
「戦後の景気はどう動いてきたのか」という問いは、景気の山と谷を時間軸に並べ、CI一致指数の折れ線を重ねると一目で追えます。後退期をグレー帯で示すと、拡張と後退の繰り返しが波形として見えてきます。
景気動向指数は、生産や雇用など景気に敏感な指標を統合して景気の現状をとらえる指標です。内閣府の景気基準日付によれば、戦後の景気は山と谷を繰り返し、循環の数は第1循環から第16循環まで数えられています。拡張と後退の長さは循環ごとに大きく異なり、最長の拡張は第14循環の73か月、最長の後退は第9循環の36か月でした。戦後の景気は、拡張と後退を16回にわたって繰り返してきたという推移そのものが、景気循環の基本的な姿です。
本記事では、内閣府の景気基準日付(確定値)と、CI一致指数の月次系列(令和2年=100)という一次情報を、循環の山谷とCIの折れ線を重ねた図、拡張・後退期間の横棒、長期推移の折れ線などで整理します。上段の景気基準日付は1951年から、下段のCI一致指数は1996年からと対象期間が異なるため、その境界を明示しながら、神武景気からいざなぎ・バブル・コロナまでの推移を観察していきます。
戦後の景気は、どれだけ拡張と後退を繰り返してきた?
戦後の景気循環は16回。拡張と後退を繰り返してきた。
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景気動向指数とは何か|CIとDI・先行と一致と遅行

はじめに、図解を読むための土台として、景気動向指数の構成を整理します。CIとDIの違い、そして先行・一致・遅行という3つの指数の関係を、カードと矢印で並べてみます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
景気動向指数は、生産・雇用・消費など、景気に敏感な30系列(先行11・一致10・遅行9)の動きを統合した指標です。内閣府の利用の手引によれば、指数にはコンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)の2種類があります。CIは景気変動の大きさやテンポ(量感)を測り、DIは改善している系列の割合(波及度)を測るという役割の違いがあります。
CIとDIには、それぞれ先行指数・一致指数・遅行指数があります。先行指数は景気に先立って動くため動きの予測に、一致指数は景気とほぼ一致して動くため現状把握に、遅行指数は遅れて動くため事後の確認に用いられます。このうち景気の現状を示す中心指標が一致指数で、一般にCI一致指数が上昇している局面は拡張、低下している局面は後退とされます。単月では不規則な動きも含まれるため、内閣府は3か月・7か月の後方移動平均もあわせて公表しています。
なお、正式な景気の山・谷(景気基準日付)は、一致指数の採用系列からつくるヒストリカルDIを基に、景気動向指数研究会での議論を踏まえて事後に設定されます。2008年4月分以降、公表の中心はDIからCIへ移行しました。本記事では、この一致指数の長期推移と、事後に確定した山・谷を重ねて見ていきます。
戦後の景気循環とCI一致指数を重ねて見る|1951年からの推移

ここが本記事の中心です。上段に景気の山・谷と後退期のグレー帯、下段にCI一致指数の折れ線を、同じ時間軸で重ねました。後退期にCIが下がる様子が、目で重ねられます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
内閣府の景気基準日付によれば、戦後の景気は第1循環から第16循環まで、山と谷を繰り返してきました。上段の三角は各循環の山(拡張から後退への転換点)、グレー帯は山から谷までの後退期を示しています。1950年代から60年代には神武景気・岩戸景気・いざなぎ景気と長い拡張が続き、その後もバブル景気、いざなみ景気、アベノミクス景気といった拡張局面が現れました。拡張期のあとに必ず後退期が訪れ、それがまた次の拡張につながるという循環が、戦後を通じて繰り返されていることが、帯の並びから読み取れます。
下段のCI一致指数(令和2年=100)の折れ線は、月次の値をそのまま結んだものです。ここで対象期間の境界に注意が必要です。上段の景気基準日付は1951年から設定されている一方、下段に表示したCI一致指数の月次系列は1996年からです。図の左側のグレーがかった部分は、CIの月次値を本記事で表示していない区間を示しています。1996年より前の景気循環は、上段の山・谷でのみ確認できます。
折れ線を後退期のグレー帯と重ねると、後退期にCI一致指数が低下する関係が見えてきます。とくに2008年2月から2009年3月の後退期(リーマンショックを含む局面)と、2018年10月から2020年5月の後退期(後半に新型コロナの影響が重なる局面)では、CI一致指数が大きく下がりました。リーマン期の底は2009年3月、コロナ期の底は2020年5月にあたります。なお、図に引いているのは実測の月次点を結んだ折れ線と、確定済みの山・谷・後退期だけで、回帰直線や予測線は重ねていません。
拡張期と後退期はどれくらい続いたか|16循環の長さを比べる

循環ごとに、拡張期と後退期がそれぞれ何か月続いたのかを横棒で並べました。朱が拡張、グレーが後退です。同じ目盛りで比べると、長さの違いがはっきりします。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
各循環の拡張期間と後退期間を月数で並べると、循環ごとの長さの違いが見えてきます。戦後で最も長い拡張は第14循環の73か月で、2002年1月から2008年2月まで続きました。次いで第16循環が71か月、いざなぎ景気を含む第6循環が57か月と続きます。一方、最も長い後退は第9循環の36か月(1980年2月から1983年2月)でした。
拡張と後退を合わせた全循環の長さで見ると、最も長いのは第16循環の90か月です。第14循環の86か月、第11循環(バブル景気を含む)の83か月がこれに続きます。横棒の朱とグレーの比率を見ると、多くの循環で拡張期のほうが後退期より長く、景気は拡張により多くの時間を費やしてきたことが分かります。なお、第1循環は谷が統計上さかのぼれず未確定のため、拡張期間は図に含めていません。
CI一致指数の長期推移|1996年から2025年までの波

重ね図の下段だけを取り出して拡大したのが、この折れ線です。1996年以降のCI一致指数の波を、後退期のグレー帯とあわせて大きく見ていきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
CI一致指数の月次系列を1996年から2025年まで並べると、いくつかの大きな波が確認できます。2000年代前半にかけて指数は上昇し、いざなみ景気を含む第14循環の拡張のなかで高い水準に達しました。その後、2008年から2009年にかけての後退期に急落し、リーマン期の底は2009年3月に記録されています。リーマン期とコロナ期には、CI一致指数が短期間で大きく下落していることが、折れ線の谷から読み取れます。
2020年には新型コロナの影響でCI一致指数が急落し、コロナ期の底は2020年5月でした。その後は持ち直し、2025年にかけては100を上回る水準で推移しています。直近の2025年12月のCI一致指数は114.5(速報値)で、内閣府はこの月の基調判断を「下げ止まり」としています。図の破線部分は2025年11月・12月の速報値で、今後の改訂で変わる可能性があります。
景気の「山」と「谷」とは何か|転換点の決まり方

ここまで何度も出てきた「山」と「谷」が何を指すのか、1つの循環を取り出した模式図で整理します。谷から拡張、山を経て後退、そしてまた谷へという1周期の形です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
景気の循環は、谷から始まって拡張し、山を迎えてから後退し、次の谷に至る、という1つの周期を単位とします。山は拡張から後退への転換点、谷は後退から拡張への転換点を指します。模式図のグレー帯が示すのが後退期で、山から谷までの局面にあたります。
この山・谷(景気基準日付)は、一致指数の採用系列からつくるヒストリカルDIを基に、事後に設定されます。そのため、直近の局面については、基準日付がまだ確定していない期間が生じます。2020年5月の谷が現時点での最新の確定値で、それ以降にあたる第17循環の山・谷は未設定です。図解や本文で直近を扱う際は、この未確定の扱いを前提にしています。
楓のまとめ|戦後の景気は拡張と後退を繰り返してきた

ここまでの図解を一通り並べると、戦後の景気が拡張と後退を繰り返してきたことが、循環の数と長さ、そしてCIの折れ線から確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「戦後の景気はどう動いてきたか」という問いに対して、本記事で並べた図解は、拡張と後退が循環として繰り返されてきたことを示してきました。循環の数、拡張・後退の長さ、CI一致指数の波、それぞれが景気循環の姿を別の角度から映します。良い・悪いの評価や今後の見通しを述べるのではなく、観察された数値の並びを整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、戦後の景気は一本調子で良くなったり悪くなったりするのではなく、拡張と後退を繰り返す循環として動いてきたことが分かります。循環の数・拡張と後退の長さ・CI一致指数の波という3つの見方は、いずれも景気が周期的に動いてきたことを示しているという観察事実そのものが、戦後の景気推移を最もよく映しています。いまの景気が良いか悪いか、今後どうなるかは、本記事の図解からは判断していません。
よくある質問(FAQ)

景気動向指数のグラフを読むときは、CIと景気基準日付の対象期間、速報と確報の違い、そして山・谷が事後に決まることの3点を押さえておくと、数値の見方が安定します。
Q1. CI一致指数が上がれば景気は良い、と考えてよいですか?
一般には、CI一致指数が上昇している局面は景気の拡張、低下している局面は後退とされます。ただし内閣府は、CI一致指数には単月で不規則な動きも含まれるため、3か月・7か月の後方移動平均をあわせて見ることを勧めています。また、正式な景気の山・谷は一致指数からつくるヒストリカルDIを基に事後に設定されるため、直近の数値だけで景気の転換点を断定することはできません。本記事でも、現状の良し悪しの断定は行っていません。
Q2. 上段の景気基準日付は1951年から、下段のCIは1996年からなのはなぜですか?
両者は出典も性質も異なるデータだからです。景気基準日付(山・谷)は、内閣府がヒストリカルDIを基に設定した転換点で、第1循環の山は1951年に置かれています。一方、CI一致指数の連続した月次系列は、本記事では内閣府が公表する確報相当の値が得られる1996年からを表示しています。CIの算出自体は1985年からですが、対象期間が異なる点を隠さず、重ね図では境界を明示しています。
Q3. 直近の景気が今どの局面にあるかは、この記事で分かりますか?
本記事では断定していません。直近のCI一致指数は2025年12月で114.5(速報値)で、内閣府の基調判断は「下げ止まり」とされています。ただし、この基調判断は内閣府が機械的な基準で示すもので、当サイトの判断ではありません。また、正式な景気の山・谷は事後に設定されるため、2020年5月の谷以降にあたる第17循環の山・谷は未確定です。現時点で景気がどの局面にあるかを確定的に述べることはできない、というのが観察できる範囲です。
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