
マイクロプラスチックがどこで生まれ、どうやって海までたどり着くのか。環境省が発生源と品目ごとに積み上げた推計を並べると、量の内訳と経路の違いが1枚ずつの図で確かめられます。
マイクロプラスチックはどこで生まれ、どうやって海に届くのでしょうか。環境省の令和7年度の推計では、日本から海洋へ流出するプラスチックごみは年16,000〜31,000トン、そのうち14,000〜22,000トンがマイクロプラスチックとして計上されています。流出量の合計を1日あたりに直すと、およそ44〜85トンにあたります。
この推計は確定値ではなく、環境省が令和7年度時点で入手できる情報に基づく暫定的な値としているものです。本記事では、その暫定値をそのまま並べながら、どの品目から、どの経路を通って海に届くと推計されているのかを図解で整理します。
扱うのは、5mmという区切りの由来、一次と二次という2つの入口、品目別の内訳、経路によって変わる海への届き方、日本の生産量の推移、そして海に浮いている量との差です。いずれも公表資料に記されている内容の紹介にとどめ、原因の断定や将来の見通しは行いません。
マイクロプラスチックは、どこで生まれ、どうやって海までたどり着くのか。
環境省の推計では、日本から海洋へ流出するプラスチックごみは年16,000〜31,000トン。そのうち14,000〜22,000トンがマイクロプラスチックにあたる。
- 01 使う 895万t 国内のプラスチック使用量(年間・プラスチック循環利用協会)
- 02 すり減る 8,800t タイヤ摩耗粉じんの海洋流出量(年間・推計下限/上限9,100t)
- 03 流れ出す 24% 雨水として流れた場合に海まで届く割合(3経路で最大)
- 04 海に出る 14,000t マイクロプラスチックの海洋流出量(年間・推計下限/上限22,000t)
出典:環境省「令和7年度検討結果 日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計」(令和8年3月更新・暫定値)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
マイクロプラスチックとは何か|5mmという区切りの由来

大きさの区切りがどこで決まったのかを先に押さえておくと、資料ごとに範囲が違って見える理由が読み解きやすくなります。
マイクロプラスチックは、一般に5mm以下のプラスチックを指します。日本学術会議の提言によれば、この区切りは2008年にNOAAがタコマで開催した国際ワークショップで議論され、5mm以下のプラスチックをマイクロプラスチックと呼ぶという定義が決まりました。
この定義はその後、国連の海洋環境保護の科学的事項に関する専門家合同グループ、GESAMPの定義にも引き継がれています。5mmという数字は物質としての性質から導かれたものではなく、研究者の議論を経て定められた区切りだと提言は説明しています。
一方、環境省の流出量の推計は、別の切り口で対象範囲を定めています。ポリマーが主たる構成成分である個体のうち、環境中に流出する時点で直径1マイクロメートル以上のもので、直接または水域を介して海洋に流出するものを対象とし、大気や土壌を介するものは除いています。
つまり、一般的な定義の5mm以下と、推計が扱う1マイクロメートル以上は、上限と下限という別の方向から範囲を区切っています。数字を読むときは、どの資料がどの範囲を扱っているかを確かめておく必要があります。
2つの入口|最初から小さいものと、小さくなったもの

入口が2つあることを図で分けておくと、このあとの品目別の数字がどちらの話なのかを見失わずに読めます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本学術会議の提言は、マイクロプラスチックを一次と二次に大別しています。一次マイクロプラスチックは、もともと5mm以下の粒状に製造されたもので、レジンペレット、洗顔料や化粧品に含まれるマイクロビーズ、肥料をコーティングしている殻状のプラスチックなどが挙げられています。
二次マイクロプラスチックは、使用後に環境へ流入したプラスチック製品が、紫外線や熱、風波などの物理的な力によって破砕され細片化したものです。合成繊維の服を洗濯したときに出るポリエステルやアクリルの繊維、食器洗いに使われるメラミン樹脂製スポンジの摩耗片も、このカテゴリーに含まれると記されています。
提言は、日本の沿岸ではプラスチック製品の破片がマイクロプラスチックの主な発生源と考えられるとしています。ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、中国では水域で検出されるマイクロプラスチックに占める化学繊維の割合が高いと報告されている一方、日本の水環境ではその寄与は小さいと考えられ、ただし調査事例が少ないため今後の調査が必要だとも記されています。
海の環境そのものを継続的に測る調査も並行して行われています。海水浴場の水質については、水質AAの海水浴場を調査して図解!静岡39・新潟38が最多【2026年】で全国の調査結果を整理しています。
日本からどれだけ出ていると推計されているか

合計の数字だけでなく、分類ごとの内訳と注記まで一緒に見ておくと、あとで数字が食い違って見えるのを防げます。
環境省の令和7年度の検討結果では、日本から海洋へ流出するプラスチックごみは年16,000〜31,000トンと推計されています。内訳は、投げ捨てごみなどのマクロプラスチックが1,300〜8,600トン、マイクロプラスチックが14,000〜22,000トンです。
マイクロプラスチックの内訳はさらに2つに分かれます。意図的添加マイクロプラスチックが610〜2,500トン、非意図的添加マイクロプラスチックが14,000〜20,000トンです。重量で見ると、流出量の大半をマイクロプラスチックが占める形で計上されています。
注意しておきたいのは、これらが確定値ではないという点です。環境省は、すべての推計式と使用するデータが令和7年度時点で入手可能な情報に基づく暫定式・暫定値であるとし、推計値の幅は算出時に用いる推計式や使用するデータの不確実性を反映していると説明しています。
令和6年度の推計結果は13,000〜31,000トンでした。令和7年度に16,000〜31,000トンへ更新されていますが、これは推計式と使用するデータの見直しを反映した結果です。実測によって流出量が増えたことを示す数字ではありません。
また公表資料には、マクロプラスチックの数値にマクロプラスチックから発生する二次マイクロプラスチックも含まれる、という注記が添えられています。二次マイクロプラスチックは独立した項目としては計上されていません。
参考値として、マクロプラスチックの回収量は12,073〜12,487トンと示されています。河川で763〜1,177トン、海岸で10,898トン、海域で412トンという内訳です。この数値は推計ではないため公表値をそのまま使用した、と明記されています。
品目別で見ると何が大きいか

17の品目を1枚に並べると、量がどこに集まっているのかが一目で見えます。棒の長さは推計の下限から上限までの幅です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
品目別の暫定値で最も大きいのは、タイヤ摩耗粉じんの8,800〜9,100トンです。次いで道路標示材が3,600〜4,300トン、人工芝の充填材が530〜2,700トン、建築塗料の塗膜が劣化して流出する分が120〜2,400トンと続きます。
一方、洗顔料などに含まれるマイクロビーズを含むパーソナルケア製品は190〜320トンです。タイヤ摩耗粉じんとは桁が2つ異なる水準で計上されています。環境省が2020年に行った調査では、対象となった51社のリンスオフ製品について、スクラブ剤としてマイクロプラスチックビーズを使用している製品は確認されなかったとされています。
品目ごとの数値を読むときは、いくつかの注記を押さえておく必要があります。人工芝の充填材はもともと粒として加えられるものですが、公表資料の表では非意図的添加側の小計に含めて集計されています。
建築塗料と船舶塗料は、それぞれ2つのケースに分けて別々に推計されています。建築塗料は塗膜の劣化による流出と家庭での使用による流出、船舶塗料は塗膜の摩耗による流出と塗装工程からの流出です。合算した1つの数値としては示されていません。
遺失漁具等については、令和7年度時点で精査中とされ、暫定値が示されていません。図解では0として扱わず、対象から外しています。海岸での投げ捨てごみ等は2つの推計方法で3,300トンと13トンという結果が併記されており、どちらか一方を採用値として示すことはできません。
なお公表資料は、100トン以上の値については上から3桁目を四捨五入し、積算は四捨五入する前の数値で行ったうえで丸めていると記しています。品目別の値を足し上げても小計と一致しないのはこのためで、本記事では公表されている小計と合計をそのまま用いています。
「一次・二次」と環境省の分類はどう違うか

同じ品目でも、どちらの分類軸で見るかによって置かれる場所が変わります。表で並べて確かめてみます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
教科書的な説明で使われる一次と二次という分類は、粒として作られたのか、大きなものが砕けたのかという由来による区分です。これに対して環境省の推計は、意図的添加と非意図的添加という別の軸で品目を分けています。
意図的添加マイクロプラスチックは、レジンペレット、農業資材、洗剤類、パーソナルケア製品の4つの区分です。非意図的添加マイクロプラスチックは、タイヤ摩耗粉じん、ブレーキ摩耗粉じん、道路標示材、繊維、建築塗料、船舶塗料、人工芝の7つの区分になります。
二次マイクロプラスチックは、この推計では独立した項目として計上されていません。製品が砕けてできた破片は、マクロプラスチックの数値に内数として含まれると注記されています。品目別の一覧に二次マイクロプラスチックという行が見当たらないのは、このためです。
この違いは、資料をまたいで数字を比べるときに影響します。日本学術会議の提言は、日本の沿岸では一次より二次のほうが多いと述べていますが、これは海に存在している量の話です。環境省の推計は1年間に流出する量を扱っています。測っている対象が異なるため、2つの記述は同じ土俵の比較にはなりません。
同じ量でも経路で海への届き方が変わる

どこで発生したかだけでなく、そのあとどの経路を通るかによって、海に届く量は大きく変わります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
環境省の推計は、環境中に流出したマイクロプラスチックが海洋まで届く割合を、経路ごとに算出しています。雨水として流れる場合が24〜25%、汚水として流れる場合が8%、廃棄物として排出された場合が0.01%です。
雨水経路の内訳では、環境中に残留するものが59%、河川等を経て海洋へ達するものが24〜25%、道路清掃で回収されるものが2%などと示されています。都市部では雨水とともに流出する割合を7割、郊外では2割と想定した計算です。
汚水経路では、下水道等が84%、浄化槽が9%、処理なしが6%という内訳が用いられ、処理方式ごとの除去率は98.05%から99.70%と設定されています。処理の過程を通ることで、海洋まで届く割合が大きく下がる計算になっています。
タイヤ摩耗粉じんや道路標示材のように道路上で発生するものには雨水経路が、繊維や建築塗料の家庭使用分には汚水経路が適用されています。同じ量が環境中に出ても、通る経路によって海洋流出率が3桁の幅で異なる形で推計されています。
水そのものがどのように循環し、どれだけ使われているのかは、日本の水資源、降水量と利用可能量のギャップを図解【2026年】でも仕組みの側から整理しています。
日本の生産量は増えているのか

発生源の話を読む前に、そもそも国内でどれだけ作られているのかを確かめておきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本学術会議の提言に収録された図によれば、日本国内のプラスチック製品の総生産量は、1999年の6,048,697トンから2018年の5,883,291トンへと推移しています。20年間で見ると横ばいか、やや減少という動きです。
一方、容器類は1999年の442,894トンから2018年の868,001トンへと変化しています。総生産量が微減している期間に、容器類はおよそ2倍になっているという対比です。提言も、この20年間で総生産量は横ばい状況だが容器類は2倍に増えていると記しています。
提言は、用途別の構成として、容器・包装用フィルムシートが全体の33.2%を占めることも示しています。この区分にはごみ袋、レジ袋、ラミネート、チャック付き袋などが含まれます。フィルムの中では、包装用が生産量の52%を占めています。
世界に目を向けると、OECDは2022年6月の報道発表で、世界のプラスチック廃棄物が2019年の353メガトンから2060年には1,014メガトンになり、環境中への流出量は年44メガトンに倍増すると見通しています。ここで示されている2060年の数字は見通しであり、実績値ではありません。
海に出た量と海に浮いている量が合わない

最後に、流出量の推計とは別に測られている、海に浮いている量の推定値を並べておきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本学術会議の提言は、海洋での観測結果をもとに作られたモデルから、全海洋に浮遊するプラスチック量が27万トンと推定されたことを紹介しています。一方、陸上から流入するプラスチック量の推定値は年間480万〜1,260万トン、平均800万トンです。
この2つは、同じものを測った数字ではありません。27万トンはある時点で浮いている量、480万〜1,260万トンは1年間に流入する量で、単位が異なります。差や比率を計算して読むことはできません。
提言は、この差の第一の要因として、微細化したマイクロプラスチックを計測しきれていない点を挙げています。海洋での測定には通常、動物プランクトン用の目合い330マイクロメートルのニューストンネットが使われるため、330マイクロメートル以上のものが計測対象になっていると説明されています。
また提言は、堆積物中の単位面積あたりのマイクロプラスチックの量が、海水中の量よりも4桁多いと計算されたことも紹介しています。海面付近を測るだけでは、環境中にあるマイクロプラスチックの全体像はとらえきれないという整理です。
楓のまとめ|供給と摩耗と経路の3つで記述されている

ここまでの図解を並べ直すと、公表資料が発生の仕組みをどう記述しているのかが見えてきます。3つの観察事実に整理します。
マイクロプラスチックはなぜ増えるのか、という問いに対して、本記事で並べた図解は、量の内訳と経路の違いを示してきました。推計値の年度ごとの変化は手法の見直しを含むため、増減の実測として読むことはできません。ここでは、公表資料に記されている内容を観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、公表資料が描いているのは、プラスチックが使われ続けるかぎり摩耗や劣化による発生が続き、そのうち一定の割合が経路を通って海洋に届く、という構造です。資料が答えているのは量の増減そのものではなく、発生と移動が続く仕組みの記述の部分にあたります。推計の精緻化はこれからも続くとされており、数字は今後も更新されていきます。
よくある質問(FAQ)

マイクロプラスチックの数字を読むときは、大きさの定義・発生源の内訳・推計の幅の3点をセットで確認してください。
Q1. マイクロプラスチックはどのくらいの大きさのものを指しますか?
一般には5mm以下のプラスチックを指します。この区切りは2008年の国際ワークショップでの議論を経て定まり、GESAMPの定義にも引き継がれています。なお環境省の流出量の推計は、環境中に流出する時点で直径1マイクロメートル以上のものを対象範囲としており、一般的な定義とは切り口が異なります。同じマイクロプラスチックという語でも、資料によって扱う範囲が違う点に注意が必要です。
Q2. 洗顔料に入っているマイクロビーズが主な発生源ですか?
環境省の令和7年度の推計では、パーソナルケア製品からの海洋流出量は190〜320トン/年で、非意図的添加マイクロプラスチック全体の14,000〜20,000トン/年とは桁が異なります。また環境省が2020年に行った調査では、対象となった51社のリンスオフ製品について、スクラブ剤としてマイクロプラスチックビーズを使用している製品は確認されなかったとされています。
Q3. 推計値に幅があるのはなぜですか?
環境省は結果を確定値ではなく暫定式・暫定値としており、幅は算出時に用いる推計式や使用するデータの不確実性を反映していると説明しています。評価できた発生源・品目も限られており、発生源から海洋への流出経路や動態が考慮できていない等の課題があるとしています。そのため、関連する調査・研究成果を踏まえて引き続き精緻化・更新を行う方針が示されています。
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