費1位の米国は、平均寿命では38か国中30位です。米国を除く37か国のうち29か国が、米国より平均寿命が長くなっています。日本は医療費19位・平均寿命2位で、日本より平均寿命が長いのは84.2年のスイスだけでした。日本と米国の平均寿命を小数第3位まで見ると84.041年と78.385年で、差は5.656年、小数第1位に丸めると5.7年です。
OECD38か国だけで見ると、医療費(自然対数)と平均寿命の相関係数は0.65で、世界192か国の0.84より低くなります。米国を除いた37か国では0.75でした。医療費の多い国が集まるOECDの中では、医療費の順位と平均寿命の順位が入れ替わる国が多く、図では線の交差として表れています。下の表では、38か国の値と順位を地域ごとに切り替えて確認できます。
| 国 | 医療費 (ドル) | 順位 | 平均寿命 (年) | 順位 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ | 13,473 | 1 | 78.4 | 30 |
| スイス | 10,602 | 2 | 84.2 | 1 |
| ノルウェー | 9,523 | 3 | 83.0 | 10 |
| ルクセンブルク | 8,329 | 4 | 83.3 | 6 |
| ドイツ | 8,306 | 5 | 81.0 | 26 |
| アイルランド | 8,269 | 6 | 82.8 | 12 |
| オーストリア | 7,884 | 7 | 81.8 | 18 |
| オランダ | 7,727 | 8 | 81.9 | 17 |
| オーストラリア | 7,691 | 9 | 83.1 | 9 |
| スウェーデン | 7,512 | 10 | 83.3 | 6 |
| ベルギー | 7,489 | 11 | 82.4 | 14 |
| カナダ | 7,355 | 12 | 81.6 | 22 |
| デンマーク | 7,098 | 13 | 81.8 | 20 |
| フランス | 6,719 | 14 | 82.8 | 11 |
| アイスランド | 6,618 | 15 | 82.5 | 13 |
| フィンランド | 6,433 | 16 | 81.6 | 23 |
| イギリス | 6,365 | 17 | 81.2 | 24 |
| ニュージーランド | 5,531 | 18 | 81.8 | 19 |
| 日本 | 5,365 | 19 | 84.0 | 2 |
| スロベニア | 4,949 | 20 | 81.9 | 16 |
| スペイン | 4,935 | 21 | 83.9 | 3 |
| イタリア | 4,866 | 22 | 83.4 | 5 |
| 韓国 | 4,798 | 23 | 83.4 | 4 |
| ポルトガル | 4,679 | 24 | 82.3 | 15 |
| チェコ | 4,500 | 25 | 79.8 | 28 |
| イスラエル | 4,033 | 26 | 83.2 | 8 |
| リトアニア | 3,819 | 27 | 77.3 | 34 |
| エストニア | 3,507 | 28 | 78.8 | 29 |
| ギリシャ | 3,454 | 29 | 81.7 | 21 |
| チリ | 3,337 | 30 | 81.2 | 25 |
| ポーランド | 3,332 | 31 | 78.3 | 31 |
| スロバキア | 3,230 | 32 | 78.1 | 32 |
| ラトビア | 3,034 | 33 | 75.4 | 37 |
| ハンガリー | 2,875 | 34 | 76.6 | 36 |
| コスタリカ | 1,928 | 35 | 80.8 | 27 |
| トルコ | 1,769 | 36 | 77.2 | 35 |
| コロンビア | 1,709 | 37 | 77.7 | 33 |
| メキシコ | 1,368 | 38 | 75.1 | 38 |
| 国 | 医療費 (ドル) | 順位 | 平均寿命 (年) | 順位 |
|---|---|---|---|---|
| スイス | 10,602 | 2 | 84.2 | 1 |
| ノルウェー | 9,523 | 3 | 83.0 | 10 |
| ルクセンブルク | 8,329 | 4 | 83.3 | 6 |
| ドイツ | 8,306 | 5 | 81.0 | 26 |
| アイルランド | 8,269 | 6 | 82.8 | 12 |
| オーストリア | 7,884 | 7 | 81.8 | 18 |
| オランダ | 7,727 | 8 | 81.9 | 17 |
| スウェーデン | 7,512 | 10 | 83.3 | 6 |
| ベルギー | 7,489 | 11 | 82.4 | 14 |
| デンマーク | 7,098 | 13 | 81.8 | 20 |
| フランス | 6,719 | 14 | 82.8 | 11 |
| アイスランド | 6,618 | 15 | 82.5 | 13 |
| フィンランド | 6,433 | 16 | 81.6 | 23 |
| イギリス | 6,365 | 17 | 81.2 | 24 |
| スロベニア | 4,949 | 20 | 81.9 | 16 |
| スペイン | 4,935 | 21 | 83.9 | 3 |
| イタリア | 4,866 | 22 | 83.4 | 5 |
| ポルトガル | 4,679 | 24 | 82.3 | 15 |
| チェコ | 4,500 | 25 | 79.8 | 28 |
| リトアニア | 3,819 | 27 | 77.3 | 34 |
| エストニア | 3,507 | 28 | 78.8 | 29 |
| ギリシャ | 3,454 | 29 | 81.7 | 21 |
| ポーランド | 3,332 | 31 | 78.3 | 31 |
| スロバキア | 3,230 | 32 | 78.1 | 32 |
| ラトビア | 3,034 | 33 | 75.4 | 37 |
| ハンガリー | 2,875 | 34 | 76.6 | 36 |
| トルコ | 1,769 | 36 | 77.2 | 35 |
| 国 | 医療費 (ドル) | 順位 | 平均寿命 (年) | 順位 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ | 13,473 | 1 | 78.4 | 30 |
| カナダ | 7,355 | 12 | 81.6 | 22 |
| チリ | 3,337 | 30 | 81.2 | 25 |
| コスタリカ | 1,928 | 35 | 80.8 | 27 |
| コロンビア | 1,709 | 37 | 77.7 | 33 |
| メキシコ | 1,368 | 38 | 75.1 | 38 |
| 国 | 医療費 (ドル) | 順位 | 平均寿命 (年) | 順位 |
|---|---|---|---|---|
| オーストラリア | 7,691 | 9 | 83.1 | 9 |
| ニュージーランド | 5,531 | 18 | 81.8 | 19 |
| 日本 | 5,365 | 19 | 84.0 | 2 |
| 韓国 | 4,798 | 23 | 83.4 | 4 |
| イスラエル | 4,033 | 26 | 83.2 | 8 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2000年からの歩み|日本・米国・OECD加盟国全体

2000年から2023年までの医療費と平均寿命の動きを、上下2段の折れ線でたどります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2000年の1人当たり医療費は、日本が1,917ドル、米国が4,549ドル、OECD加盟国全体が2,254ドルでした。2023年には日本が5,365ドル、米国が13,473ドル、OECD加盟国全体が6,929ドルになっています。ここでの医療費は各年の物価を含む名目の国際ドルのため、金額の伸びをそのまま実質の増え方として読むことはできません。
平均寿命は2000年から2023年までに、日本が2.97年、OECD加盟国全体が3.34年、米国が1.75年延び、2023年には日本84.0年、OECD加盟国全体80.2年、米国78.4年になりました。日本と米国の平均寿命の差は、2000年の4.44年から2023年の5.66年に広がりました。
米国の平均寿命は2019年の78.79年から2021年には76.33年となり、2年間で2.46年短くなりました。2023年は78.39年です。同じ2年間にOECD加盟国全体は1.66年短くなり、日本はほぼ横ばいでした。3本の折れ線では、この2年間の落ち込みが米国で最も大きく表れています。
この比較の読み方|医療費と平均寿命の定義

数字の定義を確認しておくと、図の読み違いを防げます。
本記事の医療費は、WHOの「経常医療費」を人口で割った値です。その年に使われた保健医療の財とサービスへの支出で、公費、保険、自己負担をすべて合わせています。病院の建物や機器、ITなどへの投資は含みません。日本の医療費を誰がどのように負担しているかは、健康保険の仕組みと医療費の負担構造で図解しています。
日本の厚生労働省が公表する「国民医療費」は、2023年度で48兆915億円です。国民医療費は保険診療の対象となりうる病気やけがの治療費を推計したもので、健康診断や予防接種、薬局で買う市販薬などの費用は含みません。そのため、WHOの経常医療費より範囲が狭くなります。国民医療費の長い推移と内訳は、国民医療費の50年の推移で整理しています。
平均寿命は、その年の年齢ごとの死亡率がこの先も続くと仮定したときに、0歳の子どもが平均して何年生きるかを示す値です。世界銀行の値は男女を合わせた推計で、厚生労働省の「簡易生命表」が男女別に示す値とは示し方が異なります。OECDも加盟国の医療費を公表していますが、集計の範囲と年が異なるため、本記事はWHOの2023年の値で統一しています。
散布図や順位の並び方は、医療費と平均寿命が同じ方向に並ぶ国が多いことを示すもので、医療費が平均寿命を決めることまでは示していません。本記事は、2つの数字を同じ年・同じ国の組でそろえ、その並び方を観察したものです。
楓のまとめ|世界では医療費と平均寿命が並び、OECDの中では順位が入れ替わる

4つの図解を並べると、医療費と平均寿命の関係は、見る範囲によって強さが変わります。3つの観察事実に整理します。
「医療費が高い国ほど長生きか」という問いに対して、本記事の図解は、世界全体では2つの数字が同じ方向に並ぶ一方で、医療費の多い国どうしでは順位が大きく入れ替わることを示してきました。どの範囲の国を比べるかで見え方が変わる点を、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、医療費と平均寿命の相関は、世界全体では強く、医療費の多い国どうしでは弱くなることが分かります。医療費と平均寿命はどちらも推計値で、WHOと世界銀行の次の更新で過去の年の値が改定される場合があります。
よくある質問(FAQ)

医療費の国際比較を読むときは、どの年の値か、どの通貨単位で換算しているかの2点を確認してください。
Q1. 平均寿命が最も長い国は、医療費をどれくらい使っていますか?
OECD加盟38か国の中で平均寿命が最も長いのはスイスの84.2年で、1人当たり医療費は10,602ドルとOECDで2番目に多い水準です。世界192か国まで広げると、平均寿命が最も長いのはモナコの86.4年で、医療費は9,797ドルでした。日本は平均寿命84.0年でOECD2位ですが、医療費は5,365ドルで19位です。
Q2. 日本の1人当たり医療費はOECDで何位ですか?
2023年のWHOの値で、日本の1人当たり医療費は5,365ドルで、OECD加盟38か国中19位です。38か国の中央値は5,157ドルで、日本はほぼ中ほどに位置します。1位の米国(13,473ドル)は日本の約2.5倍で、1日あたりに直すと米国は約37ドル、日本は約15ドルです。OECD加盟国全体の値(世界銀行の集計値)は6,929ドルでした。
Q3. なぜ医療費を対数目盛で表すのですか?
国ごとの医療費の開きが400倍以上と大きいためです。普通の目盛では、医療費が数十ドルから数百ドルの国が左端に集まり、違いが見えなくなります。対数目盛は目盛り1つで10倍になるため、100ドルと200ドルの差も、5,000ドルと10,000ドルの差も同じ幅で表せます。本記事の相関係数と回帰線も、医療費の自然対数を使って計算しています。
🔍 この記事のファクトチェックについて

当サイトはファクトチェックを実施しています。このページのファクトチェックのエビデンスを以下に掲載します。





