
原子力発電の仕組みは、部品の流れを1本の図にして、火力発電と重ねて見るのが近道です。違うのは熱のつくり方だけで、あとは同じ道筋をたどることがはっきりと見えてきます。
原子力発電は、ウラン235の核分裂で生まれる熱で水を蒸気にし、その蒸気でタービンを回して電気を作ります。熱をつくる場所が原子炉であること以外は、火力発電と同じ流れです。国内にある原子炉33基のうち、新しい規制基準の審査を経て営業運転を再開したのは15基です(日本原子力産業協会・2026年10月9日現在)。
2024年度の国内の発電電力量に占める原子力の割合は9.4%で、前年度から0.9ポイント上がりました(資源エネルギー庁)。1日24時間に置き換えると、約2時間15分ぶんの電気にあたります。本記事では、核分裂から発電までの流れ、沸騰水型と加圧水型の違い、燃料の量、国内と世界の原子炉の数を図解で整理します。安全性や是非の評価は扱わず、公表されている仕組みと数値を並べます。
原子力発電は、どうやって電気を作っているのか。
ウラン235の核分裂の熱で水を蒸気にし、タービンを回して発電する。熱をつくる部分以外は火力発電と同じ仕組みだ。
- 01 燃料をつくる 0.7% 天然ウランに含まれるウラン235の割合(これを数%程度まで濃縮して燃料にする)
- 02 核分裂で熱 21トン 100万kW級の発電所1年分に必要な濃縮ウランの量(石炭なら235万トン)
- 03 蒸気で回す 160気圧 加圧水型で一次系の水にかける圧力の目安(約160気圧。沸騰させずに熱を運び、蒸気発生器で別の水を蒸気にする)
- 04 国内の現状 15基 国内の原子炉33基のうち営業運転を再開した数(2026年10月9日現在)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
原子力発電の流れ|熱のつくり方以外は火力発電と同じ

発電の流れは、部品を左から右へ並べた横長の図で見ると、どこまでが火力発電と共通なのかがひと目で分かります。違うのは左端の1か所だけです。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
原子炉の中でウランが核分裂すると、大量の熱が出ます。この熱で水を温めて蒸気をつくり、蒸気の勢いでタービンを回します。タービンは発電機とつながっていて、回転が電気に変わります。タービンを回し終えた蒸気は復水器で冷やされて水に戻り、ふたたび原子炉の側へ送られます。
東京電力は、原子力発電所の原理は火力発電と同じで、原子炉が火力発電所のボイラーにあたると説明しています。火力発電が燃料を燃やして熱をつくるのに対し、原子力発電は核分裂の熱を使う点が異なります。復水器の中には太さ約3cmの冷却管が4〜5万本あり、その中に海水を通して蒸気を冷やしています。
電源ごとの発電量の内訳は、「日本の電源構成は?内訳をデータで図解」で整理しています。
ウランが熱を生む仕組み|0.7%のウラン235と核分裂の連鎖

核分裂の連鎖は、文章で読むより、中性子が次の原子核に当たっていく様子を左から右へ追う模式図のほうがつかみやすいです。下のほうにある制御棒の位置にも注目してください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
燃料になるのはウランです。経済産業省のエネルギー教育教材によると、天然ウランに含まれるのはウラン238が99.3%、核分裂しやすいウラン235が0.7%です。ウラン235の割合が低いため、数%程度まで高める「濃縮」をしてから燃料に加工します。濃縮の目安は資料によって「3〜5%程度」「2〜4%程度」と幅があります。
ウラン235の原子核が中性子を吸収すると核分裂が起こり、熱とともに2〜3個の中性子が飛び出します。この中性子が別のウラン235に吸収されると、次の核分裂が起こります。これが連鎖反応です。原子炉では、ホウ素やカドミウムなど中性子を吸収しやすい物質を含む制御棒を出し入れして、核分裂の量と出力を調整しています。
原子炉の水には2つの役割があります。1つは核分裂の熱を炉心の外へ運び出す冷却材、もう1つは中性子の速さを落として次の核分裂を起こしやすくする減速材です。燃料は発電に約3年使われ、約1年に1回の定期検査で、炉心の3分の1から4分の1ほどが新しい燃料に交換されます(日本原子力文化財団)。
沸騰水型と加圧水型|蒸気のつくり方が違う2つの方式

2つの方式は、同じ縮尺・同じ部品の配置で横に並べると、違いだけが浮かび上がります。色がついている部分が、2つの方式で異なる部品と配管です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国内の原子炉は、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2つの方式に分かれます。沸騰水型は原子炉の中で水を沸騰させ、できた蒸気を直接タービンへ送ります。加圧水型は、原子炉の中で温められた高温・高圧の水(一次系)を蒸気発生器へ送り、そこで別の水(二次系)を蒸気にしてタービンを回します。
三菱重工業によると、加圧水型は一次系に約160気圧の圧力をかけて水を沸騰させず、運転温度は約300℃です。日本原子力文化財団は、沸騰水型では放射性物質を含む蒸気がタービンへ流れるためタービン建屋を含む広い範囲で放射線管理を行い、加圧水型では一次系の水が蒸気発生器の外へ流れないためタービン建屋などでの放射線管理が不要だと説明しています。
日本原子力産業協会の一覧を数えると、国内の既設33基は沸騰水型が17基(改良型沸騰水型のABWR 4基を含む)、加圧水型が16基です。営業運転を再開した15基は、加圧水型が12基、沸騰水型が3基(女川2号機・柏崎刈羽6号機・島根2号機)です。
燃料はどれだけ必要か|100万kW級1年分で濃縮ウラン21トン

燃料の量は桁が大きく違うため、横軸を1目盛りごとに100倍となる対数目盛にしています。棒の長さの差は、実際の量の差よりもずっと小さく見える点に注意してください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本原子力文化財団の原子力総合パンフレットによると、100万kW級の発電所が1年間に発電する電力量をまかなうのに必要な燃料は、濃縮ウランが21トン、天然ガスが95万トン、石油が155万トン、石炭が235万トンです。
重さだけを比べると、石炭の235万トンは濃縮ウラン21トンの約11.2万倍にあたります(235万÷21で筆者が算出)。経済産業省の教材では、燃料を焼き固めた小さな円柱(ペレット)1個で、沸騰水型なら1家庭の約8か月分、加圧水型なら6〜7か月分の電気を作れるとしています。東京電力によると、一度燃料を入れると少なくとも1年間は連続して運転できます。
国内の原子炉はいま何基あるか|33基のうち再稼働は15基

33基を1基1マスで並べると、どの段階に何基あるかが面積で分かります。マスの中の文字は方式を表していて、Pが加圧水型、Bが沸騰水型です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本原子力産業協会の「日本の原子力発電所の運転・建設状況」(2026年10月9日現在)によると、国内の既設の原子炉は33基です。2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、原子炉は新しい規制基準による審査を経て運転を再開する仕組みになりました。33基のうち、審査を経て営業運転を再開したのは15基です。
残る18基の内訳は、設置変更の許可を受けてまだ再稼働していない炉が3基(東海第二・泊3号機・柏崎刈羽7号機)、審査を申請して結果が出ていない炉が6基、許可されなかった炉が1基(敦賀2号機・2024年11月13日)、審査を申請していない炉が8基です。再稼働していない炉の平均停止期間は15年10か月です。
このほか、建設中の炉が3基(大間・東通1号機〈東京電力〉・島根3号機)、計画中が8基あり、廃止された炉(廃止措置中を含む)は27基です。営業運転を再開した15基の中にも定期検査などで止まっている炉があるため、ある日に発電している基数とは一致しません。
震災後に動いている原子炉の数がどう変わってきたかは、「原子力発電の稼働状況、震災後の推移図解」で扱っています。
全33基の一覧|状況別に切り替えて見る
| 発電所・号機 | 炉型 | 出力(万kW) | 営業運転再開日 |
|---|---|---|---|
| 川内1号機 | PWR | 89.0 | 2015年9月10日 |
| 川内2号機 | PWR | 89.0 | 2015年11月17日 |
| 高浜3号機 | PWR | 87.0 | 2016年2月26日 |
| 伊方3号機 | PWR | 89.0 | 2016年9月7日 |
| 高浜4号機 | PWR | 87.0 | 2017年6月16日 |
| 大飯3号機 | PWR | 118.0 | 2018年4月10日 |
| 玄海3号機 | PWR | 118.0 | 2018年5月16日 |
| 大飯4号機 | PWR | 118.0 | 2018年6月5日 |
| 玄海4号機 | PWR | 118.0 | 2018年7月19日 |
| 美浜3号機 | PWR | 82.6 | 2021年7月27日 |
| 高浜1号機 | PWR | 82.6 | 2023年8月28日 |
| 高浜2号機 | PWR | 82.6 | 2023年10月16日 |
| 女川2号機 | BWR | 82.5 | 2024年12月26日 |
| 島根2号機 | BWR | 82.0 | 2025年1月10日 |
| 柏崎刈羽6号機 | ABWR | 135.6 | 2026年4月16日 |
| 発電所・号機 | 炉型 | 出力(万kW) | 状況(日付) |
|---|---|---|---|
| 東海第二 | BWR | 110.0 | 許可済み(2018年9月26日許可) |
| 泊3号機 | PWR | 91.2 | 許可済み(2025年7月30日許可) |
| 柏崎刈羽7号機 | ABWR | 135.6 | 許可済み(2017年12月27日許可) |
| 泊1号機 | PWR | 57.9 | 審査中(2013年7月8日申請) |
| 泊2号機 | PWR | 57.9 | 審査中(2013年7月8日申請) |
| 浜岡4号機 | BWR | 113.7 | 審査中(2014年2月14日申請) |
| 東通1号機(東北電力) | BWR | 110.0 | 審査中(2014年6月10日申請) |
| 志賀2号機 | ABWR | 120.6 | 審査中(2014年8月12日申請) |
| 浜岡3号機 | BWR | 110.0 | 審査中(2015年6月16日申請) |
| 敦賀2号機 | PWR | 116.0 | 不許可(2024年11月13日) |
| 発電所・号機 | 炉型 | 出力(万kW) | 状況 |
|---|---|---|---|
| 女川3号機 | BWR | 82.5 | 審査を申請していない |
| 柏崎刈羽1号機 | BWR | 110.0 | 審査を申請していない |
| 柏崎刈羽2号機 | BWR | 110.0 | 審査を申請していない |
| 柏崎刈羽3号機 | BWR | 110.0 | 審査を申請していない |
| 柏崎刈羽4号機 | BWR | 110.0 | 審査を申請していない |
| 柏崎刈羽5号機 | BWR | 110.0 | 審査を申請していない |
| 浜岡5号機 | ABWR | 138.0 | 審査を申請していない |
| 志賀1号機 | BWR | 54.0 | 審査を申請していない |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
世界の中の日本|運転中436基と上位5か国

国ごとの基数は、横棒で並べると差が読み取りやすくなります。日本の棒だけは数え方が他の国と異なるため、色を変えています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
日本原子力産業協会の「世界の最近の原子力発電所の運転・建設・廃止動向」によると、2025年1月1日現在、世界で運転中の原子炉は436基、建設中は75基、計画中は95基です。国別では米国が94基で最も多く、中国57基、フランス56基、ロシア33基と続きます。
同じ資料の日本の欄は、他の国と時点が異なる2025年8月1日現在の値で、再稼働した炉に、審査を申請した炉と申請していない炉を加えた33基で集計されています。停止中の炉を含む数のため、ほかの国の「運転中」と同じ物差しで順位を比べることはできません。
楓のまとめ|熱のつくり方・2つの方式・33基の内訳

ここまでの図解を並べると、原子力発電の仕組みは「熱のつくり方」と「蒸気のつくり方」の2点に集約されます。3つの観察事実に整理してみます。
原子力発電はなぜ電気を作れるのか、という問いに対して、本記事の図解は、核分裂の熱が水を蒸気に変え、その蒸気がタービンと発電機を回すという流れを示してきました。数値は公表元と時点を添えて、そのまま並べています。
3つの観察事実を重ねると、原子力発電と火力発電の違いは熱源にあり、国内の2つの方式の違いは蒸気をつくる場所にあることが整理できます。再稼働した基数や審査の状況は月ごとに更新されるため、最新の数値は日本原子力産業協会の一覧で確認できます。
よくある質問(FAQ)

仕組みの記事を読むときは、どの部品の話なのか、どの方式の話なのか、いつ時点の数なのかの3点をセットで確認してください。
Q1. 原子力発電と火力発電の仕組みはどう違いますか?
どちらも水を蒸気にしてタービンを回し、発電機で電気を作ります。違うのは熱のつくり方で、火力発電はボイラーで燃料を燃やし、原子力発電は原子炉でウラン235が核分裂するときの熱を使います。東京電力は、原子炉が火力発電所のボイラーにあたると説明しています。
Q2. 沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)は何が違いますか?
沸騰水型は原子炉の中で水を沸騰させ、その蒸気を直接タービンへ送ります。加圧水型は約160気圧の圧力をかけて沸騰させない一次系の水の熱を、蒸気発生器で別の水(二次系)に伝え、その蒸気でタービンを回します。国内の既設33基では、沸騰水型が17基、加圧水型が16基です。
Q3. 日本の原発はいま何基動いていますか?
日本原子力産業協会によると、2026年10月9日現在、既設33基のうち営業運転を再開したのは15基です。ほかに許可済み3基、審査中6基、不許可1基、未申請8基があります。再開した炉にも定期検査で止まっている期間があるため、ある日に発電している数とは一致しません。
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