
市町ごとの治安を見るときは、件数の多い順と、人口あたりの発生率の高い順を分けて見るのが近道です。地図とランキングを並べると、同じ県の中でも地域によって見え方が変わることがはっきりします。
栃木県の刑法犯認知件数は、2025年(令和7年)の確定値で12,780件でした。前年の12,163件から617件、率にして5.1%増えています。県全体を人口千人あたりに直すと約6.9件ですが、この数字は市町ごとに大きく開きがあり、どの指標で見るかによって上位の顔ぶれが変わります。
全国で見ると、栃木県は人口あたりの発生率が上位圏にある県です。全国では何位かは『都道府県 犯罪率ランキング【2026年】』で確認できます。本記事の県全体の発生率6.85(人口千人あたり)は、同記事の栃木県の値と同じ基準で計算しています。
本記事では、栃木県警察が公表した市町村別の認知件数(令和7年確定値)と、令和7年国勢調査の速報人口を組み合わせて、県内25市町(14市11町)の犯罪件数と人口あたりの発生率を地図とランキングで整理します。件数で見るか発生率で見るかで像がどう変わるかを、中立に観察していきます。
栃木県の犯罪は、市町ごとにどれくらい違う?
件数の1位は宇都宮市。人口あたりの発生率では那須町が最も高く、益子町が最も低い。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
栃木県全体の犯罪はどう動いてきたか

まず県全体の動きから見ていきます。市町別の数字も、県全体がどの局面にあるかを知ってから見ると読みやすくなります。
栃木県の刑法犯認知件数は、令和3年の9,027件、令和4年の8,883件のあと、令和5年に11,932件へ増え、令和6年12,163件、令和7年12,780件と推移しました。令和4年を直近の底に3年連続で増え、令和7年は直近5年間で最も多い件数です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
内訳では窃盗犯が9,819件と、県全体の約77%を占めています。認知件数の増減は窃盗犯の動向に左右されやすい構造です。県全体の局面を押さえたうえで、ここからは市町ごとの数字を、件数と発生率という2つの指標で順番に見ていきます。
認知件数が多いのはどの市町か

ここからが市町別の話です。最初は単純に、件数そのものが多いのはどこか、を見ていきます。件数は人口の多さがそのまま反映されやすい指標です。
2025年の認知件数を市町別に見ると、最も多いのは宇都宮市の3,308件でした。次いで小山市1,600件、足利市1,280件、栃木市931件、那須塩原市806件と続きます。件数の上位は、県都の宇都宮市と県南の主要市を中心に、人口規模の大きい市で占められています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
件数の偏りは大きく、宇都宮市だけで市町帰属分12,731件の約26%を占めます。上位5市まで広げると7,925件で、全体の約62%がこの5市に集中している計算です。なお、発生地が特定できない「不明(発生地不明及び県外発生等)」の49件は、市町別の集計と本記事の発生率の算出には含めていません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が高いのはどの市町か

件数を人口で割った発生率に直すと、街の大きさに関係なく比べられます。ここで上位の顔ぶれが大きく入れ替わるのが、この記事の見どころです。
人口千人あたりの発生率で並べ替えると、最も高いのは那須町の14.59でした。小山市9.67、足利市9.42、那珂川町8.53、上三川町7.19と続きます。那須町は県平均(6.85)の2倍を超え、2位の小山市とも大きな開きがある単独の高さです。
地図にすると、発生率の地域差が面で見えてきます。色が濃いのは県南の小山市・足利市と、県北の那須町・那須塩原市・那珂川町で、県東部の芳賀地域は色が薄くなっています。南北の両端で高く、中東部で低いという分布を、市町名のランキングと地図の両方で確認できます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
「件数」と「発生率」で顔ぶれが入れ替わる

この記事でいちばん見てほしいのがここです。件数の順位と発生率の順位を並べると、同じ県の中でも上位の顔ぶれが入れ替わることが分かります。
件数1位の宇都宮市は、発生率では6.46で25市町中9位にあたり、県平均を下回ります。逆に発生率1位の那須町は、件数では324件で12位です。一方で小山市は件数2位かつ発生率2位、足利市は件数3位かつ発生率3位と、両方の指標で上位に入ります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
純粋なすれ違いだけではないのが栃木の特徴です。件数4位の栃木市は発生率では11位に下がり、発生率4位の那珂川町は件数では20位(114件)です。規模と密度のどちらで見るかで順位が動く市町と、小山市・足利市のように両方で上位に来る市が混ざった、混合型の入れ替わりになっています。
ここまでは上位を中心に見てきましたが、お住まいの市町が県内で何位なのかは、次の一覧で確認できます。全25市町を「発生率の高い順」と「件数の多い順」の2つのタブに分けて収録しました。発生率は、県警の確定件数を令和7年国勢調査の速報人口で割って編集部が再計算した値(人口千人あたり・小数第2位)です。
栃木県 全25市町 発生率ランキング(人口千人あたり・2025年)
| 順位 | 市町 | 発生率(千対) | 件数 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 那須町 | 14.59 | 324件 | +61 |
| 2 | 小山市 | 9.67 | 1,600件 | +369 |
| 3 | 足利市 | 9.42 | 1,280件 | +380 |
| 4 | 那珂川町 | 8.53 | 114件 | -3 |
| 5 | 上三川町 | 7.19 | 214件 | +23 |
| 6 | 那須塩原市 | 7.16 | 806件 | +10 |
| 7 | 壬生町 | 6.65 | 253件 | -55 |
| 8 | 日光市 | 6.57 | 471件 | +155 |
| 9 | 宇都宮市 | 6.46 | 3,308件 | -76 |
| 10 | 真岡市 | 6.36 | 482件 | +67 |
| 11 | 栃木市 | 6.28 | 931件 | -125 |
| 12 | 佐野市 | 6.25 | 686件 | -41 |
| 13 | 下野市 | 5.95 | 351件 | -39 |
| 14 | 大田原市 | 5.93 | 406件 | +13 |
| 15 | さくら市 | 5.91 | 261件 | +1 |
| 16 | 野木町 | 5.54 | 136件 | +26 |
| 17 | 那須烏山市 | 5.41 | 120件 | -87 |
| 18 | 矢板市 | 5.16 | 149件 | -11 |
| 19 | 鹿沼市 | 4.83 | 432件 | -16 |
| 20 | 塩谷町 | 4.72 | 43件 | +20 |
| 21 | 高根沢町 | 4.60 | 131件 | -27 |
| 22 | 市貝町 | 4.56 | 48件 | -9 |
| 23 | 芳賀町 | 4.46 | 66件 | +2 |
| 24 | 茂木町 | 4.18 | 44件 | -13 |
| 25 | 益子町 | 3.73 | 75件 | -14 |
栃木県 全25市町 認知件数ランキング(2025年・確定値)
| 順位 | 市町 | 件数 | 発生率(千対) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 宇都宮市 | 3,308件 | 率6.46 | -76 |
| 2 | 小山市 | 1,600件 | 率9.67 | +369 |
| 3 | 足利市 | 1,280件 | 率9.42 | +380 |
| 4 | 栃木市 | 931件 | 率6.28 | -125 |
| 5 | 那須塩原市 | 806件 | 率7.16 | +10 |
| 6 | 佐野市 | 686件 | 率6.25 | -41 |
| 7 | 真岡市 | 482件 | 率6.36 | +67 |
| 8 | 日光市 | 471件 | 率6.57 | +155 |
| 9 | 鹿沼市 | 432件 | 率4.83 | -16 |
| 10 | 大田原市 | 406件 | 率5.93 | +13 |
| 11 | 下野市 | 351件 | 率5.95 | -39 |
| 12 | 那須町 | 324件 | 率14.59 | +61 |
| 13 | さくら市 | 261件 | 率5.91 | +1 |
| 14 | 壬生町 | 253件 | 率6.65 | -55 |
| 15 | 上三川町 | 214件 | 率7.19 | +23 |
| 16 | 矢板市 | 149件 | 率5.16 | -11 |
| 17 | 野木町 | 136件 | 率5.54 | +26 |
| 18 | 高根沢町 | 131件 | 率4.60 | -27 |
| 19 | 那須烏山市 | 120件 | 率5.41 | -87 |
| 20 | 那珂川町 | 114件 | 率8.53 | -3 |
| 21 | 益子町 | 75件 | 率3.73 | -14 |
| 22 | 芳賀町 | 66件 | 率4.46 | +2 |
| 23 | 市貝町 | 48件 | 率4.56 | -9 |
| 24 | 茂木町 | 44件 | 率4.18 | -13 |
| 25 | 塩谷町 | 43件 | 率4.72 | +20 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が低いのはどの市町か

発生率が低い側も見ておきます。低い側の顔ぶれには、県内の地理的なまとまりがはっきり表れています。
発生率が最も低いのは益子町の3.73で、茂木町4.18、芳賀町4.46、市貝町4.56、高根沢町4.60と続きます。下位1〜4位はいずれも県東部の芳賀郡の町で、低い側が地理的にまとまっています。塩谷町4.72、鹿沼市4.83、矢板市5.16なども県平均を大きく下回る水準です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率を読むときは、分母が定住人口である点に注意が要ります。来訪者の多い地域では、来訪者に関わる事案も定住人口で割るため、率が高く出やすい計算構造があります。率1位の那須町は那須温泉郷などを抱える来訪者の多い町で、この構造が関わりうる例です。原因を特定できる公表データはないため、本記事では計算の仕組みと観察できる事実のみを示しています。
楓のまとめ|同じ県でも、見る指標で治安の地図は変わる

最後に、この記事で見てきた3つの観察を整理します。どれも「どの指標で見るか」を意識すると、すっと読める内容です。
1つめは県全体の局面です。認知件数は令和4年を底に3年連続で増え、令和7年は直近5年間で最多の12,780件でした。2つめは規模と密度の違いです。件数は宇都宮市と県南の主要市に集まる一方、発生率では那須町が単独で高く、件数1位の宇都宮市は県平均を下回ります。
3つめは地理的な分布です。発生率の高い側は県南の小山市・足利市と県北の那須地域に分かれ、低い側は芳賀郡を中心とした県東部にまとまります。件数で見るか発生率で見るかで、同じ県でも治安の地図は変わります。規模と密度の両方を並べて見ることが、データを正確に読む手がかりになります。
よくある質問(FAQ)

最後に、この記事のデータについてよくいただく質問をまとめました。数字の性質を知っておくと、他のサイトの数字と見比べるときにも役立ちます。
Q1. この件数は確定値ですか?
刑法犯認知件数は令和7年(2025年)の年間確定値で、栃木県警察が2026年2月に公表したものです。ただし、犯罪率の計算に使う人口は令和7年国勢調査の速報値で、確報は令和8年9月に公表される予定です。件数は確定値、率の分母となる人口は速報値、という組み合わせで算出しています。
Q2. 「件数」と「発生率」はどう違いますか?
件数は、その市町で1年間に認知された刑法犯の総数です。発生率(人口千対)は、その件数を人口で割って1,000を掛けた値で、人口規模の影響を取り除いて比べられます。人口の多い市は件数が多く出やすいため、街の大きさに関係なく比べたいときは発生率が使われます。
Q3. 警察署の統計と数字が合わないのはなぜですか?
栃木県警察は市町村別と警察署別の2種類の認知件数を公表しており、市町村別のPDFには警察署別認知件数とは一致しない旨の注記があります。警察署の管轄区域が市町の境界と一致しないためです。本記事は発生地ベースの市町村別の値のみを使っています。他のサイトと数字が違う場合は、どちらの表を参照しているかをご確認ください。
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