
「JRの廃線」を調べるときは、国の公式一覧からJR分だけを取り出し、地図・推移・一覧表の3点で押さえるのが近道です。平成5年度以降の22区間・823.4kmを1ページに整理しました。
国土交通省の「鉄軌道の廃止実績(平成5年度以降)」(令和8年4月1日現在)によれば、JR旅客会社が平成5年度以降に廃止した鉄道・軌道は22区間、営業キロの合計で823.4kmです。このうち11区間・500.5kmをJR北海道が占めており、廃止キロ全体の約6割が北海道に集中しています。
本記事では、この公式一覧のJR分22区間を、全国マップ・年度別の推移・会社別の集計・全区間一覧表で整理します。あわせて、鉄道事業廃止届が提出済みの津軽線・久留里線の2区間(廃止予定日2027年4月1日)も、実績とは区別して掲載します。対象は廃止の実績と届出済みの区間のみで、存廃を協議中の路線は扱いません。
なお国土交通省の一覧は、並行在来線の経営分離や上下分離といった「移管」と、未開業線の廃止を除いたものです。線区別の収支の全体像は「JR赤字路線、線区別の収支を全国マップで解説【2026年】」で確認できます。赤字の地図と本記事の廃止の記録を並べて見ると、位置関係がつかみやすくなります。
JRの廃線はどこに、どれだけあるのでしょうか?
平成5年度以降の廃止は22区間・823.4km。うち約6割がJR北海道に集中しています。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
JRの廃止22区間はどこにあるか|全国マップ

まず地図で分布を見ます。実線が廃止済みの22区間で、会社別に色分けしています。破線は届出済みの2区間です。北への偏りが一目で分かります。
地図に載せた22区間のうち、北海道には函館線の砂川〜上砂川間から留萌線の深川〜石狩沼田間まで11区間が並びます。区間の数でも営業キロでも、廃止の半分以上が北海道に集まっています。本州側では、東北の岩泉線・大船渡線・気仙沼線、群馬県と長野県にまたがる信越線の横川〜軽井沢間、中国地方の可部線・三江線などが目立ちます。
※ 路線の位置・形状は国土交通省一覧をもとに編集部が模式的に示したものです。沖縄県(廃止区間なし)は表示範囲外です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
一方で、JR四国とJR九州の管内には、平成5年度以降の廃止区間がありません。また都市部にも、東海道線の品川〜浜松町間や片町線の京橋〜片町間のような1km前後の短い区間が含まれており、廃止が地方の長い区間だけで起きてきたわけではないことも読み取れます。
年度別の廃止キロはどう動いてきたか

次に時間軸です。年度ごとの廃止キロを棒グラフで並べると、廃止が集中した時期と、まったくなかった時期がはっきり分かれます。
平成5年度以降で最初のJRの廃止は、1994年(平成6年)5月の函館線 砂川〜上砂川間7.3kmです。翌1995年度には深名線の深川〜名寄間121.8kmが廃止され、これが22区間の中で最も長い区間になっています。
その後、2001年3月の西名古屋港線と2003年12月の可部線を最後に、2004年度から2013年度までの10年間、JRの鉄道路線の廃止は1件も発生していません。再び動きが出るのは2014年度の岩泉線・江差線からで、2020年度には大船渡線・気仙沼線・札沼線の廃止が重なり、年度として最大の146.6kmに達しました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
一覧の中で目を引くのが留萌線です。かつて深川〜増毛間66.8kmを結んでいましたが、2016年に留萌〜増毛間、2023年に石狩沼田〜留萌間、2026年に深川〜石狩沼田間と、末端側から3段階に分けて廃止され、全線が姿を消しました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
会社別の集計|6社の間の大きな偏り

同じ22区間を会社別に集計し直します。どの会社の管内で廃止が起きてきたのかを、キロ数と区間数の両方で見ていきます。
会社別ではJR北海道が11区間・500.5kmで最も多く、全体の約60.8%を占めます。次いでJR西日本が5区間・164.5km、JR東日本が5区間・152.8km、JR東海が1区間・5.6kmと続きます。JR四国とJR九州はゼロで、同じJRグループの中でも会社によって大きな偏りがあります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
JR西日本の164.5kmのうち108.1kmは、2018年に廃止された三江線の江津〜三次間が占めています。JR東日本の152.8kmには、2020年に廃止された気仙沼線の柳津〜気仙沼間55.3kmと大船渡線の気仙沼〜盛間43.7kmが含まれ、この2区間だけで同社の合計の6割を超えます。
全22区間の一覧表|年度・区間・営業キロ・廃止日

ここからは一覧表です。年度・線名・会社・区間・営業キロ・営業廃止日を、国土交通省の一覧のとおりに並べています。
22区間のうち営業キロが100kmを超えるのは深名線(121.8km)・日高線(116.0km)・三江線(108.1km)の3区間です。1km前後のごく短い区間から120km超の長大な区間まで、規模の幅が大きいことが一覧から分かります。
JR旅客会社の廃止区間 全22区間一覧(平成5年度以降)
年度の古い順。営業キロの単位はkm、日付は営業廃止年月日です。
| 年度 | 線名 | 会社 | 区間 | 営業キロ | 営業廃止日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 平成6年度 | 函館線 | JR北海道 | 砂川〜上砂川 | 7.3 | 1994年5月16日 |
| 平成7年度 | 深名線 | JR北海道 | 深川〜名寄 | 121.8 | 1995年9月4日 |
| 平成8年度 | 東海道線 | JR東日本 | 品川〜浜松町 | 3.7 | 1996年10月1日 |
| 平成8年度 | 片町線 | JR西日本 | 京橋〜片町 | 0.5 | 1997年3月8日 |
| 平成9年度 | 美祢線 | JR西日本 | 南大嶺〜大嶺 | 2.8 | 1997年4月1日 |
| 平成9年度 | 信越線 | JR東日本 | 横川〜軽井沢 | 11.7 | 1997年10月1日 |
| 平成9年度 | 室蘭線 | JR北海道 | 東室蘭起点7.0キロ〜室蘭 | 1.1 | 1997年10月1日 |
| 平成12年度 | 東海道本線西名古屋港線 | JR東海 | 名古屋貨物ターミナル〜西名古屋港 | 5.6 | 2001年3月31日 |
| 平成15年度 | 可部線 | JR西日本 | 可部〜三段峡 | 46.2 | 2003年12月1日 |
| 平成26年度 | 岩泉線 | JR東日本 | 茂市〜岩泉 | 38.4 | 2014年4月1日 |
| 平成26年度 | 江差線 | JR北海道 | 木古内〜江差 | 42.1 | 2014年5月12日 |
| 平成28年度 | 留萌線 | JR北海道 | 留萌〜増毛 | 16.7 | 2016年12月5日 |
| 平成30年度 | 三江線 | JR西日本 | 江津〜三次 | 108.1 | 2018年4月1日 |
| 平成30年度 | 片町線 | JR西日本 | 鴫野〜神崎川信号場 | 6.9 | 2019年3月16日 |
| 平成31年度 | 石勝線 | JR北海道 | 新夕張〜夕張 | 16.1 | 2019年4月1日 |
| 令和2年度 | 大船渡線 | JR東日本 | 気仙沼〜盛 | 43.7 | 2020年4月1日 |
| 令和2年度 | 気仙沼線 | JR東日本 | 柳津〜気仙沼 | 55.3 | 2020年4月1日 |
| 令和2年度 | 札沼線 | JR北海道 | 北海道医療大学〜新十津川 | 47.6 | 2020年5月7日 |
| 令和3年度 | 日高線 | JR北海道 | 鵡川〜様似 | 116.0 | 2021年4月1日 |
| 令和5年度 | 留萌線 | JR北海道 | 石狩沼田〜留萌 | 35.7 | 2023年4月1日 |
| 令和6年度 | 根室線 | JR北海道 | 富良野〜新得 | 81.7 | 2024年4月1日 |
| 令和8年度 | 留萌線 | JR北海道 | 深川〜石狩沼田 | 14.4 | 2026年4月1日 |
| 合計 | 22区間 | 823.4 | |||
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
表の値は国土交通省の一覧をそのまま掲載しています。このため、東海道線の品川〜浜松町間や西名古屋港線のように、旅客営業のない貨物主体の支線も含まれます。また日付は営業廃止年月日で、例えば留萌線の深川〜石狩沼田間は2026年3月31日が最終運行、営業廃止日は翌4月1日です。
これから廃止される区間|届出済みの2区間

最後は「これから」の話です。ここで扱うのは、鉄道事業法に基づく廃止届が提出済みの区間だけです。存廃を協議中の路線は含めていません。
2026年7月時点で鉄道事業廃止届が提出済みなのは、JR東日本の津軽線と久留里線の2区間です。いずれも廃止予定日は2027年4月1日で、届出という制度上の手続きがすでに完了しています。実績の22区間・823.4kmには、この2区間は含めていません。
津軽線の届出区間は新中小国信号場〜三厩間の22.2kmです(2026年3月24日届出)。定期旅客の運送は蟹田〜三厩間28.8kmで取りやめとなりますが、蟹田〜新中小国信号場間6.6kmは列車の走行ルートとして鉄道事業が続くため、届出の区間と旅客運送がなくなる区間は一致しません。
なお津軽線の転換にあわせて、JR北海道も海峡線の中小国〜新中小国信号場間1.8kmを同じ日に届け出ています。こちらは線路を共有する重複区間の整理で、廃止後も線路はJR東日本の津軽線として存続し、青函トンネルを経由する貨物列車の運行に影響はありません。
久留里線の届出区間は久留里〜上総亀山間の9.6kmです(2026年3月9日届出)。JR東日本は2026年2月16日に君津市と基本合意書を締結し、代替バスの運営・運行にかかる18年間分の費用として20億円を拠出するとしています。届出から廃止予定日までは、法令上の手続きにそって約1年の期間が置かれています。
前史|特定地方交通線の転換は1990年に完了していた

平成5年度より前には、国鉄改革にともなう大規模な転換の時代がありました。本記事の一覧の「前」に何があったのかを、集計の事実だけ押さえておきます。
国鉄再建法に基づく特定地方交通線では、83線区・3,157.2kmが1983年から1990年にかけて転換されました。内訳はバス転換が45線・1,846.5km、第三セクター鉄道などへの鉄道転換が38線・1,310.7kmです。JR発足(1987年4月)の時点で転換が済んでいなかった30線も経過措置で手続きが続けられ、1990年4月に完了しています。
この枠組みの終了後、1994年5月の函館線 砂川〜上砂川間まで、JRの鉄道路線の廃止は発生していません。上砂川支線は特定地方交通線の枠組みの外でJRが廃止した最初の路線であり、本記事で扱う「平成5年度以降」の一覧は、国鉄改革後のJRの廃止をひと続きに捉えた区切りといえます。
楓のまとめ|公式一覧で見るJRの廃止の記録

ここまでの内容を、3つの観察事実に整理します。数字はすべて国土交通省の一覧とJR各社・国の発表に基づくものです。
「JRの廃線はどこにあるのか」という問いを公式一覧で確かめると、合計22区間・823.4kmというひとつの数字の中に、地域・時期・会社それぞれの偏りが含まれていることが分かります。
廃止の一覧は、路線がなくなった記録であると同時に、代替バスや自治体との合意といった次の交通体系づくりの出発点の記録でもあります。実績の22区間と届出済みの2区間を区別して押さえておくと、今後の報道や協議のニュースを整理しやすくなります。
よくある質問(FAQ)

廃線のデータを読むときに迷いやすい点を3つにまとめました。「移管」との違い、合計の数字、これからの予定についてです。
Q1. 「廃止」と「移管」はどう違いますか?
国土交通省の一覧は、法令上は「廃止」でも、並行在来線の経営分離や上下分離のように「移管」と解釈される場合と、未開業線の廃止を除いています。例えばJR七尾線の一部がのと鉄道に引き継がれたような第三セクターへの転換は、本記事の22区間には含まれません。
Q2. 廃止された区間はいくつ、合計で何kmですか?
国土交通省「鉄軌道の廃止実績(平成5年度以降)」の令和8年4月1日現在版によれば、JR旅客会社分は22区間・営業キロ合計823.4kmです。最長は深名線の深川〜名寄間121.8km、最短は片町線の京橋〜片町間0.5kmです。
Q3. 次に廃止される予定の区間はありますか?
鉄道事業廃止届が提出済みなのは、津軽線の新中小国信号場〜三厩間22.2kmと、久留里線の久留里〜上総亀山間9.6kmの2区間で、廃止予定日はいずれも2027年4月1日です。存廃を協議中の路線は、届出などの制度上の事実がないため本記事では扱っていません。
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