
区市町村ごとの治安を見るときは、件数の多い順と、人口あたりの発生率の高い順を分けて見るのが近道です。地図とランキングを並べると、同じ都内でも地域によって見え方が変わることがはっきりします。
東京都の刑法犯認知件数は、2025年(令和7年)に、区部と多摩地域をあわせた本土53区市町村で約98,500件でした。都全体を人口千人あたりに直すと約6.9件ですが、この数字は区市町村ごとに大きく開きがあり、どの指標で見るかによって上位の顔ぶれが変わります。
本記事では、警視庁が公表した区市町村別の認知件数(令和7年)と、令和7年国勢調査の速報人口を組み合わせて、都内本土53区市町村の犯罪件数と人口あたりの発生率を地図とランキングで整理します。件数で見るか発生率で見るかで像がどう変わるかを、中立に観察していきます。
東京の犯罪は、区市町村ごとにどれくらい違う?
件数の1位は新宿区だが、人口あたりの発生率では千代田区が1位になり、顔ぶれが入れ替わる。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
認知件数が多いのはどの区市町村か

まずは単純に、件数そのものが多いのはどこかを見ていきます。件数は人口の多さや、明るい時間に人が集まるせんの規模が反映されやすい指標です。
2025年の認知件数を区市町村別に見ると、最も多いのは新宿区の6,977件でした。次いで足立区4,617件、世田谷区4,599件、江戸川区4,375件と続きます。件数の上位は、ターミナルや繁華街を抱える区と、人口規模の大きい区が混在しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
件数の上位10区市で、都全体の約半分(約44%)を占める計算です。一方で、新宿区や渋谷区のように人口はそれほど多くない区が上位に入る一方で、足立区や世田谷区のように人口が多いために件数も多くなる区も並びます。同じ「件数が多い」でも、背景は一様ではありません。
発生率が高いのはどの区市町村か

次に、人口の大きさの影響を取り除いた「人口あたりの発生率」で見ます。件数を人口で割ると、街の大きさに関係なく、住む人あたりでどれくらい起きているかを比べられます。
人口千人あたりの発生率(犯罪率)で並べ替えると、上位の顔ぶれが大きく変わります。最も高いのは千代田区の44.79で、新宿区19.29、渋谷区17.87、豊島区13.14、港区13.00と続きます。千代田区は件数では14位ですが、住む人の少なさから人口あたりの発生率では突出して高くなります。
千代田区の人口は約6万測と都内で最も少ない一方で、オフィス街や繁華街を抱え、明るい時間に多くの人が集まります。人口を分母にした発生率では、こうした明るい時間の人口が多い都心の区が高く出る傾向があります。
地図にすると、発生率の地域差が面で見えてきます。都心の区で色が濃く、多摩西部の市町村では色が薄くなっています。どの地域で人口あたりの発生率が高いのかを、区市町村名のランキングと地図の両方で確認できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
「件数」と「発生率」で顔ぶれが入れ替わる

この記事でいちばん見てほしいのがここです。件数の順位と発生率の順位を並べると、同じ都内でも上位の区市町村が入れ替わることが分かります。
件数1位の新宿区は発生率でも2位、渋谷区も両方で上位に入りますが、件数2位の足立区や世田谷区は発生率では上位に入りません。逆に発生率1位の千代田区は、件数では14位です。規模で見るか密度で見るかで、上位の顔ぶれが入れ替わります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
両方のランキングで上位に入るのは、新宿区や渋谷区のような大きなターミナルを抱える区です。件数も多く、人口あたりの発生率も高いという両面をもちます。一方で多くの区市町村は、件数と発生率のどちらか一方だけで上位に来ます。どちらの指標を選ぶかで、見える「治安の地図」が変わる、ということです。
ここまでは上位を中心に見てきましたが、お住まいの区市町村が都内で何位なのかは、全体の一覧で確認できます。次の表に、都内本土の全53区市町村の認知件数の多い順と、人口千人あたりの発生率の高い順を並べました。同じ区市町村でも、件数の順位と発生率の順位がどれだけ違うかを見比べられます。
東京都 全53区市町村 犯罪ランキング一覧(2025年)
左は認知件数の多い順、右は人口千人あたりの発生率の高い順。お住まいの区市町村が都内で何位かを、件数と発生率の両方で確認できます。
| 順位 | 区市町村 | 件数 | 発生率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 新宿区 | 6,977 | 19.29 |
| 2 | 足立区 | 4,617 | 6.57 |
| 3 | 世田谷区 | 4,599 | 4.81 |
| 4 | 江戸川区 | 4,375 | 6.21 |
| 5 | 渋谷区 | 4,272 | 17.87 |
| 6 | 大田区 | 4,121 | 5.43 |
| 7 | 豊島区 | 4,021 | 13.14 |
| 8 | 練馬区 | 3,672 | 4.82 |
| 9 | 港区 | 3,544 | 13.0 |
| 10 | 板橋区 | 3,492 | 5.87 |
| 11 | 江東区 | 3,456 | 6.25 |
| 12 | 葛飾区 | 3,309 | 7.08 |
| 13 | 八王子市 | 3,010 | 5.24 |
| 14 | 千代田区 | 2,965 | 44.79 |
| 15 | 台東区 | 2,793 | 12.23 |
| 16 | 町田市 | 2,686 | 6.38 |
| 17 | 杉並区 | 2,547 | 4.26 |
| 18 | 北区 | 2,442 | 6.63 |
| 19 | 品川区 | 2,225 | 5.22 |
| 20 | 中央区 | 2,147 | 11.8 |
| 21 | 中野区 | 2,135 | 6.01 |
| 22 | 墨田区 | 1,992 | 6.98 |
| 23 | 立川市 | 1,690 | 8.94 |
| 24 | 荒川区 | 1,451 | 6.41 |
| 25 | 目黒区 | 1,380 | 4.82 |
| 26 | 武蔵野市 | 1,353 | 8.98 |
| 27 | 文京区 | 1,329 | 5.32 |
| 28 | 調布市 | 1,300 | 5.29 |
| 29 | 府中市 | 1,222 | 4.64 |
| 30 | 西東京市 | 1,179 | 5.68 |
| 31 | 小平市 | 1,040 | 5.24 |
| 32 | 日野市 | 942 | 4.95 |
| 33 | 多摩市 | 843 | 5.97 |
| 34 | 三鷹市 | 829 | 4.25 |
| 35 | 昭島市 | 818 | 7.01 |
| 36 | 東村山市 | 751 | 4.94 |
| 37 | 東久留米市 | 728 | 6.31 |
| 38 | 青梅市 | 658 | 5.08 |
| 39 | 国分寺市 | 649 | 5.06 |
| 40 | 小金井市 | 600 | 4.65 |
| 41 | 東大和市 | 560 | 6.74 |
| 42 | 武蔵村山市 | 503 | 7.28 |
| 43 | 清瀬市 | 477 | 6.38 |
| 44 | 福生市 | 449 | 7.85 |
| 45 | あきる野市 | 448 | 5.8 |
| 46 | 国立市 | 431 | 5.63 |
| 47 | 羽村市 | 421 | 7.87 |
| 48 | 稲城市 | 386 | 4.06 |
| 49 | 狛江市 | 354 | 4.21 |
| 50 | 瑞穂町 | 203 | 6.51 |
| 51 | 日の出町 | 135 | 8.4 |
| 52 | 檜原村 | 11 | 6.25 |
| 53 | 奥多摩町 | 9 | 2.16 |
| 順位 | 区市町村 | 発生率 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 千代田区 | 44.79 | 2,965 |
| 2 | 新宿区 | 19.29 | 6,977 |
| 3 | 渋谷区 | 17.87 | 4,272 |
| 4 | 豊島区 | 13.14 | 4,021 |
| 5 | 港区 | 13.0 | 3,544 |
| 6 | 台東区 | 12.23 | 2,793 |
| 7 | 中央区 | 11.8 | 2,147 |
| 8 | 武蔵野市 | 8.98 | 1,353 |
| 9 | 立川市 | 8.94 | 1,690 |
| 10 | 日の出町 | 8.4 | 135 |
| 11 | 羽村市 | 7.87 | 421 |
| 12 | 福生市 | 7.85 | 449 |
| 13 | 武蔵村山市 | 7.28 | 503 |
| 14 | 葛飾区 | 7.08 | 3,309 |
| 15 | 昭島市 | 7.01 | 818 |
| 16 | 墨田区 | 6.98 | 1,992 |
| 17 | 東大和市 | 6.74 | 560 |
| 18 | 北区 | 6.63 | 2,442 |
| 19 | 足立区 | 6.57 | 4,617 |
| 20 | 瑞穂町 | 6.51 | 203 |
| 21 | 荒川区 | 6.41 | 1,451 |
| 22 | 町田市 | 6.38 | 2,686 |
| 22 | 清瀬市 | 6.38 | 477 |
| 24 | 東久留米市 | 6.31 | 728 |
| 25 | 江東区 | 6.25 | 3,456 |
| 25 | 檜原村 | 6.25 | 11 |
| 27 | 江戸川区 | 6.21 | 4,375 |
| 28 | 中野区 | 6.01 | 2,135 |
| 29 | 多摩市 | 5.97 | 843 |
| 30 | 板橋区 | 5.87 | 3,492 |
| 31 | あきる野市 | 5.8 | 448 |
| 32 | 西東京市 | 5.68 | 1,179 |
| 33 | 国立市 | 5.63 | 431 |
| 34 | 大田区 | 5.43 | 4,121 |
| 35 | 文京区 | 5.32 | 1,329 |
| 36 | 調布市 | 5.29 | 1,300 |
| 37 | 八王子市 | 5.24 | 3,010 |
| 37 | 小平市 | 5.24 | 1,040 |
| 39 | 品川区 | 5.22 | 2,225 |
| 40 | 青梅市 | 5.08 | 658 |
| 41 | 国分寺市 | 5.06 | 649 |
| 42 | 日野市 | 4.95 | 942 |
| 43 | 東村山市 | 4.94 | 751 |
| 44 | 目黒区 | 4.82 | 1,380 |
| 44 | 練馬区 | 4.82 | 3,672 |
| 46 | 世田谷区 | 4.81 | 4,599 |
| 47 | 小金井市 | 4.65 | 600 |
| 48 | 府中市 | 4.64 | 1,222 |
| 49 | 杉並区 | 4.26 | 2,547 |
| 50 | 三鷹市 | 4.25 | 829 |
| 51 | 狛江市 | 4.21 | 354 |
| 52 | 稲城市 | 4.06 | 386 |
| 53 | 奥多摩町 | 2.16 | 9 |
発生率は人口千人あたりの件数。同じ値の場合は同順位とし、島しょ部は本土と分けて扱うため除いています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が低いのはどの区市町村か

最後に、発生率が低い側も見ておきます。高い側だけでなく低い側を見ると、地域のまとまりがより分かりやすくなります。
人口千人あたりの発生率が最も低いのは奥多摩町の2.16で、稲城市4.06、狛江市4.21、三鷹市4.25、杉並区4.26と続きます。発生率が低い顔ぶれは、多摩西部の市町村と、住宅地としての性格が強い区にまとまっています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率の下位には、奥多摩町や稲城市などの多摩地域に加えて、三鷹市や杉並区のような住宅地の区も並びます。人口に対して件数が抑えられている地域が、人口あたりでも低い値になっている形です。地図で見た多摩西部の薄い色と、このランキングはおおむね対応しています。
楓のまとめ|同じ都でも、見る指標で治安の地図は変わる
3つの観察を重ねると、「東京のどこで犯罪が多いか」という問いには、件数で答えるか発生率で答えるかで違う地図が現れることが分かります。件数ならターミナルや人口の多い区、人口あたりの発生率なら都心の区が上位に来て、同じ都でも見る指標によって治安の像が変わります。どちらか一方だけを見るのではなく、規模と密度の両方を並べて見ることが、データを正確に読む手がかりになります。
よくある質問(FAQ)

区市町村別の治安データを読むときに迷いやすい点を、3つにまとめました。件数と発生率の違い、データの新しさ、千代田区の発生率が高い理由についてです。
Q1. この件数は確定値ですか?
警視庁が公表している区市町村別の認知件数は、令和7年の年計値です。ただし、公表当時の数値は暑定値とされており、他の統計値と異なる場合があります。また、発生率の計算に使う人口は令和7年国勢調査の速報値で、確報は令和8年9月に公表される予定です。
Q2. 「件数」と「発生率」はどう違いますか?
件数は、その区市町村で1年間に認知された刑法犯の総数です。発生率(人口千対)は、その件数を人口で割って1,000を掛けた値で、人口規模の影響を取り除いて比べられます。人口の多い区は件数が多く出やすいため、街の大きさに関係なく比べたいときは発生率が使われます。
Q3. 千代田区の発生率が高いのはなぜですか?
発生率は「その街に住んでいる人」の数を分母にします。千代田区は人口が約6万人と都内で最も少ない一方で、オフィス街や繁華街を抱え、明るい時間に多くの人が集まります。そのため、住む人あたりに換算すると発生率が高く出ます。千代田区に限らず、都心の区で同じ傾向が見られます。
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