
年末調整は、12か月の帯で見ると流れがつかめます。1月から11月までは概算で差し引き、12月に1年分を計算し直す、という順番を1枚に並べました。
年末調整は、毎月の給与から概算で差し引かれた所得税の合計と、12月に計算し直した1年分の税額を比べ、差額を精算する手続きです。源泉徴収した合計のほうが多ければ差額が還付され、少なければ差額が徴収されます。毎月の源泉徴収は概算で、12月の年末調整で1年分の税額に合わせます。
国税庁の「令和7年分 民間給与実態統計調査」によると、民間の事業所で1年を通じて勤務した給与所得者5,163万人のうち、年末調整を行った人は4,744万人で、91.9%にあたります。100人のうち約92人が、勤め先の年末調整で給与の所得税の精算を終えている計算です。
本記事では、国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」と統計、財務省の税収の資料をもとに、1月から12月までの流れ、税額が決まる順序、対象になる人とならない人、所得税収に占める源泉徴収分を図解で整理します。令和8年分は基礎控除などの引上げが12月の年末調整で反映されるため、その暦もあわせて示します。
毎月の給与から差し引かれた所得税は、年末にどう精算されるのでしょうか。
毎月の天引きは概算です。12月に1年分の税額を計算し、差額を還付または徴収します。
- 01 毎月の天引き 268万 件。給与から所得税を差し引いて国に納める民間の事業所
- 02 年末調整 4,744万 人。12月に1年分の税額を計算し直した人(令和7年分・民間)
- 03 給与の税額 12.9兆 円。1年を通じて勤務した人の給与から源泉徴収された所得税
- 04 所得税収 81% 国の所得税収のうち源泉徴収で納められた分(令和7年度・配当などを含む)
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
年末調整とは|毎月の源泉徴収と1年分の税額を一致させる手続き

上の段が1月から12月の帯、下の段が12月の精算です。棒の高さは金額ではなく、多いか少ないかの関係だけを表しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
会社などの給与の支払者は、給与を支払うたびに所得税と復興特別所得税を差し引きます。これが源泉徴収で、給与の天引きと呼ばれるものにあたります。差し引いた税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに、勤め先が国に納めます。国税庁の調査では、民間の事業所の源泉徴収義務者は令和7年12月31日現在で268万件です。
毎月の税額は、社会保険料などを差し引いた後の給与の額を「源泉徴収税額表」に当てはめて求めます。この表は、年間を通して毎月の給与の額に変動がないものとして作られています。そのため、源泉徴収した税額の1年間の合計は、その人が1年間に納めるべき税額と一致しないのが通常です(国税庁)。
一致しない理由として、国税庁は3点を挙げています。年の途中で給与の額が変わること、扶養親族などに異動があっても過去の月の税額はさかのぼって修正しないこと、生命保険料や地震保険料の控除は年末調整の際に差し引くことです。
この2つを一致させる手続きが年末調整で、本年最後に給与を支払う時、通常は12月に行います。源泉徴収した合計が1年分の税額より多い場合は、勤め先がその月に納める源泉徴収税額から差し引く形で、差額が本人に還付されます。少ない場合は、不足額が年末調整をする月の給与から徴収され、残るときはその後の給与から順に徴収されます。
1年分の税額はどう決まるか|計算の順序を6段階で見る

計算の順序は、帯が短くなっていく階段にしました。差し引くものと掛けるものを、帯と帯の間に書いています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国税庁のタックスアンサーは、年末調整の順序を6つに分けています。1つ目は、1月1日から12月31日までに支払うことが確定した給与の合計額から、専用の表を使って給与所得控除後の金額を求めることです。2つ目は、その金額から扶養控除などの所得控除額を差し引くことです。
3つ目は、差し引いた後の金額(1,000円未満切捨て)に所得税の税率を当てはめて税額を求めることです。税率は5%から45%までの7段階です。4つ目は、年末調整で住宅借入金等特別控除を行う場合に、その控除額を税額から差し引くことです。
5つ目で、ここまでの税額に102.1%を掛けます。その結果から100円未満を切り捨てた額が、1年間に納めるべき所得税と復興特別所得税の額です。6つ目で、源泉徴収した合計額とこの額を比べ、差額を還付または徴収します。
年末調整で差し引ける所得控除には、生命保険料控除や地震保険料控除があります。医療費控除と寄附金控除は年末調整では扱わず、確定申告で申告します。住宅借入金等特別控除も、住宅を取得した最初の年の分は確定申告で扱います。
この計算は勤め先が行い、結果は「給与所得の源泉徴収票」に記載されます。源泉徴収票は、翌年の1月31日までに本人に交付されます。図は順序を示す模式図で、帯の長さは金額に対応していません。
年末調整を行った人は4,744万人|民間で1年を通じて勤務した人の91.9%

人数は100マスに置き換えました。朱色のマスが年末調整を行った人、枠だけのマスが行わなかった人です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国税庁の「令和7年分 民間給与実態統計調査」によると、民間の事業所で1年を通じて勤務した給与所得者は5,163万人です。このうち年末調整を行った人は4,744万人で、91.9%を占めます。前年と比べると23万人の増加で、対前年比は0.5%増でした。
年末調整を行わなかった人は419万人です(編集部計算。千人単位の公表値51,631千人から47,440千人を引いた4,191千人)。国税庁はこの人たちを、乙欄適用者、前職の給与が不明である者、年間給与額が2,000万円を超える者などと説明しています。乙欄適用者は、2か所以上から給与を受けている人の、主たる給与以外の給与分を指します。
同じ調査では、1年を通じて勤務した5,163万人のうち、源泉徴収により所得税を納めた人は4,175万人(80.9%)で、その税額は12兆9,141億円でした。年の途中で就職した人などを含む給与所得者6,080万人の全体では、源泉徴収された所得税額は13兆1,262億円で、給与総額247兆6,479億円の5.30%にあたります。
この調査の対象は民間の事業所に限られ、公務員は含まれません。標本調査による推計値で、複数の事業所から給与を受けている人は、それぞれの事業所で1人として数えられます。4,744万人は、民間で1年を通じて勤務した人の範囲での人数です。
年末調整の対象になる人・ならない人|3つの一覧で確かめる

対象になる人、ならない人、確定申告が必要な給与所得者を、3つのタブに分けました。条件は国税庁の記載に沿っています。一覧で確かめられます。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、年末調整を行う日までに勤め先に提出している人のうち、次のいずれかに当てはまる人です。
| 条件 | 出典 |
|---|---|
| 1年を通じて勤務している人 | No.2665 |
| 年の中途で就職し、年末まで勤務している人 | No.2665 |
| 年の中途で退職した人のうち、死亡により退職した人 | No.2665 |
| 年の中途で退職した人のうち、著しい心身の障害のため退職した人(退職後に再就職して給与を受ける見込みのある人を除く) | No.2665 |
| 年の中途で退職した人のうち、12月に支給されるべき給与の支払を受けた後に退職した人 | No.2665 |
| 年の中途で退職した人のうち、パートタイマーなどで本年中の給与の総額が136万円以下の人(退職後その年に他の勤務先から給与を受ける見込みのある人を除く) | No.2665 |
| 年の中途で、海外の支店への転勤などにより非居住者となった人 | No.2665 |
次のいずれかに当てはまる人は、年末調整の対象になりません。
| 条件 | 出典 |
|---|---|
| 本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人 | しかた Ⅱ |
| 災害減免法の規定により、本年分の給与に対する源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人 | しかた Ⅱ |
| 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等(異動)申告書を提出している人、または年末調整を行う時までに同申告書を提出していない人 | しかた Ⅱ |
| 年の中途で退職した人で、「対象になる人」の退職者の条件に当てはまらない人 | しかた Ⅱ |
| 非居住者 | しかた Ⅱ |
| 継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労働者など | しかた Ⅱ |
給与所得者のうち、次のいずれかに当てはまる人は確定申告が必要です。
| 条件 | 出典 |
|---|---|
| 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人 | No.1900 |
| 給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、各種の所得金額(給与所得と退職所得以外)の合計額が20万円を超える人 | No.1900 |
| 給与を2か所以上から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得と退職所得以外)との合計額が20万円を超える人 | No.1900 |
| 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人 | No.1900 |
| 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人 | No.1900 |
| 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人 | No.1900 |
| 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人 | No.1900 |
年末調整で扱わない医療費控除や寄附金控除などを受ける場合は、確定申告で申告します(国税庁)。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
年末調整の対象になるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整を行う日までに勤め先に提出している人です。1年を通じて勤務している人と、年の途中で就職して年末まで勤務している人が、対象の中心です。年の途中で退職した人も、12月の給与の支払を受けた後に退職した場合などは対象になります。
対象にならない人として、国税庁は6つの場合を挙げています。主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人、2か所以上から給与を受けていて他の勤め先に申告書を提出している人、申告書を提出していない人、非居住者などです。
国税庁は、大部分の給与所得者について、年末調整によって所得税額が確定し納税も完了するため、確定申告の必要はないと説明しています。一方で、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人や、給与以外の所得の合計額が20万円を超える人などは、確定申告が必要です。3つ目のタブに7つの場合を並べています。
所得税収の81.3%は源泉徴収で納められた分|配当や利子の分も含む

税収の内訳は、横の帯を2本並べました。上が財務省の税収、下が国税庁の統計です。年度と集計の方法が違うので、2本は線でつないでいません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
財務省の資料によると、令和7年度の国の所得税収は25兆2,565億円です(決算額は概数)。内訳は、源泉分が20兆5,405億円、申告分が4兆7,160億円です。所得税収のうち、源泉徴収で納められた分は81.3%を占めます(編集部計算)。
この源泉分は、給与からの源泉徴収だけではありません。配当、利子、特定口座での株式等の譲渡、報酬や料金、退職金、非居住者への支払からの源泉徴収も含みます。81.3%は、所得税収のうち源泉徴収で納められた分全体の割合です。
源泉徴収の内訳は、国税庁の統計で確かめられます。令和6年2月から令和7年1月までに提出された分の源泉所得税は19兆6,294億円で、このうち給与所得は11兆9,597億円、60.9%でした(割合は編集部計算)。次いで配当所得が3兆2,349億円(16.5%)、特定口座内の株式等の譲渡所得等が1兆3,521億円(6.9%)です。給与所得には、官公庁が支払う給与の分9,179億円を含みます。
財務省の税収は令和7年度、国税庁の統計は令和6年の提出分で、年度も集計の方法も異なります。2つの割合は別々の資料の値で、掛け合わせることはできません。前の見出しの12兆9,141億円も、民間の事業所を対象にした標本調査の値で、これらとは別の統計です。
令和8年分は12月の年末調整で改正分を精算|2026年から2027年の暦

令和8年分は、基礎控除などの引上げが12月1日に施行されます。11月までの源泉徴収と12月の年末調整の関係を、年表に並べました。
令和8年度税制改正による基礎控除の引上げ等は、2026年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。国税庁によると、令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。令和8年分は、12月の年末調整で引上げ後の控除額を使って1年分の税額を計算し、11月までに源泉徴収した税額との精算を行います。
基礎控除額は、合計所得金額に応じて表のように変わります。令和8年分と令和9年分は、合計所得金額が489万円以下の場合に104万円、489万円超655万円以下の場合に67万円、655万円超2,350万円以下の場合に62万円です。改正前の令和8年分は、95万円、88万円、68万円、63万円、58万円の5段階でした。
基礎控除額の改正前と改正後(令和8年分)
| 合計所得金額 | 給与だけの 場合の収入 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 206万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 206万円超 475万1,999円以下 | 88万円 | 104万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 475万1,999円超 665万5,556円以下 | 68万円 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 665万5,556円超 850万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 850万円超 2,545万円以下 | 58万円 | 62万円 |
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点。改正後は令和8年分と令和9年分の金額で、居住者に適用されます。合計所得金額2,350万円超の基礎控除額に改正はありません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
給与所得控除は、最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。令和8年分と令和9年分は、給与の収入金額が220万円以下の場合の給与所得控除額が74万円です。給与の収入金額が220万円を超える場合の給与所得控除額に改正はありません。
2027年1月からは、令和9年分の源泉徴収税額表が使われます。同じ月から防衛特別所得税(所得税額の1%)が加わり、復興特別所得税は2.1%から1.1%になります。年末調整で掛ける合計の率は102.1%のままです。
楓のまとめ|毎月は概算、12月に1年分の税額へ合わせる

帯、階段、100マス、2本の帯、年表の順に見てきました。3つの観察事実に整理します。
年末調整の流れは、毎月の源泉徴収、12月の計算、差額の精算の3つに分けられます。人数と税収の統計を重ねると、この手続きが給与所得者と国の所得税収のどの範囲に関わっているかが見えてきます。観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を並べると、年末調整は1年分の税額を新しく決める手続きというより、先に納めた概算の合計を1年分の税額に合わせる手続きであることがわかります。還付も徴収も、概算の合計と1年分の税額との差額を精算した結果です。令和8年分は、その精算に基礎控除などの引上げ分が加わる年にあたります。
よくある質問(FAQ)

年末調整についてよくある3つの問いを、国税庁の記載に沿って整理しました。
Q1. 年末調整で還付になるのはなぜですか?
毎月の源泉徴収が概算だからです。源泉徴収税額表は、年間を通して毎月の給与の額に変動がないものとして作られています。生命保険料や地震保険料の控除は、年末調整の際に差し引きます。そのため、源泉徴収した合計が1年分の税額より多くなる場合があり、その差額が還付されます。合計のほうが少ない場合は、差額が徴収されます。
Q2. 住民税も年末調整で精算されますか?
年末調整は所得税と復興特別所得税の手続きで、住民税は別に計算されます。令和9年分からは、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額で年末調整が行われます。
Q3. 年末調整を受けた人も確定申告が必要になることはありますか?
あります。国税庁は、大部分の給与所得者は年末調整によって所得税額が確定し、確定申告の必要はないと説明しています。ただし、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人や、給与を1か所から受けていて給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人などは、確定申告が必要です。医療費控除や寄附金控除を受ける場合も、確定申告で申告します。
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