
「誰が貸しているのか」という問いには、9つの保有主体を1本ずつ横棒で並べるのが近道です。割合の大小と順番が一目でそろい、推移の折れ線と組み合わせると、構成が動いていること自体まで観察できます。
財務省が公表する「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によれば、いわゆる「国の借金」は2025年(令和7年)12月末現在で1,342兆1,720億円でした。では、この借金は誰が貸しているのでしょうか。財務省「国債等の保有者別内訳」(2025年12月末・速報)によれば、国債及び国庫短期証券(T-Bill)合計1,166兆6,679億円のうち、最大の保有者は日本銀行の43.1%(503兆62億円)で、海外は12.8%、家計の直接保有は1.6%という構成です。
本記事では、財務省「国債等の保有者別内訳」「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」、日本銀行「資金循環統計 参考図表」の一次データを、9主体の内訳バー・15年推移の折れ線・国債とT-Billの保有構造対比などの図解で整理します。保有割合の推移と証券の種類による構造の違いを、観察事実として一望していきます。
国の借金1,342兆円、誰が貸しているのか?
国債及び国庫短期証券1,166.7兆円の最大の保有者は日本銀行で、全体の43.1%を占めます。海外は12.8%、家計の直接保有は1.6%です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
国債等1,166.7兆円、最大の保有者は日本銀行の43.1%

9主体の内訳は、円グラフより降順の横棒で見ると、1位と2位以下の差の大きさがバーの長さでそのまま比べられます。最大の1本だけ色を変えると、視線が迷いません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年(令和7年)12月末(速報)の国債及び国庫短期証券(T-Bill)の合計は1,166兆6,679億円です。保有者別に見ると、最大は日本銀行の43.1%(503兆62億円)で、銀行等16.3%(190兆1,495億円)、生損保等14.0%(163兆7,687億円)、海外12.8%(148兆9,610億円)が続きます。国債等のおよそ4割強を、日本銀行が単独で保有しているのが、いまの保有構造の出発点です。
残りは公的年金6.1%(71兆1,737億円)、年金基金2.6%、一般政府(除く公的年金)2.5%、家計1.6%(18兆3,794億円)、その他1.0%です。海外12.8%を除いた国内保有の合計は87.2%になります(筆者試算:100−12.8)。なお、この統計の「銀行等」にはゆうちょ銀行・証券投資信託・証券会社が、「生損保等」にはかんぽ生命が含まれます。
「国の借金」1,342兆円と保有者統計の範囲は異なる

統計の範囲整理は、積み上げの帯を1本描いて、対象範囲の違いを注記枠で添えると、どこまでが対象なのかが図で確認できます。数字の前に範囲をそろえるのが読み違いを防ぐ近道です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
報道などで使われる「国の借金」は、財務省が四半期ごとに公表する「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」の合計を指すことが一般的です。2025年12月末現在の内訳は、内国債1,197兆6,396億円(うち普通国債1,094兆4,874億円・財投債91兆7,859億円)、借入金44兆1,328億円、政府短期証券100兆3,996億円で、合計1,342兆1,720億円でした(令和8年2月10日公表)。
一方、前の見出しで見た保有者別内訳の対象は「国債及び国庫短期証券」1,166.7兆円で、日本銀行「資金循環統計」(時価等ベース)にもとづく統計です。「国の借金」1,342兆円と保有者統計の1,166.7兆円は、対象範囲も評価方法も異なる別の統計で、借入金の貸し手はこの保有者統計には含まれません。この関係を最初に整理しておくと、以降の割合の読み違いを避けられます。
日銀の保有割合は13.1%から47.9%まで上がり、低下に転じた

15年の推移は3本の折れ線で重ねると、上がって下がる線・ゆっくり上がる線・低いまま推移する線の形の違いが見えてきます。ピークの位置に印を置くと転換点が確認しやすくなります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本銀行「資金循環統計 参考図表」によれば、国債等に占める日本銀行の保有割合は、2011年3月末の8.9%から2013年3月末の13.1%を経て上昇を続け、2019年3月末には43.2%に達しました。その後も緩やかに上昇し、2023年12月末の47.9%をピークに低下へ転じ、2026年3月末は42.2%となっています。
時期の事実として、2013年4月に量的・質的金融緩和が導入され、2024年3月に解除、2024年8月以降は国債買入れの減額が進められています。同じ期間、家計の保有割合は2011年3月末の3.4%から1.0%前後まで低下したのち、足元では1.7%(2026年3月末)まで上昇しています。海外は7.1%(2011年3月末)から13.7%(2026年3月末)へと水準を切り上げました。
海外の保有割合は8.5%から13.7%に上昇した

保有額の棒と割合の折れ線を二軸で重ねると、金額と構成比が同じ向きに動いているか、別の動きをしているかが1枚で確認できます。始点と終点にだけ数字を置くと変化幅が読み取りやすくなります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
財務省「海外の国債等保有額、保有割合の推移」によれば、海外の保有額は2013年3月末の82.4兆円(割合8.5%)から増加傾向をたどり、2023年3月末に167.5兆円(13.6%)に達しました。2025年3月末は140.6兆円(11.8%)まで減ったのち、2026年3月末は157.8兆円(13.7%)となっています。
2025年12月末(速報)の内訳統計では海外の保有割合は12.8%で、国内保有の合計は87.2%です(筆者試算:100−12.8)。海外の保有割合は1割強まで上昇し、国内保有は9割を下回る水準で推移しているのが直近の構成です。水準自体は依然として国内中心ですが、構成は固定ではなく動いていることが推移から確認できます。
国庫短期証券に限ると海外が56.3%を保有している

同じ「貸し手」でも証券の種類で構造が違うときは、100%積み上げを左右に2本並べるのが有効です。同じ色の帯の位置と長さの違いが、そのまま構造の違いとして見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国債等の内訳を証券の種類で分けると、保有構造は大きく異なります。満期1年以下の割引債である国庫短期証券(T-Bill)は合計140兆8,992億円で、海外が79兆3,704億円・56.3%と過半を保有しています。銀行等24.2%、一般政府(除く公的年金)18.2%、生損保等1.3%が続きます。
一方、国債(財投債含む)1,025兆7,687億円では、日本銀行49.0%が最大で、生損保等15.8%、銀行等15.2%と続き、海外は6.8%にとどまります。同じ「国債等」でも、満期の長い国債は日本銀行と国内金融機関が、満期1年以下の国庫短期証券は海外が中心という、対照的な保有構造になっています。
家計の直接保有は1.6%、預金や保険を通じた間接的な関わり

関わりの構造は、数字の表よりも矢印の構造図で描くと、お金の通り道が視覚的にたどれます。割合の数字は同じ統計の確定値だけを使い、矢印には評価を持たせないようにしています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
家計(個人)が国債等を直接保有する割合は1.6%(18兆3,794億円)で、個人向け国債などによる保有がこれにあたります。数字のうえでは小さな割合ですが、統計の定義を整理すると、家計と国債の関わりはこの1.6%だけではありません。
銀行等16.3%の保有の原資には家計の預金が、生損保等14.0%には保険料が、公的年金6.1%・年金基金2.6%には保険料や掛金が含まれます。家計は直接には1.6%の保有ですが、銀行等・生損保等・年金の保有の背後には預金・保険・年金を通じた家計の資金があるという構造です。これは保有主体の定義に基づく整理であり、評価ではありません。
楓のまとめ|貸し手の中心は日本銀行と国内の金融機関

ここまで内訳・範囲・推移・対比を一通り並べると、貸し手の構成が観察事実として整理できます。3つの観察事実にまとめてみます。
「国の借金は誰が貸しているのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、保有者の構成・15年の推移・証券の種類による違いを観察事実として示してきました。数字に評価を加えるのではなく、見え方の違いを3点に整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、国債等の貸し手は日本銀行と国内の金融機関が中心である一方、保有構成は固定ではなく、日銀の保有割合の低下・海外の上昇・家計の直接保有の持ち直しが同時に進んでいることが確認できます。「誰が貸しているのか」への答えは、どの統計を、どの基準時点で、どの証券の種類について見ているかで変わります。本記事の図解は、その前提を1枚ずつ確認できるように並べたものです。
よくある質問(FAQ)

保有者のグラフを読むときは、対象の統計・基準時点・証券の種類の3点をセットで確認してください。同じ「国の借金」でも、この3点が変わると数字が変わります。
Q1. 「国の借金」とは何を指しますか?
財務省が四半期ごとに公表する「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」のうち、内国債・借入金・政府短期証券の合計を指して報道等で使われることが一般的です。2025年(令和7年)12月末現在で1,342兆1,720億円でした(令和8年2月10日公表)。一方、保有者別内訳の対象は「国債及び国庫短期証券」1,166.7兆円で、範囲も評価方法も異なる別の統計です。
Q2. 海外にはどのくらい借りているのですか?
国債及び国庫短期証券に占める海外の保有割合は12.8%(149兆円・2025年12月末速報)です。ただし証券の種類によって大きく異なり、満期1年以下の国庫短期証券に限ると56.3%、国債(財投債含む)に限ると6.8%です。推移で見ると、海外の保有割合は2013年3月末の8.5%から2026年3月末の13.7%へ上昇しています。
Q3. 家計(個人)はどのくらい保有していますか?
直接の保有は1.6%(18兆3,794億円・2025年12月末速報)で、個人向け国債などによる保有がこれにあたります。なお、銀行等や生損保等、公的年金・年金基金の保有の原資には家計の預金・保険料・掛金が含まれるため、統計の定義のうえでは、家計は直接保有以外の経路でも国債と関わっています。
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