
市町村ごとの治安を見るときは、件数の多い順と、人口あたりの発生率の高い順を分けて見るのが近道です。地図とランキングを並べると、同じ県の中でも地域によって見え方が変わることがはっきりします。
埼玉県の刑法犯認知件数は、2025年(令和7年)の確定値で53,471件でした。前年の51,667件から1,804件、率にして3.5%増えています。県全体を人口千人あたりに直すと約7.3件ですが、この数字は市町村ごとに大きく開きがあり、どの指標で見るかによって上位の顔ぶれが変わります。
本記事では、埼玉県警察が公表した市町村別の認知件数(令和7年確定値)と、令和7年国勢調査の速報人口を組み合わせて、県内63市町村の犯罪件数と人口あたりの発生率を地図とランキングで整理します。件数で見るか発生率で見るかで像がどう変わるかを、中立に観察していきます。
埼玉県の犯罪は、市町村ごとにどれくらい違う?
件数で見ると大都市が上位だが、人口あたりの発生率では別の市町村が上位に来て、顔ぶれが入れ替わる。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
埼玉県全体の犯罪はどう動いてきたか

まず県全体の長い流れを押さえておきます。市町村別の細かい話に入る前に、埼玉県全体の件数が歴史的にどのあたりにあるのかを見ておくと、いまの水準の意味がつかみやすくなります。
埼玉県の刑法犯認知件数は、平成16年(2004年)の約18万件をピークに、長期的には大きく減ってきました。埼玉県警察の統計では、2021年(令和3年)には40,166件まで下がっています。20年ほどの長いスパンで見ると、件数はピークから4分の1以下の水準まで減っています。
一方で、近年は下げ止まりから増加に転じています。2023年(令和5年)は49,653件、2024年(令和6年)は51,667件、そして2025年(令和7年)は53,471件と、ここ数年は連続して前年を上回っています。長期的には歴史的な低水準にありながら、直近では増加している、という二つの動きが同時に起きている局面です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
認知件数が多いのはどの市町村か

ここからが市町村別の話です。最初は単純に、件数そのものが多いのはどこか、を見ていきます。件数は人口の多さがそのまま反映されやすい指標です。
2025年の認知件数を市町村別に見ると、最も多いのはさいたま市の9,311件でした。次いで川口市4,417件、越谷市3,256件、川越市2,722件と続きます。件数の上位はいずれも人口規模の大きい市で占められています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
件数の偏りはかなり大きく、さいたま市と川口市の2市だけで県全体の約4分の1(25.7%)を占めます。上位10市まで広げると、県全体の半分以上(約55%)がこの10市に集中している計算です。人口が集まる都市部に件数も集まる、という関係がはっきり出ています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が高いのはどの市町村か

次に、人口の大きさの影響を取り除いた「人口あたりの発生率」で見ます。件数を人口で割ると、街の大きさに関係なく、住む人あたりでどれくらい起きているかを比べられます。
人口千人あたりの発生率(犯罪率)で並べ替えると、上位の顔ぶれが大きく変わります。最も高いのは川島町の11.13で、羽生市9.72、越谷市9.53、八潮市9.46、幸手市9.26と続きます。件数では上位に入らなかった中小規模の市町が、発生率では上位に並びます。
地図にすると、発生率の地域差が面で見えてきます。県の東部や北部の一部で色が濃く、秩父地域など県西部の山間部では色が薄くなっています。どの地域で人口あたりの発生率が高いのかを、市町村名のランキングと地図の両方で確認できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
「件数」と「発生率」で顔ぶれが入れ替わる

この記事でいちばん見てほしいのがここです。件数の順位と発生率の順位を並べると、同じ県の中でも上位の市町村がほとんど入れ替わることが分かります。
件数1位のさいたま市は、発生率では6.92で、63市町村のなかではおよそ中位にあたります。逆に発生率1位の川島町は、件数では199件で上位には入りません。規模で見るか密度で見るかで、上位の顔ぶれがほとんど入れ替わります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
両方のランキングで上位に入る数少ない例が越谷市です。件数では3位(3,256件)、発生率でも3位(9.53)で、件数と密度の両面で高い水準にあります。一方で多くの市町村は、件数と発生率のどちらか一方だけで上位に来ます。どちらの指標を選ぶかで、見える「治安の地図」が変わる、ということです。
ここまでは上位を中心に見てきましたが、お住まいの市区町村が県内で何位なのかは、全体の一覧で確認できます。次の表に、全63市区町村の認知件数の多い順と、人口千人あたりの発生率の高い順を並べました。同じ市区町村でも、件数の順位と発生率の順位がどれだけ違うかを見比べられます。
埼玉県 全63市区町村 犯罪ランキング一覧(2025年)
左は認知件数の多い順、右は人口千人あたりの発生率の高い順。お住まいの市区町村が県内で何位かを、件数と発生率の両方で確認できます。
| 順位 | 市区町村 | 件数 | 発生率 |
|---|---|---|---|
| 1 | さいたま市 | 9,311 | 6.92 |
| 2 | 川口市 | 4,417 | 7.46 |
| 3 | 越谷市 | 3,256 | 9.53 |
| 4 | 川越市 | 2,722 | 7.67 |
| 5 | 所沢市 | 1,981 | 5.78 |
| 6 | 草加市 | 1,906 | 7.59 |
| 7 | 上尾市 | 1,670 | 7.43 |
| 8 | 春日部市 | 1,591 | 7.14 |
| 9 | 熊谷市 | 1,519 | 8.07 |
| 10 | 三郷市 | 1,214 | 8.64 |
| 11 | 戸田市 | 1,143 | 8.21 |
| 12 | 久喜市 | 1,086 | 7.38 |
| 13 | 新座市 | 1,000 | 6.07 |
| 14 | 朝霞市 | 969 | 6.59 |
| 15 | 富士見市 | 945 | 8.38 |
| 16 | 入間市 | 944 | 6.73 |
| 17 | 狭山市 | 919 | 6.44 |
| 18 | 深谷市 | 885 | 6.39 |
| 19 | 八潮市 | 883 | 9.46 |
| 20 | ふじみ野市 | 831 | 7.39 |
| 21 | 東松山市 | 830 | 9.06 |
| 22 | 鴻巣市 | 821 | 7.11 |
| 23 | 加須市 | 717 | 6.54 |
| 24 | 蕨市 | 686 | 9.08 |
| 25 | 坂戸市 | 682 | 6.86 |
| 26 | 本庄市 | 601 | 7.87 |
| 27 | 行田市 | 582 | 7.64 |
| 28 | 吉川市 | 564 | 7.91 |
| 29 | 飯能市 | 514 | 6.62 |
| 30 | 羽生市 | 508 | 9.72 |
| 31 | 桶川市 | 494 | 6.77 |
| 32 | 北本市 | 472 | 7.35 |
| 32 | 蓮田市 | 472 | 7.81 |
| 34 | 鶴ヶ島市 | 470 | 6.65 |
| 35 | 和光市 | 445 | 5.32 |
| 36 | 幸手市 | 441 | 9.26 |
| 37 | 志木市 | 434 | 5.78 |
| 38 | 日高市 | 373 | 6.98 |
| 39 | 伊奈町 | 358 | 8.05 |
| 40 | 杉戸町 | 309 | 7.26 |
| 41 | 秩父市 | 299 | 5.47 |
| 42 | 白岡市 | 283 | 5.5 |
| 42 | 宮代町 | 283 | 8.44 |
| 44 | 毛呂山町 | 274 | 8.25 |
| 45 | 上里町 | 264 | 8.91 |
| 46 | 三芳町 | 240 | 6.4 |
| 47 | 川島町 | 199 | 11.13 |
| 48 | 小川町 | 187 | 7.12 |
| 49 | 松伏町 | 186 | 6.92 |
| 50 | 滑川町 | 167 | 8.39 |
| 51 | 寄居町 | 141 | 4.6 |
| 52 | 嵐山町 | 135 | 7.78 |
| 53 | 吉見町 | 100 | 5.94 |
| 54 | 鳩山町 | 73 | 5.77 |
| 55 | 越生町 | 64 | 6.26 |
| 56 | 神川町 | 59 | 4.72 |
| 57 | ときがわ町 | 57 | 5.81 |
| 58 | 美里町 | 50 | 4.85 |
| 59 | 皆野町 | 30 | 3.56 |
| 60 | 長瀞町 | 27 | 4.43 |
| 61 | 小鹿野町 | 23 | 2.44 |
| 62 | 横瀬町 | 17 | 2.35 |
| 63 | 東秩父村 | 7 | 3.05 |
| 順位 | 市区町村 | 発生率 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 川島町 | 11.13 | 199 |
| 2 | 羽生市 | 9.72 | 508 |
| 3 | 越谷市 | 9.53 | 3,256 |
| 4 | 八潮市 | 9.46 | 883 |
| 5 | 幸手市 | 9.26 | 441 |
| 6 | 蕨市 | 9.08 | 686 |
| 7 | 東松山市 | 9.06 | 830 |
| 8 | 上里町 | 8.91 | 264 |
| 9 | 三郷市 | 8.64 | 1,214 |
| 10 | 宮代町 | 8.44 | 283 |
| 11 | 滑川町 | 8.39 | 167 |
| 12 | 富士見市 | 8.38 | 945 |
| 13 | 毛呂山町 | 8.25 | 274 |
| 14 | 戸田市 | 8.21 | 1,143 |
| 15 | 熊谷市 | 8.07 | 1,519 |
| 16 | 伊奈町 | 8.05 | 358 |
| 17 | 吉川市 | 7.91 | 564 |
| 18 | 本庄市 | 7.87 | 601 |
| 19 | 蓮田市 | 7.81 | 472 |
| 20 | 嵐山町 | 7.78 | 135 |
| 21 | 川越市 | 7.67 | 2,722 |
| 22 | 行田市 | 7.64 | 582 |
| 23 | 草加市 | 7.59 | 1,906 |
| 24 | 川口市 | 7.46 | 4,417 |
| 25 | 上尾市 | 7.43 | 1,670 |
| 26 | ふじみ野市 | 7.39 | 831 |
| 27 | 久喜市 | 7.38 | 1,086 |
| 28 | 北本市 | 7.35 | 472 |
| 29 | 杉戸町 | 7.26 | 309 |
| 30 | 春日部市 | 7.14 | 1,591 |
| 31 | 小川町 | 7.12 | 187 |
| 32 | 鴻巣市 | 7.11 | 821 |
| 33 | 日高市 | 6.98 | 373 |
| 34 | 松伏町 | 6.92 | 186 |
| 34 | さいたま市 | 6.92 | 9,311 |
| 36 | 坂戸市 | 6.86 | 682 |
| 37 | 桶川市 | 6.77 | 494 |
| 38 | 入間市 | 6.73 | 944 |
| 39 | 鶴ヶ島市 | 6.65 | 470 |
| 40 | 飯能市 | 6.62 | 514 |
| 41 | 朝霞市 | 6.59 | 969 |
| 42 | 加須市 | 6.54 | 717 |
| 43 | 狭山市 | 6.44 | 919 |
| 44 | 三芳町 | 6.4 | 240 |
| 45 | 深谷市 | 6.39 | 885 |
| 46 | 越生町 | 6.26 | 64 |
| 47 | 新座市 | 6.07 | 1,000 |
| 48 | 吉見町 | 5.94 | 100 |
| 49 | ときがわ町 | 5.81 | 57 |
| 50 | 所沢市 | 5.78 | 1,981 |
| 50 | 志木市 | 5.78 | 434 |
| 52 | 鳩山町 | 5.77 | 73 |
| 53 | 白岡市 | 5.5 | 283 |
| 54 | 秩父市 | 5.47 | 299 |
| 55 | 和光市 | 5.32 | 445 |
| 56 | 美里町 | 4.85 | 50 |
| 57 | 神川町 | 4.72 | 59 |
| 58 | 寄居町 | 4.6 | 141 |
| 59 | 長瀞町 | 4.43 | 27 |
| 60 | 皆野町 | 3.56 | 30 |
| 61 | 東秩父村 | 3.05 | 7 |
| 62 | 小鹿野町 | 2.44 | 23 |
| 63 | 横瀬町 | 2.35 | 17 |
発生率は人口千人あたりの件数。同じ値の場合は同順位とし、さいたま市は10区を市単位に統合しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が低いのはどの市町村か

最後に、発生率が低い側も見ておきます。高い側だけでなく低い側を見ると、地域のまとまりがより分かりやすくなります。
人口千人あたりの発生率が最も低いのは横瀬町の2.35で、小鹿野町2.44、東秩父村3.05、皆野町3.56、長瀞町4.43と続きます。発生率が低い顔ぶれは、秩父地域を中心とした県西部の山間・郡部にまとまっています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率の下位には、秩父地域に加えて児玉地域の町(神川町・美里町・上里町など)も並びます。人口密度が比較的低く、件数そのものが少ない地域が、人口あたりでも低い値になっている形です。地図で見た県西部の薄い色と、このランキングはおおむね対応しています。
楓のまとめ|同じ県でも、見る指標で治安の地図は変わる
3つの観察を重ねると、「埼玉県のどこで犯罪が多いか」という問いには、件数で答えるか発生率で答えるかで違う地図が現れることが分かります。件数なら大都市、人口あたりの発生率なら中小の市町や一部の市が上位に来て、同じ県でも見る指標によって治安の像が変わります。どちらか一方だけを見るのではなく、規模と密度の両方を並べて見ることが、データを正確に読む手がかりになります。
よくある質問(FAQ)

市町村別の治安データを読むときに迷いやすい点を、3つにまとめました。件数と発生率の違い、データの新しさ、さいたま市の区別の扱いについてです。
Q1. この件数は確定値ですか?
刑法犯認知件数は令和7年(2025年)の確定値で、埼玉県警察が2026年2月に公表したものです。ただし、犯罪率の計算に使う人口は令和7年国勢調査の速報値で、確報は令和8年9月に公表される予定です。件数は確定値、率の分母となる人口は速報値、という組み合わせで算出しています。
Q2. 「件数」と「発生率」はどう違いますか?
件数は、その市町村で1年間に認知された刑法犯の総数です。発生率(人口千対)は、その件数を人口で割って1,000を掛けた値で、人口規模の影響を取り除いて比べられます。人口の多い市は件数が多く出やすいため、街の大きさに関係なく比べたいときは発生率が使われます。
Q3. さいたま市の区ごとの数字はありますか?
埼玉県警察のデータには、さいたま市10区の内訳も含まれています。本記事では県全体の傾向を見るため、10区を合計してさいたま市1市として集計しています(10区合計で9,311件)。区別では大宮区などで件数が多い傾向があります。
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