
約60年の喫煙率は、2つの調査を1本につなぐのではなく、別々の折れ線として並べるのが正確です。定義の違いをそのままにして眺めると、男女で下がり方の形がまるで違うことが見えてきます。
日本の喫煙率は、2024年(令和6年)に14.8%と、2022年と並ぶ最も低い水準になりました。男性はピークだった1966年の83.7%(JT調査)から、2024年には24.5%(国民健康・栄養調査)まで低下しています。かつて成人男性の5人に4人以上が吸っていたたばこは、いまではおよそ4人に1人まで減りました。女性は6.5%で、およそ15人に1人です。
本記事では、JT「全国たばこ喫煙者率調査」(1965〜2018年)と厚生労働省「国民健康・栄養調査」(2012〜2024年)という2つの公式データを、折れ線や横棒の図解で整理します。2つの調査は手法と定義が異なるため、本記事では系列をつながず、別々の物差しとして並べて観察していきます。
たばこを吸う人は、どれくらい減ったのでしょうか?
男性は8割超から4人に1人へ。全体14.8%は目標12%まであと2.8ポイントです。
出典:JT「全国たばこ喫煙者率調査」/厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
男性の喫煙率はどう下がったか|1966年ピーク83.7%からの53年

半世紀の推移は、数表よりも1本の折れ線で見るのが近道です。ピークの位置と、途中の出来事の年にマーカーを置くと、低下の道のりが一目で追えます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
JT調査によれば、男性の喫煙率は1965年の82.3%から翌1966年に83.7%へ達し、ここが調査開始以降のピークになりました。その後はほぼ一貫した低下が続き、1985年に64.6%、2000年に53.5%、2010年には36.6%と、半世紀をかけて段階的に水準を切り下げてきました。
2010年10月には、国と地方のたばこ税があわせて1本あたり3.5円引き上げられています。図解ではこの年にマーカーを置きました。その後の系列を見ると、2010年の36.6%から2018年の27.8%まで低下が続いています。本記事は観察に徹する立場のため、増税と喫煙率の因果関係には踏み込みません。
JTの「全国たばこ喫煙者率調査」は2018年調査をもって終了しており、この系列は今後更新されない確定値です。最終年の2018年は男性27.8%で、ピークの1966年83.7%からJT系列内で55.9ポイントの低下でした。約半世紀の長期推移を1つの物差しで見られる、貴重な記録といえます。
女性の喫煙率の推移|ピーク18.0%から一桁台への漸減

女性の系列は男性と同じ枠で描くと変化がつぶれてしまうため、縦軸を0〜25%に切り替えました。一桁台に入った年に注釈を置いています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
同じJT調査で女性を見ると、ピークは男性と同じ1966年の18.0%でした。男性の83.7%と比べると水準の桁がひとつ違い、同じ年のピークでも男女差は65.7ポイントに達していました。その後はゆるやかな漸減が続き、2000年に13.7%、2010年に12.1%と推移します。
2014年に9.8%と初めて10%を下回り、以降は一桁台が続きました。最終年の2018年は8.7%です。ピークからの低下幅はJT系列内で9.3ポイントと、男性の55.9ポイントに比べて小さく、女性はもともと低い水準のまま、ゆるやかに下がってきた系列だと読み取れます。
直近12年の喫煙率|2024年14.8%と目標12%までの距離

直近の系列は、総数・男性・女性の3本を同じ図に重ねました。調査中止の2年は線をつながず、目標12%の点線と現在地の距離を見比べられるようにしています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2012年以降は、厚生労働省「国民健康・栄養調査」の「現在習慣的に喫煙している者」の割合で推移を追えます。総数は2012年の20.7%から2019年の16.7%まで低下し、2020年と2021年は新型コロナウイルスの影響で調査が中止されました。図解では、この欠測部分の線をつないでいません。
調査が再開された2022年は14.8%、2023年は15.7%、そして2024年は再び14.8%でした。2024年の14.8%は、この12年間で2022年と並ぶ最も低い値です。男性は24.5%、女性は6.5%で、男女とも低下基調の中にあります。
国の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」は、20歳以上の喫煙率の目標を12%としています。2024年の14.8%との差は2.8ポイントです。図解の点線が目標水準を示しており、現在の値と目標の距離を1枚で確認できます。
2024年の年代別喫煙率|男性は40代、女性は50代がピーク

年代別は男女の横棒を上下に並べると、ピークの年代のずれが見えます。同じ2024年の断面でも、年代によって水準が2倍以上違います。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2024年の値を年代別に見ると、男性は40代の34.5%が最も高く、50代の31.9%が続きます。全体では4人に1人の男性喫煙率も、40〜50代に限れば3人に1人前後の水準です。70歳以上は14.2%で、年代による差が大きいことがわかります。
女性は50代の10.0%が最も高く、次いで40代の9.3%です。20〜30代は6%台、70歳以上は2.7%でした。男性は40代、女性は50代と、ピークの年代が男女で1つずれている点も、図解を並べると見えてくる特徴です。
喫煙の中身の変化|喫煙者の3〜4割が加熱式のみ

率の推移だけでなく、喫煙者が何を吸っているかも同じ調査でわかります。積み上げ横棒にすると、紙巻と加熱式の割合がひと目で比べられます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
喫煙率の低下と並行して、喫煙者が使うたばこの中身も変わっています。令和6年調査では、喫煙者のうち加熱式たばこを使う人は男性41.4%、女性44.2%でした。組合せで見ると、「加熱式のみ」が男性33.0%・女性39.3%を占めています。
一方、「紙巻のみ」は男性56.9%・女性55.2%と、いまも5割台です。紙巻と加熱式の併用は男性8.4%・女性4.8%でした。たばこをやめたいと思う喫煙者は全体の18.6%(男性17.2%・女性23.1%)で、この数値も同じ調査で公表されています。
楓のまとめ|女性が増えたのではなく男性が減って差が縮んだ

ここまでの図解を一通り並べると、2つの系列に共通する推移の骨格が見えてきます。3つの観察事実に整理してみます。
ここまで、JT調査の約半世紀と国民健康・栄養調査の直近12年を、男女別に並べて観察してきました。2つの系列は定義が異なるため接続はできませんが、どちらの物差しで見ても喫煙率が下がり続けてきたこと、そして男女で下がり方の形が大きく違うことが確認できます。
「日本の喫煙率はどれくらい減ったのか」という問いへの答えは、どの調査で、どの期間を見るかで数字が変わります。それでも、男性の大幅な低下が男女差を縮め、全体の水準を目標12%の手前まで引き下げてきたという推移の骨格は、2つの系列に共通して観察できます。公式データが示す推移そのものを、本記事の図解とともに確認していただければ幸いです。
よくある質問(FAQ)

喫煙率のグラフを読むときは、どの調査か・どの期間か・誰の割合かの3点をセットで確認してください。同じ「喫煙率」でも、この3点で数値が変わります。
Q1. JT調査と国民健康・栄養調査の数値はなぜ違うのですか?
JT「全国たばこ喫煙者率調査」は調査員による標本調査で「喫煙者率」を、厚生労働省「国民健康・栄養調査」は「現在習慣的に喫煙している者」の割合を測っており、調査手法も定義も異なるためです。同じ年でも数値は一致しません。このため本記事では、2つの系列を1本の線につながず、別々の図解として並べています。ピークとの比較で示した59.2ポイントという差も、定義の異なる2系列の単純差である点にご留意ください。
Q2. 女性の喫煙率は昔より増えたのですか?
長期系列では増えていません。JT調査の女性のピークは1966年の18.0%で、2018年には8.7%、国民健康・栄養調査でも2024年は6.5%です。男女差が縮まって見えるのは、女性が増えたためではなく、男性が83.7%から大きく下がったためです。JT系列内の男女差は、1966年の65.7ポイントから2018年の19.1ポイントまで縮小しています。
Q3. 目標の12%とはどのような数値ですか?
国の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」が掲げる、20歳以上の喫煙率の目標値です。令和6年国民健康・栄養調査の概要にも参考値として明記されており、2024年の実績14.8%との差は2.8ポイントです。この目標には「喫煙をやめたい者がやめる」という前提が添えられていて、同じ調査では、たばこをやめたいと思う喫煙者が全体の18.6%であることも公表されています。
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