
ニセ警察詐欺の規模は、件数で見るか被害額で見るかで姿が変わります。月別の推移と年代別の内訳を並べて、どこにずれがあるのかを図解で確かめていきます。
警察官を名乗り、捜査を口実に現金などをだまし取る「ニセ警察詐欺」は、2025年に全国で11,014件発生し、被害額は1,005.0億円にのぼりました。約48分に1件のペースで起きている計算です。警察庁の確定値によると、この被害額は特殊詐欺全体(1,423.1億円)の70.6%にあたり、特殊詐欺の被害額のおよそ7割を、ニセ警察詐欺ひとつが占めています。
本記事では、警察庁の令和7年(2025年)の確定値、令和8年(2026年)上半期の暫定値、8月末までの月別統計(暫定値)を1本にまとめ、月別の推移、被害者の年代、最初の接触手段、お金の渡し方を図解で整理します。件数と被害額のあいだにある2つのずれを、数字で順に見ていきます。
ニセ警察詐欺は、1年に何件起き、いくらの被害が出ているのか。
2025年は11,014件・1,005.0億円。特殊詐欺の被害額の7割を占め、2026年も1〜8月の被害額は前年同期を上回っている。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
ニセ警察詐欺は何件・いくらか|2025年は11,014件・1,005.0億円

月ごとの被害額を並べると、件数とは違う動きが見えます。下の段には、同じ月の認知件数を折れ線で添えました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
警察庁の月別統計で2025年のニセ警察詐欺を見ると、認知件数は1月の511件から12月の1,310件まで増え、被害額は12月に159.3億円と年間で最も大きくなりました。年間の合計は11,014件・1,005.0億円で、1日あたりに直すと約2.8億円の被害です。
既遂(実際に被害が出た)事件1件当たりの被害額は922.5万円で、ニセ警察詐欺を除く特殊詐欺の256.7万円の約3.6倍でした。2026年に入ると、1月から8月までの認知件数は6,346件で、前年同期の6,620件を4.1%下回りました。一方、被害額は728.6億円で、前年同期の573.5億円を27.0%上回っています。
件数は前年より少ないのに、被害額は前年より大きいという動きが、棒と折れ線の形の違いに表れています。2026年の値は暫定値で、確定値では変わる場合があります。
ニセ警察詐欺の統計は2025年から始まり、2026年からは特殊詐欺の独立した手口として位置付けられました。そのため、2024年以前と同じ物差しで比べることはできません。オレオレ詐欺や還付金詐欺を含む特殊詐欺全体の長い推移は、特殊詐欺の認知件数と被害額の推移で図解しています。月ごとの数値は、下の表のタブで年を切り替えて確認できます。
| 月 | 認知件数 | 被害額(億円) |
|---|---|---|
| 1月 | 737件 | 69.3 |
| 2月 | 650件 | 66.0 |
| 3月 | 817件 | 87.1 |
| 4月 | 854件 | 102.9 |
| 5月 | 609件 | 77.9 |
| 6月 | 799件 | 104.7 |
| 7月 | 956件 | 109.2 |
| 8月 | 924件 | 111.5 |
| 1〜8月計 | 6,346件 | 728.6 |
| 月 | 認知件数 | 被害額(億円) |
|---|---|---|
| 1月 | 511件 | 52.3 |
| 2月 | 544件 | 55.1 |
| 3月 | 859件 | 66.7 |
| 4月 | 1,010件 | 81.3 |
| 5月 | 905件 | 69.2 |
| 6月 | 933件 | 74.3 |
| 7月 | 1,028件 | 92.0 |
| 8月 | 830件 | 82.5 |
| 9月 | 1,031件 | 97.4 |
| 10月 | 1,085件 | 90.3 |
| 11月 | 968件 | 84.5 |
| 12月 | 1,310件 | 159.3 |
| 合計 | 11,014件 | 1,005.0 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
被害者の年代|2025年は件数が30代、被害額が70代で最多

年代ごとに、件数と被害額を左右に分けて並べました。灰色が2025年上半期、朱色が2026年上半期です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の確定値では、ニセ警察詐欺の件数が最も多かった年代は30代(2,239件)、次いで20代(1,718件)でした。被害額は70代(274.6億円)が最も多く、60代(256.3億円)が続きます。件数の中心は若い世代、被害額の中心は高齢の世代と、2つの物差しで最多の年代が分かれていました。
2026年上半期(暫定値)では、この構図が変わっています。20代と30代の件数は前年同期の1,886件から1,214件に減り、70代以上は936件から1,400件に増えました。件数に占める70代以上の割合は19.7%から31.3%になり、70代は件数(869件)でも被害額(151.6億円)でも最多です。図の左側の棒を見比べると、件数の多い年代が高い年代の側へ移っていることが分かります。
1件当たりの被害額|60代・70代は約1,745万円

被害額を件数で割ると、年代による差がはっきりします。点線は全年代の平均です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2026年上半期の年代別の被害額を、同じ年代の認知件数で割りました。20代は283.6万円、30代は518.1万円、40代は641.2万円で、50代で1,227.6万円と1,000万円を超えます。60代は1,746.2万円、70代は1,744.5万円で、20代のおよそ6倍の水準です。80代以上は1,534.8万円でした。
この値は未遂を含む認知件数で割った編集部の試算で、全年代では1,137.3万円になります。警察庁が公表している既遂1件当たりの被害額(2026年上半期は1,163.9万円)は、実際に被害が出た件数で割っているため、分母が異なります。年代どうしの比較には、同じ分母でそろえたこの試算値を使っています。
最初の接触手段|電話が98.2%

最初の接触がどの手段だったかを、件数と被害額の割合で示しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2026年上半期のニセ警察詐欺4,466件のうち、最初の接触が電話だったものは4,385件で、件数・被害額ともに98.2%を占めます。電話の中では、携帯電話が件数の58.8%を占める一方、被害額では41.1%にとどまり、被害額の6割近くは携帯電話以外の電話から始まっています。
警察庁の資料によると、2025年は40代以下では携帯電話が9割以上、50代以上では固定電話が約6割でした。2026年上半期も、50代以下では携帯電話、60代以上では固定電話が半数以上を占めています。また特殊詐欺全体では、2025年に犯行に使われた電話番号のうち国際電話番号が92,996件(75.5%)で、前年から95.4%増えました。
お金の渡し方|件数の65.6%は振込、暗号資産は前年同期の2倍超

件数の割合と被害額の割合を、同じ幅の帯で上下に並べました。点線は、同じ形態どうしの境目を結んでいます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2026年上半期の交付形態は、振込型が2,930件(65.6%)で最も多く、被害額は256.2億円(50.4%)でした。現金手交型は件数の15.6%、被害額の24.3%、暗号資産送信型は件数の13.9%、被害額の21.7%です。現金手交型と暗号資産送信型は、件数より被害額で大きな割合を占めています。
暗号資産送信型は620件・110.3億円で、前年同期から件数が354件(133.1%)、被害額が60.8億円(122.8%)増え、いずれも2倍を超えました。振込型は前年同期より1,050件(26.4%)減っています。2025年には、金地金をだまし取る手口も163件・58.2億円確認されました。
警察庁が示す「警察がしないこと」と相談先

警察庁は、本物の警察官がしない行動を具体的に示しています。要点だけを整理します。
警察庁の特設ページ「ニセ警察詐欺に注意!」は、警察が次のことをしないと示しています。「+」で始まる国際電話番号から電話をかけること、SNSで連絡したりビデオ通話で警察手帳を見せて取り調べたりすること、逮捕状などの捜査書類の画像をSNSで送ったり郵送したりすること、警察職員の名前をインターネットで検索するよう求めることの4つです。
同じページでは、警察庁が電話やメールで金銭を求めることは一切ないとしています。警察を名乗る電話を受けて不安を感じたときは、いったん電話を切り、相手から教えられた番号には折り返さず、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署に相談するよう案内されています。
楓のまとめ|件数と被害額は、別々の方向に動いている

ここまでの図解を並べると、件数と被害額のずれが2か所に見えてきます。3つの観察事実に整理します。
ニセ警察詐欺の規模は、件数で見るか被害額で見るかで印象が変わります。月別・年代別・手段別の図解で見えたことを、観察事実として整理しておきます。都道府県ごとの特殊詐欺の多さは、特殊詐欺が多い県・少ない県のデータで図解しています。
3つの観察事実を重ねると、件数の増減だけでは、ニセ警察詐欺の被害の大きさはつかめないことが分かります。月別の統計は暫定値として毎月更新されており、2026年の値は確定値の公表時に変わる場合があります。
よくある質問(FAQ)

ニセ警察詐欺の数字を読むときは、確定値か暫定値か、件数か被害額かの2点を確認してください。
Q1. ニセ警察詐欺とは何ですか?統計はいつからありますか?
警察官などを名乗り、捜査を口実に現金や暗号資産などをだまし取る手口です。警察庁は2025年からニセ警察詐欺の統計を取り始め、2026年からは特殊詐欺の独立した手口として位置付けています。2025年の確定値は11,014件・1,005.0億円で、特殊詐欺の被害額の70.6%にあたります。
Q2. どの年代の被害が多いですか?
2025年は、件数では30代(2,239件)、被害額では70代(274.6億円)が最も多い年代でした。2026年上半期(暫定値)は70代が件数869件・被害額151.6億円で、どちらも最多です。認知1件当たりの被害額は60代・70代で約1,745万円と、20代(283.6万円)の約6倍でした(編集部試算)。
Q3. 警察を名乗る電話がかかってきたら、どこに相談すればよいですか?
警察庁は、いったん電話を切り、警察相談専用電話「#9110」か最寄りの警察署に相談するよう案内しています。相手から教えられた電話番号には折り返さないことも示されています。なお、警察は「+」で始まる国際電話番号から電話をかけることや、SNSやビデオ通話で取り調べることはしないとされています。
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