
「消防団員は減っている」とよく言われますが、どれだけ減ったのかを一枚の折れ線にすると、70年余りの変化の大きさと、その中で増えている部分の両方が見えてきます。数字を一つずつ並べて観察していきます。
総務省消防庁の「消防団の組織概要等に関する調査」によれば、令和7年(2025年)4月1日現在の消防団員数は73万2,223人で、前年から1万4,458人(1.9%)減少しました。統計をさかのぼれる昭和29年(1954年)の194万4,233人と比べると、70年余りで6割以上減少した計算です。一方で、女性団員・学生団員・機能別団員は同じ調査の中で増加を続けており、減少と増加が同時に進んでいます。
本記事では、総務省消防庁「消防団の組織概要等に関する調査(令和7年度)の結果」を一次情報として、70年余りの長期推移、入団と退団のバランス、年齢構成の変化、増える3つの類型、都道府県別の分布、処遇改善の進み方を、折れ線・帯グラフ・タイルマップなどの図解で整理します。原因の断定や将来の予測は行わず、観察できる事実を並べていきます。
消防団員はどれだけ減ったのか?
70年余りで6割超の減少。ただし女性・学生・機能別は増加が続く。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
消防団員数の長期推移|1954年の194万人から2025年の73万人へ

70年余りの推移は、折れ線1本にすると山の高さと下りの長さが一目でわかります。1955年と1990年の2つの節目に印を付けて、どこで水準が変わったのかを確認してみます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総務省消防庁の調査によれば、消防団員数は昭和29年(1954年)の194万4,233人が統計上の最多です。消防庁の資料には「昭和30年に200万人を割り込む」との注記があり、1950年代半ばが最初の大きな節目でした。その後は昭和40年(1965年)に133万995人、昭和50年(1975年)に111万8,036人と、減少が続いていきます。
「平成2年に100万人を割り込む」というもう一つの節目を経て、平成2年(1990年)は99万6,743人となりました。その後も平成17年(2005年)90万8,043人、平成27年(2015年)85万9,995人と減り続け、令和7年(2025年)は73万2,223人です。昭和29年からの減少率は約62.3%(筆者試算)で、70年余りで団員数はピーク時の4割弱の水準まで縮小しました。
直近の1年だけを取り出しても、減少は続いています。令和7年の1年間の減少▲14,458人は、1日あたり約40人(14,458÷365≒39.6人)が消防団から減っている計算です(筆者試算)。なお、条例で定める定数86万2,625人に対する実員の充足率は84.9%(筆者試算)で、定数と実員の差は13万人を超えています。
入団と退団のバランス|11年連続で退団が入団を上回る

全体の増減は、入ってくる人と出ていく人の差でできています。入団と退団の2本の線を並べると、差がどの年も同じ向きに開いていることが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
入団者数と退団者数を並べると、平成27年度(2015年度)から令和7年度(2025年度)までの11年すべてで、退団者数が入団者数を上回っています。令和7年度は入団3万7,757人に対して退団5万2,215人で、差は1万4,458人でした。この差がそのまま、全体の減少幅として毎年積み上がる構造です。
内訳の動きには変化の兆しもあります。入団者数は令和4年度の3万3,445人を底に、令和5年度3万6,395人、令和6年度4万82人と2年連続で持ち直し、令和7年度は3万7,757人でした。退団者数については、消防庁の調査結果に「退団者数は2年連続の減少」と記載されています。差は縮まりつつありますが、退団超過そのものは11年間変わっていません。
年齢構成の変遷|最も厚い層は20〜30代から40代へ

合計が同じ100%でも、中身の配分は年代ごとに大きく入れ替わります。6本の帯を並べると、厚い層がどこからどこへ移ったのかを色の面積で追うことができます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
年齢構成の変化も大きな特徴です。昭和40年(1965年)は20歳代が42.7%、30歳代が45.0%で、30代以下が約9割を占めていました。令和7年(2025年)は40歳代が34.8%で最も厚く、50歳代が21.5%、60歳以上が10.2%です。60年で、最も厚い年齢層は20〜30代から40代へと移りました。
消防庁の調査結果には、30代以下は「4割弱程度にとどまる」との記載があります。令和7年の30代以下の合計は33.5%で、19歳以下0.4%、20歳代9.0%、30歳代24.1%という内訳です。また60歳以上10.2%のうち、65歳以上は4.5%を占めています。なお昭和40年・昭和50年には「60歳以上」の区分の統計が存在しないため、図解の該当欄は脚注のとおり扱っています。
増える3つの類型|女性・学生・機能別団員

全体が減る中でも、内訳のすべてが減っているわけではありません。女性・学生・機能別の3本の折れ線は、いずれも右肩上がりを続けています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
全体の減少とは反対に、増加を続けている類型が3つあります。女性団員は平成27年(2015年)の2万2,747人から令和7年(2025年)の2万9,478人へ、学生団員は3,017人から7,568人へ、機能別団員は1万4,196人から4万195人へと増えました。特に機能別団員は前年から2,615人(7.0%)増えており、全体が減る中で、3つの類型はいずれも増加を続けているのがこの10年余りの構図です。
制度・体制の広がりも確認できます。女性団員がいる消防団の割合は平成27年の64.3%から令和7年には81.8%へ上昇し、機能別団員制度を導入する市区町村は803団体(前年から53団体増)、学生消防団活動認証制度の導入は417市区町村です。なお、女性・学生・機能別は重複して数えられる場合があるため、3つの数字を単純に合算することはできません。
都道府県別の分布|人口10万人あたりで見る地域差

全国一枚の数字だけでは、地域ごとの姿は見えません。人口10万人あたりに直してタイルマップに並べると、濃淡の分布がはっきりしてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
都道府県別の姿を、人口10万人あたりの団員数で見ます。全国平均は589人(筆者試算・住民基本台帳人口による)です。最も多いのは佐賀県の1,981人で、山形県1,974人、山梨県1,599人が続きます。反対に少ないのは大阪府と沖縄県の112人、東京都の152人、埼玉県の177人で、人口あたりで見ると最上位と最下位の間に約17.7倍の開きがあります。
実員数そのもので最も多いのは兵庫県の3万7,294人、最も少ないのは沖縄県の1,664人です。前年比では47都道府県すべてが減少しており、減少幅が最も小さいのは沖縄県と神奈川県の11人でした。タイルマップの濃淡は、人口規模の大きい都市圏で人口あたりの団員数が薄く、東北・山陰・九州の一部で厚いという分布を示しています。
下の一覧表では、47都道府県を6つの地域ブロックに分けて、人口10万人あたりの全国順位・実員数・前年差を確認できます。タブを切り替えると、お住まいの地域のブロックを表示できます。順位は人口10万人あたりの団員数が多い順です。
| 全国順位 | 都道府県 | 10万人あたり(人) | 実員数(人) | 前年差(人) |
|---|---|---|---|---|
| 39位 | 北海道 | 445 | 22,448 | ▲249 |
| 14位 | 青森県 | 1,334 | 15,816 | ▲404 |
| 7位 | 岩手県 | 1,551 | 17,895 | ▲477 |
| 27位 | 宮城県 | 736 | 16,373 | ▲467 |
| 8位 | 秋田県 | 1,491 | 13,536 | ▲505 |
| 2位 | 山形県 | 1,974 | 19,983 | ▲696 |
| 6位 | 福島県 | 1,564 | 27,707 | ▲756 |
| 全国順位 | 都道府県 | 10万人あたり(人) | 実員数(人) | 前年差(人) |
|---|---|---|---|---|
| 31位 | 茨城県 | 676 | 19,245 | ▲511 |
| 32位 | 栃木県 | 675 | 12,861 | ▲355 |
| 35位 | 群馬県 | 544 | 10,374 | ▲256 |
| 44位 | 埼玉県 | 177 | 13,042 | ▲84 |
| 41位 | 千葉県 | 352 | 22,230 | ▲371 |
| 45位 | 東京都 | 152 | 21,288 | ▲177 |
| 43位 | 神奈川県 | 190 | 17,522 | ▲11 |
| 全国順位 | 都道府県 | 10万人あたり(人) | 実員数(人) | 前年差(人) |
|---|---|---|---|---|
| 12位 | 新潟県 | 1,395 | 29,448 | ▲954 |
| 23位 | 富山県 | 819 | 8,264 | ▲106 |
| 38位 | 石川県 | 455 | 4,995 | ▲63 |
| 25位 | 福井県 | 778 | 5,806 | ▲20 |
| 3位 | 山梨県 | 1,599 | 12,806 | ▲254 |
| 11位 | 長野県 | 1,397 | 28,116 | ▲601 |
| 20位 | 岐阜県 | 1,006 | 19,630 | ▲369 |
| 37位 | 静岡県 | 456 | 16,319 | ▲321 |
| 42位 | 愛知県 | 277 | 20,719 | ▲272 |
| 全国順位 | 都道府県 | 10万人あたり(人) | 実員数(人) | 前年差(人) |
|---|---|---|---|---|
| 28位 | 三重県 | 696 | 12,111 | ▲106 |
| 36位 | 滋賀県 | 518 | 7,275 | ▲131 |
| 33位 | 京都府 | 626 | 15,466 | ▲208 |
| 46位 | 大阪府 | 112 | 9,813 | ▲51 |
| 30位 | 兵庫県 | 691 | 37,294 | ▲722 |
| 34位 | 奈良県 | 555 | 7,239 | ▲195 |
| 17位 | 和歌山県 | 1,205 | 10,863 | ▲127 |
| 全国順位 | 都道府県 | 10万人あたり(人) | 実員数(人) | 前年差(人) |
|---|---|---|---|---|
| 24位 | 鳥取県 | 786 | 4,198 | ▲74 |
| 4位 | 島根県 | 1,587 | 10,198 | ▲289 |
| 13位 | 岡山県 | 1,339 | 24,584 | ▲424 |
| 29位 | 広島県 | 693 | 18,899 | ▲352 |
| 22位 | 山口県 | 872 | 11,270 | ▲236 |
| 10位 | 徳島県 | 1,405 | 9,843 | ▲127 |
| 26位 | 香川県 | 763 | 7,175 | ▲42 |
| 9位 | 愛媛県 | 1,416 | 18,362 | ▲256 |
| 19位 | 高知県 | 1,081 | 7,190 | ▲105 |
| 全国順位 | 都道府県 | 10万人あたり(人) | 実員数(人) | 前年差(人) |
|---|---|---|---|---|
| 39位 | 福岡県 | 445 | 22,637 | ▲322 |
| 1位 | 佐賀県 | 1,981 | 15,735 | ▲635 |
| 15位 | 長崎県 | 1,308 | 16,666 | ▲351 |
| 4位 | 熊本県 | 1,587 | 27,240 | ▲756 |
| 18位 | 大分県 | 1,177 | 12,976 | ▲268 |
| 16位 | 宮崎県 | 1,239 | 12,991 | ▲207 |
| 21位 | 鹿児島県 | 905 | 14,111 | ▲184 |
| 46位 | 沖縄県 | 112 | 1,664 | ▲11 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
処遇改善の進み方|報酬基準の達成率は4指標すべてで9割超に

制度の変化は、基準を満たす市町村等の割合で追うことができます。3年分の横棒を並べると、どの指標も同じ方向に伸びていることがわかります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
処遇の面では、令和3年4月13日付けの消防庁長官通知で、年額報酬3万6,500円、出動報酬1日8,000円を標準とする基準が示されました。この基準を満たす市町村等の割合は年々上昇しており、年額報酬36,500円以上は令和5年の86.0%から令和7年には93.1%へ、出動報酬8,000円以上は84.2%から92.8%へ達しています。
報酬を団員本人へ直接支給する市町村等の割合も、年額報酬で93.8%、出動報酬で93.3%まで上がりました。4つの指標はいずれも9割を超え、3年連続で上昇しています。団員数の減少と処遇の改善が同じ期間に並行して進んでいることが、この図解から読み取れます。
楓のまとめ|減少と増加が同時に進む70年

ここまでの6つの図解を並べると、減少と増加が同時に進む姿が見えてきました。観察できた事実を3点に整理します。
「消防団員はどれだけ減ったのか」という問いに対して、本記事の図解は、70年余りで6割超という長期の減少と、その内側で進む増加や改善を同時に示してきました。どの数字も同じ調査系統の中にあります。データに優劣をつけるのではなく、見えた事実をそのまま並べておきます。
3つの観察事実を重ねると、消防団の70年は「一方向の縮小」だけでは説明できないことがわかります。全体の減少と退団超過の継続、そして女性・学生・機能別の増加と処遇改善の前進が、同じ統計の中で同時に進んでいるのが、令和7年時点の消防団の姿です。どの部分を見るかで印象は変わりますが、いずれも同じ一次データから確認できる観察事実です。
よくある質問(FAQ)

消防団の統計を読むときは、調査の時点(4月1日か10月1日か)と、どの内訳を見ているかをセットで確認してください。同じ「団員数」でも、系統が違えば数字は一致しません。
Q1. 消防団員はなぜ減っているのですか?
本記事のデータから直接確認できるのは、11年連続で退団者数が入団者数を上回っていることと、年齢構成で20代・30代の割合が長期的に下がっていることです。減少の原因を一つに特定することは、この調査データだけからはできません。本記事では原因の断定は行わず、入退団の差や年齢構成の変化といった、観察できる構造の提示にとどめています。
Q2. 「消防団員数」の統計には複数の数字があるのですか?
あります。本記事で使用したのは総務省消防庁「消防団の組織概要等に関する調査」で、各年4月1日現在の数値です(令和7年は73万2,223人)。一方、別の団体が公表する消防団員数の統計には、調査時点(10月1日現在など)や集計方法が異なるものがあり、数値は一致しません。時系列で比較する際は、同じ調査系統の数字でそろえることが大切です。
Q3. 機能別団員とはどのような制度ですか?
入団時に参加する活動や役割をあらかじめ特定した消防団員の制度です。たとえば大規模災害時の支援や広報など、特定の分野に限って参加します。令和7年4月1日現在の機能別団員数は4万195人で、導入市区町村は803団体(前年から53団体増)です。すべての活動に参加する基本団員とあわせて、参加の形を広げる仕組みとして増加が続いています。
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