
「子どもの体力は落ちたのか」という問いは、種目ごとに答えが分かれます。60年分の記録を1本ずつ並べると、縮んだ種目と伸びた種目がはっきりと分かれて見えてきます。
「子どもの体力が落ちた」という言い方は広く使われていますが、スポーツ庁の体力・運動能力調査を60年分たどると、種目によって向きが正反対です。11歳(小学5年生相当)男子のソフトボール投げは、昭和40年度の34.40mから令和6年度の25.67mへ8.73m縮みました。一方、反復横とびは37.10点から45.91点へ8.81点伸びています。落ちた種目と、上がった種目が同じ60年のなかに同居しているのが、この調査から見える形です。
縮んだ8.73mは、バレーボールコートの短い辺(9m)にほぼ相当する長さです。同じ60年で、11歳男子の身長は138.5cmから146.0cmへ7.5cm、体重は32.2kgから39.6kgへ7.4kg増えました。体は大きくなり、投げる距離は縮んでいます。
本記事では、スポーツ庁「体力・運動能力調査」と文部科学省「学校保健統計調査」の令和6年度確定値をもとに、60年の比較ができる4種目(握力・50m走・反復横とび・ソフトボール投げ)と体格2指標を、同じ指数の軸に並べて図解します。あわせて、この調査が答えていることと、答えていないことも整理します。
子どもの体力は、本当に落ちたのか。
落ちた種目と、上がった種目があります。
34.40m
調査開始期 平成10年度
29.77m
新体力テスト移行 平成22年度
30.78m
平成期の高い値 令和6年度
25.67m
最新の確定値
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
投げる距離は60年で約4分の1縮んだ|ソフトボール投げの推移

60年分の記録は、平成9年度までが5年おき、平成10年度からが毎年という粗さの違う点の集まりです。折れ線で並べると、どのあたりから水準が下がっていったのかが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
体力・運動能力調査は昭和39年から毎年実施されており、令和6年度で第61回になります。このうちソフトボール投げは、平成10年度の新体力テストへの移行をはさんでも6歳から11歳までの測定が続いており、60年をつなげて見ることができる数少ない種目のひとつです。
11歳男子の記録は、昭和40年度が34.40m、昭和55年度が35.14mで、本記事が参照する5年おきの値のなかではこの昭和55年度が最も長い水準です。その後は平成元年度32.97m、平成5年度31.73mと下がり、平成10年度は29.77mで30mを下回りました。平成20年度から平成22年度にかけては30.37m、30.57m、30.78mと持ち直した時期もあります。
平成25年度に28.41mとなってからは下向きの動きが続き、令和3年度25.43m、令和4年度25.39m、令和5年度25.80m、令和6年度25.67mと、25m台の水準に並んでいます。昭和40年度との差は8.73m、率にすると25.4%の縮小です。女子も19.30mから15.68mへ3.62m(18.8%)縮んでおり、方向は男女で同じです。
なお、令和6年度は最低値ではありません。本記事が参照する年次推移のなかで11歳男子の最も短い年は令和4年度の25.39m、女子も同じ令和4年度の15.22mです。令和3年度から令和6年度は、いずれも近い水準に並んでいる状態と読むのが正確です。
落ちた種目と上がった種目を、同じ指数の軸に並べる

メートル、秒、点、キログラム。種目ごとに単位が違うので、そのままでは比べられません。昭和40年度を100とした指数にそろえると、増減の向きが1枚で見比べられます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
60年の比較ができるのは、握力・50m走・反復横とび・ソフトボール投げの4種目です。上体起こし・長座体前屈・立ち幅とび・20mシャトルラン・新体力テスト合計点は平成10年度からの系列で、昭和40年度の値が存在しません。ここでは前者の4種目に、学校保健統計調査の身長・体重を加えた6指標を指数にそろえました。
令和6年度の水準を昭和40年度=100で表すと、ソフトボール投げ74.6、握力95.6、50m走98.9、身長105.4、体重123.0、反復横とび123.7になります。6つのうち大きく下がっているのはソフトボール投げだけで、ほかの5指標は95以上に収まっています。
50m走は秒数で記録されるため、数字が増えることは遅くなることを意味します。そのまま指数にすると向きが逆になるので、ここでは速度(50÷秒)に換算してから指数にしました。握力は男子が20.20kgから19.31kgへ0.89kg減った一方、女子は18.40kgから19.36kgへ0.96kg増えており、男女で向きが分かれています。
50m走はほとんど変わっていない|60年で0.10秒の差

横ばいは、図では最も見せにくい形です。縦軸の幅を8.6秒から9.4秒に絞って、それでも線が平らに見えるかどうかを確かめました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
11歳男子の50m走は、昭和40年度が8.80秒、令和6年度が8.90秒です。60年での差は0.10秒、率にすると1.1%遅くなった計算になります。女子も9.20秒から9.24秒で、差は0.04秒です。投げる距離が25.4%縮んだのと同じ60年に、走る速さはほぼ動いていません。
年ごとに見ると、男子は平成27年度から平成30年度にかけて8.78秒から8.79秒とやや速い時期があり、令和4年度は8.94秒とやや遅い年もあります。ただし振れ幅は0.2秒に収まっており、60年を通した水準としては同じ帯のなかを動いていると読めます。
この図は縦軸を0秒からではなく8.6秒から9.4秒に絞って描いています。範囲を狭めると小さな差が大きく見えるため、拡大していることを図の中にも明記しました。それでも線が平らに近いことが、この種目の60年の姿です。
伸びた種目もある|反復横とびと上体起こしの推移

上がった種目は2つの図に分けました。比較できる期間が60年と27年で違うため、同じ横軸に載せないほうが誤解が起きません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
反復横とびは、中央のラインの両側100cmに引いた線を20秒間でまたぎ、通過するたびに1点を数える種目です。11歳男子は昭和40年度37.10点から令和6年度45.91点へ8.81点(23.7%)、女子は36.50点から42.95点へ6.45点(17.7%)伸びました。令和6年度の値は昭和40年度の1.24倍にあたります。
男子の最も高い年は平成30年度の47.02点で、令和期はそこから45点台後半で推移しています。令和2年度は実施時期や標本数が異なるため、この年単独の増減は取り出して論じないほうが正確です。
上体起こしは新体力テストで加わった種目で、比較できるのは平成10年度からの27年です。11歳男子は19.02回から22.45回、女子は16.28回から20.15回へ増えています。新体力テストの合計点も、男子は平成10年度59.19点から令和6年度60.96点、女子は58.56点から60.97点で、平成10年度の水準は上回っています。ただし男女とも平成30年度(男子62.40点・女子63.29点)からは下がっています。
体は大きくなり、投げる距離は縮んだ|2つの統計を重ねる

体力の調査と、身長・体重の調査は別々の統計です。同じ11歳を同じ指数の軸に載せると、2つの統計をまたいだ対比が1枚で見られます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
文部科学省の学校保健統計調査によると、11歳男子の身長は昭和40年度138.5cmから令和6年度146.0cmへ7.5cm、体重は32.2kgから39.6kgへ7.4kg増えています。女子も身長140.4cmから147.8cmへ7.4cm、体重33.7kgから40.1kgへ6.4kg増えました。
昭和40年度を100とすると、令和6年度の身長は105.4、体重は123.0です。同じ指数でソフトボール投げは74.6ですから、体格の2指標と投能力は、同じ60年のなかで逆の向きに動いています。
ここで注意したいのは、この2つの統計が体格と投能力の関係を説明しているわけではないという点です。体力・運動能力調査は記録を測る調査で、学校保健統計調査は発育状態を測る調査です。どちらも、なぜ変化したのかという問いには答えていません。世間では外遊びの機会や生活習慣の変化などが理由として語られますが、この2つの調査からその関係を読み取ることはできません。
種目別に、60年分の数値を確かめる

図では線の形しか分かりません。実際の数値を種目ごとにまとめました。3つのタブを切り替えると、それぞれの年度の値をそのまま確認できます。
ソフトボール投げ(11歳・単位:m)
昭和40年度から令和6年度まで。平成9年度以前は5年おき、平成10年度以降は毎年の値です。
| 年度 | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| 昭和40年度 | 34.40 | 19.30 |
| 昭和45年度 | 34.90 | 20.70 |
| 昭和50年度 | 34.00 | 19.90 |
| 昭和55年度 | 35.14 | 21.26 |
| 昭和60年度 | 33.98 | 20.52 |
| 平成元年度 | 32.97 | 19.08 |
| 平成5年度 | 31.73 | 17.55 |
| 平成10年度 | 29.77 | 17.49 |
| 平成11年度 | 30.25 | 17.06 |
| 平成12年度 | 30.43 | 17.03 |
| 平成13年度 | 29.94 | 17.26 |
| 平成14年度 | 30.86 | 17.49 |
| 平成15年度 | 30.42 | 17.19 |
| 平成16年度 | 30.19 | 17.15 |
| 平成17年度 | 29.80 | 17.81 |
| 平成18年度 | 29.46 | 17.24 |
| 平成19年度 | 29.95 | 17.49 |
| 平成20年度 | 30.37 | 17.87 |
| 平成21年度 | 30.57 | 17.82 |
| 平成22年度 | 30.78 | 17.45 |
| 平成23年度 | 29.66 | 17.54 |
| 平成24年度 | 29.58 | 17.41 |
| 平成25年度 | 28.41 | 16.85 |
| 平成26年度 | 27.89 | 16.38 |
| 平成27年度 | 27.41 | 16.50 |
| 平成28年度 | 27.21 | 16.47 |
| 平成29年度 | 26.81 | 16.33 |
| 平成30年度 | 27.86 | 16.80 |
| 令和元年度 | 26.65 | 16.38 |
| 令和2年度 | 26.61 | 16.55 |
| 令和3年度 | 25.43 | 15.97 |
| 令和4年度 | 25.39 | 15.22 |
| 令和5年度 | 25.80 | 15.76 |
| 令和6年度 | 25.67 | 15.68 |
50m走(11歳・単位:秒/数字が小さいほど速い)
昭和40年度から令和6年度まで。平成9年度以前は5年おきの値です。
| 年度 | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| 昭和40年度 | 8.80 | 9.20 |
| 昭和45年度 | 8.80 | 9.10 |
| 昭和50年度 | 8.80 | 9.10 |
| 昭和55年度 | 8.77 | 9.04 |
| 昭和60年度 | 8.75 | 9.00 |
| 平成元年度 | 8.79 | 9.06 |
| 平成5年度 | 8.76 | 9.08 |
| 平成10年度 | 8.93 | 9.26 |
| 平成11年度 | 8.93 | 9.26 |
| 平成12年度 | 8.89 | 9.24 |
| 平成13年度 | 9.03 | 9.26 |
| 平成14年度 | 8.96 | 9.26 |
| 平成15年度 | 8.91 | 9.25 |
| 平成16年度 | 8.89 | 9.22 |
| 平成17年度 | 8.95 | 9.20 |
| 平成18年度 | 8.89 | 9.22 |
| 平成19年度 | 8.91 | 9.19 |
| 平成20年度 | 8.88 | 9.23 |
| 平成21年度 | 8.90 | 9.23 |
| 平成22年度 | 8.82 | 9.17 |
| 平成23年度 | 8.88 | 9.18 |
| 平成24年度 | 8.81 | 9.13 |
| 平成25年度 | 8.90 | 9.12 |
| 平成26年度 | 8.85 | 9.16 |
| 平成27年度 | 8.78 | 9.12 |
| 平成28年度 | 8.79 | 9.16 |
| 平成29年度 | 8.79 | 9.12 |
| 平成30年度 | 8.78 | 9.12 |
| 令和元年度 | 8.87 | 9.15 |
| 令和2年度 | 8.91 | 9.17 |
| 令和3年度 | 8.84 | 9.16 |
| 令和4年度 | 8.94 | 9.26 |
| 令和5年度 | 8.85 | 9.21 |
| 令和6年度 | 8.90 | 9.24 |
立ち幅とび(cm)・20mシャトルラン(回)
新体力テストで加わった種目のため、平成10年度からの値です。昭和40年度との比較はできません。
| 年度 | 立幅男子 | 立幅女子 | シャトル男子 | シャトル女子 |
|---|---|---|---|---|
| 平成10年度 | 168.87 | 156.60 | 52.98 | 41.49 |
| 平成20年度 | 166.79 | 155.15 | 61.96 | 47.66 |
| 平成30年度 | 167.08 | 158.54 | 65.49 | 51.19 |
| 令和元年度 | 164.07 | 156.01 | 63.42 | 51.56 |
| 令和2年度 | 166.85 | 158.10 | 56.54 | 46.49 |
| 令和3年度 | 166.33 | 155.76 | 61.16 | 47.52 |
| 令和4年度 | 166.14 | 154.71 | 57.46 | 45.08 |
| 令和5年度 | 166.70 | 155.26 | 59.46 | 44.43 |
| 令和6年度 | 166.56 | 155.61 | 59.96 | 45.55 |
握力(kg)・反復横とび(点)
どちらも昭和40年度から令和6年度まで比較できる種目です。
| 年度 | 握力男子 | 握力女子 | 横とび男子 | 横とび女子 |
|---|---|---|---|---|
| 昭和40年度 | 20.20 | 18.40 | 37.10 | 36.50 |
| 昭和45年度 | 20.50 | 19.30 | 40.20 | 39.10 |
| 昭和50年度 | 21.70 | 20.90 | 39.50 | 38.30 |
| 昭和55年度 | 21.64 | 20.59 | 41.24 | 39.56 |
| 昭和60年度 | 21.08 | 20.49 | 42.72 | 41.21 |
| 平成元年度 | 21.32 | 19.62 | 41.54 | 39.47 |
| 平成5年度 | 21.88 | 20.21 | 42.32 | 38.97 |
| 平成10年度 | 20.98 | 19.93 | 41.31 | 38.22 |
| 平成11年度 | 21.05 | 20.05 | 42.43 | 38.67 |
| 平成12年度 | 20.62 | 19.57 | 43.50 | 39.67 |
| 平成13年度 | 20.87 | 19.96 | 43.43 | 40.21 |
| 平成14年度 | 21.15 | 20.04 | 43.58 | 40.44 |
| 平成15年度 | 20.51 | 19.36 | 44.88 | 41.53 |
| 平成16年度 | 20.31 | 19.57 | 44.86 | 41.21 |
| 平成17年度 | 20.49 | 19.98 | 44.67 | 42.02 |
| 平成18年度 | 20.19 | 19.46 | 44.90 | 42.10 |
| 平成19年度 | 20.33 | 19.59 | 45.15 | 42.05 |
| 平成20年度 | 20.13 | 19.97 | 45.43 | 42.40 |
| 平成21年度 | 20.16 | 19.89 | 45.41 | 42.12 |
| 平成22年度 | 20.30 | 19.66 | 46.56 | 43.25 |
| 平成23年度 | 19.90 | 19.72 | 45.76 | 42.98 |
| 平成24年度 | 19.84 | 19.27 | 45.86 | 42.98 |
| 平成25年度 | 20.04 | 19.74 | 45.79 | 43.02 |
| 平成26年度 | 19.80 | 19.42 | 46.15 | 43.64 |
| 平成27年度 | 20.26 | 19.73 | 46.65 | 43.87 |
| 平成28年度 | 19.76 | 19.70 | 46.70 | 43.88 |
| 平成29年度 | 20.02 | 19.58 | 46.98 | 44.35 |
| 平成30年度 | 19.70 | 19.37 | 47.02 | 44.63 |
| 令和元年度 | 19.43 | 19.23 | 46.27 | 44.19 |
| 令和2年度 | 20.42 | 19.86 | 45.87 | 44.05 |
| 令和3年度 | 19.77 | 19.53 | 45.86 | 43.44 |
| 令和4年度 | 19.48 | 18.66 | 45.51 | 42.15 |
| 令和5年度 | 19.88 | 19.36 | 45.55 | 42.66 |
| 令和6年度 | 19.31 | 19.36 | 45.91 | 42.95 |
上体起こし(回)・長座体前屈(cm)・新体力テスト合計点(点)
いずれも平成10年度からの系列です。昭和40年度との比較はできません。
| 年度 | 起こし男 | 起こし女 | 前屈男 | 前屈女 | 合計男 | 合計女 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成10年度 | 19.02 | 16.28 | 35.56 | 39.16 | 59.19 | 58.56 |
| 平成20年度 | 21.60 | 19.22 | 34.49 | 39.11 | 61.29 | 61.37 |
| 平成30年度 | 22.98 | 21.10 | 35.49 | 40.71 | 62.40 | 63.29 |
| 令和元年度 | 22.66 | 20.84 | 35.72 | 41.02 | 61.29 | 62.72 |
| 令和2年度 | 21.38 | 19.67 | 36.02 | 40.55 | 60.40 | 61.72 |
| 令和3年度 | 21.65 | 19.66 | 35.78 | 40.71 | 60.78 | 61.59 |
| 令和4年度 | 21.63 | 19.48 | 36.61 | 41.14 | 60.26 | 60.23 |
| 令和5年度 | 22.07 | 19.89 | 36.20 | 40.92 | 60.86 | 60.86 |
| 令和6年度 | 22.45 | 20.15 | 36.48 | 41.21 | 60.96 | 60.97 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
表の値はいずれも11歳の平均値です。令和6年度の標本数は全体で74,194人、回収は59,444人で回収率は80.1%、このうち小学校は13,536人中13,534人が回収され、回収率は100.0%でした。
ソフトボール投げの記録は、ソフトボール1号球を直径2mの円内から投げ、メートル未満を切り捨てて記録する決まりになっています。平均値を読むときは、この切り捨てが含まれていることも前提になります。
なお、小学5年生と中学2年生を対象にした「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」は、平成20年度から実施されている別の調査です。都道府県別の結果はそちらで公表されており、本記事が使っている体力・運動能力調査とは調査対象も期間も異なります。
楓のまとめ|「体力が落ちた」は、種目ごとに分かれる

6つの指標を同じ軸に並べ終えたので、観察できたことを4つに整理します。4つめは、この調査が答えていないことについてです。
「子どもの体力は落ちたのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、種目によって向きが正反対であることを示してきました。どの種目を見るか、どの期間で区切るかによって、読み取れる姿は変わります。数値そのものに良し悪しをつけるのではなく、観察できた事実として整理しておきます。
4つの観察事実を重ねて読むと、「子どもの体力」という一つのまとまりが、実際には種目ごとに別々の動きをしていることが見えてきます。投げる距離は縮み、走る速さはほぼ変わらず、反復横とびは伸びました。この3つは同じ60年、同じ11歳の記録です。「子どもの体力は落ちたのか」への答えは、どの種目を見ているかで変わる、という観察事実そのものが、60年分のデータから読み取れるいちばん確かな形です。
よくある質問(FAQ)

体力テストの数値を読むときは、種目・年度・比較の基準の3点をそろえて確認してください。この3点が変わるだけで、同じデータから読み取れる話が変わります。
Q1. 「子どもの体力が落ちた」とまとめて言ってよいのですか?
種目によって向きが逆なので、ひとまとめにはできません。11歳男子で見ると、ソフトボール投げは昭和40年度34.40mから令和6年度25.67mへ25.4%縮んだ一方、反復横とびは37.10点から45.91点へ23.7%伸びています。50m走は8.80秒から8.90秒でほぼ横ばいです。新体力テストの合計点も、平成30年度からは下がっているものの平成10年度は上回っています。「どの種目が」「どの年度と比べて」を添えると、正確に伝わります。
Q2. ソフトボール投げの記録が縮んだ理由は何ですか?
体力・運動能力調査は記録を測定する調査で、変化の理由を特定する設計にはなっていません。そのため、この調査から理由を読み取ることはできません。報道や解説では外遊びの機会、生活の変化、競技人口の移り変わりなどが挙げられることがありますが、本記事ではそれらを原因として扱っていません。示せるのは、記録がどの向きにどれだけ動いたかまでです。
Q3. 令和6年度は過去最低の記録なのですか?
ソフトボール投げについては、過去最低ではありません。本記事が参照している年次推移のなかで11歳男子の最も短い年は令和4年度の25.39m、女子も令和4年度の15.22mです。令和6年度は男子25.67m、女子15.68mでした。令和3年度から令和6年度は近い水準に並んでいる状態で、この4年のあいだで最低というわけでもありません。
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