
インフルエンザの流行の大きさは、「定点1か所あたりの週報告数」という1本のものさしで示されます。同じものさしの上に22シーズンのピークを並べると、どこまで小さくなり、どこまで大きくなったのかが1枚で見えてきます。
インフルエンザの流行の大きさは、全国の定点医療機関から報告される「定点1か所あたりの週報告数」で示されます。この同じものさしの上で、2020/21シーズンの最大値は0.02人、2024/25シーズンのピークは64.43人でした。いずれも全国約5,000のインフルエンザ定点から報告されていた期間の値で、2004/05シーズン以降の22シーズンを並べると、この2つが両端に位置します。
規模の違いは、学校の記録にも表れています。国立健康危機管理研究機構は、2020/21シーズンの学級閉鎖学校数を3校(2020年第36週から2021年第9週)と報告し、前年・前々年の同時期には20,000校以上が報告されていたと記しています。同じ指標が3校と20,000校以上という桁の違う値をとったシーズンが、数年のあいだに並んでいます。
本記事では、厚生労働省が公表する週別の定点当たり報告数と、国立健康危機管理研究機構のシーズン特集をもとに、2004/05シーズン以降のピーク、流行入りの週、入院と受診の規模を図解で整理します。あわせて、2025年第15週に報告する医療機関の枠組みが変わった点も、比較の不連続として示します。
インフルエンザの流行は、どこまで小さくなり、どこまで大きくなったのでしょうか。
同じものさしの上で、0.02人から64.43人まで動きました。
定点1か所あたりの週報告数 最小 / Smallest
定点1か所あたりの週報告数 最大 / Largest
出典:厚生労働省「季節性インフルエンザの定点当たり報告数」(2026年第17週まで・2025年以降は暫定値)/国立健康危機管理研究機構 IASR 特集
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
22シーズンのピークを1枚に並べる|0.02人と64.43人の両端

シーズンごとのピークだけを取り出して縦棒にすると、どのシーズンが両端にあるかがひと目で分かります。値が極端に小さい2シーズンは棒がほとんど見えないため、数値を添えています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
定点当たり報告数は、インフルエンザと診断された患者の報告数を、報告する医療機関の数で割った値です。2004/05シーズンから2024/25シーズンまでは、全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関(小児科約3,000、内科約2,000)から毎週報告されていました。同じ分母で集計されているため、この21シーズンは1本の軸の上に並べて見ることができます。
並べてみると、多くのシーズンのピークは30人台から40人台に収まっています。その中で2017/18シーズンは54.33人、2018/19シーズンは57.09人と高い値を記録し、2024/25シーズンの64.43人がそれを上回りました。国立健康危機管理研究機構は、2024/25シーズンのピークを、現行の報告体制となった1999年以降で最も大きい値と説明しています。
一方で、2020/21シーズンの最大は0.02人(2021年第5週)、2021/22シーズンの最大は0.04人(2022年第28週)でした。0.02人と64.43人を単純に割ると約3,222倍になりますが、0.02人はもともと小数第2位までに丸められた数字であり、この倍率はあくまで目安にとどまります。
週ごとのカーブを重ねる|第36週を起点にそろえた5シーズン

シーズンの区切りは第36週です。5シーズンのカーブを同じ起点にそろえて重ねると、立ち上がる時期と山の形の違いを並べて見られます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
感染症発生動向調査では、第36週から翌年の第35週までを1つのシーズンとして扱います。この起点をそろえて2021/22シーズン以降の5本を重ねると、カーブの形の違いが見えてきます。2021/22シーズンはほぼ床に張り付いたまま推移し、山と呼べる形をつくっていません。
2022/23シーズンは年明けの12.95人(2023年第6週)、2023/24シーズンは年内の33.73人(2023年第49週)で山を迎えました。2024/25シーズンは年末に向かって急に立ち上がり、第49週9.05人、第50週19.08人、第51週42.74人、第52週64.43人という並びで動いています。
2025/26シーズンは破線で示しています。2025年第47週の51.24人と2026年第6週の43.35人という2つの山が並ぶ形になりました。ただしこのシーズンは2025年第15週以降の集計であり、ほかの4シーズンと同じ軸で山の高さを比べることはできません。図でも破線として区別しています。
流行入りの週はどこに散らばるか|第36週からの経過週数

流行入りは「定点当たり報告数が1.00を超えた週」で判定されます。第36週から何週目にあたるかへそろえると、シーズンごとの散らばりが1本の軸に載ります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
流行入りの目安は、全国の定点当たり報告数が1.00を超えることです。2004/05シーズン以降で見ると、早いシーズンは第36週の時点ですでに1.00を超えており、遅いシーズンは翌年の第3週まで下回ったままでした。同じ「流行入り」という言葉でも、暦の上では4か月以上の幅があります。
2009/10シーズンと2023/24シーズンは、経過0週、すなわち第36週の時点ですでに1.00を上回っていました。それぞれ2.62人と4.48人です。最も遅かったのは2004/05シーズンと2006/07シーズンで、ともに翌年の第3週、経過19週での流行入りでした。
2024/25シーズンは2024年第44週(経過8週)、2025/26シーズンは2025年第39週(経過3週)に1.00を超えました。2025/26シーズンの経過3週は、第36週の時点ですでに1.00を超えていた2シーズンを除くと、この図の中で最も早い流行入りにあたります。なお2020/21シーズンと2021/22シーズンは1.00を超えた週がなく、0週と混同しないよう軸の外に置いています。
「定点当たり報告数」のつくり|2025年第15週に変わった分母

この記事で並べている数値は、患者の報告数を医療機関の数で割った値です。2025年第15週に、その分母のほうが変わりました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
定点当たり報告数は、患者報告数を定点医療機関数で割って求めます。2025年第14週までは、全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関(小児科約3,000、内科約2,000)が対象でした。2025年第15週(4月7日から4月13日)以降は、全国約3,000の急性呼吸器感染症定点(小児科約2,000、内科約1,000)からの報告に変わっています。
厚生労働省は公表資料の中で、2025年第15週以降の数値について、定点医療機関の設置基準の変更に伴い定点数が変更されているため、データの解釈には留意が必要であると記しています。国立健康危機管理研究機構も、同じ変更について解釈には注意が必要であるとしています。本記事が2025/26シーズンを別扱いにしているのは、この記載に沿った措置です。
計算そのものは実際の値でも確かめられます。2024年第52週は患者報告数318,166人、定点当たり64.43人で、割り戻すと約4,938か所となり、公表されている「約5,000」とおおむね一致します。ただし報告する医療機関の数は休診などで週ごとに動くため、本記事では公表されている「約5,000」と「約3,000」だけを用いています。
入院と受診の規模で見る|シーズンごとの2つの指標

定点当たり報告数とは別に、入院サーベイランスと受診者数の推計という2つの指標があります。同じシーズンを違う角度から見ておきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
全国約500か所の基幹定点医療機関(300床以上の病院)を対象とした入院サーベイランスでは、シーズンごとの入院患者総数が集計されています。2018/19シーズンは20,719人、2019/20シーズンは13,011人でした。2020/21シーズンは2021年第17週までで131人、2021/22シーズンは44人と、けた違いに少ない値が並びます。
2023/24シーズンは19,389人、2024/25シーズンは29,157人でした。2024/25シーズンの入院患者総数は、この図に並ぶ6シーズンの中で最も多い値です。同じシーズンには、全数把握の対象である急性脳炎のうちインフルエンザ脳症として182例が届け出られています。2020/21シーズンには脳症の報告はありませんでした。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
もう1つの指標が、定点報告をもとにした累積推計受診者数です。2018/19シーズンは1,200.5万人、2019/20シーズンは728.9万人、2020/21シーズンは約1.4万人、2021/22シーズンは約0.3万人でした。いずれも第36週から翌年第17週までの集計です。
2024/25シーズンは約1,037.5万人ですが、集計期間は第36週から第14週までで、ほかの4シーズンより3週間短くなっています。棒の長さを比べるときは、この期間の違いも合わせて見ることになります。2025/26シーズンについては、2025年第15週以降は定点数の変更により推計対象に含めていないと説明されており、本記事では数値を置いていません。
シーズン一覧|ピーク・流行入り・重症度の指標

ここまでの図で使った数値を、3つの切り口の表にまとめました。タブを切り替えると、同じシーズンを別の指標で見られます。
| シーズン | ピーク週 | 定点当たり報告数(人) |
|---|---|---|
| 2004/05 | 2005年第9週 | 50.00 |
| 2005/06 | 2006年第4週 | 32.37 |
| 2006/07 | 2007年第11週 | 32.95 |
| 2007/08 | 2008年第5週 | 17.70 |
| 2008/09 | 2009年第4週 | 37.45 |
| 2009/10 | 2009年第48週 | 39.63 |
| 2010/11 | 2011年第4週 | 31.88 |
| 2011/12 | 2012年第5週 | 42.62 |
| 2012/13 | 2013年第4週 | 36.44 |
| 2013/14 | 2014年第5週 | 34.44 |
| 2014/15 | 2015年第4週 | 39.42 |
| 2015/16 | 2016年第6週 | 39.97 |
| 2016/17 | 2017年第4週 | 39.41 |
| 2017/18 | 2018年第5週 | 54.33 |
| 2018/19 | 2019年第4週 | 57.09 |
| 2019/20 | 2019年第52週 | 23.24 |
| 2020/21 | 2021年第5週 | 0.02 |
| 2021/22 | 2022年第28週 | 0.04 |
| 2022/23 | 2023年第6週 | 12.95 |
| 2023/24 | 2023年第49週 | 33.73 |
| 2024/25 | 2024年第52週 | 64.43 |
| 2025/26 | 2025年第47週 | 51.24(定点数変更後) |
| シーズン | 流行入りの週 | その週の値(人) | 第36週からの経過 |
|---|---|---|---|
| 2004/05 | 2005年第3週 | 2.81 | 19週 |
| 2005/06 | 2005年第50週 | 1.88 | 14週 |
| 2006/07 | 2007年第3週 | 1.07 | 19週 |
| 2007/08 | 2007年第47週 | 1.53 | 11週 |
| 2008/09 | 2008年第49週 | 1.63 | 13週 |
| 2009/10 | 2009年第36週 | 2.62 | 0週 |
| 2010/11 | 2010年第50週 | 1.41 | 14週 |
| 2011/12 | 2011年第49週 | 1.11 | 13週 |
| 2012/13 | 2012年第50週 | 1.17 | 14週 |
| 2013/14 | 2013年第51週 | 1.39 | 15週 |
| 2014/15 | 2014年第48週 | 1.90 | 12週 |
| 2015/16 | 2016年第1週 | 2.02 | 17週 |
| 2016/17 | 2016年第46週 | 1.38 | 10週 |
| 2017/18 | 2017年第47週 | 1.47 | 11週 |
| 2018/19 | 2018年第49週 | 1.70 | 13週 |
| 2019/20 | 2019年第45週 | 1.03 | 9週 |
| 2020/21 | 1.00超の週なし | なし | なし |
| 2021/22 | 1.00超の週なし | なし | なし |
| 2022/23 | 2022年第51週 | 1.24 | 15週 |
| 2023/24 | 2023年第36週 | 4.48 | 0週 |
| 2024/25 | 2024年第44週 | 1.04 | 8週 |
| 2025/26 | 2025年第39週 | 1.04 | 3週 |
| シーズン | 入院患者総数 | 累積推計受診者数 | インフルエンザ脳症 |
|---|---|---|---|
| 2018/19 | 20,719人 | 1,200.5万人(第36〜17週) | 掲載なし |
| 2019/20 | 13,011人 | 728.9万人(第36〜17週) | 掲載なし |
| 2020/21 | 131人(第17週まで) | 約1.4万人(第36〜17週) | 0例 |
| 2021/22 | 44人 | 約0.3万人(第36〜17週) | 1例 |
| 2023/24 | 19,389人 | 掲載なし | 掲載なし |
| 2024/25 | 29,157人 | 約1,037.5万人(第36〜14週) | 182例 |
| 2025/26 | 掲載なし | 推計の対象に含まれていません | 掲載なし |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
「ピーク」ではシーズンごとの最大の週とその値、「流行入り」では1.00を初めて超えた週とその値、「重症度の指標」では入院患者総数、累積推計受診者数、インフルエンザ脳症の届出数を並べています。資料に掲載がない項目は「掲載なし」と示し、推測で埋めていません。
2004/05シーズンの流行入りについては、シーズン一覧の公表資料に「2004年第3週」と記されています。ただし同シーズンの期間は2004年第36週から2005年第35週です。厚生労働省が2005年2月4日に公表した報道発表では、平成17年第3週(2005年1月17日から23日)の定点当たり報告数が2.81で流行の目安を上回ったと記されており、本記事はこの報道発表に合わせて2005年第3週として扱っています。
楓のまとめ|同じものさしの上で、両端に並んだ2つのシーズン

ここまで並べた図を通して見ると、流行の大きさと始まる時期が、シーズンごとにかなり違う形をとってきたことが分かります。3つの観察事実に整理してみます。
「インフルエンザの患者数はどう動いたか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、ピークの高さ、流行入りの時期、入院と受診の規模という3つの角度から数値を示してきました。どれか1つの指標だけでは輪郭が定まらないため、観察事実として並べて整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、インフルエンザの流行は、大きさも始まる時期も年ごとに違う形をとってきたことが分かります。2025年第15週に報告する医療機関の枠組みが変わったため、これ以降の数値は同じ軸の続きとしては読めません。週ごとの値は、厚生労働省が公表する定点当たり報告数の資料で確認できます。
よくある質問(FAQ)

インフルエンザのグラフを読むときは、ものさしの定義・シーズンの区切り・集計の枠組みの3点をセットで確認してください。同じ数字でも、この3点が変わると読み取れることが変わります。
Q1. 「定点当たり報告数」とは何ですか?
全国の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数を、報告する医療機関の数で割った値です。1か所あたり1週間に何人の報告があったかを表します。2025年第14週までは全国約5,000のインフルエンザ定点、2025年第15週以降は全国約3,000の急性呼吸器感染症定点が対象です。全国の患者数そのものではなく、流行の大きさをそろえて比べるための指標として公表されています。
Q2. 2025/26シーズンは2024/25シーズンより小さかったのですか?
同じ軸では比べられません。2025年第15週に報告する医療機関の枠組みが変わり、定点数が約5,000から約3,000へ変更されています。厚生労働省と国立健康危機管理研究機構はいずれも、データの解釈には留意が必要であるとしています。本記事でも2025/26シーズンは破線やハッチで区別し、ほかのシーズンと同じ軸での大小の比較は行っていません。
Q3. 最新の流行状況はどこで確認できますか?
厚生労働省の「インフルエンザに関する報道発表資料」で週ごとに公表されており、「季節性インフルエンザの定点当たり報告数」の資料に週別の数値がまとめられています。シーズン全体の総括は、国立健康危機管理研究機構が毎年公表するIASRの特集で確認できます。本記事はこれまでの推移を整理したもので、今後の見通しは扱っていません。
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