
待機児童の話題は、単年の数字よりも13年の推移と数え方の構造をセットで見ると全体像がつかめます。今回は推移チャートから分解図、47都道府県の地図まで、1本の流れで並べていきます。
「保育所に入れない子ども」を表す待機児童数は、2025年(令和7年)4月1日時点で全国2,254人でした。こども家庭庁の公式推移表によれば、ピークだった2017年(平成29年)の26,081人から8年連続で減少し、ピーク比で91.4%減、10分の1以下の水準になっています。一方で、残る2,254人の83.3%は1・2歳児に集中し、待機児童ゼロの県が17ある一方で東京都は339人と、地域の偏りも残っています。
本記事では、こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」の一次データを、13年の推移チャート・数え方の分解図・47都道府県タイルマップ・年齢別内訳・需給の折れ線といった図解で整理します。「待機児童に数えられない区分」の存在まで含めて、数字の全体を観察していきます。
待機児童は、いまどれくらい残っている?
全国で2,254人。ピークの10分の1以下になりました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
全国の待機児童数の推移|2013年から2025年への13年

13年の推移は、縦棒を年の順に並べると、山の頂上と下り坂の角度が一目で見えてきます。2017年の頂上と、そこからの8段の下りに注目してみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
こども家庭庁の公式推移表によれば、全国の待機児童数は2013年(平成25年)の22,741人から2万人台で推移し、2017年(平成29年)に26,081人のピークを記録しました。なお、2015年調査から認定こども園などの新制度施設等が対象に加わり、2017年調査からは待機児童の定義が広くなる見直しが行われています。ピークの年は、この定義見直しと同じ年にあたります。
2018年(平成30年)以降は一転して減少が続きます。2018年に19,895人と6,000人超の減少を記録した後、2021年(令和3年)には5,634人と1万人を割り込みました。2022年に2,944人、2023年に2,680人、2024年に2,567人、そして2025年(令和7年)は2,254人です。8年連続の減少でピーク比91.4%減、10分の1以下の水準に達しています。
「待機児童」の数え方|申込276.5万人が2,254人になるまで

「待機児童数」という1つの数字は、引き算の構造で決まっています。申込者数から順に引かれていく流れを、上から下への分解図で追うと数え方が見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
待機児童数は、申込者数から順に引き算をして求められます。2025年4月1日時点の申込者数は2,765,235人で、このうち保育所等を利用している2,678,417人と、特例保育等を利用している20,075人がまず除かれます。さらに、国の定義で待機児童に数えない「除外4類型」の64,489人が除かれ、残った2,254人が待機児童数となります。
除外4類型の内訳は、特定の保育所等のみ希望している者が39,469人と最も多く、育児休業中の者が15,043人、地方単独事業を利用している者が5,531人、求職活動を休止している者が4,446人です。待機児童数2,254人の背後に、待機児童には数えられない64,489人の区分が存在するというのが、この数え方の構造です。
なお「特定の保育所等のみ希望している者」は、通常の交通手段で登園可能な他の保育所等を利用できる状態にありながら、特定の施設のみを希望して利用していない場合などを指します。区分の定義や運用は、こども家庭庁の調査要領で毎年示されています。
年齢別に見る内訳|1・2歳児に83.3%が集中

年齢別の内訳は、横棒の長さを並べるだけで偏りの大きさが伝わります。1本だけ突出した帯がどこにあるかを見てみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年4月1日時点の待機児童2,254人を年齢別に見ると、0歳児が164人(7.3%)、1・2歳児が1,877人(83.3%)、3歳以上児が213人(9.4%)です。1・2歳児だけで全体の83.3%を占め、3歳未満児では90.6%に達します。
利用児童数の側を見ると、0歳児130,437人・1・2歳児946,659人・3歳以上児1,601,321人と、年齢が上がるほど利用の規模は大きくなります。待機児童はその逆で、利用規模が最大の3歳以上児では213人にとどまり、1・2歳児に1,877人が集中しています。待機の偏りが年齢構造とセットで表れているのが、2025年時点の形です。
都道府県別に見る|17県ゼロと上位県の分布

47都道府県の分布は、タイルマップで色の濃淡を見ると地理的な偏りが浮かびます。最も薄い色(待機児童ゼロ)のタイルがどの地方に並ぶかにも注目です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
都道府県別では、東京都が339人で最も多く、滋賀県335人・埼玉県208人・兵庫県199人・大阪府194人・奈良県186人・沖縄県171人・神奈川県138人と続きます。一方、青森県や新潟県、広島県など17県では待機児童がゼロで、全国計2,254人の分布には大きな偏りがあります。
市区町村単位まで下りると、待機児童がいない自治体は1,530(87.9%)に上り、待機児童が存在するのは211自治体です。50人以上は5自治体、100人以上は滋賀県大津市(132人)の1市のみでした。首都圏・近畿圏の7都府県と指定都市・中核市を合わせた都市部が全体の63.0%(1,419人)を占めており、残る待機児童が特定の地域・自治体に集中している様子が、地図と数字の両方から確認できます。
量の確保の次にある局面|申込者数の減少と定員充足率

申込者数の折れ線と定員充足率の2本線を続けて見ると、「量の確保」の次に来ている局面が数字の角度から見えてきます。実線と点線の違いにも注意してください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
需要側の元になる申込者数は、2020年(令和2年)の2,842,208人をピークに5年連続で減少し、2025年は2,765,235人でした。市区町村が策定した実施計画の集計では、2025年から2029年にかけて申込者数は約8.6万人減少し、利用定員数は約2.2万人分増加する見込みで、計画上の待機児童数は2026年以降0人とされています。ただしこれらは市区町村の見込・計画値の集計であり、実績によって変わる可能性があります。
供給側では、保育所等の利用定員は3,029,282人(前年比0.5%減)、利用児童数は2,678,417人(同1.0%減)で、定員充足率は88.4%と前年から0.4ポイント低下しました。全国の充足率は2021年の90.9%から5年連続で低下しています。
都市部と過疎地域で開く定員充足率
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
定員充足率を地域別に見ると、2025年は都市部が91.3%、過疎地域が74.6%で、両者の差は16.7ポイントです。2020年からの5年間の低下幅は都市部が3.2ポイント、過疎地域が8.4ポイントと、低下のペースは過疎地域側で大きく、差は年々広がる方向で推移しています。
こども家庭庁のアンケート集計では、待機児童が減少した要因として「保育の受け皿拡大」(52.2%)や「申込者数が見込みを下回った」(26.3%)が、解消できなかった要因として「保育人材の確保が困難」(44.1%)、「申込者数の想定以上の増加・利用定員数の不足」(39.8%)、「保育需要の地域偏在」(35.5%)が挙げられています。
楓のまとめ|10分の1以下への減少と、残る偏り

ここまでの推移・数え方・地域差・需給を一通り並べると、待機児童数の現在の位置づけが複数の角度から確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「待機児童数の推移」というテーマで本記事が並べた図解は、ピークからの大幅な減少と、その後に残る偏りを別々の角度から示してきました。数字に評価を加えるのではなく、観察事実として3点に整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、待機児童数というテーマは総数の減少だけでは語りきれない段階にあることが数字から見えてきます。ピーク比91.4%減という長期の推移と、1・2歳児83.3%・特定地域への集中という偏りの構図が、同じ2,254人という数字の中に同居しているのが2025年時点の形です。次回の数値は、こども家庭庁の令和8年4月1日調査(例年8月末〜9月頃公表)で更新されます。
よくある質問(FAQ)

待機児童のデータを読むときは、数え方の定義・時点・地域の3点をセットで確認してください。同じ「待機児童」という言葉でも、この3点で数字が大きく変わります。
Q1. 待機児童は「ゼロになった」のですか?
2025年4月1日時点で全国に2,254人の待機児童がおり、ゼロにはなっていません。ただし市区町村単位では87.9%にあたる1,530自治体がゼロで、都道府県でも17県がゼロです。市区町村の実施計画の集計では2026年以降の計画上の待機児童数は0人とされていますが、これは見込・計画値であり、実績は毎年8月末〜9月頃に公表される調査で更新されます。
Q2. 「隠れ待機児童」とは何ですか?
国の資料では「除外4類型」という区分が定められており、育児休業中の者(15,043人)、特定の保育所等のみ希望している者(39,469人)、地方単独事業を利用している者(5,531人)、求職活動を休止している者(4,446人)の計64,489人が待機児童数から除かれています。いわゆる「隠れ待機児童」という言葉は、この区分を指して使われることが多い俗称で、公式統計上の名称ではありません。
Q3. 待機児童が多い県は保育の整備が遅れているのですか?
待機児童数だけで整備の優劣を判断できる指標ではありません。待機児童数は申込者数の規模や増え方、地域内での需要の偏りにも左右されます。こども家庭庁の調査では、解消できなかった要因として「保育人材の確保が困難」(44.1%)、「申込者数の想定以上の増加・利用定員数の不足」(39.8%)、「保育需要の地域偏在」(35.5%)が挙げられており、整備量だけでなく需要側の動きも数字に影響する構造です。
🔍 この記事のファクトチェックについて

当サイトはファクトチェックを実施しています。このページのファクトチェックのエビデンスを以下に掲載します。



