
「共働きでも家事は妻に偏る」とよく言われますが、実際の差は世帯のタイプや子どもの有無で大きく変わります。世帯類型別の分担割合と、時間の内訳を図解で並べると、平均値だけでは見えない構造がはっきりします。
共働き世帯が専業主婦世帯の倍以上に増えた今も、家事関連時間の多くは妻が担っています。総務省「令和3年社会生活基本調査」(2021年)をもとにした内閣府の分析によると、末子が6歳未満の世帯で、妻が無業の専業主婦世帯では家事関連時間の84.0%を、夫婦ともに働く共働き世帯でも77.4%を妻が担っていました。共働きでも妻が家事関連時間の約8割を担う構造は、専業主婦世帯と6.6ポイントしか変わりません。
本記事では、総務省「令和3年社会生活基本調査」と内閣府「男女共同参画白書」の一次データを、男女差・世帯類型別の分担割合・20年の推移・時間の内訳・国際比較といった複数の図解で整理します。「家事関連時間」とは何を指すのか、どの世帯のどの数字を見ているのかを明確にしながら、共働きの家事時間の男女差を比較していきます。家庭ごとに事情は異なりますが、全体の傾向としてデータが示すものを観察します。
共働き世帯でも、家事や育児の時間は妻と夫でどれだけ違うのか。
末子6歳未満の共働き世帯でも、家事関連時間の77.4%を妻が担っている。
妻は夫の約3.4倍(77.4%÷22.6%)
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そもそも「家事関連時間」とは何を指すのか

比較の前に、まず「家事関連時間」が何を含むのかを押さえておきます。料理や掃除だけでなく、育児や介護、買い物も含む合計時間です。
家事関連時間とは、料理や掃除といった「家事」に加えて、「育児」「介護・看護」「買い物」を合わせた時間の合計を指します。総務省の社会生活基本調査では、この4つをまとめて家事関連時間として集計しています。2021年の調査で、10歳以上の全体平均(1日あたり・週全体)を見ると、男性は51分、女性は3時間24分でした。女性は男性の約4.0倍の時間を家事関連に使っている計算で、男女差は2時間33分にのぼります。
ここで注意したいのは、この51分・3時間24分という数字が「共働き世帯」の値ではなく、就業状況や子どもの有無を区別しない10歳以上全体の平均だという点です。共働き世帯や子育て世帯に絞ると、数字は大きく変わります。次の章から、世帯のタイプ別に詳しく見ていきます。
共働き世帯と専業主婦世帯、妻と夫の分担割合を並べる

ここからは末子が6歳未満の子育て世帯に絞ります。共働きか専業主婦かで、妻の分担割合はどう違うのでしょうか。
末子が6歳未満の子どもを持つ世帯について、家事関連時間を妻と夫でどう分け合っているかを見ます。ここでの「共働き世帯」は夫婦ともに有業の世帯、「専業主婦世帯」は夫が有業で妻が無業の世帯を指します。分担割合は、妻の家事関連時間を妻と夫の合計で割って求めます。
内閣府「男女共同参画白書 令和5年版」によると、2021年時点で、専業主婦世帯では妻が家事関連時間の84.0%を担い、夫は16.0%でした。一方、夫婦ともに働く共働き世帯でも、妻が77.4%、夫が22.6%を担っています。共働きで妻が働いている分だけ夫の分担が大きく増えるように思えますが、実際の差は6.6ポイントにとどまります。
世帯数で見ると、2021年は共働き世帯が1,247万、専業主婦世帯が566万と、共働きが倍以上を占めるようになりました。共働きが多数派になった今も、家事関連時間の約8割を妻が担う構造は、世帯のタイプを問わず大きくは変わっていません。
妻の分担割合は20年でどう動いたか

分担割合は時代とともに動いてきました。末子6歳未満の世帯について、20年間の推移を一本の線で追ってみます。
末子6歳未満の世帯について、妻の分担割合が20年間でどう動いたかを見ます。総務省の社会生活基本調査をもとに、夫と妻の家事関連時間から分担割合を算出すると、2001年は90.6%でした。その後、2006年88.2%、2011年87.3%、2016年84.5%と少しずつ下がり、2021年には79.7%となっています。20年間で約11ポイント低下した計算です。
低下の主な背景は、夫の家事関連時間が増えたことにあります。後の章で見るように、6歳未満の子を持つ夫の家事関連時間は20年でおよそ2.4倍に増えました。ただし、2021年でも妻が約8割を担う状況は続いています。2021年の内訳を世帯タイプ別に見ると、専業主婦世帯で84.0%、共働き世帯で77.4%でした。分担割合は長期的に下がってきましたが、妻に偏るという基本的な構造そのものは、まだ大きくは変わっていないことがわかります。
末子6歳未満の世帯、妻と夫の一日の内訳

割合の次は、実際の時間の長さと中身を見ます。妻と夫が、それぞれ何にどれだけ使っているのでしょうか。
分担割合だけでなく、実際の時間の長さと内訳も確認します。2021年の調査で、末子6歳未満の世帯の家事関連時間を見ると、夫は1日あたり1時間54分、妻は7時間28分でした。内訳を4つの活動で見ると、夫は家事30分、育児1時間5分、介護・看護1分、買い物18分です。妻は家事2時間58分、育児3時間54分、介護・看護3分、買い物33分でした。
最も差が大きいのは育児で、妻が3時間54分、夫が1時間5分と、2時間49分の開きがあります。20年間の推移を見ると、2016年に妻の育児時間が初めて家事時間を上回り、2021年はその傾向がさらに進みました。子育て期は家事に加えて育児の負担が重く、その多くが妻に集中していることが、時間の内訳からも読み取れます。なお、これらは末子6歳未満という、家事と育児の負担が最も重い時期の世帯の数字です。
夫の家事関連時間は20年で増えたのか

ここで全体(10歳以上)に戻り、男女それぞれの家事関連時間が20年でどう変わったかを見ます。
次に、10歳以上の全体平均に戻って、男女それぞれの家事関連時間が20年間でどう変化したかを見ます。男性は2001年の31分から、2006年38分、2011年42分、2016年44分、2021年51分へと、一貫して増加してきました。20年間で20分の増加です。一方、女性は2001年の3時間34分から2021年の3時間24分へと、10分減少しています。
この結果、男女差は2001年の3時間3分から2021年の2時間33分へと、30分縮小しました。男性が家事関連に使う時間は着実に伸び、女性はわずかに減っているため、差は少しずつ縮まっています。ただし、縮小したとはいえ2時間33分という差はなお大きく、女性が男性の約4.0倍の時間を家事関連に使う状況が続いています。男女差の縮小は、主に男性側の増加によってもたらされていることがわかります。
国際比較、日本の夫の家事関連時間は先進国でどの位置か

最後に、日本の夫の家事・育児の時間を、他の先進国と比べてみます。
6歳未満の子を持つ夫の家事・育児関連時間を、他の先進国と比べます。内閣府「男女共同参画白書 令和2年版」の国際比較によると、1日あたりの時間はスウェーデンが3時間21分、ノルウェーが3時間12分、米国が3時間7分、ドイツが3時間、英国が2時間46分、フランスが2時間30分でした。これに対し、日本は1時間23分(2016年時点の値)で、比較した7か国の中で最も短くなっています。最も長いスウェーデンと比べると、半分以下の水準です。
なお、この国際比較における日本の値は2016年のもので、2021年には1時間54分まで増えましたが、各国を同じ基準でそろえた国際比較の図は更新されていないため、ここでは2016年時点の比較を用いています。日本の夫の家事・育児時間は増加傾向にあるものの、国際的に見れば依然として低い水準にあることがうかがえます。
楓のまとめ|共働きでも妻に偏る構造はなお続いている

ここまでの図解を、3つの観察事実に整理します。
共働きの家事時間の男女差について、世帯類型・推移・内訳・国際比較の4つの角度から図解を並べてきました。どの数字を、どの世帯について見ているかで、見える景色は変わります。価値判断を加えるのではなく、データが示す傾向を観察事実として整理します。
3つの観察事実を重ねると、共働きが多数派になり、夫の家事関連時間も着実に増えてきた一方で、末子6歳未満の子育て世帯では、共働きでも家事関連時間の約8割を妻が担う構造が続いていることが見えてきます。
「共働きの家事時間の男女差」への答えは、どの世帯のどの数字を見るかで変わりますが、子育て期に妻の負担が集中する傾向は、推移・内訳・国際比較のいずれの図解でも共通して現れています。家庭ごとに事情は異なるものの、全体の傾向としてデータが示すのは、男女差が縮みつつもなお大きく残っているという姿です。
よくある質問(FAQ)

家事関連時間のデータを読むときに迷いやすい3点を、Q&Aで補足します。
Q1. 「家事関連時間」と「家事時間」は何が違うのですか?
家事時間は、料理・掃除・洗濯などのいわゆる家事だけを指します。これに対して家事関連時間は、その家事に「育児」「介護・看護」「買い物」を加えた合計です。総務省の社会生活基本調査では、この4つをまとめて家事関連時間として集計しています。たとえば末子6歳未満の世帯では育児の比重が大きいため、家事関連時間で見ると、家事時間だけで見るよりも男女差が大きく出る傾向があります。本記事の数字は、特記がない限りこの家事関連時間(4つの合計)を指しています。
Q2. 共働き世帯の「妻77.4%」はどのように計算しているのですか?
分担割合は、妻の家事関連時間を、妻と夫の家事関連時間の合計で割り、100を掛けて求めます。たとえば夫婦の家事関連時間の合計のうち妻の分が77.4%であれば、残りの22.6%が夫の分担となります。これは妻が世帯全体の家事のうちどれだけを担っているかを示す割合で、妻や夫が実際に何時間使ったかという「時間の長さ」とは別の指標です。時間の長さで見ると、末子6歳未満の世帯では妻が7時間28分、夫が1時間54分で、割合と時間の両方から男女差を確認できます。
Q3. 共働きでも妻の負担が大きいのはなぜですか?
内閣府の白書は、その背景として、長時間労働を前提とした働き方や、固定的な性別役割分担に関する意識などの構造的な要因を挙げています。また、共働き世帯の増加の多くが、妻がパートタイムなど短時間勤務の世帯によるものであることも指摘されています。妻の就業時間が夫より短い世帯が多いと、家事関連時間が妻に偏りやすくなります。
ここで示したのはあくまで全体の平均的な傾向であり、家庭ごとに働き方も分担の仕方も異なります。本記事はどちらが望ましいという価値判断をするものではなく、データが示す全体の傾向を整理したものです。
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