
最低賃金を国どうしで比べるときは、まず物差しをそろえることが大切です。物価の差をならした購買力平価、為替レートでの換算、国内の賃金との比率の3つを並べると、日本の位置が立体的に見えてきます。
日本の最低賃金は、物価の差をならす購買力平価で換算すると、全国の法定最低賃金があるOECD加盟30か国の中で16位です。OECDの2025年データでは、日本の時給は10.37ドル、首位のドイツは17.83ドルで、日本の水準はドイツの約6割(58.1%)にあたります。ドイツの最低賃金1時間分と同じ購買力を得るには、日本の最低賃金では約1時間43分働く計算です。
「先進国」には公的な定義がないため、本記事ではOECD(経済協力開発機構)の加盟国を先進国の目安として使います。OECDの実質最低賃金と賃金中央値との比率、労働政策研究・研修機構(JILPT)の国際比較資料、厚生労働省の答申資料をもとに、日本の位置を3つの物差しと12年間の推移で整理します。
日本の最低賃金は、先進国の中で何番目の水準か。
物価の差をならして比べると、OECD30か国中16位。首位ドイツの約6割です。
差7.46ドル(ドイツは日本の約1.72倍)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
購買力で比べると、日本はOECD30か国中16位

30か国の順位は、横棒を長い順に並べると、首位から最下位までの距離感がつかめます。中央値の点線と日本の棒の位置関係にも目を向けてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
OECDの実質最低賃金(2025年・時給・購買力平価換算)を加盟30か国で並べると、首位はドイツの17.83ドル、2位はルクセンブルクの17.75ドル、3位は英国の17.13ドルでした。上位10か国は欧州の8か国と、オーストラリア(4位)、ニュージーランド(8位)のオセアニア2か国です。日本は10.37ドルで16位、すぐ上の15位は韓国(11.40ドル)、すぐ下の17位はポルトガル(10.16ドル)でした。
30か国の中央値は10.88ドルで、日本はこの中央値をわずかに下回る位置にあります。首位ドイツとの差は7.46ドルで、ドイツは日本の約1.72倍です。この差を時間に置き換えると、ドイツの最低賃金1時間分と同じ購買力を得るのに、日本の最低賃金では約103分、つまり約1時間43分かかる計算になります。
G7のうちOECDのこのデータに値がある6か国で比べると、日本はドイツ、英国、フランス、カナダに次ぐ5位で、米国が6位です。米国の値は連邦最低賃金の7.25ドルで、30か国では26位にあたります。連邦最低賃金は2009年7月から7.25ドルのままで、州ごとの最低賃金はこれより高い場合があります(JILPTの資料では、最も高いのはコロンビア特別区の17.95ドル)。
地図で見ると、上位は西欧とオセアニアに集まる

国ごとの水準は、世界地図に色を塗ると地域のまとまりが見えます。濃い色がどの地域に集まり、日本がどの段階の色にあるかを確かめてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
30か国を5段階で塗り分けると、16ドル以上の最も濃い色に入るのは、ドイツ、ルクセンブルク、英国、オランダ、フランスの西欧5か国とオーストラリアの6か国でした。13〜16ドルにはベルギー、ニュージーランド、スペイン、アイルランド、カナダ、ポーランドが入ります。日本は10〜13ドルの段階で、スロベニア、リトアニア、韓国、ポルトガルと同じ色です。
7〜10ドルにはイスラエル、チェコ、トルコ、ギリシャ、スロバキア、ハンガリー、エストニア、ラトビアと米国(連邦)の9か国が入りました。7ドル未満の段階には、コスタリカ、チリ、コロンビア、メキシコの中南米4か国が並びます。地図の灰色の国は、OECDの非加盟国か、このデータに値がない国です。
為替で換算しても16位、米国の連邦最低賃金を下回る

購買力平価、為替、国内の賃金との比率の3つの物差しで同じ日本の位置を測ると、物差しによる違いが一目で比べられます。点が左にあるほど上位です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
購買力平価(PPP)は、同じ量のモノやサービスを買うのに必要な通貨の量から求める換算レートで、国ごとの物価の差をならしてドルにそろえます。為替換算は、その年の為替レートでそのままドルにする方法です。同じ最低賃金でも、2つの換算の差はその国の物価水準と為替レートの関係で生まれます。購買力の考え方はビッグマックの価格を国際比較した記事でも扱っています。
2025年の為替換算では、日本の最低賃金は時給7.16ドルで、順位は購買力平価と同じ16位でした。為替で換算すると、日本は米国の連邦最低賃金7.25ドルをわずかに下回ります。為替換算の首位はルクセンブルクの17.51ドルで、英国15.83ドル、オーストラリア15.81ドルが続き、購買力平価で首位のドイツは14.49ドルで6位でした。
国内の賃金との比率では29か国中26位

最低賃金がその国の働き手の賃金と比べてどのくらいの高さかは、賃金の中央値に対する割合で見ます。金額の順位とは並び方が大きく変わる点に注目してください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
OECDは、フルタイム労働者の賃金の中央値に対する最低賃金の割合も公表しています。2025年の日本は46.4%で、値のある29か国の中で26位でした。首位はコロンビアの90.5%、2位はコスタリカの84.7%、3位はメキシコの74.9%で、購買力平価で下位にあった中南米の国が上位に並びます。
金額で上位のドイツは49.6%、オランダは48.3%で、この物差しでは日本との差が小さくなります。韓国は59.6%、英国は61.9%、フランスは62.5%です。日本より割合が低いのはラトビア(44.8%)、エストニア(42.7%)、米国(24.1%)の3か国でした。この割合は国内の賃金の分布の中での位置を示すもので、金額の高さとは別の情報として読む必要があります。
2014年からの推移|韓国は2018年に日本を上回った

12年間の動きは折れ線で見ると、国ごとの伸び方の違いがはっきりします。線が交わる年と、右肩下がりの線に注目してみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年価格に直した実質の時給(購買力平価換算)で2014年と2025年を比べると、日本は8.54ドルから10.37ドルへ21.5%増えました。同じ期間に、韓国は7.33ドルから11.40ドルへ55.5%、英国は12.56ドルから17.13ドルへ36.4%増えています。ドイツはOECDの値が2015年からのため、2015年の15.20ドルと比べると17.3%の増加でした。
韓国は2018年に10.07ドルとなり、2014年以降で初めて日本(9.30ドル)を上回りました。前年の2017年は韓国が8.78ドル、日本が9.11ドルでした。米国の連邦最低賃金は名目で7.25ドルのままのため、物価の変化を除いた実質の値は2014年の9.87ドルから2025年の7.25ドルへ26.5%下がっています。
日本の順位は、2014年の13位(ドイツの値がないため29か国中)から、2015〜2017年は14位、2018年は15位、2019年は14位、2020〜2023年は15位、2024年と2025年は16位と推移しました。
30か国の一覧と、2026年の各国の最低賃金額

気になる国の位置は、一覧表で地域ごとに確かめられます。タブを切り替えると、欧州、アジア太平洋・中東、米州の国だけを表示できます。
順位は購買力平価換算の時給による30か国内の順位。購買力平価・為替換算は時給(米ドル・2025年価格)、中央値比はフルタイム労働者の賃金中央値に対する割合です。
| 順位 | 国 | 購買力 平価 | 為替 換算 | 中央値比 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ドイツ | 17.83 | 14.49 | 49.6% |
| 2 | ルクセンブルク | 17.75 | 17.51 | 56.4% |
| 3 | 英国 | 17.13 | 15.83 | 61.9% |
| 4 | オーストラリア | 16.75 | 15.81 | 54.5% |
| 5 | オランダ | 16.71 | 14.49 | 48.3% |
| 6 | フランス | 16.22 | 13.42 | 62.5% |
| 7 | ベルギー | 15.72 | 13.71 | 47.5% |
| 8 | ニュージーランド | 15.31 | 13.61 | 64.0% |
| 9 | スペイン | 15.23 | 10.46 | 55.3% |
| 10 | アイルランド | 14.93 | 15.25 | 51.1% |
| 11 | カナダ | 13.15 | 11.85 | 49.2% |
| 12 | ポーランド | 13.01 | 7.14 | 59.2% |
| 13 | スロベニア | 12.40 | 8.31 | 58.5% |
| 14 | リトアニア | 11.55 | 7.18 | 50.1% |
| 15 | 韓国 | 11.40 | 7.05 | 59.6% |
| 16 | 日本 | 10.37 | 7.16 | 46.4% |
| 17 | ポルトガル | 10.16 | 6.60 | 58.9% |
| 18 | イスラエル | 9.25 | 9.80 | 50.7% |
| 19 | チェコ | 8.86 | 5.93 | 46.9% |
| 20 | トルコ | 8.43 | 3.79 | 47.2% |
| 21 | ギリシャ | 8.35 | 5.47 | 50.1% |
| 22 | スロバキア | 8.29 | 5.30 | 51.5% |
| 23 | ハンガリー | 8.17 | 4.73 | 47.6% |
| 24 | エストニア | 7.90 | 6.00 | 42.7% |
| 25 | ラトビア | 7.71 | 4.81 | 44.8% |
| 26 | 米国(連邦) | 7.25 | 7.25 | 24.1% |
| 27 | コスタリカ | 5.60 | 3.50 | 84.7% |
| 28 | チリ | 5.46 | 2.79 | 値なし |
| 29 | コロンビア | 4.10 | 1.68 | 90.5% |
| 30 | メキシコ | 3.08 | 1.81 | 74.9% |
| 順位 | 国 | 購買力 平価 | 為替 換算 | 中央値比 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ドイツ | 17.83 | 14.49 | 49.6% |
| 2 | ルクセンブルク | 17.75 | 17.51 | 56.4% |
| 3 | 英国 | 17.13 | 15.83 | 61.9% |
| 5 | オランダ | 16.71 | 14.49 | 48.3% |
| 6 | フランス | 16.22 | 13.42 | 62.5% |
| 7 | ベルギー | 15.72 | 13.71 | 47.5% |
| 9 | スペイン | 15.23 | 10.46 | 55.3% |
| 10 | アイルランド | 14.93 | 15.25 | 51.1% |
| 12 | ポーランド | 13.01 | 7.14 | 59.2% |
| 13 | スロベニア | 12.40 | 8.31 | 58.5% |
| 14 | リトアニア | 11.55 | 7.18 | 50.1% |
| 17 | ポルトガル | 10.16 | 6.60 | 58.9% |
| 19 | チェコ | 8.86 | 5.93 | 46.9% |
| 20 | トルコ | 8.43 | 3.79 | 47.2% |
| 21 | ギリシャ | 8.35 | 5.47 | 50.1% |
| 22 | スロバキア | 8.29 | 5.30 | 51.5% |
| 23 | ハンガリー | 8.17 | 4.73 | 47.6% |
| 24 | エストニア | 7.90 | 6.00 | 42.7% |
| 25 | ラトビア | 7.71 | 4.81 | 44.8% |
| 順位 | 国 | 購買力 平価 | 為替 換算 | 中央値比 |
|---|---|---|---|---|
| 4 | オーストラリア | 16.75 | 15.81 | 54.5% |
| 8 | ニュージーランド | 15.31 | 13.61 | 64.0% |
| 15 | 韓国 | 11.40 | 7.05 | 59.6% |
| 16 | 日本 | 10.37 | 7.16 | 46.4% |
| 18 | イスラエル | 9.25 | 9.80 | 50.7% |
| 順位 | 国 | 購買力 平価 | 為替 換算 | 中央値比 |
|---|---|---|---|---|
| 11 | カナダ | 13.15 | 11.85 | 49.2% |
| 26 | 米国(連邦) | 7.25 | 7.25 | 24.1% |
| 27 | コスタリカ | 5.60 | 3.50 | 84.7% |
| 28 | チリ | 5.46 | 2.79 | 値なし |
| 29 | コロンビア | 4.10 | 1.68 | 90.5% |
| 30 | メキシコ | 3.08 | 1.81 | 74.9% |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
OECDの値は物価の変化を除いた2025年の実質値で、各国の通貨での実際の金額とは別のものです。JILPTの国際比較資料によると、2026年1月1日時点の最低賃金(時給)は、ドイツが13.90ユーロ、フランスが12.02ユーロ、英国が12.21ポンド、韓国が10,320ウォン、米国(連邦)が7.25ドルでした。オーストラリアは24.95豪ドルで、毎年7月1日に改定されます。
日本は同じ資料で1,121円(令和7年度の全国加重平均)です。令和8年度の改定では全国加重平均が1,177円となり、最も高い東京都は1,280円、最も低い宮崎県は1,085円でした。都道府県ごとの金額と20年間の推移は、最低賃金の推移を図解した記事で整理しています。
楓のまとめ|金額では30か国の中ほど、国内の比率では下位

ここまでの順位と推移を並べると、物差しごとに日本の位置が少しずつ違うことが分かります。3つの観察事実に整理してみます。
「日本の最低賃金は先進国で何位か」という問いに対して、本記事ではOECD加盟30か国を対象に、購買力平価、為替換算、賃金の中央値との比率の3つの物差しと、2014年からの推移を並べてきました。物差しの違いを観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、日本の最低賃金は、金額で見れば30か国の中ほどにあり、国内の賃金との比率で見ると下位に位置するという形が浮かびます。令和8年度の改定で全国加重平均は1,177円となりましたが、OECDの2025年データにはまだ反映されていません。次にOECDのデータが更新されたとき、日本の位置がどう変わるかは、同じ3つの物差しで確かめることができます。
よくある質問(FAQ)

最低賃金の国際比較を読むときは、換算の方法、比較する国の範囲、データの時点の3点をセットで確認してください。同じ国でも、この3点が変わると順位が変わります。
Q1. なぜ購買力平価で比べるのですか?
為替レートは物価以外の要因でも大きく動くため、為替換算だけで比べると、その国で最低賃金がどれだけのモノやサービスに相当するかが分かりにくくなります。購買力平価は国ごとの物価の差をならした換算レートで、OECDの実質最低賃金データでも購買力平価換算と為替換算の両方が公表されています。本記事では購買力平価換算を主な物差しとし、為替換算の値も並べて示しました。
Q2. イタリアや北欧の国が比較に入っていないのはなぜですか?
OECDの実質最低賃金データに、これらの国の値がないためです。データがあるOECD加盟国は30か国で、加盟38か国のうち8か国は値がありません。本記事の順位は、値がある30か国の中で数えています。G7で比べるときも、値のない国を除いた6か国で順位を数えています。
Q3. 日本の最低賃金はいつ改定されるのですか?
日本の最低賃金は都道府県ごとに毎年改定され、発効日は都道府県によって異なります。厚生労働省によると、令和8年度の改定額は全国加重平均で1,177円(前年度から56円の引き上げ)で、2026年10月1日から12月2日にかけて順次発効します。最も高い東京都は10月1日、最も低い宮崎県は10月24日の発効予定です。
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