
アンダーパスの冠水は、雨量だけで決まるわけではありません。路面の高さと排水能力の関係、そして水深と車体の位置関係を、公表資料の数字で順に並べていきます。
道路や鉄道の下をくぐるアンダーパスは、前後の区間と比べて路面の高さが局部的に低くなっている道路です。国土交通省 道路局によれば、全国のアンダーパスは約3,700箇所(令和7年3月末時点)あります。低い場所には雨水が集まりやすく、排水ポンプの能力を超える雨が降ったり、災害や停電などでポンプが停止したりすると、最深部から水がたまりやすくなります。
本記事で最初に確認したいのは、国が示している危険の基準が「水深何cm」ではないという点です。国土交通省は令和元年11月27日の公表資料で、水深が車両の床面を超えたとき、ドアの下端にかかったとき、ドア高さの1/2を超えたときという3つの段階を示しました。公表されている基準は水深のcm値ではなく、車体のどこまで水が来ているかという位置で表現されています。
全国の約3,700箇所を47都道府県で単純に割ると、1県あたり平均で約79箇所になります。本記事では国土交通省・気象庁・JAFの公表資料をもとに、アンダーパスの構造、水深と車の関係、走行試験の結果、短時間強雨の変化、冠水想定箇所の分布、そして自分の通り道を調べる経路を、順に図解で整理していきます。
道路や鉄道の下をくぐるアンダーパスは、なぜ冠水するのか。水深がどこまで来ると、何が起きるのか。
前後より路面が低い区間に雨水が集まり、排水能力を超えると水がたまります。国が示す危険の基準は、水深のcm値ではなく車体の位置です。
- 01 構造 3,700 全国のアンダーパス箇所数(令和7年3月末)
- 02 降雨 1.5倍 1時間50mm以上の雨の年間発生回数の比
- 03 水深 60cm 走行試験でガソリン車が停止した水深
- 04 ドア 1/2 ドア高さのこの割合を超えると内側からほぼ開かない
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
アンダーパスとは何か|全国に約3,700箇所

まずは断面から見ていきます。前後より路面が低いというこの一点が、雨水の集まり方を決めています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
アンダーパスとは、主要な道路や鉄道などと立体的に交差する道路のうち、前後と比べて道路の高さが局部的に急に低くなっている区間を指します。掘り下げられた構造になっているため、周囲に降った雨水が地形的に集まりやすい場所になります。周囲より低いという構造そのものが、雨水の集まりやすさを決めています。
国土交通省 道路局は、全国のアンダーパスを約3,700箇所(令和7年3月末時点)としています。通常の降雨であれば、設置された排水ポンプや排水路によって雨水は排出されます。排水能力を超える雨が降った場合には、アンダーパス部の冠水による事前通行規制の実施と、道路利用者への情報提供が行われると同省は説明しています。
関東地方整備局 大宮国道事務所は、時間雨量30mm以上の激しい雨の場合に、道路管理者による緊急パトロールを実施しているとしています。冠水しやすい箇所には電光掲示板や冠水標識が設置され、注意喚起が行われています。冠水するかどうかは雨量だけで決まるのではなく、路面の高さと排水能力の関係のなかで決まります。
水深がどこまで来ると、何が起きるか

ここが本記事の核心です。国が示しているのは、cmの数字ではなく車体の位置でした。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国土交通省は令和元年11月27日、国内乗用車メーカー8社への調査結果をもとに「自動車が冠水した道路を走行する場合に発生する不具合」を公表しました。示されている段階は3つで、いずれも水深を車体のどの位置と比べるかという形で表現されています。
第1段階は、水深が車両の床面を超えた場合です。車内に浸水して電気装置が故障するおそれや、マフラーから浸水してエンジンルームが損傷するおそれがあるとされ、自動スライドドアやパワーウインドウが動作しなくなる、エンジンやモーターが停止して再始動できなくなるといった不具合が挙げられています。床面という基準は、車高によって実際のcm値が変わります。
第2段階は水深がドアの下端にかかった場合で、車外の水圧により内側からドアを開けることが困難になるとされています。第3段階はドア高さの1/2を超えた場合で、内側からほぼ開けられなくなると記載されています。同じ水深でも、車両形状や設計によって影響は異なると原文に注記されています。
同じ資料には、水深が床面以下であっても走行速度が大きくなると、巻き上げた水や生じた波によって吸気口からエンジンに浸水し、エンジンが停止するおそれがあることも記されています。電気自動車やハイブリッド車についても、駆動用バッテリーに浸水すると車両が停止するおそれがあるとされています。
走行試験では何が起きたか

実験の結果は、水深だけでなく速度と車種で分かれました。表にして並べてみます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
JAFは2024年10月28日から30日にかけて、全長100mのテストコースに水深30cmと60cmの冠水路をつくり、電気自動車・ハイブリッド車・ガソリン車(軽自動車)の3台で走行試験を実施しました。進入速度は時速10km、時速30km、時速40kmで、時速40kmは水深60cmのみで行われています。
水深30cm・時速10kmでは3台とも走り切りました。同じ水深でも時速30kmになると、電気自動車は車体下部のアンダーカバーが外れ、ハイブリッド車はホイールカバーと牽引フックカバーが外れ、ガソリン車は車内とボンネット内部に浸水しています。走り切れた場合でも、車体や機関部への浸水が確認されています。
水深60cm・時速40kmでは、電気自動車は走り切ったものの複数の警告灯が点灯し、ハイブリッド車は走行後にエンジンが停止しました。ガソリン車は走り切れず、28.5m地点で停止し、車内に水が大量に浸水しています。JAFは、実際の冠水路は濁っていることが多く、見た目では水深を判断することが難しいとしています。
短時間強雨はどう変化しているか

雨の側の数字も並べておきます。ここは本記事では文脈として簡潔に確認します。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
気象庁と文部科学省が公表した「日本の気候変動2025」によれば、全国アメダスで観測された1時間降水量50mm以上の年間発生回数は、統計期間の最初の10年間(1976年〜1985年)の平均が約226回、最近10年間(2015年〜2024年)の平均が約334回でした。編集部が両者を割ると、およそ1.5倍という比になります。
同じ資料では1時間降水量80mm以上が約1.7倍、100mm以上が約1.8倍とされ、強い雨ほど増加率が高いことが示されています。なお、アメダスの観測地点数は年によって異なるため、いずれも1,300地点当たりに換算した値です。
短時間強雨そのものの推移については、線状降水帯の発生回数、推移をデータで解説【2026年】や、上陸した台風の中心気圧、74年の推移を図解で解説【2026年】もあわせてご覧ください。
冠水想定箇所はどこにあり、誰が管理しているか

箇所数の公表は道路管理者ごとに分かれています。兵庫県の一覧を種別ごとに数えてみました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
ここで区別が必要なのは、「全国のアンダーパス約3,700箇所」と、都県ごとに公表されている「冠水注意箇所」「冠水想定箇所」が別の集計だという点です。前者はアンダーパス構造の区間数、後者は冠水するおそれがあるとして道路管理者が公表した箇所数で、対象範囲も公表時点も異なります。両者は分母が異なるため、足し引きや割合の算出はできません。
関東地方整備局 東京国道事務所は東京都内のアンダーパス部の冠水注意箇所を153箇所、大宮国道事務所は埼玉県内の道路冠水注意箇所(アンダーパス部等)を273箇所としています。近畿地方整備局の道路防災情報Webマップには、兵庫県の冠水想定箇所162箇所が一覧で掲載されています。
兵庫県の一覧に記載された道路種別を編集部で数えると、国道8箇所、県道31箇所、市道105箇所、町道7箇所、農道5箇所、里道6箇所でした。市道・町道・農道・里道を合わせると123箇所で、全162箇所の約76%を占めます。国が管理する国道は8箇所で、公表の主体も道路管理者ごとに分かれています。
自分の通り道を調べる3つの経路

最後に調べ方の経路を整理します。洪水の色塗りとは別のレイヤーである点が要点です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
道路冠水想定箇所は、洪水浸水想定区域とは別のレイヤーとして公表されています。国土地理院の「重ねるハザードマップ」では、「道路防災情報」を選ぶと「道路冠水想定箇所」を表示できます。洪水浸水想定区域だけを表示していても、道路冠水想定箇所は現れません。
2つ目は各地方整備局の道路防災情報Webマップで、都道府県別の一覧とマップが公表されています。3つ目は各国道事務所が公表している都県別の道路冠水注意箇所マップのPDFです。関東地方整備局の関東甲信地域のマップでは、9都県それぞれに更新日が記載されています。
楓のまとめ|構造・水深・分布は別々に記録されている

ここまでの数字を、3つの観察事実に整理します。
アンダーパスの冠水をめぐる公表資料は、構造・水深・雨・分布・調べ方という異なる層に分かれて記録されています。それぞれの層で公表されている数字を並べると、日常の運転で目にする景色との対応が見えてきます。
3つの観察事実を重ねると、アンダーパスの冠水は雨量という一つの数字だけでは捉えにくい対象であることがわかります。路面の高さ、排水能力、車体のどこまで水が来ているか、誰がその箇所を公表しているかという層が、それぞれ別に記録されています。本記事は、それらを1枚ずつ図解に置き換えて並べたものです。
よくある質問(FAQ)

箇所数の読み方と、水深の基準の読み方でつまずきやすい3点をまとめました。
Q1. 「全国約3,700箇所」と、都県が公表している「冠水注意箇所」は同じものですか?
別の集計です。前者は国土交通省 道路局が示すアンダーパス構造の区間数(令和7年3月末時点)で、後者は冠水するおそれがあるとして各道路管理者が公表した箇所数です。対象範囲も公表時点も異なるため、足し引きや割合の算出には向きません。たとえば東京都内の冠水注意箇所は153箇所、埼玉県内は273箇所と、それぞれ別の主体が別の基準で公表しています。
Q2. 冠水した場所を通ったあと、車が動けば問題はありませんか?
国土交通省は、一度浸水した車両は運転可能であっても電気装置等が損傷を受けているおそれがあるため、自動車整備工場等で点検整備を受けるよう求めています。また、水が引いた後もエンジンをかけないこと、発火のおそれがあるためバッテリーの端子を外すことが示されています。電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・ハイブリッド自動車は高電圧のバッテリーを搭載しているため、自分で対処せず自動車整備工場等に相談するよう記載されています。
Q3. 自分の通勤路にアンダーパスがあるか調べられますか?
公表されている経路は3つです。国土地理院の「重ねるハザードマップ」で「道路防災情報」の「道路冠水想定箇所」を表示する方法、各地方整備局の道路防災情報Webマップで都道府県別の一覧を見る方法、各国道事務所が公表している都県別の道路冠水注意箇所マップのPDFを見る方法です。いずれも洪水浸水想定区域とは別のレイヤーとして扱われています。
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