
「日本の治安は世界で何位か」という問いには、国際比較に使える唯一の犯罪指標、殺人発生率を世界地図で面として見るのが近道です。地図と下位20の横棒、そして三つの指標の対照を並べると、答えが一つに決まらない理由が構造として見えてきます。
「世界の犯罪率ランキングで日本は何位か」という問いに、一つの順位で答えることはできません。国際比較に使える犯罪指標は、事実上、殺人(既遂)の発生率だけです。国連薬物犯罪事務所(UNODC)の統計では、日本の殺人発生率は人口10万人あたり0.23人(2022年)で、世界平均の5.8人(2021年)の約25分の1にあたります。2019年以降の値がある147の国・地域の中で、日本は低い方から8番目にあり、シンガポールやカタールなど日本より低い国・地域もあります。
約25分の1という開きは、日本で殺人の被害に遭う人が1年に約43万人に1人(📊筆者試算 100,000÷0.23)であることを意味します。本記事では、UNODCの殺人統計、UNODC「Global Study on Homicide 2023」、法務省の令和7年版犯罪白書、IEPの世界平和度指数2026を一次情報として、世界地図・下位20・主要12か国・三つの指標の対照・23年推移・地域別集計の6つの図解で整理します。
世界の犯罪率ランキングで、日本の治安は何位か。
国際比較に使える犯罪指標は殺人発生率。日本は10万人あたり0.23人で、世界平均5.8人の約25分の1。
日本は世界平均の約25分の1(📊筆者試算 5.8÷0.23=25.2)
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
日本の殺人発生率は世界で何番目か|下位20と世界平均の距離

「何位か」に最も近い答えを出すため、UNODCの統計に2019年以降の値がある147の国・地域を発生率の低い順に並べ、下から20を横棒で示しました。日本の棒だけを朱色にし、世界平均の5.8人がどれほど遠いかを枠外の注記で示しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
図の並びで、日本は掲載147の国・地域の中で低い方から8番目にあります。日本より低いのは、被害者0人の小規模地域であるツバル・バチカン・米領サモアと、シンガポール(0.07人)、カタール(0.07人)、オマーン(0.14人)、バーレーン(0.20人)です。殺人発生率で見ても、日本は「世界で最も低い」のではなく「最も低い一群にある」というのが、UNODCの統計から読める位置です。
日本のすぐ上にはクウェート(0.25人)、インドネシア(0.30人)、香港(0.38人)、韓国(0.48人)、中国(0.50人)が並びます。下位20の値はいずれも0.7人未満で、世界平均の5.8人は横棒の枠に収まらないほど離れています。人口10万人未満の地域は1件の発生で値が大きく動くため、順位は年ごとに入れ替わります。
集計のルールは次のとおりです。各国・地域の最新年が2019年以降の値を採用し、イングランド&ウェールズなどのサブ国、国連の地域集計行、推計行を除きました。この条件で並べた結果が147の国・地域、日本が8番目です。条件を変えれば数は動くため、本記事では「何位」ではなく「どのルールで何番目か」を明示しています。都道府県ごとの位置は犯罪率が低い都道府県ランキングで確認できます。
世界の殺人発生率を地図で見る|各国最新年の分布

順位表では見えない「面としての偏り」を確かめるため、各国の最新年の殺人発生率を世界地図に塗り分けました。閾値は1・3・10・20・40の6階級で、色が濃いほど発生率が高い国です。日本にはリーダー線でラベルを付けています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
地図では、発生率が20人を超える濃い色の国が中米・カリブ海・南米北部と南部アフリカに集まっています。タークス・カイコス諸島(76.34人・2022年)、セントクリストファー・ネービス(64.16人)、セントビンセント・グレナディーン(51.32人)、ジャマイカ(49.44人)、エクアドル(45.72人)、南アフリカ(43.72人・2022年)が高い側に並びます。人口10万人未満の地域は1件で値が大きく動くため、上位の名指しは注記付きで扱っています。
一方、1人未満の最も薄い色は東アジア・東南アジアの一部、西欧・北欧・南欧、湾岸諸国に広がっています。日本を含む東アジアと欧州の多くは、世界平均5.8人の半分以下どころか1人未満の帯にあります。灰色の国は2018年以前の値しかないか、UNODCに提出がない国です。地図が示すのは各国の「最新年」の分布であり、年は2019〜2023年でばらついています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
地域別の集計では、アメリカ大陸の発生率が15人と最も高く、被害者数ではアフリカの176,000人が最も多くなっています。アジア2.3人、ヨーロッパ2.2人、オセアニア2.9人はいずれも世界平均を下回ります。UNODCの推計では、2021年の世界の被害者は458,000人で、1時間あたり約52人(📊筆者試算 458,000÷8,760)に相当します。
なぜ「犯罪率」ではなく「殺人率」で比べるのか|犯罪白書の枠組み

国際比較の主軸を殺人に置く理由を、日本政府の資料で確かめます。主要12か国の殺人発生率を横棒で並べ、右端に各国の最新年を添えました。年がそろっていないこと自体が、国際比較の前提条件を示しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
窃盗や暴行などの「刑法犯認知件数」は、国ごとに犯罪の定義、被害者が通報する割合、警察の記録方法が異なり、件数をそのまま比べられません。法務省の令和7年版犯罪白書も、国際比較の節を殺人・窃盗・性暴力の3つに限定し、殺人はUNODCの「Victims of intentional homicide」で定義しています。同白書の特集は「犯罪被害の暗数」で、統計に表れない被害の存在そのものを主題にしています。
主要12か国の横棒では、メキシコ24.86人、ブラジル19.28人、米国5.76人(2023年)が上位に、ドイツ0.91人、イタリア0.57人、中国0.50人、韓国0.48人、日本0.23人、シンガポール0.07人が下位に並びます。米国と日本の開きは約25倍(📊筆者試算 5.76÷0.23)で、G7の中では日本が最も低く、イタリアが次に低い位置にあります。
右端の年に注目すると、多くの国は2023年ですが、中国は2020年、イングランド&ウェールズは2021年の値です。UNODCの統計は各国の提出時期に依存するため、同じ表の中でも年がそろいません。本記事で「各国最新年」と繰り返し書いているのはこのためで、順位の比較には年の差が含まれていることを前提に読む必要があります。
同じ問いに、なぜ違う答えが出るのか|三つの指標の設計

「日本は世界何位」と書かれた記事の多くは、世界平和度指数の順位を引用しています。UNODCの殺人発生率、世界平和度指数2026、Numbeoの安全指数の三つを同じ画面に並べ、何を測り、何か国を対象にし、いつの値かを対照できるようにしました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
三つの指標は、測るものがそれぞれ違います。UNODCの殺人発生率は「発生した事実」の数で、対象は本記事の集計で147の国・地域です。世界平和度指数(GPI)は、殺人率や暴力犯罪に加えて軍事支出や国際紛争を含む23指標の合成で、163か国を対象にしています。Numbeoはサイト利用者の回答を集計した指数で、148か国が対象です。
日本の位置は、UNODCでは低い方から8番目、GPI 2026では10位(スコア1.489・前年から3位上昇)、Numbeoの安全指数では10番目です。GPIとNumbeoで日本がどちらも「10」になるのは偶然で、二つの指標は互いに独立しています。GPIの順位は「平和度」であり、犯罪の発生そのものを示す数値ではありません。
合成指数の順位の読み方は、世界の幸福度ランキングや世界の報道自由度、日本のパスポート順位の記事と同じです。算出主体・指標構成・対象国数が変われば順位も変わるため、本記事では三つの答えを並べて示し、どれか一つを「正しい順位」として断定することはしていません。
主要国と比べた23年の動き|2000年から2023年へ

日本の0.23人が「今だけの値」なのかを確かめるため、2000年から2023年までの23年間を、韓国・フランス・ドイツ・イングランド&ウェールズと重ねて折れ線にしました。日本だけを太い朱色で描き、他の4か国はグレー系にしています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本の殺人発生率は2000年の0.53人から2022年の0.23人へ、23年で約57%下がりました(📊筆者試算 (0.53−0.23)÷0.53)。2009年に0.39人へ下がって以降、0.3人台、0.2人台へと段階的に低下し、2021年から0.23人が続いています。被害者数で見ると、2000年の678人から2022年の289人で、1年に約1.3日に1人(📊筆者試算 365÷289)の頻度です。
同じ期間に、韓国は0.79人から0.53人(2022年)、ドイツは1.67人から0.82人(2022年)へ下がりました。フランスは1.77人から1.24人(2022年)で、2015年に1.56人へ上がった後に再び下がっています。イングランド&ウェールズは1.46人から1.15人(2021年)で、0.9〜1.2人の帯を上下しています。5か国のうち日本の低下幅が最も大きく、水準も最も低い位置にあります。
UNODCの殺人は既遂の被害者数で、警察庁の「殺人の認知件数」(未遂を含む)とは定義が違います。国内の刑法犯認知件数の推移と体感の乖離は日本の治安は悪化したかで扱っており、本記事の国際比較と対になる記事です。二つの記事で数値が異なるのは定義の違いによるもので、同じ年でも認知件数の方が大きくなります。
全147の国・地域の一覧|地域別に発生率を確認する

UNODCの統計に2019年以降の値がある147の国・地域を、アフリカ・アメリカ大陸・アジア・ヨーロッパ・オセアニアの5つのブロックに分けて一覧にしました。タブで地域を切り替えられ、各ブロックは発生率の低い順です。日本の行は朱色で示しています。
| 国・地域 | 発生率(10万人あたり) | 最新年 |
|---|---|---|
| モーリタニア | 1.00 | 2020年 |
| アルジェリア | 1.16 | 2023年 |
| モロッコ | 1.71 | 2023年 |
| ガーナ | 1.83 | 2022年 |
| シエラレオネ | 2.22 | 2020年 |
| モーリシャス | 2.27 | 2022年 |
| ルワンダ | 3.61 | 2020年 |
| タンザニア | 3.75 | 2020年 |
| チュニジア | 4.69 | 2020年 |
| ケニア | 4.87 | 2022年 |
| ジンバブエ | 6.76 | 2022年 |
| カメルーン | 6.76 | 2022年 |
| カーボベルデ | 7.00 | 2020年 |
| セーシェル | 7.97 | 2022年 |
| ウガンダ | 8.97 | 2023年 |
| ナミビア | 11.21 | 2021年 |
| ボツワナ | 11.37 | 2021年 |
| エスワティニ | 12.52 | 2021年 |
| ナイジェリア | 15.75 | 2023年 |
| 南アフリカ | 43.72 | 2022年 |
| 国・地域 | 発生率(10万人あたり) | 最新年 |
|---|---|---|
| カナダ | 1.98 | 2023年 |
| ケイマン諸島 | 4.37 | 2020年 |
| ボリビア | 4.42 | 2023年 |
| キューバ | 4.46 | 2019年 |
| アルゼンチン | 4.49 | 2023年 |
| 米国 | 5.76 | 2023年 |
| バミューダ | 6.18 | 2023年 |
| チリ | 6.35 | 2023年 |
| スリナム | 6.52 | 2023年 |
| パラグアイ | 6.78 | 2023年 |
| バルバドス | 7.44 | 2023年 |
| エルサルバドル | 7.90 | 2022年 |
| ペルー | 8.61 | 2021年 |
| アンティグア・バーブーダ | 10.72 | 2023年 |
| ドミニカ共和国 | 10.92 | 2023年 |
| ウルグアイ | 11.25 | 2023年 |
| ニカラグア | 11.35 | 2021年 |
| パナマ | 11.71 | 2023年 |
| ベネズエラ | 12.65 | 2022年 |
| 仏領ギアナ | 13.39 | 2020年 |
| グレナダ | 13.67 | 2023年 |
| プエルトリコ | 14.59 | 2023年 |
| コスタリカ | 17.75 | 2023年 |
| ガイアナ | 19.12 | 2023年 |
| ブラジル | 19.28 | 2023年 |
| グアテマラ | 23.37 | 2023年 |
| メキシコ | 24.86 | 2023年 |
| コロンビア | 24.91 | 2023年 |
| ドミニカ国 | 27.06 | 2023年 |
| ベリーズ | 28.06 | 2022年 |
| ホンジュラス | 31.44 | 2023年 |
| バハマ | 32.20 | 2022年 |
| セントルシア | 39.04 | 2023年 |
| トリニダード・トバゴ | 40.44 | 2022年 |
| ハイチ | 41.15 | 2023年 |
| エクアドル | 45.72 | 2023年 |
| ジャマイカ | 49.44 | 2023年 |
| セントビンセント・グレナディーン | 51.32 | 2023年 |
| セントクリストファー・ネービス | 64.16 | 2023年 |
| タークス・カイコス諸島 | 76.34 | 2022年 |
| 国・地域 | 発生率(10万人あたり) | 最新年 |
|---|---|---|
| カタール | 0.07 | 2022年 |
| シンガポール | 0.07 | 2023年 |
| オマーン | 0.14 | 2023年 |
| バーレーン | 0.20 | 2022年 |
| 日本 | 0.23 | 2023年 |
| クウェート | 0.25 | 2020年 |
| インドネシア | 0.30 | 2022年 |
| 香港 | 0.38 | 2023年 |
| 韓国 | 0.48 | 2023年 |
| 中国 | 0.50 | 2020年 |
| マカオ | 0.56 | 2023年 |
| モルディブ | 0.62 | 2019年 |
| パレスチナ | 0.62 | 2022年 |
| アラブ首長国連邦 | 0.69 | 2022年 |
| マレーシア | 0.73 | 2023年 |
| キプロス | 0.82 | 2023年 |
| タジキスタン | 0.89 | 2020年 |
| サウジアラビア | 0.94 | 2019年 |
| ヨルダン | 0.99 | 2023年 |
| ウズベキスタン | 1.40 | 2021年 |
| イスラエル | 1.63 | 2022年 |
| ジョージア | 2.03 | 2019年 |
| ネパール | 2.13 | 2020年 |
| アゼルバイジャン | 2.16 | 2023年 |
| アルメニア | 2.21 | 2023年 |
| レバノン | 2.25 | 2020年 |
| ブータン | 2.47 | 2020年 |
| カザフスタン | 2.55 | 2022年 |
| ミャンマー | 2.58 | 2023年 |
| インド | 2.82 | 2022年 |
| トルコ | 3.23 | 2023年 |
| スリランカ | 3.31 | 2019年 |
| アフガニスタン | 4.03 | 2021年 |
| パキスタン | 4.34 | 2023年 |
| フィリピン | 4.35 | 2023年 |
| モンゴル | 5.92 | 2023年 |
| 国・地域 | 発生率(10万人あたり) | 最新年 |
|---|---|---|
| バチカン | 0.00 | 2023年 |
| マルタ | 0.56 | 2023年 |
| スロベニア | 0.57 | 2023年 |
| イタリア | 0.57 | 2023年 |
| スイス | 0.60 | 2023年 |
| アイルランド | 0.65 | 2023年 |
| クロアチア | 0.67 | 2023年 |
| オランダ | 0.69 | 2023年 |
| スペイン | 0.69 | 2023年 |
| ポルトガル | 0.72 | 2022年 |
| ハンガリー | 0.72 | 2023年 |
| ノルウェー | 0.73 | 2023年 |
| チェコ | 0.77 | 2023年 |
| モンテネグロ | 0.79 | 2023年 |
| ポーランド | 0.80 | 2023年 |
| ギリシャ | 0.84 | 2023年 |
| デンマーク | 0.84 | 2023年 |
| オーストリア | 0.88 | 2023年 |
| ドイツ | 0.91 | 2023年 |
| フィンランド | 0.98 | 2023年 |
| ベルギー | 1.08 | 2021年 |
| ブルガリア | 1.09 | 2023年 |
| ルーマニア | 1.11 | 2023年 |
| スロバキア | 1.12 | 2023年 |
| スウェーデン | 1.15 | 2023年 |
| ボスニア・ヘルツェゴビナ | 1.22 | 2023年 |
| アイスランド | 1.29 | 2023年 |
| セルビア | 1.31 | 2023年 |
| フランス | 1.34 | 2023年 |
| アルバニア | 1.39 | 2023年 |
| 北マケドニア | 1.53 | 2023年 |
| ルクセンブルク | 1.53 | 2022年 |
| エストニア | 1.54 | 2023年 |
| コソボ | 1.90 | 2021年 |
| ベラルーシ | 2.39 | 2019年 |
| ラトビア | 2.50 | 2023年 |
| モルドバ | 2.54 | 2023年 |
| アンドラ | 2.59 | 2020年 |
| リトアニア | 2.63 | 2023年 |
| ウクライナ | 3.78 | 2021年 |
| リヒテンシュタイン | 5.12 | 2021年 |
| ロシア | 6.77 | 2021年 |
| 国・地域 | 発生率(10万人あたり) | 最新年 |
|---|---|---|
| ツバル | 0.00 | 2019年 |
| 米領サモア | 0.00 | 2019年 |
| バヌアツ | 0.34 | 2020年 |
| オーストラリア | 0.85 | 2023年 |
| ミクロネシア連邦 | 0.91 | 2019年 |
| トンガ | 0.95 | 2019年 |
| ニュージーランド | 1.46 | 2022年 |
| フィジー | 2.06 | 2023年 |
| グアム | 4.33 | 2019年 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
一覧表の地域区分は国連の地理区分に従っており、キプロスやトルコはアジアに含まれます。アジアのブロック(36の国・地域)では、カタール・シンガポール・オマーン・バーレーンに次いで日本が5番目に低く、上位はアフガニスタン4.03人、モンゴル5.92人です。ヨーロッパの最上位はロシア6.77人(2021年)、アメリカ大陸の最上位はタークス・カイコス諸島76.34人(2022年)です。
楓のまとめ|順位は指標の設計で決まる

ここまでの地図・順位・推移・指標対照を一通り並べると、「何位か」という問いの答えが指標の設計で決まることが、図解の対比で確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「世界の犯罪率ランキングで日本は何位か」という問いに対して、本記事で並べた図解は、答えが一つではないことを示してきました。指標の選び方・対象国数・年の取り方、それぞれが違う順位を返します。順位に優劣をつけるのではなく、どの指標で見るとどこに置かれるのかを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、UNODCの殺人発生率、GPI、Numbeoのどれで見ても、日本が上位の一群にあることは共通しています。殺人発生率では147の国・地域中8番目、平和度と安全指数ではともに10位前後という位置は、指標が違っても大きくは動いていません。ただし「世界一」ではなく、各国の最新年もそろっていません。「日本の治安は世界何位か」への答えは、どの指標を、どの年の値で、何か国の中で見ているかを添えて初めて意味を持ちます。
よくある質問(FAQ)

本記事の図解を見た読者の方から寄せられそうな疑問を、3つの質問にまとめました。いずれも一次情報の定義に立ち返って答えています。
Q1. 結局、日本の治安は世界で何位ですか?
指標によって変わります。国際比較に使える犯罪指標は殺人の発生率で、UNODCの統計では日本は人口10万人あたり0.23人(2022年)です。2019年以降の値がある147の国・地域の中で低い方から8番目で、シンガポールやカタールなど日本より低い国もあります。世界平和度指数2026では163か国中10位、Numbeoの安全指数では148か国中10番目です。
Q2. なぜ窃盗や暴行などの「犯罪率」で比べないのですか?
犯罪の定義、被害者が通報する割合、警察の記録方法が国ごとに異なり、件数をそのまま比べられないためです。法務省の犯罪白書も国際比較を殺人・窃盗・性暴力に絞り、殺人は国連薬物犯罪事務所(UNODC)のデータで定義しています。令和7年版の特集は「犯罪被害の暗数」で、統計に表れない被害の存在を扱っています。
Q3. UNODCの「殺人」と警察庁の「殺人の認知件数」は同じですか?
違います。UNODCの殺人は既遂の被害者数で、2022年の日本は289人です。警察庁の認知件数は未遂を含むため、同じ年でも数字が大きくなります。本記事では国際比較のためUNODCの定義に統一しています。国内の認知件数の推移は別記事で扱っています。
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