
「日本にダムはいくつある?」という問いには、都道府県別の集計表を1枚のタイルマップに起こして眺めるのが近道です。数の分布と貯水量のランキングを並べると、「数は多いのに容量は小さい」という日本のダムの独特な形が見えてきます。
日本にダムはいくつあるのか。一般財団法人日本ダム協会の「ダム便覧」の都道府県別集計によれば、合計2,762基のうち、完成している竣工済ダムは2,704基です(竣工済=竣工年が2023年度以前)。最多は北海道の185基で、2位には岡山の165基が続きます。一方で国土交通省の資料によれば、全ダムの総貯水容量の合計は約270億m³にとどまり、数は世界有数の2,704基なのに、容量の合計は米フーバーダム1基(350億m³)に届かないという非対称が、日本のダムの全体像です。
本記事では、ダム便覧の都道府県別集計と順位表、国土交通省「ダムコレクション」の一次情報をもとに、47都道府県タイルマップ・県別ランキング・総貯水容量ランキング・数と容量の対比図で、日本のダムの現在地を整理します。あわせて「統計によってダムの総数が違って見える」理由も、段階区分のデータから観察していきます。
日本にダムはいくつある?貯水量が多い地域はどこ?
完成しているダムは全国2,704基。総貯水容量の首位は岐阜の徳山ダムです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
日本にダムはいくつある?|段階別で見る2,762基

「約2,700」「約2,760」と資料によって総数が揺れて見えるのは、段階(竣工済・施工中・施工前)と堰の扱いが集計表ごとに違うためです。まず段階別の内訳から確認します。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
ダム便覧の都道府県別集計では、日本のダムは合計2,762基です。内訳は竣工済2,704基・施工中20基・施工前38基で、全体の97.9%がすでに完成しています。竣工済の定義は「竣工年が2023年度以前のもの」で、施工中・施工前の58基が今後の完成を待つ形です。
なお、同じダム便覧でも総括表の総計は堰19基・型式未記入8基を含む区分で集計されており、表によって数基の差が生じます。検索で見かける「約2,700基」という概数も、多くはこの竣工済ダムの水準を指しています。統計によって総数の表記が違って見える理由は、段階と堰・型式の区分の違いにあります。本記事では、47都道府県すべての内訳が確認できる都道府県別段階別集計の値で統一します。
どの県にダムが多い?|47都道府県タイルマップ

竣工済2,704基を47都道府県のタイルに落とすと、色の濃淡だけで分布の骨格がつかめます。濃い紫ほどダムが多い都道府県です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
最多は北海道の185基で、面積最大の都道府県が数でも首位に立ちます。目を引くのは2位の岡山165基です。西日本のなかで岡山だけが突出して濃く、ため池文化圏として知られる瀬戸内の農業用アースダムの厚みが、この色に表れています。3位以下は新潟110基・兵庫104基・広島101基と続きます。
反対側を見ると、最少は東京の8基で、神奈川13基・埼玉15基・茨城16基が続きます。最少グループの4都県がいずれも首都圏に並ぶのは、このタイルマップの目立つ特徴です。山地の少ない平野部と都市化した土地利用が、淡い色の帯として関東の一角に現れています。
県別ランキングと47都道府県一覧|地域ブロックで見る

上位10のランキングと、6つの地域ブロックに分けた47都道府県の一覧表を用意しました。タブでお住まいの地域に切り替えて、自分の県の位置を確かめてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
竣工済ダム数の上位10を並べると、北海道・岡山の2強のあとに、新潟・兵庫・広島・福岡・長崎が続きます。8位タイには福島と岐阜が91基で並び、10位タイの三重と山口が85基で続きます。最多の北海道185基と最少の東京8基のあいだには、約23倍の開きがあります。
| 都道府県 | 竣工済 | 施工中 | 施工前 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 185基 | 1 | 4 | 190 |
| 青森 | 32基 | 1 | 0 | 33 |
| 岩手 | 51基 | 0 | 1 | 52 |
| 宮城 | 37基 | 1 | 2 | 40 |
| 秋田 | 65基 | 1 | 1 | 67 |
| 山形 | 57基 | 0 | 0 | 57 |
| 福島 | 91基 | 0 | 0 | 91 |
| 都道府県 | 竣工済 | 施工中 | 施工前 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 茨城 | 16基 | 0 | 0 | 16 |
| 栃木 | 36基 | 1 | 0 | 37 |
| 群馬 | 48基 | 0 | 0 | 48 |
| 埼玉 | 15基 | 0 | 0 | 15 |
| 千葉 | 50基 | 0 | 0 | 50 |
| 東京 | 8基 | 0 | 0 | 8 |
| 神奈川 | 13基 | 0 | 0 | 13 |
| 都道府県 | 竣工済 | 施工中 | 施工前 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 新潟 | 110基 | 1 | 3 | 114 |
| 富山 | 76基 | 1 | 0 | 77 |
| 石川 | 55基 | 0 | 0 | 55 |
| 福井 | 24基 | 2 | 0 | 26 |
| 山梨 | 20基 | 0 | 0 | 20 |
| 長野 | 63基 | 0 | 5 | 68 |
| 岐阜 | 91基 | 2 | 2 | 95 |
| 静岡 | 44基 | 0 | 1 | 45 |
| 愛知 | 47基 | 1 | 1 | 49 |
| 都道府県 | 竣工済 | 施工中 | 施工前 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 三重 | 85基 | 1 | 0 | 86 |
| 滋賀 | 23基 | 0 | 1 | 24 |
| 京都 | 28基 | 0 | 0 | 28 |
| 大阪 | 32基 | 0 | 0 | 32 |
| 兵庫 | 104基 | 0 | 1 | 105 |
| 奈良 | 33基 | 0 | 0 | 33 |
| 和歌山 | 27基 | 0 | 0 | 27 |
| 都道府県 | 竣工済 | 施工中 | 施工前 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 鳥取 | 32基 | 0 | 0 | 32 |
| 島根 | 49基 | 0 | 1 | 50 |
| 岡山 | 165基 | 0 | 1 | 166 |
| 広島 | 101基 | 0 | 0 | 101 |
| 山口 | 85基 | 1 | 2 | 88 |
| 徳島 | 21基 | 1 | 1 | 23 |
| 香川 | 63基 | 0 | 2 | 65 |
| 愛媛 | 70基 | 0 | 1 | 71 |
| 高知 | 48基 | 3 | 1 | 52 |
| 都道府県 | 竣工済 | 施工中 | 施工前 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 福岡 | 97基 | 0 | 1 | 98 |
| 佐賀 | 56基 | 0 | 1 | 57 |
| 長崎 | 94基 | 0 | 3 | 97 |
| 熊本 | 34基 | 1 | 1 | 36 |
| 大分 | 83基 | 1 | 0 | 84 |
| 宮崎 | 51基 | 0 | 1 | 52 |
| 鹿児島 | 42基 | 0 | 0 | 42 |
| 沖縄 | 47基 | 0 | 0 | 47 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
一覧表を地域ブロックごとに眺めると、日本海側と西日本の各県に厚みがあり、関東だけが全体として淡いことがわかります。同じ関東でも群馬48基・栃木36基と山地を抱える北関東には一定の数があり、平野部の都県との差がブロック内にも刻まれています。
貯水量が多い地域はどこ?|総貯水容量ランキング上位10

タイトルの後半の問いに答えるのがこのランキングです。「数の多い県」と「容量の大きいダムがある地域」は、まったく別の顔ぶれになります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総貯水容量の首位は徳山ダムの6.6億m³(岐阜県揖斐川町・ロックフィル)です。2007年の竣工で首位に立った比較的新しいダムで、堤体積でも日本一の巨体です。2位は奥只見ダム6.01億m³(新潟)、3位は田子倉ダム4.94億m³(福島)で、いずれも1960年前後に完成した電源開発の大型ダムです。
上位3基は岐阜・新潟・福島、すなわち中部山岳から奥会津にかけての豪雪・山岳地帯に集中し、2位の奥只見と3位の田子倉は同じ只見川(阿賀野川水系)に連なります。「貯水量が多い地域」の答えは、雪解け水を深い谷で受け止められる、この山岳ベルトです。4位以下にも夕張シューパロ(北海道)・御母衣(岐阜)・九頭竜(福井)と、雪と山の地名が並びます。
数は世界有数・容量はフーバーダム1基未満|非対称の構図

2,704基という数と約270億m³という容量。このふたつを1枚に並べると、日本のダムの独特な形がいちばんよく見えます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国土交通省の資料によれば、日本全体のダムの総貯水容量を合計しても約270億m³で、1936年に完成した米フーバーダム1基の350億m³に及びません。急峻で谷の短い地形では1基あたりの容量を大きくしにくく、その制約を数で補ってきたのが日本のダム建設の歩みです。明治以前にすでに約300基があり、建設のピークは1960〜70年代の20年間でした。
この約270億m³という規模は、身近な水がめと比べるとつかみやすくなります。全国2,704基のダムの水をすべて集めても、琵琶湖1杯分(275億m³)にわずかに届きません(約270億m³÷275億m³≒98%)。列島の水インフラが、無数の小さな器の集合として組み立てられていることを示す数字です。
楓のまとめ|「数の多さ」と「容量の小ささ」が同居する

ここまでの分布とランキングを一通り並べると、数・分布・容量という3つの軸がそれぞれ別の物語を語っていることがわかります。3つの観察事実に整理してみます。
「日本にダムはいくつある?」という問いから始めた本記事は、47都道府県の分布、県別ランキング、総貯水容量ランキング、そして数と容量の対比を順に眺めてきました。どの図解も同じ一次データから描いていますが、切り口を変えるたびに違う顔が現れます。観察できた事実を整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、日本のダムは「たくさんの小さな器を、雪と山の条件に合わせて配置してきたインフラ」として姿を現します。数のランキングは北海道と岡山が、容量のランキングは中部山岳と奥会津が主役になるという顔ぶれの入れ替わりそのものが、地形と歴史がダムの配置に刻んだ模様だといえます。次にダムの数字を見かけたときは、それが「数」の話なのか「容量」の話なのかを確かめると、風景の解像度が一段上がります。
よくある質問(FAQ)

ダムの数字を読むときは、段階の区分・堰の扱い・数と容量の違いの3点をセットで確認してください。同じ「日本一」でも、どの物差しかで答えが変わります。
Q1. ダムとため池の違いは何ですか?
河川法では、堤の高さ(堤高)が15m以上のものをダムとして扱います。ダム便覧もこの基準で収録しており、堤高15m未満の貯水施設は統計上ため池などに分類されます。岡山にダムが多いのは、ため池文化圏で堤高15m以上の農業用アースダムが数多く築かれてきたことと重なって観察されますが、個々の由来は施設ごとにさまざまです。
Q2. 日本一大きいダムはどれですか?
物差しによって答えが変わります。総貯水容量では徳山ダム(岐阜・6.6億m³)が首位で、堤体積でも日本一です。一方、堤の高さでは黒部ダム(富山・堤高186m)が日本一として知られます。「大きさ」を容量で測るか、高さで測るかで、日本一の座は別のダムに移ります。
Q3. ダムの数は今後も増えますか?
ダム便覧の都道府県別集計では、施工中が20基・施工前が38基あり、完成すれば竣工済の数は積み上がります。一方で建設のピークは1960〜70年代にあり、新規の着手は当時と比べて大きく減っています。既存ダムのかさ上げや運用見直しで容量を確保する再生事業も進んでおり、「数の増加」よりも「使い方の更新」に重心が移りつつあるのが近年の傾向です。
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