
「地震が増えた」という感覚を確かめるには、強い揺れの回数を年ごとに並べるのが近道です。小さな揺れまで含めた回数と、震度5弱以上だけを数えた回数を分けて見ると、動いているものと動いていないものがはっきり分かれます。
日本国内で最大震度5弱以上を観測した地震の回数を年ごとに並べると、2007年から2025年までの19年間で合計288回、年平均は15.2回でした。19年をほぼ半分に割ると、前半9年(2007年〜2015年)が144回、後半10年(2016年〜2025年)も144回で、この区切りで数えるかぎり、合計はどちらも同じでした。
19年間を日数に直すと約6,940日です。288回で割ると、およそ24日に1回の割合になります。一方、2025年に震度1以上を観測した地震は4,456回あり、そのうち震度5弱以上は15回でした。小さな揺れの回数と、強い揺れの回数は、別の動き方をしています。
この記事では、総務省消防庁「消防白書」の最大震度別の集計と、気象庁「地震・火山月報(防災編)」をもとに、年別の回数、震度階級別の内訳、2025年の月別内訳を図解で並べます。回数の増減に理由をあてはめることはせず、数えた結果をそのまま観察していきます。
震度5弱以上の地震は、この19年で増えているのか。
19年で288回。前半9年と後半10年は、どちらも144回だった。
出典:総務省消防庁「令和7年版 消防白書」第1-6-1表・「平成29年版 消防白書」第1-6-1表(いずれも気象庁の震度データにより作成)/気象庁「地震・火山月報(防災編)」令和7年12月号
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
19年で288回|震度5弱以上を観測した地震を年ごとに並べる

年ごとの回数は、最大震度の内訳まで積み上げた縦棒で見ると、平年の年と大きな地震があった年の違いが一目で並びます。5弱と5強だけで構成される年が多いことも、同じ図から読み取れます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
ここで数えているのは、国内のいずれかの震度観測点で最大震度5弱以上が観測された地震の回数です。地下で起きた地震そのものの数ではありません。同じ規模の地震でも、観測点の近くで起きれば数に入り、遠くの海で起きれば入らないことがあります。
2007年から2025年までの19年間の合計は288回、年平均は15.2回でした。ただし年ごとの数字は平均のまわりに散らばっているわけではなく、少数の年に大きく偏っています。19年を回数の少ない順に並べたときの中央値は10回で、年平均15.2回とは5回以上の開きがあります。
回数が最も多かったのは2011年の71回で、次いで2016年の33回、2024年の28回でした。この3年の合計は132回、19年合計288回の45.8パーセントにあたります。上位3年を除いた16年の年平均は9.8回で、中央値の10回に近い水準です。平均を押し上げているのが何かは、この2つの数字の差にあらわれています。
階級別の内訳を見ると、平年にあたる年は震度5弱と5強だけで構成されています。震度6弱以上が複数回数えられるのは、2011年、2016年、2024年のように大きな地震があった年に限られます。同じ「震度5弱以上」という枠でも、中身の重さは年によって大きく違います。
前半9年と後半10年|どちらも144回だった

19年をほぼ半分に割って合計を並べると、左右の数字がそろいます。ここは差を探す図ではなく、差がなかったことを確認する図として置きました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
19年を前半と後半に分けて合計すると、2007年から2015年までの9年間が144回、2016年から2025年までの10年間も144回でした。年平均にすると前半が16.0回、後半が14.4回です。この区切りで見るかぎり、前半と後半の合計は同じ数でした。
ただし、これは「増えていない」と断定できる材料ではありません。期間の切り方を変えれば数字は変わります。たとえば2011年を含む前半は1年分の回数が突出しており、後半は2016年と2024年の2年に回数が集まっています。どこで区切るかによって、前半と後半のどちらが多くなるかは入れ替わります。
回数の多かった上位3年(2011年・2016年・2024年)を除くと、残り16年の合計は156回、年平均は9.8回になります。19年全体の年平均15.2回との差は5.4回です。大きな地震があった年の回数が、全体の平均をどれだけ動かしているかが、この引き算からわかります。
震度6弱以上は43回|そのうち震度7は5回

震度5弱以上という枠を、6弱以上だけに絞り込むと、年ごとの姿がまた変わります。ゼロの年が並ぶなかに、大きな地震があった年だけが立ち上がる形です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
19年間に観測された震度6弱以上の地震は43回でした。内訳は震度6弱が24回、震度6強が14回、震度7が5回です。19年のうち5つの年は、震度6弱以上が一度も数えられていません。2010年、2012年、2015年、2017年、2020年がそれにあたります。
震度7が観測されたのは、2011年に1回、2016年に2回、2018年に1回、2024年に1回の合計5回です。2016年の2回は、4月14日と4月16日にそれぞれ震度7が観測されたもので、同じ地域で2度の震度7が記録されたのは観測史上初めてでした。
震度5弱以上を1つの枠で数えると年平均15.2回になりますが、震度6弱以上に限れば19年で43回、年平均は2.3回です。震度7に限れば19年で5回でした。同じ期間、同じ数え方でも、どの階級から上を数えるかで、見える回数の桁が変わります。
2025年の月別|震度1以上は4,456回、震度5弱以上は15回

2025年は、揺れの回数そのものが強く意識された年でした。震度1以上の月別と、そのうち震度5弱以上の月別を上下に並べると、2つの数字の動き方の違いがそのまま出ます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年に国内で震度1以上を観測した地震は4,456回でした。月別に見ると、6月が820回、7月が1,701回で、この2か月だけで年間の半分を超えています。気象庁の月報には、6月と7月の記事欄にトカラ列島近海の地震活動が記載されており、7月中の同じ活動だけで震度1以上が1,002回数えられています。
一方、同じ2025年に震度5弱以上を観測した地震は15回でした。19年平均の15.2回とほぼ同じ水準で、月別に見ても最も多い7月で7回です。震度1以上に占める震度5弱以上の割合は0.34パーセント、およそ300回に1回という計算になります。
「地震が増えた」という感覚が強まりやすいのは、震度1以上の回数が動いたときです。2025年はその回数が大きく動き、強い揺れの回数は動きませんでした。どちらの数字を見ているかによって、同じ年についての印象が変わります。なお2025年の値は速報値であり、その後の調査で変更される場合があります。
なぜ2007年から数えるのか|震度階級と観測網の変化

回数を比べる前に、どこから先なら同じ物差しで数えられるかを先に置きます。階級の区分と観測点の数が変わった時点をまたぐと、回数はそのまま比べられません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
気象庁は1996年4月1日から新しい震度階級を適用し、体感による観測を全廃して計測震度計による観測に移りました。ただし震度6強・6弱・5強・5弱という区分の運用が始まったのは同じ年の10月1日からです。それ以前は震度5と震度6という区分しかなく、5弱以上という数え方そのものが存在しません。
観測する側の数も変わりました。気象庁は1997年11月10日から、自らの震度計の観測データに加えて、地方公共団体および国立研究開発法人防災科学技術研究所から提供されたデータも震度情報として発表しています。2025年4月1日時点で、地方公共団体が整備した震度計は全国で約2,900か所にのぼります。
観測点が増えれば、これまで数に入らなかった揺れが数に入ります。階級の区分が変われば、数える枠そのものが変わります。この2つの変化をまたいで回数を並べると、地震の側の変化と、数え方の側の変化が混ざります。本記事が2007年から数えているのは、この2つの変化の後に十分な期間を置いた区間を選ぶためです。
年別の一覧|2007年から2025年までの内訳

年と階級の組み合わせを、そのまま表でも確認できるようにしました。3つの期間に分けてありますので、気になる年のタブを選んでご覧ください。
2007〜2012年に国内で最大震度5弱以上を観測した地震の回数
| 年 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 6強 | 7 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2007 | 4 | 2 | 1 | 2 | 0 | 9 |
| 2008 | 6 | 0 | 1 | 1 | 0 | 8 |
| 2009 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 |
| 2010 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
| 2011 | 45 | 17 | 4 | 4 | 1 | 71 |
| 2012 | 12 | 4 | 0 | 0 | 0 | 16 |
2013〜2018年に国内で最大震度5弱以上を観測した地震の回数
| 年 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 6強 | 7 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2013 | 5 | 6 | 1 | 0 | 0 | 12 |
| 2014 | 7 | 1 | 1 | 0 | 0 | 9 |
| 2015 | 5 | 5 | 0 | 0 | 0 | 10 |
| 2016 | 18 | 5 | 6 | 2 | 2 | 33 |
| 2017 | 4 | 4 | 0 | 0 | 0 | 8 |
| 2018 | 7 | 2 | 1 | 0 | 1 | 11 |
2019〜2025年に国内で最大震度5弱以上を観測した地震の回数
| 年 | 5弱 | 5強 | 6弱 | 6強 | 7 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 6 | 0 | 2 | 1 | 0 | 9 |
| 2020 | 6 | 1 | 0 | 0 | 0 | 7 |
| 2021 | 4 | 5 | 0 | 1 | 0 | 10 |
| 2022 | 7 | 6 | 1 | 1 | 0 | 15 |
| 2023 | 5 | 2 | 0 | 1 | 0 | 8 |
| 2024 | 14 | 9 | 4 | 0 | 1 | 28 |
| 2025 | 9 | 4 | 1 | 1 | 0 | 15 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
表の数字は、いずれもその年に国内で最大震度5弱以上を観測した地震の回数です。3つの期間に分けていますが、19年分の全データはページ内に収めてあります。年ごとの合計だけでなく、5弱から7までのどの階級が何回だったかも並べています。
2007年から2012年までの6年間の合計は113回、2013年から2018年までの6年間は83回、2019年から2025年までの7年間は92回でした。6年・6年・7年という区切りで見ると、最初の6年が最も多く、その内訳の大半は2011年の71回が占めています。
楓のまとめ|数えた枠と数えた期間で、見える回数は変わる

ここまで並べた図を通して見ると、どの階級から上を、どの期間で数えるかによって、同じ地震の記録から別の姿が立ち上がることがわかります。3つの観察事実に整理します。
「震度5弱以上の地震は増えているのか」という問いに対して、本記事で並べた図が示したのは、数え方の枠を決めた時点で答えの範囲も決まる、という関係でした。データそのものに評価を加えるのではなく、見え方の違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「増えているのか」という問いの答えは、どの階級から上を、どの期間で、どの単位で数えるかによって変わることがわかります。本記事が示せるのは、この19年をこの区切りで数えると合計は同じだった、というところまでです。将来どうなるかについては、この記事は何も述べていません。
よくある質問(FAQ)

回数のグラフを読むときは、数えている枠・数えている期間・観測点の数の3点をセットで確認してください。同じデータでも、この3点が変わると読み取れる内容が変わります。
Q1. 震度5弱以上の地震は増えているのですか?
本記事が示せるのは、2007年から2025年までの19年間を前半9年と後半10年に分けて数えると、合計はどちらも144回だった、というところまでです。19年合計は288回、年平均15.2回、中央値10回でした。期間の切り方を変えれば数字は変わるため、この区切りでの合計が同じだったという観察と、増減の判断は分けて受け取っていただくのが正確です。
Q2. 「回数」は、起きた地震の数と同じですか?
同じではありません。ここで数えているのは、国内のいずれかの震度観測点で最大震度5弱以上が観測された地震の回数です。同じ規模の地震でも、観測点の近くで起きれば数に入り、遠くの海で起きれば入らないことがあります。観測点の数が変われば、数に入る揺れの量も変わります。
Q3. なぜ1919年からではなく2007年から数えているのですか?
震度階級の区分と観測網が途中で変わっているためです。震度6強・6弱・5強・5弱という区分の運用が始まったのは1996年10月1日で、それ以前には5弱以上という数え方そのものがありません。また1997年11月10日からは、地方公共団体や防災科学技術研究所のデータも震度情報に加わりました。この2つの変化をまたぐと、地震の側の変化と数え方の側の変化が混ざるため、本記事は2007年からを対象にしています。
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