
「車の買取トラブルはどれだけ増えたの?」という問いには、国民生活センターが公表している年度別の相談件数を棒グラフで並べるのが近道です。件数の推移に、相談した人の年代・平均年齢・売却額の変化を重ねると、増えた数だけでなく、誰が相談しているのかまで見えてきます。
読者が「買取トラブル」と呼ぶものは、国民生活センターの統計では「中古自動車の売却に関する相談」として集計されています。その件数は、2018年度の1,151件から2021年度の1,519件へ、3年で368件(32.0%)増えました。2021年度は前年度の1.25倍で、公表されている年度別件数のうち最新の値です。
本記事では、国民生活センターの報道発表資料(2023年3月22日)と自動車公正取引協議会の消費者相談レポートという一次情報をもとに、相談件数の推移、契約当事者の年代分布と平均年齢、売却額の平均、相談内容の内訳を図解で整理します。定義の異なる3つの系列を混ぜずに並べることが、この記事の観察の軸です。

車の買取トラブル相談はどれだけ増えた?
中古車の売却に関する相談は2021年度1,519件。3年で368件増。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
中古車の売却に関する相談は4年でどれだけ増えたか

年度別の件数は、表より棒グラフのほうが「どこで段差がついたか」が一目で分かります。2021年度の棒だけが1,500件の線を越えているのが見えるはずです。2022年度は途中値なので、淡い色と破線で区別しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国民生活センターの報道発表資料によると、全国の消費生活センター等に寄せられた中古自動車の売却に関する相談は、2018年度が1,151件、2019年度が1,229件、2020年度が1,211件、2021年度が1,519件でした。2019年度に78件増え、2020年度に18件減ったあと、2021年度は前年度から308件増えています。
2018年度と2021年度を比べると、増加幅は368件、増加率は32.0%です。2021年度の1,519件は、全国の消費生活センター等に1日あたり約4.2件(1,519÷365)のペースで寄せられた計算になります。この件数はPIO-NETに2023年1月31日までに登録された分で、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。
2022年度は、2023年1月31日までの登録分で1,157件でした。原典は比較対象として2021年度の同じ期間(2022年1月31日まで)の1,076件を併記しており、同期比では81件多くなっています。ただし2022年度は途中値であり、年度確定値ではありません。売却に関する相談の年度別件数は、国民生活センターの公表では2021年度分が最新です。なお、車を持つ側の地域差は世帯あたり自動車保有台数の47都道府県地図で整理しています。

相談した人の年代はどう変わったか

年代の変化は、4つの年度の100%積み上げ棒を縦に並べると分かりやすくなります。左側の淡い帯が縮み、右側の濃い帯が広がる形が、そのまま「相談する人の年代が上がった」という観察になります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
契約当事者の年代は、年代が分かる相談のみを集計しています。そのため2021年度の年代別合計は1,324件で、図1の1,519件とは一致しません。この内訳で見ると、2012年度は30歳代が400件(30.2%)で最も多く、40歳代の297件(22.4%)、20歳代の209件(15.8%)が続いていました。
2021年度は50歳代が268件(20.2%)で最も多く、70歳代以上が237件(17.9%)、30歳代が223件(16.8%)の順です。最も多い年代は、2012年度の30歳代から2015年度も30歳代、2018年度は40歳代、2021年度は50歳代へと移っています。70歳代以上の件数は94件から237件で、割合は7.1%から17.9%へ10.8ポイント上がりました。
原典の本文では、40歳代以下の割合が2012年度の68.8%から2021年度の47.7%に、60歳代以上が18.1%から32.1%になったと記されています。国民生活センターは発表資料の中で、背景の一つとして運転免許の申請による取消件数の増加(2012年117,613件、2021年517,040件)を挙げていますが、これは同センターの見解であり、本記事では件数の変化のみを観察しています。60歳代以上の家計については公的年金の仕組みや介護費用のデータもあわせてご覧ください。
平均年齢は10年で7歳上がった

平均年齢は10年分の折れ線にすると、どの年度で50歳の線をまたいだかが見えます。縦軸は40〜52歳の範囲に絞っているので、1歳の差が読み取れる図になっています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
契約当事者の平均年齢は、2012年度の43.3歳から2013年度に45.2歳となり、2014年度45.6歳、2015年度45.2歳、2016年度45.9歳と45歳台で推移しました。2017年度に47.4歳、2018年度に49.0歳と上がり、2019年度に50.0歳と初めて50歳に達しています。
2020年度は49.7歳とわずかに下がり、2021年度は50.4歳で10年間の最高値です。2012年度から2021年度への上昇幅は7.1歳でした。年代別の図で見た「50歳代・70歳代以上の割合の増加」と、この平均年齢の上昇は、同じ変化を別の角度から表しています。
売却額の平均はいくらか

売却額の平均は円単位の原典値を万円に換算して棒にしました。年ごとの上下はありますが、2021年度の棒だけが明らかに高いことが分かります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
契約購入金額(売却額)の平均は、2012年度が660,740円(66.1万円)でした。2013年度62.4万円、2014年度63.0万円、2015年度70.7万円、2016年度62.8万円、2017年度74.2万円、2018年度63.7万円、2019年度73.7万円、2020年度74.5万円と、60万円台と70万円台を行き来しています。
2021年度は880,867円(88.1万円)で、10年間で最も高い値です。2012年度の66.1万円と比べると1.33倍(880,867÷660,740)になります。原典の本文も「2012年度は約66万円、2021年度は約88万円と1.3倍以上」と記しています。
2021年度の売却額別の内訳(金額が分かる866件)では、100万円以上500万円未満が215件(24.8%)で最も多く、10万円以上50万円未満が210件(24.2%)、5万円未満が197件(22.7%)と続きます。500万円以上も15件(1.7%)ありました。

業界団体の相談窓口ではどう推移したか

ここからは受付主体が変わります。自動車公正取引協議会の消費者相談室は、消費生活センターとは別の窓口なので、同じグラフに重ねず、左に5年の推移、右に2024年度の内容内訳を並べました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
自動車公正取引協議会の消費者相談室に寄せられた買取り関係の相談は、2020年度が183件、2021年度が231件、2022年度が241件、2023年度が228件、2024年度が178件でした。2022年度の241件が最も多く、2024年度は2022年度より63件(26.1%)少なくなっています。同レポートは「2022年度を境に減少傾向となっている」と記しています。
2024年度の四輪車・買取り関係172件の内容は、契約・取引方法が83件(48.3%)、キャンセルが55件(32.0%)、品質・機能が22件(12.8%)、その他が10件(5.8%)、付帯費用が2件(1.2%)です。キャンセル55件のうち45件(26.2%)は「消費者の自己都合」に分類されています。
この窓口の件数は、PIO-NET(全国の消費生活センター等)の売却系列とは受付主体も母集団も異なります。2021年度を例にとると、PIO-NETの売却相談は1,519件、同協議会の買取り相談は231件で、どちらか一方に統一して増減を語ることはできません。本記事では2つの系列を別々の図として扱っています。
相談の中身と、中古車全体の件数

最後は2枚組です。左は売却相談1,519件の内容別分類、右は「中古自動車」全体の相談件数です。右の数字は購入トラブルも含むので、左の系列の続きとして読まないよう、あえて別の枠に置きました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2021年度の売却に関する相談1,519件を内容別に見ると、「契約・解約」が1,326件(87.3%)、「販売方法」が475件(31.3%)、「価格・料金」が277件(18.2%)、「接客対応」が226件(14.9%)、「表示・広告」が87件(5.7%)でした。複数の内容にあてはまる相談は重複して数えられているため、割合の合計は100%を超えます。
国民生活センターの「中古自動車」に関する相談全体は、2023年度が9,034件、2024年度が7,059件、2025年度が8,642件です(2026年5月31日現在)。2026年度は5月31日までで861件、前年同期は897件でした。この件数は購入と売却の合算であり、売却に関する相談1,151〜1,519件とは定義が異なります。
検索上位の解説記事には、年間7,000件や9,000件という中古自動車全体の件数を売却トラブルの件数として紹介しているものがあります。本記事では、売却に関する相談(2018〜2021年度)、業界団体の買取り相談(2020〜2024年度)、中古自動車の相談全体(2023〜2025年度)を3つの別の系列として扱い、同じ図の中で比較していません。
楓のまとめ|件数・年代・金額の3つを別々に観察する

ここまでの図解を一通り並べると、件数の増加と、相談する人の年代・売却額の変化が、それぞれ別の一次データで確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「車の買取トラブル相談はどれだけ増えた?」という問いに対して、本記事で並べた図解は、中古自動車の売却に関する相談が2018年度から2021年度にかけて368件増えたこと、相談する人の年代と売却額が同じ期間に上がったことを示してきました。増えた理由を断定するのではなく、公表されている数値の範囲で観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、売却に関する相談は3年で1.32倍、契約当事者の平均年齢は10年で7.1歳、平均売却額は10年で1.33倍という3つの数字が、それぞれ別の図から確認できます。売却に関する年度別件数は2021年度分が最新の公表値で、その後の状況は受付主体の異なる業界団体の系列と、定義の異なる中古自動車全体の系列でしか追えません。資産を手放す場面の別の例として、空き家の仕組みの記事もあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)

相談件数のグラフを読むときは、受付主体・集計期間・定義(売却か、購入を含むか)の3点をセットで確認してください。同じ「中古車の相談」でも、この3点で数字が大きく変わります。
Q1. 車を売るときのトラブルの相談は、どこに何件寄せられていますか?
国民生活センターの発表では、全国の消費生活センター等に寄せられた中古自動車の売却に関する相談は、2021年度で1,519件でした(PIO-NET、2023年1月31日までの登録分)。2018年度は1,151件、2019年度は1,229件、2020年度は1,211件です。売却に関する年度別の件数は、2021年度分が最新の公表値です。
Q2. 相談の内容で多いのは何ですか?
2021年度の1,519件のうち、「契約・解約」に関するものが1,326件(87.3%)で最も多く、次いで「販売方法」475件(31.3%)、「価格・料金」277件(18.2%)でした。複数の内容にあてはまる相談は重複して数えられているため、割合の合計は100%を超えます。国民生活センターは事例として、査定の場での契約、契約後のキャンセル料の請求、引き渡し後の減額を紹介しています。
Q3. 車の売却はクーリング・オフの対象になりますか?
国民生活センターの発表資料は、事業者が消費者の自宅を訪問した場合でも、車の売却は特定商取引法の訪問購入の規制対象から除外されており、クーリング・オフは適用されないと説明しています。同資料は相談窓口として、消費者ホットライン「188」と、一般社団法人日本自動車購入協会(JPUC)の車売却消費者相談室を案内しています。
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