
災害の犠牲には、揺れや津波が直接の原因となる「直接死」と、その後の避難生活の中で亡くなる「災害関連死」という2つの区分があります。定義の枠組みと震災別の公式数値を、時期・年齢・地域の3つの角度から図解で整理していきます。
災害関連死とは、災害による負傷の悪化や避難生活等における身体的負担による疾病で死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき「災害が原因」と認められた死を指します。復興庁の公表(令和7年12月31日現在)によれば、東日本大震災の震災関連死は3,810人にのぼります。阪神・淡路大震災で初めて認められた概念であり、熊本地震以降は関連死が直接死を上回る構造が観察されています。
本記事では、復興庁・内閣府(防災担当)・消防庁・兵庫県・石川県などの一次情報をもとに、災害関連死の定義、震災別の認定数、東日本大震災の時期別推移、地域と年齢の構造、そして能登半島地震で続く認定の状況を、複数の図解で整理します。数値には公表主体と「いつ時点か」を必ず添えて観察していきます。
「災害関連死」とは、どのような死を指す言葉なのでしょうか。
災害弔慰金支給法に基づき「災害が原因」と認められた死。東日本大震災では3,810人が認定されています。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
災害関連死とは|災害弔慰金支給法に基づく認定の枠組み

定義は言葉だけで読むと抽象的になりがちです。「直接死」との対比を2カラムで並べると、どこからが災害関連死なのか、認定の主体はどこか、という枠組みの輪郭が一目で確認できます。
復興庁の公表資料は、東日本大震災の震災関連死を「東日本大震災による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの」と定義しています。実際には災害弔慰金が支給されていないものも含まれ、災害が原因で所在が不明なものは除かれます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
揺れや津波そのものによる「直接死」が警察の検視などで確認されるのに対し、災害関連死は市町村が設置する審査会等が個別の事案ごとに因果関係を判定します。「災害関連死」という概念は、1995年の阪神・淡路大震災で初めて認められました。兵庫県の記者発表(平成17年12月22日)では、震災と相当な因果関係があると災害弔慰金判定委員会等において認定された死者と説明されています。
震災別に見る災害関連死の認定数

震災ごとの関連死数は、公表主体も集計時点も異なります。横棒で並べる際は、確定値か変動値かのラベルをバーの脇に添えることで、単純な大小比較に見えすぎないよう配慮しています。
公式発表と報道を集計時点つきで並べると、阪神・淡路大震災919人(確定値・兵庫県)、東日本大震災3,810人(令和7年12月31日現在・復興庁)、熊本地震223人(熊本・大分・2026年4月報道時点)、能登半島地震501人(石川県内・令和8年6月30日現在)となります。熊本と能登は審査による追加認定が続いており、数値は今後も変動する可能性があります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
全死者に占める関連死の割合は、震災ごとに分母の集計枠が異なるため、各公式発表の枠内の割合のみを並べます。阪神・淡路大震災では県内死者6,402人のうち関連死は919人で14.35%でした。一方、熊本地震では熊本・大分の死者の約8割、能登半島地震では石川県内死者729人のうち501人と約7割を関連死が占めています。熊本地震以降、関連死が直接死を上回る構造が観察されています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
なお、東日本大震災については、行方不明者や直接死の集計主体が関連死の集計と別系統であるため、復興庁は全死者に占める関連死の割合を公表していません。本記事でもこの方針に合わせ、東日本大震災の割合は表示せず、公表されている実数のみを扱います。
東日本大震災|時期別に見る認定の推移

復興庁の別紙には、発災1週間以内から15年後まで19区分の累計が載っています。表のままでは動きが見えないため、階段状の累計カーブに直すと、立ち上がりの急さと、その後の長い尾の両方が確認できます。
復興庁の時期別集計によれば、東日本大震災の震災関連死は発災から1週間以内に472人、1か月以内に1,219人、1年以内に2,813人と積み上がりました。1年以内の2,813人は全体の73.8%にあたり、認定の大半が発災初期に集中しています。避難生活の初期に身体的負担が集中する構造が、累計カーブの急な立ち上がりとして表れています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
一方で、カーブの尾は長く続きます。10年以内で3,803人、12年以内で3,808人と、発災から10年を超えても認定は積み上がりました。直近2年間(令和6年・令和7年)の新規認定は0人ですが、令和8年2月公表の前回比+2人は、過去の時期への遡及認定によるものです。認定という制度上の手続きが、発災から長い時間を経てもなお動いている様子が読み取れます。
地域と年齢で見る震災関連死の構造

同じ3,810人でも、どの県で、どの年代で認定されたかを分けて見ると、数字の中身が変わって見えます。都道府県別の横棒と、震災間の年齢構成カードを並べて観察します。
都道府県別では、福島県が2,350人と全体の61.7%を占め、宮城県932人、岩手県472人が続きます。震災関連死は1都9県で認定されており、茨城県42人のほか、千葉県・神奈川県・長野県・山形県・埼玉県・東京都でも認定があります。福島県の突出は、原発事故に伴う長期避難地域の分布と重なっています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
年齢別では、東日本大震災の震災関連死3,810人のうち66歳以上が3,371人と88.5%を占めます。熊本地震では熊本県の調査(218人時点)で70歳代以上が約78%、能登半島地震では年齢が公表された136人のうち80代以上が約8割でした。集計の年齢区分は震災ごとに異なるものの、いずれの震災でも関連死の中心が高齢層にあることは共通して観察されます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
能登半島地震|いまも続く認定

能登半島地震の関連死は、審査会の答申と市町の正式認定を経て、いまも数値が動いています。だからこそ「いつ時点の数値か」を添えることが、この主題では特に大切になります。
石川県の被害報告(第230報・令和8年6月30日14時現在)によれば、県内の死者は729人、うち災害関連死は501人です。内閣府の令和7年版防災白書の時点(令和7年5月13日)では死者・行方不明者594人のうち関連死364人でしたから、発災から2年半が経過してもなお、審査による認定が積み上がり続けています。
防災白書によれば、能登半島地震の関連死は直接死と異なり広域で発生し、死亡した経緯が公表された158人の死因は循環器系疾患が約34%、呼吸器系疾患が約33%と、あわせて全体の約6割を占めました。直接死が輪島市・珠洲市に集中したのに対し、関連死は能登町・七尾市・穴水町など、より広い範囲の市町で認定されています。数値は審査の進行にあわせて更新されるため、最新の値は石川県の被害報告でご確認ください。
楓のまとめ|定義・時期・年齢の3点で見る災害関連死

ここまで並べた定義と震災別の数値を、3つの観察事実に整理します。いずれも公表主体と時点を添えた、図解から直接読み取れる事実のみを置いています。
「災害関連死とは何か」という問いに対して、本記事で並べた図解は、法律に基づく認定の枠組みと、震災ごとに異なる集計の姿を示してきました。確定値と変動値、集計枠の違いに注意しながら、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、災害関連死という概念は、揺れが収まった後の時間の中で災害の影響を数えるための、法律に基づく物差しとして機能していることがわかります。定義・時期・年齢のどの角度から見るかで、同じ震災の姿が異なって見えるという観察事実そのものが、この指標を読むうえでの出発点になります。
よくある質問(FAQ)

災害関連死の数値を読むときは、公表主体・集計時点・分母の集計枠の3点をセットで確認してください。同じ震災でも、この3点が変わるだけで数値の見え方が変わります。
Q1. 災害関連死は誰がどのように認定するのですか?
市町村が設置する審査会等が、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、災害と死亡との因果関係を個別の事案ごとに判定します。医師や弁護士などの専門家が、避難生活の状況や持病の経過などを踏まえて審査する仕組みです。認定されると災害弔慰金の支給対象となりますが、復興庁の定義では、実際には災害弔慰金が支給されていないものも震災関連死の集計に含まれます。
Q2. 震災ごとの関連死数を単純に比較してよいのですか?
比較には注意が必要です。公表主体(復興庁・兵庫県・熊本県・石川県など)と集計時点が震災ごとに異なるうえ、熊本地震と能登半島地震は審査が続く変動値です。また「全死者に占める割合」は分母の集計枠が異なるため、本記事では各公式発表の枠内の割合のみを示し、東日本大震災の割合は復興庁が公表していないことから表示していません。数値には必ず「いつ時点か」を添えて読むことをおすすめします。
Q3. 東日本大震災の関連死はいまも増えているのですか?
直近2年間(令和6年・令和7年)の新規認定は0人です。ただし、令和8年2月13日公表の3,810人は前回公表から2人増えており、これは過去の時期への遡及認定(1年以内+1人・12年以内+1人)によるものです。新たな死亡の発生ではなく、認定という手続きが過去の事案について続いている、という制度上の動きとして読み取れます。次回は令和8年12月31日時点の数値が公表される予定です。
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