
原油の価格は、ドルで見るか円で見るか、名目で見るか実質で見るかによって、同じ年の同じ原油が違う高さに見えてきます。4つの物差しを1枚ずつ並べて、50年の動きをたどってみます。
オイルショックから50年が過ぎました。世界銀行が公表する原油価格(Brent・Dubai・WTIの等加重平均)は、2025年の年平均が1バレル67.4ドル、2026年5月の月平均が100.4ドルです。ただし物価の変動を調整した実質(2010年ドル換算)の年平均で並べ直すと、第2次オイルショック期の1980年は56.5ドル、2025年は58.1ドルとなり、50年を隔てた2つの年がほぼ同じ高さに並びます。
日本が実際に支払う輸入価格は、別の動き方をしています。原油の輸入CIF価格は、ドル建てでは2008年8月の1バレル135.47ドルが最も高く、2026年6月はその86.5%です。円建てでは2026年6月が1キロリットルあたり117,684円(速報値)となり、2022年7月の99,600円を18,084円上回りました。1キロリットルは1,000リットルですから、原油1リットルあたり約118円という水準です。
本記事では、世界銀行の商品価格データと、石油連盟・資源エネルギー庁が公表する原油の輸入CIF価格(原資料は財務省「日本貿易統計」)をもとに、名目と実質、ドル建てと円建てという4つの物差しで、1960年から2026年までの推移を図解します。
原油の価格は、この50年でどこまで動いてきたのでしょうか。
実質では第2次オイルショック期に並び、円建ての輸入価格は過去最高を更新しました。
出典:世界銀行「World Bank Commodities Price Data」(2026年8月4日)/石油連盟「原油・粗油及び石油製品CIF価格」(原資料:財務省「日本貿易統計」)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
名目価格でたどる50年|1960年から2026年の原油価格

まずは、その年その年のドルでいくらだったかという名目の推移です。長い横ばいのあとに2度の段差があり、2000年代にもう一段上がる形が見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
世界銀行が公表する原油価格(Brent・Dubai・WTIの等加重平均)を年平均で並べると、1960年代は1バレル1ドル台の横ばいが続いていました。1973年は2.8ドル、1974年は11.0ドルで、第1次オイルショックの前後で水準が一段変わっています。
次の段差は1979年から1980年にかけてです。1978年の12.9ドルから1979年は31.0ドル、1980年は36.9ドルへと上がり、1980年代前半はこの水準が続きました。1986年に14.4ドルまで下がったあとは、1990年代を通じて13ドルから23ドルの範囲で推移しています。
2000年代に入ると水準はさらに変わります。2000年の28.2ドルから上昇し、2008年は97.0ドル、2011年から2013年は104ドル前後で推移して、2012年の105.0ドルが名目の最高年です。その後は2016年の42.8ドル、2020年の41.3ドルまで下がる局面をはさみ、2022年に97.1ドルまで戻りました。
直近では2023年80.8ドル、2024年78.7ドル、2025年67.4ドルと下がっています。一方で2026年は4〜6月期の平均が95.3ドルとなりました。名目で見ると、1960年の1.6ドルと2012年の105.0ドルのあいだには65.6倍の開きがあります。なお2026年の年平均はまだ確定していません。
名目と実質|1980年と2025年がほぼ同じ高さに並ぶ

同じ系列を、物価の変動を調整した実質でも並べてみます。名目の折れ線とは山の高さが変わり、どの時代が本当に高かったのかの見え方が変わってきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
世界銀行は同じ原油価格を、名目と実質(2010年ドル換算)の2通りで公表しています。実質は各年の価格を2010年の物価水準に置き直したもので、時代の違う年どうしを同じ物差しに載せるための系列です。本記事では出典の2010年ドル基準をそのまま使っています。
実質で並べると、第1次オイルショック期の1974年は29.2ドル、1975年は25.0ドルです。第2次オイルショック期の1979年は52.2ドル、1980年は56.5ドルで、1985年まで45ドル以上が続きました。1986年に20.9ドルへ下がり、1998年には15.9ドルまで低下しています。
そして2025年の実質は58.1ドルです。1980年の56.5ドルと比べると1.03倍で、名目では1.83倍に開いた45年の差が、実質ではほぼ消えます。実質の最高年は2012年の95.3ドルで、オイルショック期の水準を上回っています。
名目と実質のどちらが正しいということではなく、問いによって使い分ける関係です。「いくら払ったか」を見るなら名目、「当時の暮らしの中でどれくらいの重さだったか」を見るなら実質が対応します。同じ論点は物価と賃金の比較でも現れます(物価と賃金、30年の推移を比較&図解)。
円建てとドル建て|通貨によって「過去最高」の答えが変わる

ここからは、日本が実際に支払う輸入価格です。円建てとドル建てを1枚に重ねると、同じ月の同じ原油なのに、2本の線の最高地点がずれているのが見えてきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
原油の輸入CIF価格は、保険料と運賃を含んだ日本到着時点の価格です。財務省の日本貿易統計をもとに、ドル建て(1バレルあたりドル)と円建て(1キロリットルあたり円)の両方が公表されています。同じ取引を2つの通貨で見た数字です。
ドル建てで最も高かったのは2008年8月の135.47ドル/バレルでした。2022年7月は116.41ドル、2026年6月は117.18ドル(速報値)で、いずれも2008年8月には届いていません。2026年6月は2008年8月の86.5%の水準です。
円建てでは順番が変わります。2008年8月は92,198円/kl、2022年7月は99,600円/kl、そして2026年6月は117,684円/kl(速報値)です。円建てでは2026年6月が最も高く、2022年7月を18,084円/kl上回っています。2022年7月の118%にあたる水準です。
2つの数字を分けているのは為替です。2008年8月の換算レートは1ドル108.20円、2026年6月は159.67円で、1.48倍になっています。ドル建てで2008年に届かなくても、円に直すと最高値になるのはこのためです(円高円安の推移、50年のドル円レートを図解で解説)。
なお2025年12月から2026年2月までの3か月は、本記事が使用した2つの公表系列のどちらにも収録がないため、図では破線でつないでいます。また2026年6月は速報値で、後日の確報で修正される場合があります。
石油への依存と中東への依存|2本の線が向かう方向

価格の話から少し離れて、日本が原油をどれだけ使い、どこから買っているかを見ておきます。2本の線は、同じ向きには動いていません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
資源エネルギー庁の資料によると、一次エネルギー供給に占める石油の割合は1973年度に75.5%でした。近年は40%以下で推移しています。エネルギー源の構成が広がったぶん、石油1つに寄りかかる度合いは下がりました(日本の電源構成は?内訳をデータで図解)。
一方、原油輸入の中東依存度は違う動き方をしています。1967年度は91.2%、1987年度は67.9%まで下がりましたが、2009年度は89.5%、2022年度は95.2%と上がり、2023年度は94.7%です。石油への依存は下がった一方で、中東への依存は1960年代の水準に戻っています。
資源エネルギー庁は、原油自給率が長らく0.5%未満であること、石油備蓄が2024年8月時点で203日分あることも記述しています。また原油輸入額が総輸入金額に占める割合は、第2次オイルショック後に35%を超えたのち、1980年代半ば以降は概ね10%から15%、2020年度は5.9%、2023年度は10.4%と変化しています。
輸入価格の変動は、電気やガスの料金に一定の時間差をおいて反映される関係にあります。反映のしかたは各社の燃料費調整制度によって決まるため一律ではありません(電気料金の推移を自由化前後で図解)。
2026年の局面|4つの指標で見た水準

最後に、直近の2026年を4つの指標で切り出してみます。銘柄によって水準が違い、月によっても大きく動いていることがわかります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
世界銀行の2026年8月4日版によると、原油価格の平均は2026年1〜3月期が75.7ドル、4〜6月期が95.3ドルでした。月別では5月が100.4ドル、6月が81.7ドル、7月が79.8ドルです。2025年の年平均67.4ドルと比べると、4〜6月期は1.41倍にあたります。
銘柄別に見ると2026年5月はBrentが107.5ドル、WTIが99.1ドル、Dubaiが94.7ドルでした。同じ月でもBrentとDubaiのあいだには12.8ドルの開きがあります。エネルギー価格指数(2010年=100)は2025年が90.0、2026年4〜6月期が130.1、7月が108.7です。
世界銀行は2026年4月28日に公表した Commodity Markets Outlook で、2026年のエネルギー価格指数が前年比24%上昇し、商品価格全体は16%上昇するとの見通しを示しています。同資料はホルムズ海峡が世界の海上原油貿易の約35%を扱うこと、当初の世界石油供給が約1,000万バレル/日減少したことを記述しています。
同資料のブレント原油の2026年平均見通しは1バレル86ドルで、2026年1月版から26ドルの上方修正です。2027年の見通しは70ドルとされています。いずれも見通しであって実績ではありません。2026年7月のエネルギー価格指数は前月比1.1%の低下、原油は2.2%の低下でした。
年代別の年平均一覧|1970年代から2020年代まで

ここまでの折れ線を数字でも確認できるように、年平均を年代ごとの表にまとめました。タブを切り替えると、名目と実質を同じ行で見比べられます。
| 年 | 名目(ドル/バレル) | 実質(2010年ドル) |
|---|---|---|
| 1970年 | 1.2 | 5.2 |
| 1971年 | 1.7 | 6.9 |
| 1972年 | 1.8 | 6.8 |
| 1973年 | 2.8 | 9.1 |
| 1974年 | 11.0 | 29.2 |
| 1975年 | 10.4 | 25.0 |
| 1976年 | 11.6 | 27.5 |
| 1977年 | 12.6 | 27.5 |
| 1978年 | 12.9 | 24.3 |
| 1979年 | 31.0 | 52.2 |
| 年 | 名目(ドル/バレル) | 実質(2010年ドル) |
|---|---|---|
| 1980年 | 36.9 | 56.5 |
| 1981年 | 35.5 | 54.3 |
| 1982年 | 32.6 | 51.5 |
| 1983年 | 29.7 | 48.1 |
| 1984年 | 28.6 | 47.3 |
| 1985年 | 27.2 | 45.5 |
| 1986年 | 14.4 | 20.9 |
| 1987年 | 18.1 | 24.1 |
| 1988年 | 14.7 | 18.4 |
| 1989年 | 17.8 | 22.4 |
| 1990年 | 22.9 | 27.7 |
| 1991年 | 19.4 | 23.6 |
| 1992年 | 19.0 | 22.8 |
| 1993年 | 16.8 | 19.5 |
| 1994年 | 15.9 | 19.0 |
| 1995年 | 17.2 | 18.7 |
| 1996年 | 20.4 | 22.6 |
| 1997年 | 19.2 | 22.3 |
| 1998年 | 13.1 | 15.9 |
| 1999年 | 18.1 | 22.4 |
| 年 | 名目(ドル/バレル) | 実質(2010年ドル) |
|---|---|---|
| 2000年 | 28.2 | 35.5 |
| 2001年 | 24.4 | 31.8 |
| 2002年 | 24.9 | 32.9 |
| 2003年 | 28.9 | 36.3 |
| 2004年 | 37.7 | 44.4 |
| 2005年 | 53.4 | 60.9 |
| 2006年 | 64.3 | 71.5 |
| 2007年 | 71.1 | 74.5 |
| 2008年 | 97.0 | 94.3 |
| 2009年 | 61.8 | 64.0 |
| 2010年 | 79.0 | 79.0 |
| 2011年 | 104.0 | 93.7 |
| 2012年 | 105.0 | 95.3 |
| 2013年 | 104.1 | 94.8 |
| 2014年 | 96.2 | 88.9 |
| 2015年 | 50.8 | 51.9 |
| 2016年 | 42.8 | 45.5 |
| 2017年 | 52.8 | 54.3 |
| 2018年 | 68.3 | 67.1 |
| 2019年 | 61.4 | 61.7 |
| 年 | 名目(ドル/バレル) | 実質(2010年ドル) |
|---|---|---|
| 2020年 | 41.3 | 42.1 |
| 2021年 | 69.1 | 63.1 |
| 2022年 | 97.1 | 82.7 |
| 2023年 | 80.8 | 70.8 |
| 2024年 | 78.7 | 68.4 |
| 2025年 | 67.4 | 58.1 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
年代ごとの平均を取ると、名目では1970年代が9.7ドル、1980年代が25.6ドル、1990年代が18.2ドル、2000年代が49.2ドル、2010年代が76.4ドル、2020年から2025年が72.4ドルです。1990年代がいったん下がり、2000年代以降に水準が上がる形になっています。
同じ期間を実質で見ると、1970年代が21.4ドル、1980年代が38.9ドル、1990年代が21.4ドル、2000年代が54.6ドル、2010年代が73.2ドル、2020年から2025年が64.2ドルです。実質では1970年代と1990年代が同じ21.4ドルで並びます。
楓のまとめ|4つの物差しで見た50年の原油価格

名目と実質、ドル建てと円建て。4つの物差しを並べ終えたので、見えてきたことを3つの観察事実に整理してみます。
「原油価格の推移」という1つの問いに対して、本記事で並べた図解は、物差しを変えるたびに違う高さを示してきました。どれかが正しくてどれかが誤っているのではなく、測っているものが違います。数値そのものに順位をつけず、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、原油価格という1つの言葉が、実際には複数の数字の束であることが見えてきます。名目か実質か、ドル建てか円建てかという2つの選択だけで、「いまは過去最高か」への答えは4通りに分かれます。
「原油価格の推移」を読むときは、どの通貨で、どの物価水準に置き直して、どの期間を切り出しているのかをセットで確認すると、数字の意味が定まります。50年という長さは、その4つの選択の違いが最も大きく現れる時間の幅でもあります。
よくある質問(FAQ)

原油価格のグラフを読むときは、通貨・物価調整・期間の3点をセットで確認してください。同じデータでも、この3点が変わるだけで読み取れる形が変わります。
Q1. 原油価格はいま「過去最高」なのですか?
見る物差しによって答えが変わります。世界銀行の原油価格(Brent・Dubai・WTIの等加重平均)の年平均では、名目・実質のいずれも最高年は2012年で、名目105.0ドル、実質95.3ドルです。一方、日本の原油輸入CIF価格を円建てで見ると、2026年6月の117,684円/kl(速報値)が公表系列のなかで最も高い水準です。同じドル建ての輸入CIF価格では2008年8月の135.47ドル/バレルが最高で、2026年6月はその86.5%です。
Q2. 名目と実質では、どちらで比べるのが適切ですか?
問いによって使い分けます。「その時点でいくら支払ったか」を知りたいときは名目が対応します。「時代の違う年どうしで、負担の重さがどう違ったか」を知りたいときは、物価水準をそろえた実質が対応します。本記事の実質は世界銀行が公表する2010年ドル換算の系列をそのまま使っており、基準年の置き換えは行っていません。
Q3. 原油価格が上がると、電気やガスの料金もすぐ上がるのですか?
同じ月にそのまま反映されるわけではありません。電気・ガス料金には燃料費調整制度があり、一定期間の平均燃料価格をもとに、数か月の時間差を置いて調整額が決まります。反映の幅や時期は各社の料金メニューによって異なるため、実際の請求額は契約先の公表資料で確認する必要があります。原油価格は、こうした制度を経由して家計に届く上流の指標にあたります。
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