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「医師が足りない」とよく聞きますが、全国の医師数は実は過去最多です。鍵は総数ではなく、どの県に何人いるかという「偏在」。人口10万対の医師数を、ランキング・タイルマップ・実形状の地図で重ねて見ると、その正体がはっきり見えてきます。
日本の医師数は増え続けており、令和6年(2024年)には全国で347,772人と過去最多を記録しました。それでも「医師不足」という言葉が消えないのは、医師の数そのものより、医師が地域や診療科にどう分布しているか、という「偏在」が問題の中心だからです。
厚生労働省の「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)によると、人口10万人あたりの医療施設従事医師数は全国平均で267.4人。これを都道府県(従業地)別に見ると、最多は徳島県の345.4人、最少は埼玉県の189.1人で、その差は約1.83倍にのぼります。本記事では、この47都道府県の医師数を、ランキング表・47県タイルマップ・実形状コロプレスで可視化し、西高東低という地域の偏りや、診療科ごとの偏在までを順に整理します。
医師数は過去最多なのに「医師不足」と言われ続けるのはなぜか。
答えは「数」ではなく「偏在」。人口10万対の医師数は、県によって1.83倍の差がある。
人口10万対 医師数・全国最多(徳島県)
345.4人
医療施設に従事する医師・従業地(勤務先の都道府県)別/令和6年(2024)確定値
最多(徳島県)
345.4人
人口10万人あたり(全国1位)
最少(埼玉県)
189.1人
人口10万人あたり(全国47位)
地域格差
1.83倍
全国平均は267.4人(差156.3人)
この記事の要点
◆ 全国の届出医師数は347,772人で過去最多。それでも「医師不足」が言われ続ける理由は、総数ではなく「偏在(分布の偏り)」にあります。
◆ 人口10万対の医療施設従事医師数は、最多の徳島県345.4人に対し最少の埼玉県は189.1人で、その差は約1.83倍(全国平均267.4人)。
◆ 医師は西日本と大都市に多く、首都圏の周辺県(埼玉・千葉・茨城)は下位に。小児科・産婦人科・外科でも下位県は薄い傾向です。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表・図5/統計表10)。県別の値は医療施設に従事する医師の従業地(勤務先の都道府県)別です。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
都道府県でこれだけ違う、医師数の地図

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まずは全47都道府県の数字を、順位の表と、面積のゆがみがないタイルマップの両方で見てみます。表は「何位か」を、タイルマップは「どの県が濃いか」を、それぞれ得意な形で見せてくれます。
人口10万人あたりの医療施設従事医師数を全国で比べると、最も多いのは徳島県の345.4人、次いで長崎県333.8人、京都府333.2人と続きます。反対に最も少ないのは埼玉県の189.1人で、茨城県198.1人、千葉県213.3人がこれに続きます。最多の徳島県と最少の埼玉県では約1.83倍、人数にして156.3人の差があります。
ここで使っている数字は「従業地ベース」、つまり医師が実際に勤務している都道府県で数えたものです。住んでいる場所ではなく勤務先で集計されるため、大きな病院や大学病院が集まる県ほど数字が高く出やすい性質があります。全国平均の267.4人を上回るのは上位26県ほどで、平均を下回る県が約半数を占めます。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」図5・統計表10
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
タイルマップは各県を同じ大きさのタイルで表すため、面積の大きい北海道や小さい東京が、面積に惑わされずに同じ土俵で比較できます。色の濃い県(医師が多い県)が西日本にまとまり、淡い県(少ない県)が関東の周辺部と東北・新潟に寄っている様子が、ひと目で読み取れます。
なぜ西日本に医師が多いのか

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タイルマップで見えた「西に濃い」という分布を、今度は実際の地図の形で確かめます。県の位置や隣り合わせの関係が見えると、偏りが「地域のかたまり」として理解しやすくなります。
医師数の上位には、徳島・長崎・京都・和歌山・高知・岡山・島根・福岡といった西日本の県が多く並びます。実際の地図の形に色を載せたコロプレスで見ると、中国・四国・九州から近畿にかけての一帯が濃く塗られ、医師が西日本に厚く分布している様子が面として浮かび上がります。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師統計 統計表10/地図:地球地図日本(国土地理院)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
この傾向の背景としてよく挙げられるのが、医学部や大学病院の地理的な分布です。古くから医育機関が置かれた地域には医師が集まりやすく、卒業後もその周辺で働き続ける人が一定数います。ただし、これはあくまで確定値の地図から観察できる傾向であり、「西高東低」という言葉自体は厚生労働省の公式な評価ではなく、本記事が地図を見て整理した呼び方です。色の濃淡は地域の医療の優劣を表すものではない点には注意が必要です。
「従業地ベース」が映す都市の引力

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地図をよく見ると、東京は濃いのに、すぐ隣の埼玉・千葉・茨城は淡い、という不思議な並びがあります。これは数え方のクセが効いている部分です。一緒に整理してみましょう。
医師数のランキングで東京都は全国6位(324.1人)と高い位置にあります。ところが、東京に隣接する埼玉県は47位、茨城県は46位、千葉県は45位と、いずれも最下位層に沈んでいます。大都市とその周辺県で、これほど数字が割れるのはなぜでしょうか。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」図5
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
鍵は、この指標が「従業地(勤務先)ベース」である点です。埼玉県や千葉県に住んでいても、都心の病院に勤務する医師は東京都側で数えられます。通勤圏として都心と一体化した周辺県では、住民に対して働く医師が薄く見えやすい構造があるわけです。周辺県の住民が都内の医療機関を利用している実態もあり、県境をまたいだ医療の動きが、この数字には十分に映りきりません。
診療科で見ると、偏りはさらに深い

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「県全体の医師数」だけでは見えない偏りもあります。子どもの医療、お産の医療、手術の医療。必要な診療科がそろっているかは、別の数字で確かめる必要があります。
医師の偏在は、県ごとの総数だけでなく、診療科ごとにも現れます。主たる診療科が小児科の医師数を15歳未満人口10万人あたりで見ると、最多の鳥取県187.3に対し、千葉県は101.5にとどまります。産婦人科・産科(15-49歳女性人口10万対)や外科でも、埼玉県が全国最少の水準にあります。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
注意したいのは、診療科ごとに分母となる人口が異なる点です。小児科は15歳未満人口、産婦人科は15-49歳女性人口を基準にしているため、県全体の人口10万対医師数とは直接比べられません。それでも、首都圏の周辺県が複数の診療科で下位に並ぶことからは、総数の偏在が、子どもやお産といった特定分野の手薄さにもつながりうることがうかがえます。
医師数は増えている、それでも偏在は残る

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最後に、全国の総数の動きを確認します。「数は増えているのに足りない感じがする」という体感の正体を、増え方の中身から見てみましょう。
全国の届出医師数は347,772人で、前回(令和4年)の343,275人から約4,500人増え、過去最多を更新しました。施設別では、病院に勤務する医師が219,393人(前年比0.3%減)、診療所の医師が111,699人(同4.1%増)と、診療所側の増加が目立ちます。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」表1ほか
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
ここで一点、数字の読み方に注意があります。医師数には「届出ベース(全医師)」と「医療施設従事ベース(病院・診療所で働く医師)」の2つの人口10万対の値があり、全国ではそれぞれ280.9人と267.4人です。本記事の県別比較は、すべて医療施設従事ベースの267.4人を基準にそろえています。総数が過去最多を更新しても、その医師がどの地域・どの診療科に配置されるかという偏在は、数の増加だけでは自動的に解消しない。これが、医師数のデータから見える構造です。
楓のまとめ|「足りない」の正体は、総数ではなく分布の偏り

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ここまで見てきた数字と地図を、3つの観察事実に整理しておきます。どれも「医師が足りない」という体感の正体を、別々の角度から照らしています。
「日本は医師が足りないのか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、総数は過去最多である一方で、その分布には大きな偏りがあることを示してきました。県別の格差、西高東低の地域構造、従業地ベースという指標の性質、そして診療科ごとの偏り。これらをデータの優劣としてではなく、観察された事実として整理しておきます。
3つの観察事実
観察1. 全国の医師数は347,772人で過去最多を更新しました。それでも県別に見ると、人口10万対の医療施設従事医師数は徳島県345.4人から埼玉県189.1人まで開き、最多と最少で約1.83倍の差があります。総数は増えても、人口に対する手厚さは住む県によって大きく変わります。
観察2. 地図で見ると、医師の多い県は西日本に、少ない県は首都圏の周辺と東北・新潟に集まる傾向が観察できます。東京都は6位と高い一方、隣接する埼玉・千葉・茨城は下位に位置します。この値は従業地(勤務先)ベースのため、大都市に通勤する医師がそこに集計され、周辺県が低く出る面があります。
観察3. 偏りは診療科でさらに深くなります。小児科(15歳未満人口10万対)は最多の鳥取県187.3に対し千葉県は101.5、産婦人科・産科や外科では埼玉県が全国最少の水準です。県全体の医師数が多い県でも、県内のへき地や特定の診療科が不足するという別の偏在は残ります。
3つの観察事実を重ねて読むと、「医師が足りない」という体感の多くは、医師の総数そのものより、医師がどこに・どの診療科に集まっているかという分布の偏りから生まれていることが見えてきます。医師数が多い県でも県内のへき地不足は残り、数の増加と偏在の解消は別の問題として続いています。自分が暮らす地域の医療環境を考えるときは、全国の総数ではなく、住んでいる県や地域の人口あたりの医師数と、必要な診療科がそろっているかを合わせて見ることが、データの読み方として実態に近づきます。
よくある質問(FAQ)

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医師数のデータを読むときは、「従業地ベースかどうか」「総数か人口あたりか」「診療科の分母は何か」の3点を確認すると、誤読を避けやすくなります。
Q1. 医師数が多い県は「医療が充実している」といえますか?
人口あたりの医師数が多いことは、医療体制を考えるうえで重要な目安のひとつですが、それだけで医療の充実度が決まるわけではありません。県全体の数字が多くても、県内の都市部に医師が偏り、山間部や離島で不足しているケースは少なくありません。また、この指標は従業地(勤務先)ベースのため、大きな病院がある県に数字が集まりやすい面もあります。県全体の医師数は出発点として見つつ、県内の地域差や診療科のそろい方も合わせて確認するのがおすすめです。
Q2. なぜ埼玉県や茨城県が最下位なのですか?
最大の理由は、これらの県が東京都に隣接する通勤圏だからです。埼玉県や千葉県、茨城県に住んでいても、都心の病院に勤務する医師は東京都側で数えられます。医師数は従業地(勤務先の都道府県)で集計されるため、都心と一体化した周辺県では、住民の数に対して働く医師が薄く見えやすくなります。住民が都内の医療機関を利用している実態も多く、県の数字だけで「医療が手薄」と断定はできない点に注意が必要です。
Q3. 「従業地ベース」と「住所地ベース」はどう違うのですか?
従業地ベースは医師が勤務している都道府県で数える方法、住所地ベースは医師が住んでいる都道府県で数える方法です。本記事や厚生労働省の県別の人口10万対医師数は、すべて従業地(勤務先)ベースです。両者は大都市とその周辺で特に差が出やすく、たとえば埼玉県に住んで東京都の病院に勤める医師は、従業地ベースでは東京都にカウントされます。県別の数字を比べるときは、この「どこで数えているか」を意識すると、都市部とその周辺の見え方の違いを正しく読み取れます。
🔍 この記事のファクトチェックについて

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記事内の主要な数値・事実について、公式サイトおよび一次情報源を用いて確認しています。確認できた項目には「確認済み」、解釈や算定を含む項目には「要確認」を表示しています。
✅ 確認済み
産婦人科・産科(15-49歳女性人口10万対)は福井66.4が最多・埼玉35.1が最少、外科は長崎32.3が最多・埼玉14.6が最少
同概況 診療科別 →
⚠ 要確認
最多と最少の格差「約1.83倍」「差156.3人」は、公式2値(徳島345.4・埼玉189.1)の比と差から算出した値です(345.4÷189.1≒1.826)。
算定値。元データは概況 統計表10 →