
教員のメンタルヘルスは、単年の人数だけでは全体像が見えにくいテーマです。10年の推移・30年の長期比較・学校種や年代の内訳・休職後の経過を1本の記事に並べて、数字どうしの位置関係を観察していきます。
文部科学省の「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査」(2025年12月22日公表・確定値)によれば、公立学校の教育職員のうち精神疾患による病気休職者は2024年度に7,087人で、在職者922,776人の0.77%、およそ130人に1人の水準にあたります。休職者数は10年前(2015年度5,009人)の約1.4倍に増え、2023年度に過去最多の7,119人を記録したあと、2024年度も在職者比0.77%のまま高止まりが続いています。
本記事では、同調査の一次データをもとに、10年間の推移、1992年度からの長期比較、学校種別・年代別・性別の内訳、教育委員会が認識した要因、そして休職発令後の経過(復職・継続・退職)までを、推移チャートと横棒グラフを中心とした図解で整理します。
精神疾患で休職する公立学校の教員は、どれくらいいるのか?
2024年度は7,087人・在職者の0.77%。約130人に1人の水準で、10年前の約1.4倍にあたる。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
10年間の推移|2015年度5,009人から2024年度7,087人へ

10年の推移は、人数の折れ線に在職者比の数値列を沿わせた1枚で見るのが近道です。底とピークの位置、そして直近の高止まりが、線の形としてそのまま確認できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
文部科学省の調査によれば、公立学校の教育職員のうち精神疾患による病気休職者は、2015年度の5,009人から2024年度の7,087人へと、10年間で2,078人増えました。2016年度の4,891人を底として増加が続き、2023年度に過去最多の7,119人へ到達しています。
2024年度は前年から32人減の7,087人で、在職者に占める割合は0.77%と横ばいでした。調査結果の概要もこの状態を「32人減少したものの、割合は横ばい」と表現しており、水準は過去最多圏にとどまっています。在職者比0.77%は、教育職員のおよそ130人に1人が精神疾患で休職した計算になります(筆者試算:922,776人÷7,087人≒130)。
途中経過を見ると、2020年度は5,203人と一時的に前年を下回りましたが、2021年度以降は5,897人、6,571人、7,119人と段階を上げてきました。なお2022年度の6,571人は、当初公表の6,539人から事後修正された値で、本記事の系列は修正後の数値に統一しています。
30年前との比較|1992年度1,111人からの長期変化

長期の変化は、二時点のバーを人数と在職者比の2枚で並べるのが誤解の少ない見せ方です。目盛りの異なる2つの指標を横に置くことで、倍率の違いまで一度に比べられます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
文部科学省の検討会議がまとめた「教職員のメンタルヘルス対策について(最終まとめ)」(2013年)には、1992年度(平成4年度)の精神疾患による病気休職者数として1,111人(在職者比0.11%)が収載されています。2024年度の7,087人と比べると、30年余りで人数は約6.4倍、在職者比は0.11%から0.77%へ7倍の水準に変わりました。
同資料によれば、休職者数は1992年度から2009年度の5,458人まで17年連続で増加し、2010年度5,407人・2011年度5,274人といったん足踏みしたあと、2010年代後半から再び増加局面に入っています。なお当時と現行では調査様式が完全に同一ではないため、この長期比較は参考値としての位置づけです。
学校種別の内訳|人数の約半数は小学校、率の最高は特別支援学校

学校種別は、人数のバーと在職者比の数値を同じ行に並べた二層で見ます。「人数の多さ」と「率の高さ」が別々の指標であることが、そのまま形になって表れます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2024年度の7,087人を学校種別に見ると、小学校が3,458人で全体の約48.8%を占め、中学校1,639人、高等学校1,006人、特別支援学校924人と続きます。人数の約半数を占めるのは小学校ですが、在職者比が最も高いのは特別支援学校の0.99%で、小学校の0.83%がこれに次ぎます。
高等学校は0.58%、中学校は0.71%で、学校種によって在職者比には0.5ポイント近い開きがあります。なお中等教育学校は在職者の母数が小さく、2023年度1.54%から2024年度0.51%へ動くなど年による変動が大きいため、単年の率では読み取りにくい区分です。
年代別・性別の内訳|30代の0.95%が最高、50代以上は0.64%

年代と性別は在職者比を主役に置き、人数はカッコ書きに回します。「人数が多い=率が高い」とは限らない構造が、バーの長さの違いとして観察できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
年代別では、人数・在職者比とも30代が最多・最高で、2,118人・0.95%でした。40代が0.94%、20代が0.86%と続きます。50代以上は1,892人と人数では2番目に多い一方、在職者比は0.64%と4区分で最も低くなっています。20〜40代(0.86〜0.95%)と50代以上との間に、はっきりした段差がある形です。
性別では、女性が4,264人(0.87%)、男性が2,823人(0.65%)で、人数・率とも女性が上回りました。年代・性別のいずれも、在職者数という母数を分母に置いた率で並べることで、単純な人数の比較とは異なる位置関係が見えてきます。
休職の要因|教育委員会が認識した最多は「指導そのもの」26.5%

要因の図は、回答主体を図の中に明記するのが大前提です。この構成比は休職した本人の回答ではなく、教育委員会が認識した要因である点を押さえたうえで読んでいきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
精神疾患による病気休職の要因について、文部科学省が教育委員会に調査した結果では、「児童・生徒に対する指導そのものに関すること」が26.5%で最も多く、「職場の対人関係(上司、同僚、部下等)」23.2%、「校務分掌や調査対応等の事務的な業務」12.7%が続きました。上位2項目の指導そのものと職場の対人関係だけで、構成比の半分近くを占めています。
この構成比は、選択肢のうち「その他」「教育委員会として把握していない」を除いて算出されたものです。また休職者本人への調査ではなく、服務を監督する教育委員会が認識した要因の集計である点に留意が必要です。長時間勤務は0.5%、相談しづらい環境は0.2%と、項目の立て方によって数値の見え方が変わる調査でもあります。
休職のその後|復職40.3%・引き続き休職39.1%・退職20.6%

休職の「その後」は、帯グラフで3つの行き先を、縦棒で発令時点の所属校勤務年数を並べます。発令の前後を1枚に置くと、どの局面に人が集中しているかが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2024年度の休職者7,087人の2025年4月1日現在の状況は、復職2,857人(40.3%)、引き続き休職2,772人(39.1%)、退職1,458人(20.6%)でした。復職と休職の継続がほぼ拮抗し、およそ5人に1人が退職に至っています。休職期間で見ると、1年以上が2,466人(34.8%)を占めます(筆者試算:1,708人+685人+73人)。
休職発令時点での所属校勤務年数は「1年以上2年未満」が1,560人(22.0%)で最多でした。6月未満・6月以上1年未満と合わせると、所属校での勤務が2年未満のうちに発令された休職が全体の46.5%(3,293人)を占めています。
また、過去1年以内に精神疾患による休職期間(現在の休職を除く)がある人は1,283人で、休職者全体の18.1%でした。この割合は2021年度14.7%、2022年度15.9%、2023年度15.7%と推移したあと2024年度に18.1%へ動いており、人数・割合とも上昇しています。
楓のまとめ|人数の多さと率の高さは別々の指標として動いている

ここまでの図解を並べると、推移・内訳・その後という3つの角度が揃います。数字の解釈は読者に委ねる前提で、3つの観察事実に整理してみます。
「教員の精神疾患による休職は増えているのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、10年・30年という期間の取り方、人数と率という指標の選び方、そして休職後の経過という3つの角度から、それぞれ異なる輪郭を示してきました。評価や原因の特定には踏み込まず、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、教員の精神疾患による休職は、単年の増減よりも「高止まりの持続」「率で見た偏りの所在」「発令後の分岐」という3つの層で捉えたほうが、データの形に近づきます。2024年度の32人減という単年の動きと、10年で約1.4倍という期間の動きは、同じ統計の別々の断面です。どの期間・どの指標で見るかによって読み取れる像が変わる、という観察事実そのものが、このテーマの現在の輪郭を映しています。
よくある質問(FAQ)

この統計を読むときは、対象(公立のみ)、指標(休職発令者のみ)、回答主体(要因は教育委員会)の3点をセットで確認してください。数字の範囲がわかると、他の報道との違いも整理しやすくなります。
Q1. 「病気休職者7,087人」には、短期間の病気休暇は含まれますか?
含まれません。7,087人は病気休職を発令された教育職員の数で、休職に至らない1か月以上の病気休暇の取得者は含まれていません。同じ調査の別資料では、精神疾患による病気休職者と1か月以上の病気休暇取得者を合わせた集計も公表されており、その合計は休職者のみの数より大きくなります。
Q2. 国立や私立の学校の教員は含まれますか?
含まれません。この調査の対象は、公立の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校の教育職員(総計922,776人・2024年5月1日現在)です。国立学校・私立学校の教員は対象外のため、日本の教員全体の休職者数は本記事の数字より大きい可能性があります。
Q3. 休職の「要因」は誰が回答したものですか?
服務を監督する教育委員会です。図解で示した構成比(指導そのもの26.5%など)は、休職した本人へのアンケートではなく、教育委員会が認識した要因を集計したもので、「その他」「教育委員会として把握していない」を除いて割合が算出されています。回答主体が異なる調査とは、単純に数値を比較できない点に注意が必要です。
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