
「上陸した台風は強くなっているの?」という問いには、上陸時の中心気圧を年ごとに並べてみるのが近道です。74年分の最低値を1本の折れ線にすると、低い年と高い年の散らばり方がそのまま見えてきます。
日本に上陸する台風の「強さ」を語るとき、よく使われるのが中心気圧です。中心気圧の数値が小さいほど、台風が周りの空気を強く吸い込む状態とされ、上陸時の勢力の目安になります。この記事では、気象庁の統計が始まった1951年から2025年まで、日本に上陸した台風の上陸時中心気圧を年ごとに並べて図解します。
気象庁の順位表によれば、上陸時の中心気圧が最も低かったのは1961年の第二室戸台風で925hPa、次いで1959年の伊勢湾台風が929hPaです。年別の最低値をたどると、低い年と高い年が交互に並び、特定の時期だけに集中する形は見られません。74年という長い物差しのうえで、上陸時の気圧がどう散らばってきたのかを観察していきます。
日本に上陸した台風の中心気圧は、74年でどう並ぶ?
最も低い上陸時気圧は1959年の920hPa。年ごとの最低値は上下に振れ、近年も過去も低い年が混在する。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
中心気圧とは何か|台風の「強さ」とのちがいを整理する

中心気圧の話に入る前に、気象庁の「強さ」が何で決まるかを押さえておきます。実は強さの階級は気圧ではなく風速で区切られていて、ここを取り違えると数値の読み方がずれてしまいます。
はじめに、台風の「強さ」と「中心気圧」の関係を整理します。気象庁が用いる台風の強さの階級は、中心気圧ではなく最大風速で区分されています。最大風速が33m/s以上44m/s未満を「強い」、44m/s以上54m/s未満を「非常に強い」、54m/s以上を「猛烈な」と呼びます。
一方、中心気圧は強さの階級そのものではなく、勢力を測るもう一つの目安です。気圧が低いほど風速も大きくなりやすい関係があるため、上陸時の中心気圧は台風の勢力を振り返るときによく参照されます。この記事では、年ごとに比べやすい「上陸時の中心気圧」を主役の指標として並べていきます。
上陸時の中心気圧、74年の推移|最も低いのは1959年の920hPa

ここが今回の主役の図解です。74年分の上陸時最低気圧を1本の折れ線にしました。トレンド線はあえて引いていません。生の年別の点と、上陸がなかった年の空白だけを見てください。
ここからは、日本に上陸した台風の上陸時中心気圧を、1951年から2025年まで年ごとに並べた折れ線で見ていきます。各年について、その年に最初に上陸した台風の上陸時気圧の最低値をとっています。上陸が一度もなかった年は、線を繋がずに空けています。
折れ線をたどると、最も低い値は1959年の920hPaでした。続いて1961年の925hPa、1953年と1993年の930hPaが低い側に並びます。一方で、2010年や2025年のように994hPa前後と高めの年もあり、年ごとの最低値は大きく上下しています。
全体を見渡すと、920hPaから930hPa台の低い上陸が、1950年代から2020年代まで幅広い年代に散らばっています。1951年から1987年の平均は約956hPa、1988年から2025年の平均は約959hPaで、前半と後半で中央値はどちらも955hPaでした。年別の最低気圧という指標では、近年だけが特に低い、あるいは高いという一方向の動きは、この並びからは読み取れません。
上陸時の気圧が低い台風トップ10|第二室戸・伊勢湾・1993年台風13号

折れ線で見えた低い年を、気象庁の順位表で確かめます。名前で知られる台風が、上陸時の気圧という物差しでどこに並ぶのかを横棒で見てみます。
次に、上陸時の中心気圧が低い台風を、気象庁の順位表で確認します。第1位は1961年の第二室戸台風で925hPa、第2位は1959年の伊勢湾台風で929hPa、第3位は1993年の台風13号で930hPaです。いずれも読者が名前で見聞きしたことのある台風が並びます。
第4位は1951年の台風15号で935hPa、第5位は940hPaが6つ並びます。940hPaの6件は1955年から2022年まで年代がばらけており、最も新しいのは2022年の台風14号です。上陸時の気圧が低い記録は、特定の年代に偏らず、長い期間にわたって点在しています。
上陸した台風の数の推移|最多は2004年の10件、上陸ゼロも5回

気圧の低さと合わせて、上陸の回数も見ておきます。気圧の図解と並べると、「強さ」と「頻度」は別々に動いていることが分かります。
上陸時の気圧と合わせて、日本に上陸した台風の数も年ごとに見ておきます。各年の初回上陸の件数を数えると、最も多いのは2004年の10件でした。次いで1990年と1993年、2016年の6件が続きます。
一方で、1984年・1986年・2000年・2008年・2020年の5回は、日本への上陸が一度もありませんでした。上陸の数は年ごとに大きく変動し、多い年と少ない年、ゼロの年が交互に現れます。上陸の数についても、年を追って一方向に増える、あるいは減るという形は、この棒グラフからは見えてきません。
低い気圧で上陸した地点の分布|鹿児島・四国南部・紀伊半島に集まる

低い気圧の上陸が、どこに集まっているかも見ておきます。上陸地点という観察事実の分布で、被害の大きさや備えの優劣を示すものではない点に注意してください。
低い気圧で上陸した台風が、どの地域に上陸したのかも見ておきます。上陸時940hPa以下だった12件の上陸地点を都道府県別に数えると、鹿児島が7件と最も多く、和歌山が2件、高知・三重・長崎が各1件でした。
分布を地図で見ると、低い気圧での上陸は鹿児島を中心とする九州南部、高知などの四国南部、和歌山や三重といった紀伊半島など、西日本の太平洋側に多く集まっています。これは上陸地点という観察された事実の分布で、地域ごとの備えや被害の大きさを表すものではありません。
楓のまとめ|上陸時の中心気圧は、低い年と高い年が74年で入り混じる

ここまでの図解を一通り並べると、上陸時の気圧の散らばり方が見えてきます。数値が示していることを、3つの観察事実に整理してみます。
ここまで、上陸時の中心気圧の年別推移、低い気圧の台風の順位、上陸の数、上陸地点の分布を並べてきました。それぞれの図解が示した内容を、数値が語る範囲で観察事実として整理しておきます。
4つの図解を重ねて読むと、上陸時の中心気圧は、低い年と高い年が74年を通じて入り混じり、特定の時期に偏らずに散らばっていることがわかります。上陸の数も同様に年ごとに大きく変わります。「上陸した台風の中心気圧」をどの年代で切り取るかによって見える景色は変わり、その散らばり方そのものが、この74年の並びから読み取れる事実です。
よくある質問(FAQ)

台風の中心気圧のグラフを読むときは、強さの定義・記録の年代・上陸の数の3点をセットで確認してください。同じ気圧の数字でも、この3点で読み取れる内容が変わります。
Q1. 中心気圧が低いほど「強い台風」と言ってよいのですか?
中心気圧の低さは勢力の目安になりますが、気象庁の正式な「強さ」の階級は中心気圧ではなく最大風速で区分されています。最大風速が33m/s以上44m/s未満を「強い」、44m/s以上54m/s未満を「非常に強い」、54m/s以上を「猛烈な」と呼びます。気圧が低いほど風速も大きくなりやすい関係はありますが、強さの呼び名そのものは風速で決まる点に注意してください。
Q2. 上陸時の中心気圧の記録は、いつのものが残っていますか?
気象庁の順位表では、上陸時の中心気圧が最も低かったのは1961年の第二室戸台風で925hPa、次いで1959年の伊勢湾台風が929hPa、1993年の台風13号が930hPaです。統計開始前の参考記録として、1934年の室戸台風(室戸岬で911.6hPa)や1945年の枕崎台風(枕崎で916.1hPa)の観測値も知られていますが、これらは統計期間の外として区別して扱われます。
Q3. 数値が一部、ニュースや他の資料と違うのはなぜですか?
台風の中心気圧は、上陸後の事後解析によって速報値から確定値へ更新されることがあります。また、上陸時の値は、どの上陸地点を基準にとるかで資料ごとに差が出ることがあります。たとえば伊勢湾台風は、気象庁の順位表では上陸時929hPaですが、潮岬西方の上陸時を920hPaと記録する資料もあります。この記事では、年別の折れ線は上陸・通過データベースの値、順位は気象庁の順位表の確定値という出典を分けて示しています。
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