
特殊詐欺の16年は、認知件数と被害額の2本の折れ線でたどるのが近道です。件数の波と金額の急カーブを別々の図にして並べると、2025年がどれだけ特異な年だったのかが、輪郭を持って見えてきます。
特殊詐欺の被害が、統計上の記録を塗り替えました。警察庁の確定値によれば、2025年(令和7年)の認知件数は27,832件(前年比+32.3%)、被害額は1,423.1億円(同+98.0%)で、認知件数・被害額とも統計上の過去最悪を同時に更新しました。1日当たりに直すと、約3.9億円の被害が発生した計算です。
この記事では、警察庁の確定値をもとに、2010年から2025年までの16年の推移と、手口構成の移り変わりを図解で整理します。なお、SNS型投資・ロマンス詐欺は令和7年(2025年)まで特殊詐欺とは別の統計区分のため、本記事の推移系列には含めていません(この点は本文とFAQでも扱います)。
特殊詐欺の被害は、いま、どのくらいの規模なのでしょうか。
2025年の被害額は1,423.1億円。認知件数27,832件とともに、統計上の過去最悪を更新しました。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
認知件数の推移|2010年から2025年の16年

16年の推移は、表よりも1本の折れ線で見るのが近道です。2017年の山、2020年の谷、そして2025年の急な立ち上がり。3つの節目がこの1枚に並んでいます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
認知件数の系列は、2010年(平成22年)の6,888件から始まります。2011年以降は増加が続き、2017年(平成29年)には18,212件と、いったんの山を迎えました。その後は2020年(令和2年)の13,550件まで3年連続で減少します。2020年1月には、それまでオレオレ詐欺に含まれていた預貯金詐欺が分離集計され、統計の区分にも節目が置かれました。
2021年以降は一転して増加局面に入ります。2021年14,498件、2022年17,570件、2023年19,038件、2024年21,043件と増加が続き、2025年(令和7年)は27,832件に達しました。これまで最も多かった平成16年(2004年)の25,667件を、21年ぶりに上回ったことになります。
16年をひとつづきに眺めると、山と谷を挟みながらも、系列の始点6,888件と終点27,832件の間には約4.0倍の開きがあります。折れ線の終端が、それまでのどの山よりも高い位置にあることが、この図の観察の中心です。
被害額の推移|2025年に1,423.1億円へ

被害額の折れ線は、件数とは別の形を描きます。2014年の当時最多565.5億円がどの高さにあったか、2025年の1,423.1億円と見比べてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
被害額の系列は、件数とは異なる動き方をします。2010年の112.5億円から2014年(平成26年)の565.5億円まで急速に増えたあと、2021年の282.0億円まで7年かけて緩やかに減少しました。2014年の水準は、この時点までの系列で最も高い金額でした。
2022年以降は再び増加に転じます。2022年370.8億円、2023年452.6億円、2024年718.8億円と伸びが続き、2024年の時点で2014年の水準を大きく超えました。そして2025年は1,423.1億円と、1年でほぼ倍増(前年比+98.0%)という、16年の系列で他に例のない増え方を記録しています。
既遂1件当たりの被害額は523.6万円で、前年の350.3万円から大きく増えました。件数の増加に1件当たり金額の増加が重なる形で、被害額の折れ線は件数の折れ線よりも急な角度で立ち上がっています。
手口別認知件数の移り変わり|2016年から2025年

手口別の5本の線は、構成の入れ替わりを観察するための図です。線が始まる年が手口ごとに違う点は、統計の区分が変わってきた歴史そのものです。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
手口別の系列は2016年(平成28年)から確認できます。2016年から2019年にかけてはオレオレ詐欺と架空料金請求詐欺が上位を占め、2018年にはキャッシュカード詐欺盗の統計が始まりました。2020年1月には預貯金詐欺がオレオレ詐欺から分離され、図の5本の線が出そろいます。
2020年から2024年にかけては、還付金詐欺や架空料金請求詐欺が相対的に存在感を増し、オレオレ詐欺は2020年の2,272件を底に緩やかに戻る動きでした。2025年はこの構図が大きく変わります。オレオレ詐欺だけが6,752件から14,489件へと2倍以上に増え、他の主要手口は前年より減少しました。
なお、令和8年(2026年)から警察庁は手口の分類を変更し、ニセ警察詐欺を独立した手口として位置付け、SNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口に含める整理としています。令和7年以前の数値は従来通りとされているため、本記事の系列には影響しません。
2025年の手口別内訳|件数と被害額で異なる順位

同じ10手口を、件数と金額の2列の横棒にしました。左右で棒の長さの順番が入れ替わる手口を探すと、1件当たりの重さの違いが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の10手口を、認知件数と被害額の2つの物差しで並べたのが上の図です。件数ではオレオレ詐欺14,489件、架空料金請求詐欺5,706件、還付金詐欺3,179件の順で、この上位3手口の合計は総認知件数の84.0%に当たります(編集部集計)。
被害額の物差しに替えると、順位の入れ替わりが起きます。金融商品詐欺は件数206件で10手口中9番目ですが、被害額は22.1億円で6番目に位置します。反対に、キャッシュカード詐欺盗は件数1,243件に対して被害額14.4億円と、1件当たりの金額は小さめです。
もっとも、金額の集中は別格です。オレオレ詐欺の被害額1,138.1億円は被害総額の80.0%に相当し(編集部集計)、2025年の被害額の増加が、この1手口に強くひも付いていることが読み取れます。
ニセ警察詐欺の位置づけ|2025年から統計開始の新区分

2025年から集計が始まったニセ警察詐欺を、3つの分母で眺めます。どの分母で見るかによって、この手口の位置づけの見え方が変わります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
ニセ警察詐欺は、警察官等をかたり捜査名目などで現金等をだまし取る手口で、2025年から統計が始まった区分です。初年の認知件数は11,014件、被害額は1,005.0億円でした。件数では全体の39.6%ですが、被害額では70.6%を占め、分母を金額に替えると存在感が一気に大きくなります。
金額の比重が大きい背景として、警察庁の資料は既遂1件当たりの被害額を示しています。ニセ警察詐欺は922.5万円で、これを除いた特殊詐欺の256.7万円との差が大きく開いています。年代別では、認知件数は30代(2,239件)が最多である一方、被害額は70代(274.6億円)が最多で、件数と金額とで被害の中心が異なります。
警察庁は、2025年の認知件数・被害額が著しく増加した主たる要因として、このニセ警察詐欺の被害増加を挙げています。令和6年中に相当する手口(オレオレ詐欺のうちその他の名目)は4,261件・375.9億円で、規模の面でも1年前とは別の水準に入ったことがわかります。
楓のまとめ|16年の推移が2025年に更新した記録

16年分の推移と2025年の内訳を並べ終えたところで、観察できた事実を3つに整理します。数字の並びが語っていることだけを、そのまま書き留めておきます。
「特殊詐欺の被害はどのくらいの規模なのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、件数の波、金額の急伸、手口構成の入れ替わりという3つの動きを示してきました。増減の理由を断定するのではなく、系列から観察できた事実を整理しておきます。
特殊詐欺の16年をたどると、件数の波、金額の急伸、そして手口構成の入れ替わりという3つの動きが、2025年に同時に極値へ達したことがわかります。過去最悪の更新は、単一の数字ではなく、系列・手口・単価の3方向から同時に観察できる現象でした。統計の分類が変わる2026年以降、この系列がどう読み替えられていくのかも、あわせて観察を続けます。
よくある質問(FAQ)

特殊詐欺の統計を読むときは、系列の範囲・統計の開始年・分類の変更時期の3点を確認してください。同じ「特殊詐欺」でも、年によって含まれる手口が変わります。
Q1. SNS型投資・ロマンス詐欺は特殊詐欺に含まれますか?
令和7年(2025年)までは、SNS型投資・ロマンス詐欺は特殊詐欺とは別の統計区分です。2025年の同区分は認知件数15,168件・被害額1,834.3億円で、特殊詐欺の被害額を上回る規模でした。令和8年(2026年)からは特殊詐欺の一手口として包含される分類に変わりますが、令和7年以前の数値は従来通りのため、本記事の推移系列には含めていません。
Q2. なぜ2025年に被害額がほぼ倍増したのですか?
警察庁は、2025年の認知件数・被害額が著しく増加した主たる要因として、ニセ警察詐欺による被害の増加を挙げています。ニセ警察詐欺の既遂1件当たりの被害額は922.5万円で、これを除いた特殊詐欺の256.7万円と比べて高額です。1件当たりの金額が大きい手口の急増が、被害総額の伸びに直結した形です。本記事では、この説明を警察庁資料の記載事実として紹介しています。
Q3. 特殊詐欺の被害は高齢者に集中しているのですか?
2025年の65歳以上の被害は、認知件数14,273件・被害額841.1億円で、法人被害を除く総認知件数の51.3%・被害総額の59.2%を占めます。依然として半数を超えていますが、高齢者の構成比は前年から14.0ポイント低下しました。警察庁の資料は、オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺で20〜30代の被害が拡大していることを示しており、ニセ警察詐欺の認知件数では30代(2,239件)が最多です。
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