
「漁獲量がどこまで減ったのか」を知りたいときは、総量の折れ線を1本見るだけでは足りません。遠洋・沖合・沿岸・養殖・内水面の5層に分けた積み上げで見ると、総量が縮んだだけでなく、中身の比重が入れ替わっていることが見えてきます。
日本の漁獲量は、統計上は「漁業・養殖業生産量」という指標で公表されています。農林水産省の令和7年漁業・養殖業生産統計(第1報)によると、2025年の生産量は357万7,400tでした(概数値)。1984年のピーク1,281万5,900tと比べると27.9%で、およそ4分の1強の水準です。ただしこの数字は海面漁業の漁獲量だけでなく、養殖の収獲量も含んだ合計であり、海面漁業だけを取り出すと270万500tになります。
本記事では、農林水産省の海面漁業生産統計調査(長期累年・確報)と令和7年第1報、水産庁の令和7年度水産白書という一次情報をもとに、1979年から2025年までの推移を整理します。総量が何分の1になったかではなく、その総量の中身がどう入れ替わったかを、積み上げ図・内訳対比・量と額の対比・魚種別の推移という複数の角度から観察していきます。
身近な量に置き換えると、1人1年当たりの食用魚介類の消費量は2024年度が21.3kgで、365日で割ると1日あたり約58gです。ピークだった2001年度の40.2kgは1日あたり約110gでしたから、この四半世紀でおよそ半分になった計算になります(編集部試算)。
日本の魚は、この40年でどこまで減ったのでしょうか。
ピークの4分の1強まで縮み、中身も入れ替わりました。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
漁獲量はどこまで減ったのか|1984年のピークから2025年まで

推移は、総量1本の折れ線ではなく5層の積み上げで見ます。帯の厚みがどこで薄くなったかを追うと、総量の減少がどの部門で起きたのかが同時に読み取れます。
遠洋・沖合・沿岸の区分は、2006年までは動力漁船のトン数等による区分、2007〜2010年は推計値、2011年以降は漁業種類ごとの積み上げによるもので、時系列で連続しません。
1983年から、大中型まき網1そうまきのうち太平洋中央海区が沖合部門から遠洋部門に改定されています。
2011年は東日本大震災により岩手県・宮城県・福島県で消失したデータを含みません。
2002年以前は千t単位、2003年以降はt単位で公表されているため、万t換算して統一しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
漁業・養殖業生産量は、統計が長期累年でさかのぼれる1979年の1,059万400tから増加し、1984年に1,281万5,900tでピークを迎えました。その後1985年に一度落ち込み、1986年から1988年にかけては1,246万〜1,278万tの範囲で推移したあと、1989年以降は減少局面に入ります。
減り方は一様ではありません。1988年の1,278万4,700tから1995年の748万8,600tまでの7年間で530万t近くが失われており、この時期の落ち込みが46年間で最も急でした。農林水産省は、この時期の急速な減少について、各国の排他的経済水域の設定による海外漁場からの撤退と、漁場環境の悪化を要因として挙げています。
1996年以降は減少ペースが緩やかになり、2000年の638万4,100tから2009年の543万2,011tへ、さらに2010年の531万2,687tから2019年の420万3,664tへと下がりました。直近5年は2021年415万7,811t、2022年391万6,956t、2023年382万9,822t、2024年363万6,167t、2025年357万7,400t(概数値)と、緩やかな減少が続いています。
「漁獲量」と「生産量」は同じ数字ではありません

検索されることの多い「漁獲量」と、統計の指標名である「生産量」はカバーする範囲が違います。混同したまま数字を比べると桁がずれるので、最初に関係を図で確かめておきます。
各区分は百t単位で四捨五入されて公表されているため、内訳の和は合計と完全には一致しません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
漁業・養殖業生産量は、海面漁業の漁獲量、海面養殖業の収獲量、内水面漁業・養殖業の生産量という3つの区分を合計したものです。2025年の概数値では、海面漁業が270万500tで全体の75.5%、海面養殖業が83万1,900tで23.3%、内水面が4万5,011tで1.3%を占めています。
つまり「日本の漁獲量」として広く引用される数字には、育てた魚の収獲量が含まれています。本記事で「生産量」と書くときはこの3区分の合計を、「海面漁業の漁獲量」と書くときはとった魚だけを指します。数値を引用するときは、どの範囲の数字なのかを合わせて確認すると、他の資料との食い違いを避けられます。
総量ではなく中身が入れ替わった|遠洋漁業の縮小

ピークの年と直近の年を横に並べると、棒の高さだけでなく、帯の順番と厚みが変わっていることが分かります。総量の話と、内訳の話は別々に見ておきたいところです。
2025年は第1報のため遠洋・沖合・沿岸の内訳が未公表であり、内訳対比は確報同士の1984年と2024年で行っています。
遠洋・沖合・沿岸の区分は2006年までと2011年以降で基準が異なり、2007〜2010年は推計値です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
1984年と2024年を並べると、総生産量は1,281万5,900tから363万6,167tへ、917万9,733t減りました。この減少幅のうち最も大きい部分を占めるのが遠洋漁業です。遠洋漁業は1984年に228万tでしたが2024年には28万9,287tとなり、199万tあまり縮んでいます。遠洋漁業だけで見た最大は1987年の234万4,300tで、そこからの減少幅は205万5,013tにのぼります。
沖合漁業も1984年の695万5,900tから2024年の173万4,943tへと大きく減りました。一方で海面養殖業は1984年の111万800tに対して2024年は80万2,927tで、減少幅は他の部門に比べて小さく、全体に占める割合はむしろ上がっています。遠洋漁業が総生産量に占める割合は1984年の17.8%から2024年の8.0%に下がり、養殖業(海面・内水面の合計)の割合は9.4%から22.9%に上がりました。
水産庁は近年の生産量の減少について、海洋環境の変化や水産資源の減少などが指摘されていると白書に記しています。要因は魚種や海域によって異なるため、ひとつの理由に集約できるものではありません。ここでは、総量が縮むと同時に構成の比重が入れ替わったという事実を記録しておきます。
量と額では見え方が変わる|養殖の位置と輸出額

同じ年の同じ産業でも、量で数えるか額で数えるかで主役が変わります。2つの100%の棒を上下に並べると、その入れ替わりが1枚で確認できます。
生産量・生産額は2024年、輸出額は2025年の値で、統計の対象期間が異なります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2024年の漁業・養殖業の生産額は約1兆6,297億円で、前年から約541億円(約3%)減りました。このうち養殖業の生産額は約7,240億円で、全体の44.4%を占めています。一方、量で見ると養殖業(海面・内水面の合計)は83万2,058tで、生産量全体363万6,167tの22.9%です。量では2割強、額では4割強という差が生じています。
貿易の側でも、量と額は同じ向きに動いていません。2025年の水産物輸出は64万t(前年比+42.9%)、金額では4,231億円(同+17.2%)で、金額は過去最高を更新しました。輸入は208万t(同▲3.4%)に対し2兆1,454億円(同+3.8%)で、量が減っても金額は増えています。
国内の需給に目を向けると、2024年度の国内消費仕向量は641万t(食用497万t・非食用144万t)で、2014年度から148万t(19%)減りました。食用魚介類の自給率は52%(概算値)で、ピークだった1964年度の113%からは大きく下がっています。自給率や消費量は年度、生産量は年で集計されているため、比べるときは期間の単位を合わせて確認する必要があります。
魚種別に見る|さんま・さけ類・するめいか・まいわし

総量の話を魚種に分解すると、減った魚と戻った魚が同居しているのが分かります。桁が違うのでまいわしだけ上段に分けて、目盛りを変えて並べました。
上下のパネルで縦軸の目盛りが異なります(まいわしは他の3種より1桁多い年があります)。
2011年は東日本大震災により岩手県・宮城県・福島県で消失したデータを含みません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
さんまは1980年の18万7,155tから2024年の3万9,335tへ、さけ類は1980年の9万9,520tから2024年の4万6,706tへ、するめいかは1980年の33万1,225tから2024年の1万9,850tへと減りました。この3種の合計は2014年の54万7,976tから2022年の13万7,006tまで、8年で4分の1になっています。
一方でまいわしは違う動きを見せます。1988年に448万8,411tという突出した水準を記録したあと、2005年には2万7,601tまで落ち込み、その後は再び増えて2024年は66万6,403tです。同じ「漁獲量の減少」という言葉の中に、減ったままの魚種と戻ってきた魚種が混在しています。
魚種ごとの動きについては、サケとサンマを単独で扱った記事でも整理しています。サケの漁獲量と単価の推移はサケの漁獲量はどこまで減った?単価の推移も図解を、サンマについてはサンマの漁獲量の推移をあわせてご覧ください。
年代別に見る漁業・養殖業生産量の一覧

ここまでは図で全体の形を見てきました。特定の年の数字を確かめたいときのために、1979年から2025年までの年次データを年代別のタブに分けて置いておきます。
1979〜1989年(単位:万t)
| 年 | 総生産量 | 海面漁業 | 海面養殖業 | 内水面 |
|---|---|---|---|---|
| 1979 | 1,059.0 | 947.7 | 88.3 | 23.1 |
| 1980 | 1,112.2 | 990.9 | 99.2 | 22.1 |
| 1981 | 1,131.9 | 1,014.3 | 96.0 | 21.6 |
| 1982 | 1,138.8 | 1,023.1 | 93.8 | 21.9 |
| 1983 | 1,196.7 | 1,069.7 | 106.0 | 21.1 |
| 1984 | 1,281.6 | 1,150.1 | 111.1 | 20.4 |
| 1985 | 1,217.1 | 1,087.7 | 108.8 | 20.6 |
| 1986 | 1,273.9 | 1,134.1 | 119.8 | 20.0 |
| 1987 | 1,246.5 | 1,112.9 | 113.7 | 19.8 |
| 1988 | 1,278.5 | 1,125.9 | 132.7 | 19.8 |
| 1989 | 1,191.3 | 1,044.0 | 127.2 | 20.2 |
1990〜1999年(単位:万t)
| 年 | 総生産量 | 海面漁業 | 海面養殖業 | 内水面 |
|---|---|---|---|---|
| 1990 | 1,105.2 | 957.0 | 127.3 | 20.9 |
| 1991 | 997.8 | 851.1 | 126.2 | 20.5 |
| 1992 | 926.6 | 777.1 | 130.6 | 18.8 |
| 1993 | 870.7 | 725.6 | 127.4 | 17.7 |
| 1994 | 810.3 | 659.0 | 134.4 | 16.9 |
| 1995 | 748.9 | 600.7 | 131.5 | 16.7 |
| 1996 | 741.7 | 597.4 | 127.6 | 16.7 |
| 1997 | 741.1 | 598.5 | 127.3 | 15.3 |
| 1998 | 668.4 | 531.5 | 122.7 | 14.3 |
| 1999 | 662.6 | 523.9 | 125.3 | 13.4 |
2000〜2019年(単位:万t)
| 年 | 総生産量 | 海面漁業 | 海面養殖業 | 内水面 |
|---|---|---|---|---|
| 2000 | 638.4 | 502.2 | 123.1 | 13.2 |
| 2001 | 612.6 | 475.3 | 125.5 | 11.7 |
| 2002 | 588.0 | 443.4 | 133.3 | 11.3 |
| 2003 | 608.3 | 472.2 | 125.1 | 11.0 |
| 2004 | 577.5 | 445.5 | 121.5 | 10.5 |
| 2005 | 576.5 | 445.7 | 121.2 | 9.6 |
| 2006 | 573.5 | 447.0 | 118.3 | 8.3 |
| 2007 | 572.0 | 439.7 | 124.2 | 8.1 |
| 2008 | 559.2 | 437.3 | 114.6 | 7.3 |
| 2009 | 543.2 | 414.7 | 120.2 | 8.3 |
| 2010 | 531.3 | 412.2 | 111.1 | 7.9 |
| 2011 | 476.6 | 382.4 | 86.9 | 7.3 |
| 2012 | 485.3 | 374.7 | 104.0 | 6.7 |
| 2013 | 477.4 | 371.5 | 99.7 | 6.1 |
| 2014 | 476.6 | 371.3 | 98.8 | 6.4 |
| 2015 | 463.1 | 349.2 | 106.9 | 6.9 |
| 2016 | 436.8 | 327.3 | 103.3 | 6.3 |
| 2017 | 430.6 | 325.8 | 98.6 | 6.2 |
| 2018 | 442.7 | 336.6 | 100.5 | 5.7 |
| 2019 | 420.4 | 323.5 | 91.5 | 5.3 |
2020〜2025年(単位:万t)
| 年 | 総生産量 | 海面漁業 | 海面養殖業 | 内水面 |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 423.6 | 321.5 | 97.0 | 5.1 |
| 2021 | 415.8 | 317.9 | 92.7 | 5.2 |
| 2022 | 391.7 | 295.1 | 91.2 | 5.4 |
| 2023 | 383.0 | 292.6 | 85.2 | 5.2 |
| 2024 | 363.6 | 278.6 | 80.3 | 4.7 |
| 2025 概数値 | 357.7 | 270.1 | 83.2 | 4.5 |
2002年以前は千t単位、2003年以降はt単位で公表されているため、万t換算して統一しています。2011年は東日本大震災により岩手県・宮城県・福島県で消失したデータを含みません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総生産量が400万tを下回ったのは2022年の391万6,956tが最初で、海面漁業が300万tを割ったのも同じ2022年の295万1,001tでした。海面養殖業は2010年代を通じて90万t台から100万t台で推移していましたが、2023年に85万1,509t、2024年に80万2,927tと、直近2年は90万tを下回っています。
内水面漁業・養殖業は1979年の23万1,000tから2025年の4万5,011tまで縮んでいますが、この区分は調査範囲そのものが複数回変更されています。内水面漁業の調査範囲は2000年までは全河川・湖沼、2001年から2003年までは主要148河川28湖沼、2024年からは主要142河川24湖沼というように改定されているため、内水面の数値を長期で比べるときは、調査範囲の変更を織り込んで読む必要があります。
楓のまとめ|総量の縮小と、中身の入れ替わりは別の話

ここまで並べた図解を重ねると、「どこまで減ったか」と「何が減ったか」は別々に答えるべき問いだったことが見えてきます。3つの観察事実に整理します。
「日本の漁獲量はどこまで減ったのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、総量の水準と内訳の構成が別々に動いてきたことを示してきました。指標の範囲、期間の取り方、量と額のどちらで数えるか。どれを選ぶかで見え方が変わります。数値に評価をつけるのではなく、観察できた事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、「漁獲量が減った」という一言の中に、遠洋漁業の縮小、養殖の相対的な比重の上昇、魚種ごとの増減、そして量と額のずれという別々の動きが同時に含まれていることが分かります。総量が何分の1になったかという問いと、その総量の中身がどう変わったかという問いは、別の答えを持っています。「日本の漁獲量の推移」を見るときは、どの範囲を、どの期間で、量と額のどちらで数えた数字なのかをそろえて確認することが、そのまま景色の解像度を上げることにつながります。
よくある質問(FAQ)

漁獲量のグラフを読むときは、指標の範囲・年と年度の違い・確報か概数値かの3点をセットで確認してください。この3点が変わるだけで、読み取れる数字が変わります。
Q1. 「漁獲量」と「生産量」はどう違うのですか?
統計上の指標名は「漁業・養殖業生産量」で、海面漁業の漁獲量、海面養殖業の収獲量、内水面漁業・養殖業の生産量を合計したものです。2025年の概数値では、生産量357万7,400tのうち海面漁業が270万500t、海面養殖業が83万1,900t、内水面が4万5,011tでした。「漁獲量」という言葉が海面漁業の分だけを指す場合と、生産量全体を指す場合があるため、数字を比べるときは範囲をそろえて確認するのが確実です。
Q2. 生産量が減ってきた理由はどう説明されていますか?
農林水産省は、1988年から1995年ごろにかけての急速な減少について、各国の排他的経済水域の設定による海外漁場からの撤退と、漁場環境の悪化を挙げています。水産庁は令和7年度水産白書で、近年の減少について海洋環境の変化や水産資源の減少などが指摘されていると記しています。要因は魚種や海域ごとに異なり、公表資料もひとつの理由に絞り込む書き方はしていません。
Q3. 生産量が減るなかで、輸出額はどう動いていますか?
2025年の水産物輸出は数量64万t(前年比+42.9%)、金額4,231億円(同+17.2%)で、金額は過去最高を更新しました。同じ年の生産量は357万7,400tで前年比▲1.6%です。生産量と輸出額は対象も単位も異なる指標であり、同じ向きに動くとは限りません。産業の規模を語るときに量で見るか額で見るかによって、示される姿が変わる点は、2024年の生産額における養殖業の割合(44.4%)と生産量における割合(22.9%)の差にも表れています。
🔍 この記事のファクトチェックについて

当サイトはファクトチェックを実施しています。このページのファクトチェックのエビデンスを以下に掲載します。




